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セブンナイト
始まりの日
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「はぁ……」
ホワイトキングダムに負けず劣らずにぎわっている城下町をリリアはガラス窓から見下ろしながらため息を吐き出した。
そして、見下ろす事に飽きたところで部屋へと視線を移す。お城の部屋と言うのはどこもきらびやかな物だとリリアはあてがわれた部屋の内装を見ながらホワイトキングダムの自室と比較した。
ちょっとした細工の方向性は違えど柔らかいベッドに自然の風景が描かれた絵画。高い天井や歩くのがもったいない素敵なカーペット。そして質の良い赤いカーテンを開ければ城下町を見下ろせるところ。お城のいい部屋と言うのはこういうものなのだと言うように変わらない。リリアが先刻から見下ろしていたのはこの窓からである。
「ここがナイトガーデンのお城……なんですよね。せめて書き置きだけでも出来れば良かったのですが」
あのパーティーから帰った日の夜、もっと抵抗していれば良かったのだろうか……そう考えながらリリアは昨夜の事を思い出す。
今日は大変だったけど楽しかった。秘密の隠し道のような場所を通り、怪しい隠れ家に危険な魔方陣。そしてとても強いモンスターと戦った。
その戦いで私も少し強くなっているのがわかった。ダイチさんはみたいにすごい攻撃はできないけれど……。今なら海龍がでても長い時間は封じてられるかも?
それとそれと。やっぱりダイチさんにドレス姿を誉めてくれて嬉しかった……。話すだけでも不思議な感じがするのに誉められるともっともっと不思議になる。
アーデルハイドお姉ちゃんの件が解決しなかったのは心残りだけれど、きっと今日は本当に楽しくて良い日なのかもしれない。
それがお城の帰り道でリリアが夜の澄んだ空気に髪をふわりとなびかせながら抱いた感想だった。そして気分が良いまま宿に帰りつく。
ハンナや女将に上機嫌に挨拶をしてから自室へ向かった。きっと彼女もリリアの機嫌の良さから良いことがあったのだと察していたことだろう。
鼻歌交じりに寝巻きや聖女の服がかけてあるクローゼットへ移動しながらベッドへ視線を向ける。
ベッドに入って寝ればあっという間に明日だ。そうすればダイチと話して不思議な時間を味わう事が出来る。いや、どんな話をしようかとベッドの中で考えるのも楽しそうである。今日という楽しい日々を振り替えるのも良いだろう。或いは、明日は街の人と話すのも良いかもしれない。
ここ最近、もう一つ不思議なの事がある。それは前よりも色んな人と話すのが楽しいのだ。その話が英雄ダイチの話になると自分の事のように楽しい。
そんなことを考えながらリリアがクローゼットの前に立って鼻歌を止めるとクスクスと今日を思い出して嬉しさから笑みを浮かべた。
高揚感が落ち着いた頃、リリアがもう一度ベッドを見ようと振り返った時だ。視界の端に男を捉えた。
「誰!?」
音もなく現れた男は意外にも申し訳なさそうな顔を浮かべている。全く理解が追い付かないリリアはその男の様子を伺うことにした。
「夜分遅く……それもこのような形で押し入って申し訳ありません」
話し方は礼儀正しい。男の様相は特にこれと言った特徴もなく、武器を所持しているようなこともない。それどころか背筋はピンと伸びていて怪しさはない。だが相手の立ち位置は扉の近くである。
「……ご用件はなんですか?」
見た目で怪しくないのと悪意がないのとは別問題なのである。だから、リリアは慎重にそう聞いた。
「聖女リリア様に来ていただきたいのです。我が国……ナイトガーデンへ」
返ってきた言葉は淡々としたものだった。いまだに変な動きを見せる事がないのはかえって不気味だ。
「……お断りさせていただきます。こんな夜更けに部屋に押し入り、確りとした用事を話せない貴方を信頼してついていくことは出来ません。明日、日が高い内にもう一度出直してください!」
