魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき

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第2章 村と街とダンジョンと

第85話 商売の即決はトップ同士で行うからできるんです。

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 ヌーア村はそれはもう、流れ者を劣化させたような村だが一応木による防壁があり、奥には森林もある、立派な村だ。
「良くいらっしゃいました。旅人よ。」
 挨拶するのは長老であり、大方村長だが…目が挙動不審でキョドってやがる。一応四郎がいて安心だろうが…後ろにはその3倍以上の大きさの”中抜きロックゴーレム”がいる。一応重さは人間並みなので極めて…軽いが…それでも馬車を引ける程度の重さは維持している。
「村長よ、こちらをまず献上します。これで、できれば今夜の宿を。」
 そう言って差し出すのは先ほどのハムが5本と、そして塩の樽だ。交易用で。ついでにメッチャングの町ではこの樽を使って商売していたので、規格をこっそり計測し、そのたるをコアに作ってもらって製作した木の樽だ。
「分かった。」
「ただ。我々はできれば、旅の物資を分けていただきたく思います。」
「分かった、村一番の戦士シロウよ。明日でよい。村を見せて回るがいいよ。まずはそれは…。」
「はい、わが村で取れた肉を塩漬けで保存し、3か月はもちます。」
「なら、シロウよ、お前の家に泊めてもらえ、3人なら、」
 さらっと進むが大方昨日のうちに会議したんだろうな…。当然夜の明かりもあるし、あそこにあいつがいたんだ、当然”見張り”だろうよ。
「ああ、分かった村長。俺のうちに招く。それでいいな。」
「ああ、頼んだ。」
「ミヨちゃん、アウル。ジャン。荷物を運び入れてくれ。私も手伝う。ゴーレムはその場で待機せよ。」
 その言葉にゴーレムたちが頷く。一応ミヨちゃん作のゴーレムは高度ゴーレムの為、言葉はともかく頭がいい。大抵のことは理解できる。 
「私のいう事は聞くから、…決してゴーレムと馬車に触らないように。ゴーレムよ、荷車に近づく者を追い払え。」
 その言葉に改めて頷くゴーレムだが前みたく”ソウルレベル1”ではないので、会う程度の言葉の裏を呼んでくれる。なので、殺すことを望んでいないなら、この段階で追い払うだけになる。そのファジー命令を受け付けるのが高度ゴーレムだ。後、術者に記憶があれば格闘術もすると、柳田論文にはあった。その辺がゴーレムの良い所だ。
「ついで来い、こっちだ、後そこの荷車…うちの傍に横づけしておいてくれ。嫁さんに見張りも頼む。」
「分かった。」

