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月光の花嫁
隣の芝は青い。それがどんな物であれ
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その日は大宴会となった。
不思議な事にモリスの告白から即座に披露宴である。と言ってもプラムはこうする事を考えていたのか全ての準備は始まる前から終わっていた。それ故に二人が着る衣装は寸分の狂いすらなく仕立て上げられていて、その披露宴から出てくる料理なんて数日前から用意する必要がある物も出てくる。
あれ、ここって何日かブラックボックス達に占領されていたんだよな?いつこんな料理を用意していたんだ?
等と疑問に思いながら大地は出される料理に舌鼓を打つ。その隣ではリリアが花嫁姿の嬉しそうなシーラを遠目ながらキラキラした瞳で見ている。やはり聖女の前にリリアも立派な女の子ということなのだろう。こういう結婚式に憧れがあってもおかしい話ではない。
「あ、ダイチさんここにいらしたんですね」
大地とリリアの間からひょこっと顔を出してきたのはツインテールの女の子であるルーナだ。
「ルーナちゃんか」
「呼び捨てでいいですよ」
そう言ってからルーナは少しだけ二人から離れると改めるように座りなおした。
「ダイチ様。リリア様。私とお姉ちゃんを助けて下さりありがとうございました」
ルーナはそう緊張したような……言うなれば硬い口調で三つ指ついて綺麗にお辞儀をする。その事に大地もリリアも慌てて顔を上げるように即した。
「でも、もしあなた達が来なかったら月の都もどうなっていたか。それなのにお父様たちは大地様やリリア様にあんなことを」
「アレは住民を納得させる為の必要な事だってわかっているからいいんだ。それよりせっかくの祝いの席なんだからさ、そう言うのは止めにしようぜ」
そう言われてルーナが少しだけ顔を上げると、今度はリリアが続いた。
「そうですよ。それよりせっかくですからお話しましょう?」
「……はい!」
そうした事でようやく声質を戻したルーナにホッとする。
「あの!ダイチさんは何で精霊の姿が見えるんですか?」
どうやらとても気になっていたらしくルーナが意気込みながら聞いてくる。が、その答えは大地自身も持ち合わせていない。
「さぁ?でもそこのウンディーネとかサラマンダーとかは見えるんだよな」
大地が指をさしながら言うとウンディーネと目が合い、それが気になったウンディーネが大地達に近づいてくる。
『私を見ていたようですけど、どうしました?』
「俺が何で精霊の姿を視認出来るかって話だ」
大地がやってきたウンディーネにざっくり言った途端、隣のリリアが食いついてきた。
「ダイチさん!そこに精霊様がいるんですか!?」
「お、おう。いるけど……」
「いいなあ。なんて言っているのか私もお声が聞ければいいのに……」
だいぶ羨ましそうに言うリリアにルーナが身を乗り出して言った。
「あ、それなら私がリリアさんに精霊が言っている言葉を伝えるね!」
その思ってもいなかった言葉にリリアは「ありがとうございます!」と伝える。疑似的でも精霊の言っている事が分かると言う体験は嬉しいようだ。
『えっと、貴方が私達を見える事についてですか……』
「ああ。まさか俺にも精霊使いの力があったりするのか?」
『名前はダイチでしたね。残念ですが貴方は精霊の力を使う事は出来ません』
「ダメ……なのか?」
精霊が見えるという事で少しだけ希望を持っていただけにウンディーネの言葉で残念そうにちょっとだけ落ち込んだ。
『はい。そもそも精霊使いの力と言うのはその人の性質によります。詳しく言うと魔力との親和性ですね』
「魔力との親和性?」
『はい。人は体内に魔力をいれる器……血管の様なものがあります。外部から魔力を体内に取り入れると器に収まりその中で魔力が巡回します。これは人の体と魔力が相いれない存在だから器に入ってしまうからなんです。体の中で道を作る事で魔力を保持することが出来る。ただし、ここで魔力が空になってしまうと巡回させる機構に不具合が生じてしまい……』
