初めての異世界転生

藤井 サトル

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セブンナイト

新人が入ると絡まれるのは世の常?

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 ホワイトキングダムに入ると騎士はその情景を心に焼き付けるように見回した。それは大地からしたら何の変哲もない日常なのだが彼にはどうやら珍しいらしい。

 やっぱりナイトガーデン……だっけか?そこから来てるのかね。こいつは。

 そうだと思いますよー?どんな用事かは……ある程度わかりますけどね!

 お!その反応ってことはやっぱりこいつは悪い奴じゃないんだな。

 の反応で人の良し悪しを見定めないでください……。第一、私が嫌ってない=いい人だなんて事にはなりませんからね!

「いい街だね!色んな人が活気づいててさ!」

 騎士は色んなものに目移りさせていく。

「お前の住んでる街は違うのか?」

「いや、ここと負けないくらい活気づいてるよ。だからいい街だと思ったのさ」

 そんな風に嬉しそうに言う騎士を見て、フルネールの事がなくても悪くない奴なんじゃないかと大地は思う。

「それでどこに行きたいんだ?俺がわかる範囲でなら案内できるぞ?」

「うん。でも、まだ早い時間だからね。とりあえず一人でこの街を見て回ることにするよ」

 そうやんわりと断った騎士は大地達よりも一歩二歩と先を歩きつつ離れていく。

「ここまで送ってくれてありがとねー!」

 そして最後に大手を振って騎士は去っていった。その後ろ姿から何となくまた会えるような気を残しながら……。

 フルネールさん?変なナレーションつけるのやめないか?

 えー?せっかくの名シーンなのに?

 どこがだよ!

 フルネールの戯れ言をいなしながら大地は気を取り直して言う。

「さて、ギルドに行って何か良い依頼がないか探すか」

「はい!」

 滝での水浴びの時から人の姿に戻っているナルは初めての依頼に期待に満ちた笑顔で元気良く返事をするのだった。


 ギルドにつくや否や扉をゆっくりと押して中へと入る。基本この扉は誰にも彼にも強く開かれることが多いために大地だけはそうしないという配慮である。

 中に入ると久々にギルド内がざわついている。その注目の的はナルである。可愛らしい狐耳と尻尾、それに巫女服が合わさっているのだ。フルネール曰く最強である。

「あ、ダイチさん。こちらに来てください」

 ギルドの喧騒をものともしないユーナの声が大地を呼びつける。それに誘われて大地がカウンターの前に来ると顔を近づけろと言わんばかりにユーナは大地に手招きをした。

「ダイチさん。本当にナルちゃんのこと気をつけてください。特に今朝はモンスターの姿で寝てたじゃないですか。……私も可愛さで忘れてましたけどあれはダメです。人の姿の方がごまかしが聞くのでお願いしますね」

 耳元でささやかれるユーナさんの声に少しだけゾクッとしつつも何とか表情を崩さなかった事はほめて欲しい。

「あ、あーそうですね。出来るだけ目立たないようにするんでしたよね」

 そう言いながら振り替えると既に強面のハンター達に囲まれていた。それも何時もは見たことがない奴らにだ。

 フルネールは少し怯えた様子を見せている。だが、大地にだけチラチラと何かを期待しているアピールもしている。演技かどうかはやはりわからないが、推測するのであればフルネールはこんな奴らで怯えるような玉ではない。

 レヴィアは少しだけ怒っているが手をだそうとはしていない。もっとも手を出したら瞬殺してしまうだろうから助かる。ここを血の海にしたらこの国にはいられなくなってしまう。

 最後にナルは楽しそうに見つめていた。恐らくこの中で一番敵意があるか否かを見定める目を持っているのかもしれない。

 そんな彼女達を囲っているハンター達も囲むだけで手をだしてはいなかった。助かる。だけど、大地がユーナとの話を終えたと知ると集まっていたハンター達が一斉に大地へと向いた。

「お前が新人ハンターだな!」

「ま、まぁ確かに新人かもしれないけど、それが何だ?」

 大地がそう言うとベテラン?ハンターは口許をニヤリとつり上げる。

 あ、何かこういうの久しぶりだな。

「新人なら俺らベテランに挨拶するのが筋ってもんじゃないか?ああ!?」

 そうやって強面のハンターが凄んでくる中、扉がゆっくりと軋む音を鳴らせながら動く。誰かがこの不穏な空気が支配するギルドへ入ってきたのだ。

「何の騒ぎ?」

 その声はどうにも可愛らしい女の子の声だった。それは大地はもちろんの事、ギルドにいる人間は全員知っている声だった。

 だからこそ扉近くのハンター達はその姿を見るとすぐに退いた。まるでモーゼが海を二つに割るかのごとくハンター達は左右に動いたのだ。ただ、そのハンターの中でもたった一人だけその存在に気づかず大地に悪態をついているが……。

「何しているの?」

 そのハンターも真後ろからその声が聞こえたことで背筋をピンと伸ばした状態でふりむいた。それは声だけで相手が誰だかわかった証拠だ。

「クラリスの姉さん!今この新米ハンターに礼儀って奴を叩き込んでいるところでさぁ」

 クラリスからしたらその新米ハンターと言われる人物が誰なのかは姿を見るまでもなくわかる。何故なら、先の割れた人の中にはフルネール達がいて、大地の姿を見かけていなかったからだ。

 そして聞いた話だが何故かどいつもこいつも大地に喧嘩を売るようなことをしたがると言う。カイしかり、赤髪しかり、レイヴンしかり。

 クラリスは少しのため息を吐き出したあと、そのベテランハンターの脇を通り抜けて大地の横へと移動した。そしてお願いするように言うのだ。

「ダイチさん。迷惑だってわかってるけどお願いしてもいい?」

 彼女の声は柔らかくあるが表情は少しだけ困り顔だ。彼女自身が言っていたように迷惑をかけるとわかっているのが嫌なのだろう。

「お願い?どんなだ?」

 しかし、知らぬ仲ではない女の子の頼みだ。それもこれまでに腕に抱いた時と腕に抱きつかれた時の感触……いや、この話を思い出すのはやめたほうが良さそうだ。フルネールに感づかれれば玩具にされかねない。

「うん。あのね、そこの調子に乗ってるバカにお灸をすえて欲しいの……ダメ?」

 上目遣いをしつつ、肩の少し下まで伸びるウェーブがかった髪を小首を傾げる過程で揺らすクラリス。熊耳がとても可愛らしいその仕草は大地としても鼻が伸びそうになる。(あえて言うが伸ばしてないぞ!)

「いやでもよ……まだ何もされてないからな……」

 正直、しばき倒すのは簡単だ。でも、フルネール達に何かあったわけではないのだから彼の話を聞いてやれば収まる問題だろう。

「されてからじゃ遅いよ。それに新しくハンターになった人に毎回絡むんだもん。少し痛い目を見たほうが良いと思うの。その、お願いを聞いてくれたらダイチさんが望むことしても……良いよ?」

 クラリスは最後に小声でそんな事を言うのだ。これには流石に大地もドキリとした。そして反射的にお願いをしようとしてしまったがギリ堪える。

「っあ、あー、いや、取り敢えずやるだけやってみるよ」

 『うん』とも『はい』とも言えない情けなさを全面にだしながら大地はそう答えるのだった。
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