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月光の花嫁
魔法の絨毯の使い方
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今見ている光景は夢の一種なのだろうか?
シーラは今の光景をぼんやりとみるしか出来なかった。しかしそれは、近くにいるルーナもモリスも似たような観測を抱いている。何せ、伝説上のモンスターの一つとされるデルラトが目の前にいるのだ。一度暴れ出せば国を簡単に滅ぼす事が出来るモンスター。
そんなモンスター相手に一歩も引かず、それどころか常人では計り知れない戦いを繰り広げる。まさに御伽噺に出てくる英雄が戦っているような光景が繰り広げられているのだ。だからこそどこか現実味がない。それがたとえ光の壁で守られてその内側から包まれた炎を見ようとどこか遠いお話を見ているような感覚に陥ってくる。
リリアは今から大地が何をするのか不思議そうに見る事しか出来なかった。普段の大地の武器の形状を見る限り対象者に先端部分を向ける物が多い事を知っている。だが大地が出したのは宙に浮く布だ。アレをリリアは一度見たことがある。ただその時の活用方法は大地が上に乗っていたという事。つまりアレは乗り物のはずなのだ。
「でも……なんであんなに大量に……?」
そのリリアの目に映るのは数えきれないほどの膨大な数の魔法の絨毯だ。
大地が召喚した魔法の絨毯。それはファンタジーでの乗り物として一度は聞いたことがあるだろう。それを大地は武器をつける事で召喚する事が出来る。もっともこの兵器もレヴィアこと――リヴァイアサンとの戦いで使用したものではあるのだが、その時は兵器としての攻撃力は一切使わなかった。しかし今回はその兵器として使用する為に呼び出したのだ。何せ、この魔法の絨毯に取り付けている武器は爆弾である。
「コレが俺の新必殺技!その名も魔法の絨毯による絨毯爆撃!!」
大地の声に呼応して魔法の絨毯が動きだす。それも一つずつ動くのではなく、何万と空中にそろえられている魔法の絨毯が我先にと神風特攻を繰り出していく。デルラトの体が爆破の炎に包まれて尚、魔法の絨毯は止まらずに突撃を繰り返す。
普通のモンスターであったなら即座に塵になっていてもおかしくはない。いや、それどころか低レベルのSランクモンスターでも耐えられるはずはない。だからこそ今も爆撃の中で立っているデルラトの耐久力はとてもじゃないが末恐ろしい物がある。
もうどれくらい撃ち込んだのかわからない。だが、召喚した魔法の絨毯が打ち止めになった事で大地は様子をみる形で煙が晴れるのを待つ。夜風に攫われるように爆煙が徐々に流れていく。少しずつ見通しが良くなる事でデルラトの体が現れてくるが……その怒りに満ちた瞳から倒せていない事は直ぐに理解出来た。
そして、煙が完全に晴れると同時にもう一つだけ理解出来た事がある。デルラトの体勢が両手を別々に上げているのだ。そのまま両手を振り下ろしてくるのかとも即座に考えたがデルラトの向いている方向からやる事が一瞬でわかった。奴の狙いは……大地達が立っている月光の塔そのものだ。
大地は直ぐに振り向くように全員の位置を把握する。シーラとルーナとモリスは集まってくれているのは助かるが……シルフが自分の近くにいる。こういう時にコイツがここにいるのは非常にマズイだろう。
「シルフ!お前はシーラのところに急いで行け!」
『え?……うん!』
大地の命令に異を唱えようとも思ったシルフだがその大地の表情から何かを感じとったのか、頷いてから直ぐに動いてくれた。これからの事を考えれば確実に彼女たちの近くに居たほうがいい。あとはリリアもシーラ達の近くへ……。
「ダイチさん。私もお手伝いします!」
しかし、そのリリアは既に大地の近くへとやってきていた。ソレに驚くと共にデルラトから動く気配を感じた大地は視線をリリアからすぐにデルラトへと移した。デルラトはその両手を動かす。それはただ振り下ろすのではなく、月光の塔を真横から叩く様に動かした。
「――リリア!!」
月光の塔が崩れる。シーラ達はルーナによって魔力を得たシルフが風の魔法で安全に着地を行うための竜巻を出している。大地なら最悪落下したところで生きていられる。だが、リリアは地面に激突した瞬間死ぬ。しかも空を飛ぶ魔法なんてものは無い。現状を打開するすべも無い。積みである。
大地が伸ばす手もリリアは掴めなかった。どんどん離れていく自分の体、それを見続ける事しか出来ないリリアはこの数秒後どうなるか想像に難くなかった。
どうにもならない状況。それを悟ったアは目を閉じ、心の中で家族に謝って、その次の運命を受け入れる。
もし、今までのリリアであったならそうしていただろう。でも今はもう……そんな事到底できはしない。