「ああ、魔力を使い切ると倒れたりするって聞くのはそういう事か」
『はい。しかし、精霊使いは違います。体と魔力の親和性が高い為、魔力が器にはいらず体に馴染みます。その結果、全身で精霊の気配をたどる事が出来て視認する事が出来る。という事なんです。また、魔力は巡回すると質が少し変わってしまいます。その少しの変化によって私達が魔力を受け取れなくなってしまうんです』
「なるほど。だいぶ体の造りが違うんだな。だけどそれならやっぱりなんで俺が見えるんだ?」
大地自身も普通の人と造りが違うのは確かだ。だけど、前にアーデルハイドが俺の体の中の魔力を調べた時に魔力に流れがあると言う話が出ている以上、魔力が巡回しているのは明白なはずだ。
『ここで重要なのは体に魔力が馴染むかどうか。というお話です。そしてダイチはそれをとある方法で満たしたということです』
「とある方法?」
『付け加えて言うなら……ダイチも隅に置けない人ということです』
ウンディーネがそう言い切るとクスクス笑いだした。
「え、ええ?どういう事だよ」
『ダイチには加護が付いているんですよ。妖精の加護です。本来、妖精から加護を受けられる人何て何百年に一人いるかどうかです。妖精からキスを受けたでしょう?』
妖精?……というとミルか。キス?って……。
「あの時か……」
猫猫亭でバイトをした時に確かにミルが頬にキスをしたのを覚えている。
『思い当たる節……あったみたいですね。妖精は心を込めての愛情表現でキスをします。それが加護となり表面的にですが体と魔力を馴染ませる効果も含まれます』
「いやでも、割かし軽めにされた感じだぞ?」
『それが妖精なんですよ。さてそろそろシーラがどうしているか気になりますからそっちに行きますね』
情報を出すだけ出してウンディーネは去っていってしまうが、どちらかと言うと羨ましそうに見てくるリリアから逃げたともいえる。と言うかルーナもウンディーネが去るタイミングで「わ、私も他の人のところに行かないとなのー」と子供っぽく逃げて行っている。
残された大地は隣からくるリリアの『羨ましい目線』攻撃を受けながら何とか宥めるのだった。
不思議な事にモリスの告白から即座に披露宴である。と言ってもプラムはこうする事を考えていたのか全ての準備は始まる前から終わっていた。それ故に二人が着る衣装は寸分の狂いすらなく仕立て上げられていて、その披露宴から出てくる料理なんて数日前から用意する必要がある物も出てくる。
あれ、ここって何日かブラックボックス達に占領されていたんだよな?いつこんな料理を用意していたんだ?
等と疑問に思いながら大地は出される料理に舌鼓を打つ。その隣ではリリアが花嫁姿の嬉しそうなシーラを遠目ながらキラキラした瞳で見ている。やはり聖女の前にリリアも立派な女の子ということなのだろう。こういう結婚式に憧れがあってもおかしい話ではない。
「あ、ダイチさんここにいらしたんですね」
大地とリリアの間からひょこっと顔を出してきたのはツインテールの女の子であるルーナだ。
「ルーナちゃんか」
「呼び捨てでいいですよ」
そう言ってからルーナは少しだけ二人から離れると改めるように座りなおした。
「ダイチ様。リリア様。私とお姉ちゃんを助けて下さりありがとうございました」
ルーナはそう緊張したような……言うなれば硬い口調で三つ指ついて綺麗にお辞儀をする。その事に大地もリリアも慌てて顔を上げるように即した。
「でも、もしあなた達が来なかったら月の都もどうなっていたか。それなのにお父様たちは大地様やリリア様にあんなことを」
「アレは住民を納得させる為の必要な事だってわかっているからいいんだ。それよりせっかくの祝いの席なんだからさ、そう言うのは止めにしようぜ」
そう言われてルーナが少しだけ顔を上げると、今度はリリアが続いた。
「そうですよ。それよりせっかくですからお話しましょう?」
「……はい!」
そうした事でようやく声質を戻したルーナにホッとする。
「あの!ダイチさんは何で精霊の姿が見えるんですか?」
どうやらとても気になっていたらしくルーナが意気込みながら聞いてくる。が、その答えは大地自身も持ち合わせていない。
