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第2章 村と街とダンジョンと

第89話 大企業には大企業になっただけの理由がある

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 まあ、会話は丸聞こえだが、養分の多彩さか…。が、おおむね好評だな。戻ってきた3人の顔はほくほくだが。情報はかなり得られた。こういう時の情報は重い。
「できれば数が欲しいのですが?」
「構いませんよ。コピー禁止ではあるので、あの大きさ一枚2万DPです。」
 一瞬顔がほころぶが、いきなり固くなった。分かったんだろう。あの大きさである。
「最大パネル設置で?」
「その大型でしたら90枚お買い上げですか?」
「やっぱり。天井さげるともっと行くよ。」
 よく気が付いたな…。
「もう少し下げてもらっていいです?」
「…買いましょう、今後もいい取引が続けれるなら安いです。」
「母様。」
「ただしおまけ…付けてもらえますよね?あるんでしょ?」
「はい。一応企画中の”石の農具セット”及び”堆肥一樽”と”貝の粉1樽”をパネル10枚につき一つ、特別にお付けします。また草の登録は自由なので。維持を切ってもこれでそれなりに農業が可能なはずです。」
「維持を切る?」
「ダンジョンオブジェは常に状態を維持するために維持費を払っています。それを切ると自然と同じ挙動になります。なので、その状態にしてもこれで2期作程度はできるでしょう。堆肥は土に混ぜれば地上でも育成を早め。外部での農業促進ができるでしょう、農業ダンジョンであるなら、これは魅力的だと思いますが?」
「やり手ね、営業マンさん。」
 綾香さんの微笑みがかなり柔らかい…がこれ、商売人の目だ。昔見た社長のとかの相手の目だ。こっちに押し込み用のおまけがあることを分かっていたようだ。
「物で売買は可能?流石に100万クラスとなると大型すぎて、そんなに払えないわ。」
「提示するものに寄ります。」
「そうね…ファクタースキル6種。で、500枚でどう?」
「ファクタースキル?」
「ええ、ファクター炎、ファクター湖、ファクター嵐、ファクター金、ファクター聖、ファクター闇のスキルよ。」
 こっそり検索してみる…え…こんなものがあるのか?上位ファクター?火の上位ファクター”炎”?そのファクターのスキルって事は成長させた先にある物か…。がそんな属性があるのか…。
「500枚は流石に一気に生産できません。その為、お断りしたい、無理に生産するにはDPがうちにありません。」
「仕方ないわね、私たちはそれくらい大規模に欲しかったのに…。今回の件は…。」
 これ、揺さぶりに来たな。
「ではお帰り下さい。できない物はできないので。」
 実はちょっと種族的には興味がある。が、スローライフにはいらない。
「ふむ。ごめんなさいね。試してみたかったのよ。」
「ならどうします?」
「継続的に商売は可能?」
「特典がないだけでしたら、ショップ販売予定です.」
「その堆肥も?」
「いいえ、これはトレードだけですね、私はこう見えて、建築家ですので、農園グッズはホームセンターに行って買った方がよろしいかと。」
「母さん!」
「黙ってなさい。七海。これも商売よ。この人…かなりやりてよ。見てなさい。」
「私はしがない建築家。その辺はご容赦を。」
「予算は確か400万DPなので、300万まではDPで買いましょう。」
「では250枚お買い上げで。」
「できれば最大ルーム加工付き、天井は10mで。余ったパネルはルーム単位で貰います。」
「分かりました。ルーム加工と後は位置調整。後トラップの草の種類選定に三日かかります。よろしいですか?」
「構いません。が、よく大手相手にそこまで啖呵が切れますね?」
「いえ、これが世界初なので、価値も知っています。そして喉から手が出るほど欲しいのは、何もあなた方だけではありません。」
「流石ね。井原。覚えておくわ。後の買い足し分はショップに置いておいて。で、完成時におまけを…。」
「そうですね、この調子ですと、軽いおまけもつけておきますよ。10mですと面積9倍ですので。900m×900mで、必要枚数が810枚となります。」
「…足りませんね。ならば、仕方ない。20まで下げて4倍で。これが限界です。」
 この大きさになると本当に欲しいのは90×4の360枚欲しい。が、買ったのは250枚。足りないのだ。
「だからこそのおまけです。但し、おまけ予定の肥料セットは3樽までにしていいですか?」
「何がおまけかわかりませんが…。構いません。」
「では、完成し次第お渡しします。」
 流石魔王軍、商売においても一筋縄ではいかないようだ。
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