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月光の花嫁
必殺技、奥義、切り札。響がいいよね
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大地とジークが戦い始めた頃、モリスとマルクスの戦いも始まっていた。
モリスからしたら一度破れた相手で実力も上である。だが、それは勝てない相手と言うわけではない。それは何故か?一つは相手の動きがある程度わかっていること。もう一つはモリスが切り札を見せていないことだ。
切り札というのは強敵と退治する場合、非常に高い効果を発揮することがままある。劣勢、不利、絶望。それらを一手で覆すことが可能なのだ。
もちろんそれを当てるのは難しい。見切られたり警戒されたりしまえば当てるのは至難を極める。
だが、モリスは幸運だ。マルクスは一度勝っている相手だからこそ油断しているのがありありとわかる事に加え、モリスは相手の攻撃の癖を知りながら五体満足で戦えるのだから。
「そらそらそらそら!どうした?受けてばかりじゃ俺は倒せないぜ?」
マルクスは連続で掌打を繰り出していく。そして、上段攻撃に慣れた頃合いを見計らい瞬時にしゃがんでモリスに足払いを放った。
「ほら、足元が疎かになってないか?」
だが、どの攻撃もモリスは紙一重で避け、最後の足払いを飛んで避けきった。
「甘ぇよ!」
だが、マルクスは自らが繰り出した足払いによりモリスへと背中を向けた瞬間、宙返りをするように飛び、体を捻ってかかと落としを叩き込んだ。
「ぐっ……」
それでもモリスは腕をクロスさせて耐えきるとその体勢を利用できると好機と踏んで二つの腕に乗っかっているマルクスの足を押し返しバランスを崩させた。そして直ぐに小刀を振るう。
だが、マルクスはその押された反動を利用し、後方へとバク転をする要領で真横に振られた小刀を避けた。
「あぶねぇあぶねぇ。さっきよりは楽しまさせてくれるじゃないか」
マルクスが飛び出すと空中で回転蹴りを入れる。それが一度で終わらず三回ほどの蹴りとなった。一発目をモリスは腕で防ぐが、二発目で腕のガードを外され、三発目の蹴りが直撃する。
「ぐっ……」
それによって怯んだモリスへマルクスは畳み掛ける。回転蹴りの着地後、直ぐに掌打を腹に、裏拳を頬に、縦回転の蹴り上げを顎に入れる。そして、宙に浮いたモリスへ飛んで地面へ叩き込むように腹を蹴りつけた。
「がはっ」
血を吐き出され意識が飛びかける。だが、今は気を失うわけにはいかないとモリスは食い縛りながら気を保つ。何せ罠を張ったちょうどいい場所へマルクスが降り立ってくれたのだから……。
「闇縛り!」
マルクスが着地したタイミングでその足元から黒い手を召喚した。その手がマルクスへ絡み付いて動きを封じていく。
「この程度で俺の動きを止められるか!」
だが、その直後にマルクスは黒い手を己の魔力を使って破壊した。
「燃え尽きな!」
両腕を広げるように構えたモリスの掌に炎が産み出された。そしてそれを自分の頭上で合わせて地面へ押し付けるように当てた。
「ファイヤーストーム!」
マルクスを中心に炎の竜巻が発生しモリスを飲み込んでいく。
「ぐあああっ!」
たまらず悲鳴を上げながら火の勢いによって空中へ投げ出される。マルクスの魔法が解けると同時に身体中を焼かれたモリスが抵抗なく落ちる。
「ま、なかなか善戦した方だな」
動けなくなったモリスに満足したマルクスが勝ち誇りながら背を向けた。
「さて、精霊使いがどうなってるか見てくるかな」
その直後だ。モリスが居る方向から音が聞こえた。
手加減なしの魔法を放ちモリスはまともに受けた。最初のダメージを考慮すれば立ち上がれるダメージではないはずだ。それどころか死んでいてもおかしくないはずなのに……まだ動ける?
