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セブンナイト
次なる方針
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「テッドを助け出せたのはいいけど、全然起きないな」
処刑台からテッドを助け出した後、既に隠れ家とかしたルーナが取っている宿へと無事に連れてくることが出来た。
だが、テッドの消耗が大きかった事と安堵から部屋に入ると糸の切れた人形のようにバタりと倒れてしまったのだ。
そこで一先ずは休ませようとルーナのベッドへ寝かせる事にしたのが今までの経緯だ。
外ではテッドと罪人を逃がした不届き者……大地達を探す騒がしい声が荒げていた。それを聞きながら結構な時間が経過したが、まだテッドが目覚めずにいる。
「なかなか起きませんね~。あ!秘孔でもついてみますか?」
手をグーにしてシャドウボクシングをするフルネールからは秘孔をつけるような気はしてこない。
「いや……まだ待ってみよう」
「それは良いんですけど、もう夕暮れも終わりますよ?」
閉じたカーテンの隙間から差し込んできていた赤い光が徐々に薄れていく。その光の消失は今日が終わることを示しているのだ。
そしてそれはリリアが連れ去られて6日目が終わろうとしている事でもある。流石に心配だ。肉体的にも精神的にも疲労はかなりしているはずなのだ。だからこそ今も探しにいきたいのだが自分がいない間にここに踏み込まれれば寝ているテッドを守り抜けないだろう。
「本当にリリアはいったいどこにいるんだ……」
大地がそう呟くとテッドの瞼が動いた。彼は完全に目を開くと視線だけをさ迷わせ見慣れない天井に少しだけ困惑させていた。
「テッド様!お目覚めになられましたか!?」
アルメルスがテッドへ駆け寄るように近づくと膝をついた。
「ここは。……そうか助け出してくれたんだったな。そうだ!ダイチさん!」
ガバッと起き上がったテッドは大地へ振り向いた。そしてその次の言葉は大地に衝撃を与える。
「リリア様を見つけました」
ここに来てからずっと聞きたかった言葉だ。
「本当か!?場所は!?」
大地は相手が今の今まで寝ていたことを忘れているかのごとく勢いよく近づいた。
「それが城の牢屋の中だった。恐らくギルニア公爵が閉じ込めるつもりで牢屋にいれたのでしょう」
「閉じ込める事でこの国の王様と王妃様を助ける手段を潰していたってことか……」
テッドは神妙な面持ちで頷く。
「きっとそのはずだ」
「なるほどな」
最初っからそのつもりでリリアを拐っていたのだろう。だが、これで居場所がわかったのだ。それならば乗り込んでリリアと合流して、王様達の呪いを解き、ギルニア公爵のしでかしたことを民衆にばらして終了だ。
「よし!それなら今から乗り込んで」
「それはやめた方が良いと思いますよ」
いざ行かん!と言わんばかりに部屋に振り向いた大地をフルネールが止める。その真意を知りたくて顔をフルネールへ向けた。
「お城の構造はわかっているんですか?牢屋の位置は?」
「あ、あー。それはほらシルフに聞きながらとかで」
「聞きながら暗闇を歩くんですか?」
「いや、でもほら、後光で光れるから足元もなんとかなるだろ?」
「そもそも大地さん一人が行ったら目的がリリアちゃんだとまるわかりじゃないですか。それってリリアちゃんを危険にさらしませんか?」
フルネールの懸念はつまりそこなのだろう。大地が近づくことでギルニアがリリアへ危害を加える可能性。最悪殺すことまで考えるかもしれない。
「じゃあどうすれば良いんだよ」
フルネールの言うことはわかる。だがそれは手詰まりになってしまわないだろうか。朝だろうが夜だろうが大地は行くのだから。結局警戒されることになるだろう。
「大地さんだけで乗り込むのがダメなんですよ」
フルネールはチラリとベッドの上のテッドへと目を向けてから大地へと戻す。
「テッドさん達にも乗り込んでもらいましょう。それに紛れて大地さんがこっそり侵入するんです。そうすれば気づかれにくいでしょう?」
「僕達が囮になるってことか」
「ええそうです。処刑を逃した人が真正面から来たら流石に無視は出来ないでしょうしね」
笑顔で言うが相手はこの国の王子だとわかって言っているのだろうか。大丈夫?不敬にあたらない?