普段は見せることがないリリアの王女としての血、聖女としての品位をまとったような風采で男は気圧され汗を一筋垂らした。
その結果、男が少しずつ本性を現すかのように淡々としていた口調に抑揚がついてくる。
「どうしても来ていただけませんかねぇ」
「嫌です。お帰りください」
男の雰囲気が変わっていくのを感じたリリアはその手に杖を握りながらそう言った。リリアはAランクハンターだが、ここ最近のトラブルに見舞われてきたことで実力は上がってきている。守りに関していえばSランクは軽く名乗れるだろう。
「はぁ……紳士的に連れ出そうとしているんですがねぇ……」
男は面倒そうに一度ため息をすると瞳にやや怒りを灯しながら言う。
「無理やりあなた様を連れていきたくないのですが、来ていただけませんか?」
「……悪いんですけど私はそう簡単に――」
「ここで暴れますか?私はそれよりもここで働いている奴を人質にしたほうが効果あると睨んでますがね。はっきり言いますが……俺はな、リリア様の大切な人を傷つけて、無理やり脅してつれて行くことも出来るんだ。それをしないと言ってるんですよ」
その言葉にリリアの心臓がドクンと跳ねた。
戦うことは出来る。でも、もし目の前の男が今言ったようにリリアではなく他の人を狙うような人間だった場合、守りきれるかは微妙なところだ。
例えば就寝しているかもしれないハンナや女将さんを狙うかもしれない。
例えばこの場から離れて街の人を襲うかもしれない。
もし、今よりも遅い時間に……そして、例えば路地で寝ている大地を狙うとしたら……。
怖い。
自分の知らないところで自分のせいで刃を向けられるのは怖い。
「わ、私を連れていってどうするつもり何ですか!?」
自然と声を荒げるが男の雰囲気は不気味なままだ。……いや、悪事を働いている悪い人間だと示すような醜い笑顔をしている。
「それは俺にはわかりません。主からの命令ですので。リリア様が素直に来ていただけるなら丁重にとのことです」
男の目がいっそう鋭くなる。聖女に杖を向けられていると言うのは拳銃を突きつけられているのと同じだ。しかし、男はあせることがない。たったあれだけの言葉でリリアが動揺をしているのがみて取れたからだ。
「大丈夫です。貴女の安全は保証されますから」
この部屋に現れてからの事を考えるとどの口が言うのか。と思わざるを得ない。しかし、それでも力づくで拐いに来てないことも確かなことだ。
「……わかりました」
少し考えてリリアは意を決して頷いた。
「ナイトガーデンへついて行きます。でも、着替えと書き置きだけでも……」
聖女の服を手に取ったところで男が急を要しているといった具合に言う。
「申し訳ありません。そのような時間はありません……」
男がリリアとの距離を数歩分縮める。そして二人の間に紙を一枚だけヒラリと落とすと大きな魔方陣が展開された。
魔方陣の光が強くなるのを見てリリアは手に持つ聖女の服をギュット抱き締め、そして男とリリアは転移痕を残して宿屋から姿を消した。
そうしてリリアはナイトガーデンへと連れてこられたのだ。今は聖女の服に身を包んでいるが何時も持っていた杖がないのは非常に不安である。そして、いまだになぜ連れてこられたのか相手から何も言われないのも少し怖いところだ。
ただ、この王城内で良くない気配が漂っている。やり方は乱暴だけれど呪いの解呪のために連れてこられたのだと思う。
「だけど、いつまでここにいれば良いのでしょうか……」
扉を開ければ侍女が待機している。物が欲しいときは彼女に言えば良く、ある程度のもは融通してくれるほどの好待遇だ。
でも、ここから出て歩き回るとなると止められてしまうだろう。もしかしたら騎士まで呼ばれてしまうかもしれない。
それに、まだここに来たばかりなのだから何かしらの準備に手間取っているのかもしれない。そう思いながらリリアは侍女が用意してくれた紅茶に口をつける。
すると扉越しから二回の音が鳴り響いた。コンコン。と鳴るドアのノック音は誰かがリリアに会いに来た合図である。
