魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき

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第3章 マルワール帝国のダンジョンマスター

第122話 何も特色のない村は現実には存在します

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「ようこそいらっしゃいました。」
「ああ、約束があったのでね。」
 荷車から降りると、村人総出て待ち構えていた。この村は帝国近郊の村”ピッチカート”の村だ。
「聞きましたが、感謝しかありません、租税方法が今年から変わったので、」
 この帽子をかぶったチョッキを着たおじさんが村長なのだろう。
「ああ、払っておいたぞ、ただし、今後は商売してちゃんと自分で払うように、」
「はい!」
「後これが、肉の塩漬けの”ハム”だ。とりあえず10本。代金は金貨4枚とハム10本、どっちがいい?」
「来年の租税か…。ハム・・・。」
 村長は悩むが後ろの村人の目は全てハムに目が行っていた。
「…。」
 ちらっと後ろを見た村長は、諦めた顔をして落胆した。
「ハムで。」
「分かった。ハム10本だ。今後、イーハ商会に来れば銀貨50くらいで売る、ただし、仕入れ具合によるが。ミヨちゃんだしてくれ。」
「はいよ!」
「お前ら、並べ!今日は祭りだ!」
 肉は高いらしく貴重品のようだな。今回のハムは”一頭立て”だ。それが10本という食肉業者だ。それをミヨちゃんが手でもって村人に渡していく。その顔からもこれがいかに貴重品かわかる。
「ありがとうございます。後…できればそっちの分も。」
 これは計算済みだ。あと3本は荷車の中に置いてあるが普通に考えれば、ほかの村も回ると考えないだろうか?が、物々交換なら肉かこの地方では貴重であるので当選通貨の代わりとして塩漬け肉が使えるのは知っていた。
「村で買えるものがあれば見せて欲しい、あるなら交換に応じる、金貨一枚半になるものがあればな。」
「ではこちらに…。」
「ミヨちゃん、頼んだ。」
「あいよ、マスター。」
 荷車さえ珍しく、ゴーレムはミヨちゃんが操っている、なので、彼女を馬車から離すわけにいかなかった。

「どうでしたか?」
 確かに足の速い運輸に向かない野菜やウサギ肉やウサギの皮があったが金貨で買うほどでもない。しいて言うなら、ジャガイモだが、これはうちでもダンジョンで作っている。
「無いな、すまない。今後に期待したい。」
 しょげる村長だが、分からんでもない。
「実は各地の特産品を回っていて、王命で新年に宴会を行う予定があったから、多大に買い付ける準備もしてあったのだが…。」
 その話になぜかすっと顔色が悪くなる村長の顔…。
「どうしてまた、買いつげを?」
「例年だと集めた納税された食品の還元なのだが。今年は金貨、すなわち商売実績から貰う事になった。すなわち食品は市場にまかれている。だから王宮に食材がない。だから私が指名されてね。」
 適当ではあるが、実際こうだろう。金貨は便利だが。”交換”しないと只の金属片だ。向こうは大方こっちが、ダンマスであることを利用して、量産してもらう予定だろう。
「そ、そうなんですか?」
「だから買い付けの旅だ。」
「証明するものはありますか?」
「これだが?」
 胸の服の隙間から取り出したのは例の帝国印のペンダントだが。見た瞬間に村長が奪おうとしてきた。が、さすがに、血走った目だとわかるそ。
「・・・どういう事だ?」
「お前の連れの命が欲しければ…。」
「言っておく、あの子は私達の中で一番強い、あれでもな。笑い話でなく本気を出せば、この国の軍隊を敵にして勝てるほどのな。」
 そう、金のない村としては。大方、村長が私をおびき出し、あとの村人であの肉共々全部貰う予定だったのだろう。
「それに、お前たちの税を払ったのは私だぞ、次も同じようにするとは考えなかったのか?」
「それはお前が今持っている金貨で…。」
「その次の年は?」
「…。」
 やはり短絡的だったようだ。村長の顔が青いのを通り越して、白くなっていた。
「商人だから武力が無いと思うな。確かに軽装だがな。戻ってみよう、君の言う通りなら私は金貨を置いて、脅された形で帰ろう、それでいいな。」
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