「よし、その作戦で行こう。今から出るぞ!」
大地の心配をよそにテッドは頷き、ベッドから出ようとしたがフルネールはそれを止める。
「いえ、行くなら明日です。今は体調を整えなさい」
「お父様もお母様もそろそろ限界のはずなんだ。そんな悠長にしている時間がないんだ」
「それで貴方とこの国の王と王妃が死んだら、この国は終わりますよ?それでも良いんですか?」
乗り込めば必ず七騎士は出てくる。対峙すればこちらの体調など気遣うわけがないのだ。
「だけど!」
だが、テッドとしても王と王妃がどれ程もつかわからないのである。その焦りとリリアと言う希望を見つけているならばすぐにでも動きたい。
「テッド。フルネールの言う通り動くのは明日にしよう」
大地としてもテッドと同じ気持ちではあるが、ここでフルネールが急いでいないことを考えるときっと猶予はまだあるのだろう。信頼できる女神からの助言なのだから。
「ダイチさん……わかったよ」
「それじゃあ今日はこのまま休みましょうか。明日に向けて」
処刑台からテッドを助け出した後、既に隠れ家とかしたルーナが取っている宿へと無事に連れてくることが出来た。
だが、テッドの消耗が大きかった事と安堵から部屋に入ると糸の切れた人形のようにバタりと倒れてしまったのだ。
そこで一先ずは休ませようとルーナのベッドへ寝かせる事にしたのが今までの経緯だ。
外ではテッドと罪人を逃がした不届き者……大地達を探す騒がしい声が荒げていた。それを聞きながら結構な時間が経過したが、まだテッドが目覚めずにいる。
「なかなか起きませんね~。あ!秘孔でもついてみますか?」
手をグーにしてシャドウボクシングをするフルネールからは秘孔をつけるような気はしてこない。
「いや……まだ待ってみよう」
「それは良いんですけど、もう夕暮れも終わりますよ?」
閉じたカーテンの隙間から差し込んできていた赤い光が徐々に薄れていく。その光の消失は今日が終わることを示しているのだ。
そしてそれはリリアが連れ去られて6日目が終わろうとしている事でもある。流石に心配だ。肉体的にも精神的にも疲労はかなりしているはずなのだ。だからこそ今も探しにいきたいのだが自分がいない間にここに踏み込まれれば寝ているテッドを守り抜けないだろう。
「本当にリリアはいったいどこにいるんだ……」
大地がそう呟くとテッドの瞼が動いた。彼は完全に目を開くと視線だけをさ迷わせ見慣れない天井に少しだけ困惑させていた。
「テッド様!お目覚めになられましたか!?」
アルメルスがテッドへ駆け寄るように近づくと膝をついた。
「ここは。……そうか助け出してくれたんだったな。そうだ!ダイチさん!」
ガバッと起き上がったテッドは大地へ振り向いた。そしてその次の言葉は大地に衝撃を与える。
「リリア様を見つけました」
ここに来てからずっと聞きたかった言葉だ。
「本当か!?場所は!?」
大地は相手が今の今まで寝ていたことを忘れているかのごとく勢いよく近づいた。
「それが城の牢屋の中だった。恐らくギルニア公爵が閉じ込めるつもりで牢屋にいれたのでしょう」
「閉じ込める事でこの国の王様と王妃様を助ける手段を潰していたってことか……」
テッドは神妙な面持ちで頷く。
「きっとそのはずだ」
「なるほどな」
最初っからそのつもりでリリアを拐っていたのだろう。だが、これで居場所がわかったのだ。それならば乗り込んでリリアと合流して、王様達の呪いを解き、ギルニア公爵のしでかしたことを民衆にばらして終了だ。
「よし!それなら今から乗り込んで」
「それはやめた方が良いと思いますよ」
いざ行かん!と言わんばかりに部屋に振り向いた大地をフルネールが止める。その真意を知りたくて顔をフルネールへ向けた。
「お城の構造はわかっているんですか?牢屋の位置は?」
「あ、あー。それはほらシルフに聞きながらとかで」
「聞きながら暗闇を歩くんですか?」
「いや、でもほら、後光で光れるから足元もなんとかなるだろ?」
「そもそも大地さん一人が行ったら目的がリリアちゃんだとまるわかりじゃないですか。それってリリアちゃんを危険にさらしませんか?」
フルネールの懸念はつまりそこなのだろう。大地が近づくことでギルニアがリリアへ危害を加える可能性。最悪殺すことまで考えるかもしれない。
「じゃあどうすれば良いんだよ」
フルネールの言うことはわかる。だがそれは手詰まりになってしまわないだろうか。朝だろうが夜だろうが大地は行くのだから。結局警戒されることになるだろう。
「大地さんだけで乗り込むのがダメなんですよ」
フルネールはチラリとベッドの上のテッドへと目を向けてから大地へと戻す。
「テッドさん達にも乗り込んでもらいましょう。それに紛れて大地さんがこっそり侵入するんです。そうすれば気づかれにくいでしょう?」
「僕達が囮になるってことか」
「ええそうです。処刑を逃した人が真正面から来たら流石に無視は出来ないでしょうしね」
笑顔で言うが相手はこの国の王子だとわかって言っているのだろうか。大丈夫?不敬にあたらない?
「よし、その作戦で行こう。今から出るぞ!」
大地の心配をよそにテッドは頷き、ベッドから出ようとしたがフルネールはそれを止める。
「いえ、行くなら明日です。今は体調を整えなさい」
「お父様もお母様もそろそろ限界のはずなんだ。そんな悠長にしている時間がないんだ」
「それで貴方とこの国の王と王妃が死んだら、この国は終わりますよ?それでも良いんですか?」
乗り込めば必ず七騎士は出てくる。対峙すればこちらの体調など気遣うわけがないのだ。
「だけど!」
だが、テッドとしても王と王妃がどれ程もつかわからないのである。その焦りとリリアと言う希望を見つけているならばすぐにでも動きたい。
「テッド。フルネールの言う通り動くのは明日にしよう」
大地としてもテッドと同じ気持ちではあるが、ここでフルネールが急いでいないことを考えるときっと猶予はまだあるのだろう。信頼できる女神からの助言なのだから。
「ダイチさん……わかったよ」
「それじゃあ今日はこのまま休みましょうか。明日に向けて」
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