その思考に至ったマルクスの背にゾクリと悪寒が走り、本能が察知した何かによって振り向かされた。
「行かせない……」
ゆらりとモリスは立ち上がる。その姿は満身創痍と言うほかないがそれでもその相貌はマルクスへと向いている。
「……シーラは俺が守るんだ!」
「ふん。その有り様でどうやって守る気だ?やってみろよ!!」
あからさまな挑発をするマルクスに対してモリスはたった一言だけいい放つ。
「やって見せる……!」
モリスが5人に増える。それが魔法によるものだとマルクスは理解する。ただ、その姿はどれも今のボロボロの姿であるからこそマルクスは対処が出来ると判断した。
「行くぞ!おらぁ!!」
マルクスが飛び出した。5人の内の一人に目掛けて拳を振るう。仕掛けられたモリスは5方向に別れるように瞬時に避ける。
そして、全員が小刀を地面に突き刺した。
「俺はまだ未熟だ。だからこそ魔道具にも魔法にも頼るしかない」
だが……この魔法でなら確実にマルクスを倒せる!
「これが俺の最大の切り札だ!」
地面へ刺した小刀が一斉に電気を帯びた。それと同時に電気の線がマルクスに延びて電気の枷の様に捕らえた。
「く……なんだこれは……破れねぇ!」
「無駄だ。貴様に貼った魔道具を剥がさない限り、その雷の枷を破ることは不可能」
「魔道具?そんなのいつ……まさか!?」
モリスが先程唱えた『闇縛り』の魔法は地面から出てきた黒い手だ。その手が出る場所にモリスは雷撃を引き寄せる符の魔道具を置いておき、マルクスの動きを止めると見せかけて背中へ貼っていた。
そして、この魔法はここからが本番だ。魔法を掛ける側も、掛けられる側も。
モリスは小刀どうしも連結するように電気で繋げていく。この準備段階でも魔力の消費はかなり多い。それでもこれ以外の手はない。
そうして出来上がったのはマルクスを中心にした電気で作られた五芒星である。
「この一撃は人の力に非ず、天から降る厄災なり!」
より大量の魔力が消費されたがモリスは止まらない。全ての魔力を使うつもりで放つ。
「雷光電火!!」
巨大な雷がマルクスに向かって落ち、光の柱が発生したと見間違える程の時間、マルクスを焼き焦がした。
一人に戻ったモリスは意識をなくしたマルクスを見て勝利を確信するが、魔力の大量消費から視界が傾く感覚を受けて膝を地面につける。
「くそ……力が入らない……。でも、這ってでもシーラの近くへ……」
重たい体を引きずりながらモリスは休むことなく動き出した。
モリスからしたら一度破れた相手で実力も上である。だが、それは勝てない相手と言うわけではない。それは何故か?一つは相手の動きがある程度わかっていること。もう一つはモリスが切り札を見せていないことだ。
切り札というのは強敵と退治する場合、非常に高い効果を発揮することがままある。劣勢、不利、絶望。それらを一手で覆すことが可能なのだ。
もちろんそれを当てるのは難しい。見切られたり警戒されたりしまえば当てるのは至難を極める。
だが、モリスは幸運だ。マルクスは一度勝っている相手だからこそ油断しているのがありありとわかる事に加え、モリスは相手の攻撃の癖を知りながら五体満足で戦えるのだから。
「そらそらそらそら!どうした?受けてばかりじゃ俺は倒せないぜ?」
マルクスは連続で掌打を繰り出していく。そして、上段攻撃に慣れた頃合いを見計らい瞬時にしゃがんでモリスに足払いを放った。
「ほら、足元が疎かになってないか?」
だが、どの攻撃もモリスは紙一重で避け、最後の足払いを飛んで避けきった。
「甘ぇよ!」
だが、マルクスは自らが繰り出した足払いによりモリスへと背中を向けた瞬間、宙返りをするように飛び、体を捻ってかかと落としを叩き込んだ。
「ぐっ……」
それでもモリスは腕をクロスさせて耐えきるとその体勢を利用できると好機と踏んで二つの腕に乗っかっているマルクスの足を押し返しバランスを崩させた。そして直ぐに小刀を振るう。
だが、マルクスはその押された反動を利用し、後方へとバク転をする要領で真横に振られた小刀を避けた。
「あぶねぇあぶねぇ。さっきよりは楽しまさせてくれるじゃないか」
マルクスが飛び出すと空中で回転蹴りを入れる。それが一度で終わらず三回ほどの蹴りとなった。一発目をモリスは腕で防ぐが、二発目で腕のガードを外され、三発目の蹴りが直撃する。