リリアは座ったまま一言「どうぞ」とドアの前にいるであろう誰かへそう伝えた。
ホワイトキングダムに負けず劣らずにぎわっている城下町をリリアはガラス窓から見下ろしながらため息を吐き出した。
そして、見下ろす事に飽きたところで部屋へと視線を移す。お城の部屋と言うのはどこもきらびやかな物だとリリアはあてがわれた部屋の内装を見ながらホワイトキングダムの自室と比較した。
ちょっとした細工の方向性は違えど柔らかいベッドに自然の風景が描かれた絵画。高い天井や歩くのがもったいない素敵なカーペット。そして質の良い赤いカーテンを開ければ城下町を見下ろせるところ。お城のいい部屋と言うのはこういうものなのだと言うように変わらない。リリアが先刻から見下ろしていたのはこの窓からである。
「ここがナイトガーデンのお城……なんですよね。せめて書き置きだけでも出来れば良かったのですが」
あのパーティーから帰った日の夜、もっと抵抗していれば良かったのだろうか……そう考えながらリリアは昨夜の事を思い出す。
今日は大変だったけど楽しかった。秘密の隠し道のような場所を通り、怪しい隠れ家に危険な魔方陣。そしてとても強いモンスターと戦った。
その戦いで私も少し強くなっているのがわかった。ダイチさんはみたいにすごい攻撃はできないけれど……。今なら海龍がでても長い時間は封じてられるかも?
それとそれと。やっぱりダイチさんにドレス姿を誉めてくれて嬉しかった……。話すだけでも不思議な感じがするのに誉められるともっともっと不思議になる。
アーデルハイドお姉ちゃんの件が解決しなかったのは心残りだけれど、きっと今日は本当に楽しくて良い日なのかもしれない。
それがお城の帰り道でリリアが夜の澄んだ空気に髪をふわりとなびかせながら抱いた感想だった。そして気分が良いまま宿に帰りつく。
ハンナや女将に上機嫌に挨拶をしてから自室へ向かった。きっと彼女もリリアの機嫌の良さから良いことがあったのだと察していたことだろう。
鼻歌交じりに寝巻きや聖女の服がかけてあるクローゼットへ移動しながらベッドへ視線を向ける。
ベッドに入って寝ればあっという間に明日だ。そうすればダイチと話して不思議な時間を味わう事が出来る。いや、どんな話をしようかとベッドの中で考えるのも楽しそうである。今日という楽しい日々を振り替えるのも良いだろう。或いは、明日は街の人と話すのも良いかもしれない。
ここ最近、もう一つ不思議なの事がある。それは前よりも色んな人と話すのが楽しいのだ。その話が英雄ダイチの話になると自分の事のように楽しい。
そんなことを考えながらリリアがクローゼットの前に立って鼻歌を止めるとクスクスと今日を思い出して嬉しさから笑みを浮かべた。
高揚感が落ち着いた頃、リリアがもう一度ベッドを見ようと振り返った時だ。視界の端に男を捉えた。
「誰!?」
音もなく現れた男は意外にも申し訳なさそうな顔を浮かべている。全く理解が追い付かないリリアはその男の様子を伺うことにした。
「夜分遅く……それもこのような形で押し入って申し訳ありません」
話し方は礼儀正しい。男の様相は特にこれと言った特徴もなく、武器を所持しているようなこともない。それどころか背筋はピンと伸びていて怪しさはない。だが相手の立ち位置は扉の近くである。
「……ご用件はなんですか?」
見た目で怪しくないのと悪意がないのとは別問題なのである。だから、リリアは慎重にそう聞いた。
「聖女リリア様に来ていただきたいのです。我が国……ナイトガーデンへ」
返ってきた言葉は淡々としたものだった。いまだに変な動きを見せる事がないのはかえって不気味だ。
「……お断りさせていただきます。こんな夜更けに部屋に押し入り、確りとした用事を話せない貴方を信頼してついていくことは出来ません。明日、日が高い内にもう一度出直してください!」
普段は見せることがないリリアの王女としての血、聖女としての品位をまとったような風采で男は気圧され汗を一筋垂らした。
