魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第４章 始動！千鳥万花

第１６１話 敵対心がある相手でも、威光を示すと従順になる場合もある。

「ホッホッホ。よくいらっしゃった。」
「出迎えはこれだけか？」
　ゴーレム車に乗りやってきたのは髭の生えた…ありていに言えば太っちょ貴族である。そして、その脇には青年も付き添っていた。ゴーレム車は貴族の力の象徴である。ダンジョンの奥に潜り、最奥にある30個近い宝箱を開け、運良く手に入った土魔法オーブを使う、それも使い方は、秘密と来ていた。
「今は西部方面軍は編成中の上、陛下から予算及び人員は回してもらえなんだ。そこでこの村が拠点のイーハ商会が人員を貸し出しておる。そしてその会頭の一人、オウルと申します。よろしく。イーハはこっちに来ているので。もう少しで来られます。」
「ぐ…。」
「伯爵、」
「分かっている。今は皇帝の心象もよくせねばならん。その為に耐えるのだ。」
「ではこちらへ、大使館に手今日は一日疲労と取っていただければ…。」
　そう言いオウルは後ろを向き、城壁を超え村の中に入る、
「少し待っていただきたい、この町は？」
「ここが、モアレ公爵の拠点、”流れ者の村”ですぞ。」
　一歩入ると、巨大な道路が森に至る一直線に存在し、まるで城がないだけの帝都に見えるほど…いや、周りの家々に至っては質素なつくりなれど、人々が通り、そして商店がなっらぶ。帝都では商売は認定制だが、その他では自由となっている。その為に基本的に商人は帝都に本店一軒と郊外に巨大な店舗を持っていることも多い。その中で
パルファンから移住したりした商人たちがこの大通りの交通のいい周辺に住んでいた。
「何だこれは！」
「村ですぞ？ここは商人通りですが…。」
「ここは何もない田舎村と聞いていたが？」
「はい、しがない革加工と、木材加工。そして、香味塩に使う香草の畑ですな。一応はここはモアレ辺境公爵様の領地なので。」
「あんな田舎小娘に…いや、あんたもその仲間の泥まみれか。それがこんな立派な町か…。」
「父よ、やめた方がいい、モアレ嬢は。エスタール・ビアーゼ親衛隊長も。」
「フン、剣しか触れん馬鹿に、何が言える。こんな立派な…。」
　二人はひそひそ話すが、先日の第一軍団謀反の祭には加担しなかったものの、西部方面軍は田舎の小さな村に権力をバク帯に与える者として、表面上は逆らわなかったが、内心は気に入らなかった。が、次男坊のピスタークの奴のモアレへの評価は違う、
「美人にして、戦場に作一輪の花。そして、一人で会ってもパークボアを倒す勇者のモアレ殿はそれは立派ですぞ。それにしても故郷のほうが住みやすいと、すぐ帰りたがったのは。これか…。」
「お、オウル殿。使者殿は？」
「村長。ホッホッホ、こちらがそうですぞ、」
　…一瞬しわがれた声の行き先を探す程度には混乱してしまった。目の前にいるのは筋骨隆々で白い髭と白髪でなければ年齢が推し量れない老人だった。
「ドルキス伯。よくぞこの小さな村にいらっしゃった。儂が村長でモアレの父。ガーダと申す。」
　丁寧に下げるが、その歴戦の強者と思しきたたずまいは、モアレのそれを超えていた。この村に来て一年。肉を食い様々な薬草を食べ、そして回復魔法により治療も行われ体長が治るどころかすこぶるよくなった、けがで引退したはずの村の最初の狩人たちは本来モアレよりも熟練した狩人たちだった。しかもレベルアップの影響を受けどんどん
その能力を開花し、先日ハンターとしての認証を受けた。村長を譲り、村を出る判断をした裏に、復帰した狩人たちの存在もあった。
「よ、よろしく。」
「お願いします。」
　伯爵たち二人も小さくなりながら挨拶をする。
「ここは小さいですからな。村は職人も多くそこのオウル殿にはよく世話に…。」
「疲れている彼らの事もある、ゴーレムの魔法は疲れるからな。こちらです。滞在予定の公館はあちらです。」
　オウルと二人、歩く先にはと売りに即した一番奥に立つ…3階建ての豪邸だった。
「は？」
「時々皇帝陛下も訪れるという話のある、その予定の館、大使館ですぞ、こちらが今日の皆さんの宿になります。」
　ついでに帝都においても建物は平屋が多い中、村の建物は全てが二階建ての上、この大使館は3階建てで、王級が3階建ての事を考えると、それと同格の建物だという事になる。但し広さはそこまででもない。庭が無いのだから。だが。それだけである。