「ぐっ……」
それによって怯んだモリスへマルクスは畳み掛ける。回転蹴りの着地後、直ぐに掌打を腹に、裏拳を頬に、縦回転の蹴り上げを顎に入れる。そして、宙に浮いたモリスへ飛んで地面へ叩き込むように腹を蹴りつけた。
「がはっ」
血を吐き出され意識が飛びかける。だが、今は気を失うわけにはいかないとモリスは食い縛りながら気を保つ。何せ罠を張ったちょうどいい場所へマルクスが降り立ってくれたのだから……。
「闇縛り!」
マルクスが着地したタイミングでその足元から黒い手を召喚した。その手がマルクスへ絡み付いて動きを封じていく。
「この程度で俺の動きを止められるか!」
だが、その直後にマルクスは黒い手を己の魔力を使って破壊した。
「燃え尽きな!」
両腕を広げるように構えたモリスの掌に炎が産み出された。そしてそれを自分の頭上で合わせて地面へ押し付けるように当てた。
「ファイヤーストーム!」
マルクスを中心に炎の竜巻が発生しモリスを飲み込んでいく。
「ぐあああっ!」
たまらず悲鳴を上げながら火の勢いによって空中へ投げ出される。マルクスの魔法が解けると同時に身体中を焼かれたモリスが抵抗なく落ちる。
「ま、なかなか善戦した方だな」
動けなくなったモリスに満足したマルクスが勝ち誇りながら背を向けた。
「さて、精霊使いがどうなってるか見てくるかな」
その直後だ。モリスが居る方向から音が聞こえた。
手加減なしの魔法を放ちモリスはまともに受けた。最初のダメージを考慮すれば立ち上がれるダメージではないはずだ。それどころか死んでいてもおかしくないはずなのに……まだ動ける?
その思考に至ったマルクスの背にゾクリと悪寒が走り、本能が察知した何かによって振り向かされた。
「行かせない……」
ゆらりとモリスは立ち上がる。その姿は満身創痍と言うほかないがそれでもその相貌はマルクスへと向いている。
「……シーラは俺が守るんだ!」
「ふん。その有り様でどうやって守る気だ?やってみろよ!!」
あからさまな挑発をするマルクスに対してモリスはたった一言だけいい放つ。
「やって見せる……!」
モリスが5人に増える。それが魔法によるものだとマルクスは理解する。ただ、その姿はどれも今のボロボロの姿であるからこそマルクスは対処が出来ると判断した。
「行くぞ!おらぁ!!」
マルクスが飛び出した。5人の内の一人に目掛けて拳を振るう。仕掛けられたモリスは5方向に別れるように瞬時に避ける。
そして、全員が小刀を地面に突き刺した。
「俺はまだ未熟だ。だからこそ魔道具にも魔法にも頼るしかない」
だが……この魔法でなら確実にマルクスを倒せる!
「これが俺の最大の切り札だ!」
地面へ刺した小刀が一斉に電気を帯びた。それと同時に電気の線がマルクスに延びて電気の枷の様に捕らえた。
「く……なんだこれは……破れねぇ!」
「無駄だ。貴様に貼った魔道具を剥がさない限り、その雷の枷を破ることは不可能」
「魔道具?そんなのいつ……まさか!?」
モリスが先程唱えた『闇縛り』の魔法は地面から出てきた黒い手だ。その手が出る場所にモリスは雷撃を引き寄せる符の魔道具を置いておき、マルクスの動きを止めると見せかけて背中へ貼っていた。
そして、この魔法はここからが本番だ。魔法を掛ける側も、掛けられる側も。
モリスは小刀どうしも連結するように電気で繋げていく。この準備段階でも魔力の消費はかなり多い。それでもこれ以外の手はない。
そうして出来上がったのはマルクスを中心にした電気で作られた五芒星である。
「この一撃は人の力に非ず、天から降る厄災なり!」
より大量の魔力が消費されたがモリスは止まらない。全ての魔力を使うつもりで放つ。
「雷光電火!!」
巨大な雷がマルクスに向かって落ち、光の柱が発生したと見間違える程の時間、マルクスを焼き焦がした。
一人に戻ったモリスは意識をなくしたマルクスを見て勝利を確信するが、魔力の大量消費から視界が傾く感覚を受けて膝を地面につける。
「くそ……力が入らない……。でも、這ってでもシーラの近くへ……」
重たい体を引きずりながらモリスは休むことなく動き出した。
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