初めての異世界転生

藤井 サトル

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迷って腐って浄化して

囮作戦は実力も必要

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 カイ達はBランクへの昇格依頼で調査を行うために南の森へと足を運んだ。

 その調査対象は動く死体。それも元人間のだ。リビングデッド自体は非常に珍しいと言うわけではない。特に洞窟などの場所では見かけるし、普通の人、動物、モンスター等が成るモンスター化である。

 生物が死にその体内に魔力が集まるとリビングデッドへと変貌してしまう。とはいえ、確りと埋葬するか、その生物の原型を保っていないとリビングデッド化することはない。

 南の森で人が死んだ場合ではどうなるかというと、基本的に他のモンスターが食べてしまい原型はほぼ残らないのだ。

 しかし、今、その南の森で人間のリビングデットに会うハンター達が多いということだった。

 その調査中、カイ達はホワイトキングダムへ向かっている旅人と出会った……というより、大量のモンスターに襲われていたところを発見した。

 助けることに決めたカイ達だが、この時、カイは一人で大量のモンスターを引き付ける役目を選び森の奥深くへとモンスターの大群を引き連れていった。マリンとオーガスはその際に旅人をホワイトキングダムへと送ったのだ。そしてすぐに南の森に入るがカイのいる場所がわからず、オーガスはそのままカイの捜索、マリンは一度ギルドへ報告、捜索の要請をしに来たと言うことだ。

「それじゃあ私はもう南の森に行くから。ユーナさん、出来る限りで良いのでお願いします」

 そう言ってマリンは走っていく。

「と、言うわけなんです」

 改めてユーナは大地へ向き直って困った顔をする。

「それは大変そうですね」

「はい、大変なんです」

 じっと見続けてくるユーナを大地は視線をそらして行きたくないアピールだ。

「ダイチさん。大変なんです」

 そんな大地へ訴え駆けるように同じ言葉を二度言った。

「……いや、ま、他にハンターもいるはずですよね?」

 だが、幽霊は勘弁である。ついこの間、人が骨になった姿を見たんだ。これ以上精神を削られてたまるか。

「いえ、今は誰も。ダイチさん行ってほしいんですけど……あ!ほ、報酬をギルドから出しますよ!」

 これは名案と言うように明るく言うが、『金が貰える』と『幽霊と出会いたくない』を天秤に掛けたら幽霊とで会いたくない方へ軍配ぐんばいが上がる。

「いや……しかし……」

「カイさんをこのまま見捨てるわけにはいかないんです」

 そんなこと言われようと幽霊が出るんでしょう?地面に足がついてなくてフワフワ浮いているアイツ(勝手なイメージ)。暗いところでもハッキリ姿が視認できるのに透けているアイツ(ありそうな演出の妄想)。消えたと思ったら真後ろに瞬間移動するアイツ(テレビで見た確信)。

「そ、それなら……私が出来ることなら何でもしますから……」

 えぇ……なんでカイをそこまで特別視するのか……。

「うわ。困っている女性へそんな頼み事するなんてダイチさん最低ですね」

「俺はまだ何も言ってねぇだろ!何も頼まねぇよ!」

 それに大地さん。不倫はよくないと思います!

 だから何も言ってないだろ……。

 二度、フルネールへ否定してから大地はため息を一つ吐き出した。それは疲れによるものではなく覚悟を決め、怯えを払い隠すためのだ。 

「ユーナさんもそう言い方しないでくれ。フルネールが便乗してくるから……」

「は、はい……すみません」

 しゅんとした表情で気を落としてるユーナへ大地は聞いた。

「取り敢えず南の森って広いよな。どこをどう探せばいいんだ?」

「え?行ってくれるんですか?」

「ま、アイツには人探しで世話になったからな」

 大地さん。そう言ってますけどユーナさんが引き下がってたら行かなかったですよね?

 うっ!?

 そんなに幽霊が怖いんですか?

 まて!?何故それを知っているんだ!?砂漠の下の王国で幽霊見たときも言動全て気を付けたはずだぞ!?

 私……神様ですから。

 ふぐぅ……人は……。人は未知の物を怖がるように出来ているんだ。だから俺は情けなくなんかないぞ!

 誰も情けないなんて言っていませんよ?……まったく。

「カイさん達は南の森の深い場所に行っているのだと思います。入り口から入って看板を便りに進んでくれれば近くにつくと思います」

「わかった。一先ずそこに行ってみる」

 ああ。幽霊が出る森に自分から入っていく事になるなんて……。これはホラーゲームじゃないんだぞ。

 心の中でぼやきながら大地がくるりと回って南の森へ歩きだす。

「それじゃあ行きましょうか」

「そうね」

 当然のようについてきてくれるフルネールとレヴィアを頼もしく思いながら三人は南の森へと足を運び始めた。
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