「さぁ?でもそこのウンディーネとかサラマンダーとかは見えるんだよな」
大地が指をさしながら言うとウンディーネと目が合い、それが気になったウンディーネが大地達に近づいてくる。
『私を見ていたようですけど、どうしました?』
「俺が何で精霊の姿を視認出来るかって話だ」
大地がやってきたウンディーネにざっくり言った途端、隣のリリアが食いついてきた。
「ダイチさん!そこに精霊様がいるんですか!?」
「お、おう。いるけど……」
「いいなあ。なんて言っているのか私もお声が聞ければいいのに……」
だいぶ羨ましそうに言うリリアにルーナが身を乗り出して言った。
「あ、それなら私がリリアさんに精霊が言っている言葉を伝えるね!」
その思ってもいなかった言葉にリリアは「ありがとうございます!」と伝える。疑似的でも精霊の言っている事が分かると言う体験は嬉しいようだ。
『えっと、貴方が私達を見える事についてですか……』
「ああ。まさか俺にも精霊使いの力があったりするのか?」
『名前はダイチでしたね。残念ですが貴方は精霊の力を使う事は出来ません』
「ダメ……なのか?」
精霊が見えるという事で少しだけ希望を持っていただけにウンディーネの言葉で残念そうにちょっとだけ落ち込んだ。
『はい。そもそも精霊使いの力と言うのはその人の性質によります。詳しく言うと魔力との親和性ですね』
「魔力との親和性?」
『はい。人は体内に魔力をいれる器……血管の様なものがあります。外部から魔力を体内に取り入れると器に収まりその中で魔力が巡回します。これは人の体と魔力が相いれない存在だから器に入ってしまうからなんです。体の中で道を作る事で魔力を保持することが出来る。ただし、ここで魔力が空になってしまうと巡回させる機構に不具合が生じてしまい……』
「ああ、魔力を使い切ると倒れたりするって聞くのはそういう事か」
『はい。しかし、精霊使いは違います。体と魔力の親和性が高い為、魔力が器にはいらず体に馴染みます。その結果、全身で精霊の気配をたどる事が出来て視認する事が出来る。という事なんです。また、魔力は巡回すると質が少し変わってしまいます。その少しの変化によって私達が魔力を受け取れなくなってしまうんです』
「なるほど。だいぶ体の造りが違うんだな。だけどそれならやっぱりなんで俺が見えるんだ?」
大地自身も普通の人と造りが違うのは確かだ。だけど、前にアーデルハイドが俺の体の中の魔力を調べた時に魔力に流れがあると言う話が出ている以上、魔力が巡回しているのは明白なはずだ。
『ここで重要なのは体に魔力が馴染むかどうか。というお話です。そしてダイチはそれをとある方法で満たしたということです』
「とある方法?」
『付け加えて言うなら……ダイチも隅に置けない人ということです』
ウンディーネがそう言い切るとクスクス笑いだした。
「え、ええ?どういう事だよ」
『ダイチには加護が付いているんですよ。妖精の加護です。本来、妖精から加護を受けられる人何て何百年に一人いるかどうかです。妖精からキスを受けたでしょう?』
妖精?……というとミルか。キス?って……。
「あの時か……」
猫猫亭でバイトをした時に確かにミルが頬にキスをしたのを覚えている。
『思い当たる節……あったみたいですね。妖精は心を込めての愛情表現でキスをします。それが加護となり表面的にですが体と魔力を馴染ませる効果も含まれます』
「いやでも、割かし軽めにされた感じだぞ?」
『それが妖精なんですよ。さてそろそろシーラがどうしているか気になりますからそっちに行きますね』
情報を出すだけ出してウンディーネは去っていってしまうが、どちらかと言うと羨ましそうに見てくるリリアから逃げたともいえる。と言うかルーナもウンディーネが去るタイミングで「わ、私も他の人のところに行かないとなのー」と子供っぽく逃げて行っている。
残された大地は隣からくるリリアの『羨ましい目線』攻撃を受けながら何とか宥めるのだった。
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