初めての異世界転生

藤井 サトル

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月光の花嫁

巨大なモンスターを倒す最高の武器

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「あいよ」

 その声が耳の近くで聞こえた時には自分の体が落ちていない事にリリアは気が付いた。それは大地がしっかりと抱き上げてくれているということも分かったうえでだ。

 リリアは大地の顔以外にも気になる物が目に映った。それが綺麗で不思議で……どうしても口に出る。

「ダイチさん。それ……マーガレットさんの羽ですか?」

 リリアの声に反応させたように大地は背中から生やた光る翼を一度羽ばたかせて急上昇する。

「ああ。俺の能力で召喚したんだ」

 正確にはマーガレットのブリューナクと言う武器だ。コレを背中に召喚し、それの中に光の翼を能力として追加しただけではある。

「ダイチさん。何か天使様のように見えます」

 無邪気に嬉しそうにそういうが、これで20台イケメンならそれでもよかった。だが現実はそういかないのが辛いところだ。

「おっさんの天使って嫌じゃないか?」

「いえ……とても素敵ですよ」

 きっと大地が何を言ったところで価値観の違いにしかならないのだろう。だからこそ、真っすぐくる賛辞に少し顔を赤くしながら話題を変える。

「リリア。俺はそろそろアイツを倒すけど……今までちゃんと見せたことない武器を披露しようか」

「私がちゃんと見たことが無い……?」

 一度も無いなら分かる。だけど『ちゃんと見たことが無い』というのは何だろうか?その言葉の裏を返せば『ちゃんとじゃなければ見たことがある』と暗に言っているようだ。それが何の事だかわからないけれど……せっかくなのだ見せてもらってもいいかもしれない。

「……はい。お願いします」

 リリアの返事を聞いた大地は視線をデルラトへと向ける。奴自信もこちらへ目を向けているが飛んでいる俺が気になるのか様子をうかがっているようだ。その行動がとても愚かだと知らないで。

「サテライトバスター起動!」

 特に口に出す必要はない。必要は無いがギャラリーリリアが見ているのならそれっぽく示したほうがカッコいいと言うもの。特にこの武器は大地が使える武器の中で最大級の威力を叩きだす事が出来るし、見た目も最大級と言っても過言ではないかもしれないからだ。カッコよさは全てに勝る。

 それを肯定するようにリリアがワクワクした目でデルラトへと目を向けている。もうこうなるとSランクモンスターと対峙していると言うよりはヒーローショウの見世物か何かだろう。

 エネルギーの充電量が充分な領域へと達した。これも特に口にする必要は無いがやはり言うしかないだろう。

「サテライトバスター……発射!!」

 その大地の声と共に一筋の光がデルラトへと降り注いだ。高密度に圧縮された―エネルギー体によるレーザービーム。それがサテライトバスターの攻撃だ。大地が本気になればビームの幅はホワイトキングダムを丸々飲み込ませるくらいは広げられる。……もっともここでそんなに広げれば悲しみが増えるだけなのでデルラトの3分の2を削り取る幅で放った。


 ルーナは元々自分は特別な存在なのだとおもっていた。それも当然で姉に次いで自分も精霊と仲良くできる力があるのだ。そして、その力はこの世界に自分と姉、二人しか持っていない事からその自負が生まれていた。にもかかわらずだ、今日あった男、ダイチと名乗った男の方がよっぽど特別な存在で……英雄的な存在。が、それ以上に神の使い……なのではないかと思い始めた。

 凶悪なモンスターに苦しんでいた自分と姉を救いに来た神の使い。その証拠に光る羽を生やし、遥か天空から神の裁きともいえるような光を落としたのだ。どう考えても人が出来る範囲をはるかに陵駕している。何より……優しかったのだ。亜人の自分に。だからあの光でデルラトを綺麗さっぱり消した力は神フルネールに近い存在と考えるしかない。


「すごい……」

 サテライトバスターを撃つとリリアはそう感嘆の声を漏らした。リリアがその光に見惚れているのを他所に大地は眉をひそめた。

 サテライトバスターの光が止んだ頃にはデルラトの痕跡が何も残らないぐらい消えていたのだ。だが、それはおかしく大地は困惑しながら地面へと降り立ち、リリアを優しく下ろしてブリューナクを消す。

「一体どうなってやがる……」

「なるほど。あんな隠し玉を持っていたのか。恐ろしい奴だな」

 物陰からジークが出てくるとそう言った。その手には綺麗なガラス玉を収めているのを見た大地はソレに心当たりがあった。

「ジーク……デルラトで倒せなかったからモンスターを召喚して襲う気か?」

 そう聞くのだがジークは見当違いだと言わんばかりに笑い始めた。

「なるほどなるほど。コイツで召喚するのを見た事がある。という事か。そうしてやりたいが、この中にはデルラトが入っているんでね。いやぁ危なかったぜ。プランBに変えるのが遅かったら回収が出来なかっただろうな」

「……その玉にデルラトを封じ込めた……!?」

 咄嗟に大地はハンドガンを召喚してジークを狙い撃つが、そのジークは軽く避ける動作をした。それがきっかけか分からないが、少なくともジークに弾丸が当たる事は無かった。

「能力は簡単に見せる物じゃないな。それをもう一度当てようだなんて甘いんじゃないか?」

 あっさり避けられたことに苦い顔をする大地へジークは続けて言う。

「さて、いい顔も見れたしこのまま退散するか。コイツが割れてしまえば意味も無いからな」

 そう言ってジークは闇に溶けるように消えていった。それが不穏な事であるのは明白だが……少なくとも今はシーラ達3人が無事に生存した事を喜ぶべきだろう。

 大地は振り返りながらリリアと共にシーラ達へと近づくのだった。
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