その結果、男が少しずつ本性を現すかのように淡々としていた口調に抑揚がついてくる。
「どうしても来ていただけませんかねぇ」
「嫌です。お帰りください」
男の雰囲気が変わっていくのを感じたリリアはその手に杖を握りながらそう言った。リリアはAランクハンターだが、ここ最近のトラブルに見舞われてきたことで実力は上がってきている。守りに関していえばSランクは軽く名乗れるだろう。
「はぁ……紳士的に連れ出そうとしているんですがねぇ……」
男は面倒そうに一度ため息をすると瞳にやや怒りを灯しながら言う。
「無理やりあなた様を連れていきたくないのですが、来ていただけませんか?」
「……悪いんですけど私はそう簡単に――」
「ここで暴れますか?私はそれよりもここで働いている奴を人質にしたほうが効果あると睨んでますがね。はっきり言いますが……俺はな、リリア様の大切な人を傷つけて、無理やり脅してつれて行くことも出来るんだ。それをしないと言ってるんですよ」
その言葉にリリアの心臓がドクンと跳ねた。
戦うことは出来る。でも、もし目の前の男が今言ったようにリリアではなく他の人を狙うような人間だった場合、守りきれるかは微妙なところだ。
例えば就寝しているかもしれないハンナや女将さんを狙うかもしれない。
例えばこの場から離れて街の人を襲うかもしれない。
もし、今よりも遅い時間に……そして、例えば路地で寝ている大地を狙うとしたら……。
怖い。
自分の知らないところで自分のせいで刃を向けられるのは怖い。
「わ、私を連れていってどうするつもり何ですか!?」
自然と声を荒げるが男の雰囲気は不気味なままだ。……いや、悪事を働いている悪い人間だと示すような醜い笑顔をしている。
「それは俺にはわかりません。主からの命令ですので。リリア様が素直に来ていただけるなら丁重にとのことです」
男の目がいっそう鋭くなる。聖女に杖を向けられていると言うのは拳銃を突きつけられているのと同じだ。しかし、男はあせることがない。たったあれだけの言葉でリリアが動揺をしているのがみて取れたからだ。
「大丈夫です。貴女の安全は保証されますから」
この部屋に現れてからの事を考えるとどの口が言うのか。と思わざるを得ない。しかし、それでも力づくで拐いに来てないことも確かなことだ。
「……わかりました」
少し考えてリリアは意を決して頷いた。
「ナイトガーデンへついて行きます。でも、着替えと書き置きだけでも……」
聖女の服を手に取ったところで男が急を要しているといった具合に言う。
「申し訳ありません。そのような時間はありません……」
男がリリアとの距離を数歩分縮める。そして二人の間に紙を一枚だけヒラリと落とすと大きな魔方陣が展開された。
魔方陣の光が強くなるのを見てリリアは手に持つ聖女の服をギュット抱き締め、そして男とリリアは転移痕を残して宿屋から姿を消した。
そうしてリリアはナイトガーデンへと連れてこられたのだ。今は聖女の服に身を包んでいるが何時も持っていた杖がないのは非常に不安である。そして、いまだになぜ連れてこられたのか相手から何も言われないのも少し怖いところだ。
ただ、この王城内で良くない気配が漂っている。やり方は乱暴だけれど呪いの解呪のために連れてこられたのだと思う。
「だけど、いつまでここにいれば良いのでしょうか……」
扉を開ければ侍女が待機している。物が欲しいときは彼女に言えば良く、ある程度のもは融通してくれるほどの好待遇だ。
でも、ここから出て歩き回るとなると止められてしまうだろう。もしかしたら騎士まで呼ばれてしまうかもしれない。
それに、まだここに来たばかりなのだから何かしらの準備に手間取っているのかもしれない。そう思いながらリリアは侍女が用意してくれた紅茶に口をつける。
すると扉越しから二回の音が鳴り響いた。コンコン。と鳴るドアのノック音は誰かがリリアに会いに来た合図である。
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