だって……いつか死ぬのだとしても今はまだ死にたくないのだ。だから、リリアは力いっぱいの声で叫んだ。
「ダイチさん!助けて!!!!!」
シーラは今の光景をぼんやりとみるしか出来なかった。しかしそれは、近くにいるルーナもモリスも似たような観測を抱いている。何せ、伝説上のモンスターの一つとされるデルラトが目の前にいるのだ。一度暴れ出せば国を簡単に滅ぼす事が出来るモンスター。
そんなモンスター相手に一歩も引かず、それどころか常人では計り知れない戦いを繰り広げる。まさに御伽噺に出てくる英雄が戦っているような光景が繰り広げられているのだ。だからこそどこか現実味がない。それがたとえ光の壁で守られてその内側から包まれた炎を見ようとどこか遠いお話を見ているような感覚に陥ってくる。
リリアは今から大地が何をするのか不思議そうに見る事しか出来なかった。普段の大地の武器の形状を見る限り対象者に先端部分を向ける物が多い事を知っている。だが大地が出したのは宙に浮く布だ。アレをリリアは一度見たことがある。ただその時の活用方法は大地が上に乗っていたという事。つまりアレは乗り物のはずなのだ。
「でも……なんであんなに大量に……?」
そのリリアの目に映るのは数えきれないほどの膨大な数の魔法の絨毯だ。
大地が召喚した魔法の絨毯。それはファンタジーでの乗り物として一度は聞いたことがあるだろう。それを大地は武器をつける事で召喚する事が出来る。もっともこの兵器もレヴィアこと――リヴァイアサンとの戦いで使用したものではあるのだが、その時は兵器としての攻撃力は一切使わなかった。しかし今回はその兵器として使用する為に呼び出したのだ。何せ、この魔法の絨毯に取り付けている武器は爆弾である。
「コレが俺の新必殺技!その名も魔法の絨毯による絨毯爆撃!!」
大地の声に呼応して魔法の絨毯が動きだす。それも一つずつ動くのではなく、何万と空中にそろえられている魔法の絨毯が我先にと神風特攻を繰り出していく。デルラトの体が爆破の炎に包まれて尚、魔法の絨毯は止まらずに突撃を繰り返す。
普通のモンスターであったなら即座に塵になっていてもおかしくはない。いや、それどころか低レベルのSランクモンスターでも耐えられるはずはない。だからこそ今も爆撃の中で立っているデルラトの耐久力はとてもじゃないが末恐ろしい物がある。
もうどれくらい撃ち込んだのかわからない。だが、召喚した魔法の絨毯が打ち止めになった事で大地は様子をみる形で煙が晴れるのを待つ。夜風に攫われるように爆煙が徐々に流れていく。少しずつ見通しが良くなる事でデルラトの体が現れてくるが……その怒りに満ちた瞳から倒せていない事は直ぐに理解出来た。
そして、煙が完全に晴れると同時にもう一つだけ理解出来た事がある。デルラトの体勢が両手を別々に上げているのだ。そのまま両手を振り下ろしてくるのかとも即座に考えたがデルラトの向いている方向からやる事が一瞬でわかった。奴の狙いは……大地達が立っている月光の塔そのものだ。
大地は直ぐに振り向くように全員の位置を把握する。シーラとルーナとモリスは集まってくれているのは助かるが……シルフが自分の近くにいる。こういう時にコイツがここにいるのは非常にマズイだろう。
「シルフ!お前はシーラのところに急いで行け!」
『え?……うん!』
大地の命令に異を唱えようとも思ったシルフだがその大地の表情から何かを感じとったのか、頷いてから直ぐに動いてくれた。これからの事を考えれば確実に彼女たちの近くに居たほうがいい。あとはリリアもシーラ達の近くへ……。
「ダイチさん。私もお手伝いします!」
しかし、そのリリアは既に大地の近くへとやってきていた。ソレに驚くと共にデルラトから動く気配を感じた大地は視線をリリアからすぐにデルラトへと移した。デルラトはその両手を動かす。それはただ振り下ろすのではなく、月光の塔を真横から叩く様に動かした。
「――リリア!!」
月光の塔が崩れる。シーラ達はルーナによって魔力を得たシルフが風の魔法で安全に着地を行うための竜巻を出している。大地なら最悪落下したところで生きていられる。だが、リリアは地面に激突した瞬間死ぬ。しかも空を飛ぶ魔法なんてものは無い。現状を打開するすべも無い。積みである。
大地が伸ばす手もリリアは掴めなかった。どんどん離れていく自分の体、それを見続ける事しか出来ないリリアはこの数秒後どうなるか想像に難くなかった。
どうにもならない状況。それを悟ったアは目を閉じ、心の中で家族に謝って、その次の運命を受け入れる。
もし、今までのリリアであったならそうしていただろう。でも今はもう……そんな事到底できはしない。
だって……いつか死ぬのだとしても今はまだ死にたくないのだ。だから、リリアは力いっぱいの声で叫んだ。
「ダイチさん!助けて!!!!!」
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