 途中で見る村は…。竪穴式住居だ。露骨に前時代的だ。流れ者の村でさえもう少しいい家に住んでいたぞ。しばらく歩くと…小さなわら小屋がひとつ…そしてその中に四郎は入っていったが…。
「あ?」
 流石のジャンも声を隠せなかった。そのわら小屋のど真ん中に地下行きの階段があったからだ。ダンジョンだ。
「こっちだ。」
 階段をすんなり降りていくと…。そこは洞穴に節穴の原始的洞窟が広がっていた。
「俺のダンジョンだが…。いや、どうした?」
「すまない、ちょっと眩暈がした。」
「どうやって28位になったんだよ?おっさん!」
「ああ、ダンジョンみんなでMP注いでな。朝に一日。で、稼いでる。」
「そんな方法あるのか?」
「ああ、コアのレベルが上がると、MP吸引という方法でモンスターがMPを捧げる事ができるんだ。で、作ったモンスターの質を上げてDPにすることで収益にするんだが…。あとは食事とかは村人の数人を眷属化してこっちで強化して人手を出すことで、力を貸している。」
「そんな方法があったのか…私はルーム販売だけだぞ?」
「は?」
 その言葉に四郎は耳を疑ったみたいだ、こっちもその稼ぎ方を知っていれば…いや、やらないだろうな…。どこかにリスクがある。
「ってあれか、最近SNSを騒がす建築家”井原”かあんた。へぇ…近所にいたんだ。」
「まあ、そういう事だ。私は建物が好きでね。今回は石の斧数本を持ってきた。」
「で、一応あんたには何か出さないとまずいよな。村長は大方…理解できねえ、貨幣制度は。」
「だろうな…。」
 ジャンも納得したようだ。商人は”貨幣交換”が無いと基本機能しない。おつりと取引の為だけにガラクタを持って歩く行商人の話は多い、物々交換だと価値がぴったり交換できることは少ないからだ。
「ならDPでいいぞ?」
「…どれくらいだ?」
「鑑定は?」
「無いな、俺の特性は”怪力”、”再生”だ。」
 結構バトルジャンキーな組み合わせだが、開拓を考えれば当然欲しい。ステータス系はかなり大きい。
「そうだな、うちの特性オーブにこの金貨。あと欲しいものあるか?見た感じ…。」
「ああすまないな、ここは獣による狩りと、後、薬草があるくらいだ。傷がふさがるって言うな。」
「確かにそれだと難しいな、そっちもその薬草とやらは備蓄が欲しいのだろ?」
「まあな、できれば出したくない。」
「欲しいもの分だけ言って、DPで支払ってもらえばいい。スキルオーブで買ってもいいぞ。」
「…荷車ごと全部だ、ゴーレムはいらん。」
「分かった。」
「は?」
「構わない。それを要求されたのはここだけじゃないし、第一私のショップではその荷車も打っている。だから石の斧30で3万、ハムが5本で2400、後塩一樽で32000DP、見本用金貨が1000DP荷車が10万DPだ。」
 さらっと頷くとは思わなかったようだ。脇のお供の顔も青い。
「あんた豪快だな。頷くのか…帰りはどうするんだ?」」
「7レベルになれば何とでもする。あとその金貨は、帝国でも使えるし、魔王国でも使える疑いがある。人間の世界で使える金かって奴だ。持って行け。但しどうする?」
「合わせて…。16万7千・・・ちょっと負けてくれないか。」
「急に用意するには難しいが、部下も人もいるんだろ?オーブ次第では減額も考える。」
「厳しいな。剛力が4万。再生が20万だ。」
「なら…こっちが土魔法のオーブを三つ付ける。そっちは再生でいいか?」
「土魔法のオーブって事は…。」
「ゴーレム作成には土魔法が欲しい。だからこれと荷車があれば交易可能だ。数人分あればいいだろう。後足りない分は自分で買え。」
「分かった、かたじけない。」
「後、こちらで叡智を出す。剛力の交換はできるか?」
「叡智か…了解した、トレードを。」
 そう言うと懐からコンソールを取り出すと、トレードを送り付ける。
「それに了解すればOKだ。」
 当然シロウもコンソールを取り出し、ショップ内容を確認た。そしてOKのサインが来た。
「いい取引をさせれ貰った。がいいのか?あのゴーレムは?」
「ミヨが作ったのだ。解除はいつでもできる。」
 こっちはほぼ漏出せず、かつ相手の特性オーブをもらった。これはかなり大きい。しかも向こうは交易路まで手に入れた感じだ。こっちからすればゴーレム運搬が一般的に見えれば当然今後とかメッチャング相手に商売もできる。十分な利益だ。がそれ以上に。
「ルームはいいのか?」
「水源確保と、鉱脈捜査していてな。今はダンジョンがこの状態なんだ。すまないな。一応プライベートルームはあるが、通す事は出来ん、今日はここに泊って行ってくれ。」
「了解した。」
「料理はこっちで出す、こっちの名物”キノコと山菜とブロウオッズの煮物だ”後…。」
 やはり出てきたのは、ブロウオッズという”鹿の一種の肉と野菜を似た。それなりにうまい一品だった。…結構倹約家だと思った。
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