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月光の花嫁
消えたシーラは何処へ行く?
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「お、落ち着いてください……」
リリアがそう言おうとハンナは焦燥感に駆られ、下を向いて取り乱しながら自分を責める。
「ああ。どうしよう。私がもっと近くにいればこんなことにならなかったのに……どうしたら……!!」
「ハンナさん!落ち着いてください。まずは状況をしっかり教えてください」
自分の名前を強く呼ばれたことでハンナは再びリリアへ顔を向けた。
「リリア様……」
「リリアの言う通りだ。まず落ち着いてくれ。それからそこから退いてくれると助かる」
ハンナの姿勢は大地の上でうつぶせの状態から両手を地面へ伸ばし、少しだけ上半身を浮かせてリリアへ顔を向けているところだ。
先ほどの取り乱した時なんてハンナの顔が下に向けられていたせいで目があっているはずなのだが、ハンナの思考がそれどころじゃなかったせいか気にも止められなかった。
まぁそこまでは良いのだが、今のハンナの体勢のせいで目の前から少し下には二つの膨らみがはっきりと見えるのだ。服のおかげか谷間は見えないが……それでもこの視界はとても困る。
だから早めに退いて欲しいのだ。
「え?……あ!……度重なる粗相をどうしたら許していただけますか……?」
密着面積は広く、視界には大きいとは言えないが立派な山。これでアダルトな事が脳裏に浮かんでしまうのは男の性なのだろう。それを『隣にはリリアが居る』という言葉を念仏のように頭の中で繰り返しながら消し去る。
「そうだな。そこから退いて状況を焦らずに教えてくれるか?」
その言葉をひねり出すのにほんの5秒ほどの間を空けることになったが、それはきっと許容範囲だろう。
「は、はい!」
ハンナが飛び退いて大地の上から降りてくれた為、大地も起き上がることができた。そして、ひとまずリリアが取っている部屋へ全員が入る。
中へは居るとベッドの上は誰も寝てはいなかった。そこで先ほどハンナが言っていた『シーラ』と言う人物がウサギ耳の女性だとわかる。そして窓も開きっぱなしになっているのも気になる。
「居なくなったと言うのはここで寝かせていた女性のことか」
「はい。名前はシーラと教えて頂きました。特別な力を持っていてそのせいで追われていたのだと……」
特別な力ね……。
「もしかして、シーラさんを追っている人たちに連れ去られてしまったのでしょうか?」
リリアが困ったような顔をして言うと大地はそれを否定した。
「いや、部屋が荒らされている感じもしないし、どちらかと言うと……追っている人が近づいてきた事を知ったか、或いは迷惑が掛かると思ったのか。どちらにせよこの宿屋にいられないと思って自ら出ていったんじゃないかな」
「それじゃあ、シーラさんは今頃危険かもしれないんですか!?」
「その可能性もあるが、本人に聞かない限りにはわからないな」
大地がそう言うとリリアは少し怒りながらいった。
「それなら早く探しに行かないとダメなのに何で大地さんは呑気にしているんですか!!」
テーブルを両手でバンバン叩きながら囃し立ててくる珍しいリリアだ。たまにこうやって良くわからない素顔を見せてくることがある。大地は慣れているが始めてみるその奇行にハンナは驚いて固まった。
「そうは言うけど何処を探せば……」
大地としても直ぐに探しに行く方がいいと思っているがどこを探せば良いかわからない。まだホワイトキングダム内に居るのか、或いはすでに外へと出ているのか。それすらわからない状況では探しようがないのだ。
「こんなことなら小蜘蛛でもつけておくんだったな……」
小さな機械の蜘蛛。大地の兵器の一つで電流を流させる細い鉄線やマッピング機能が有り、自爆まで出来る優れものである。
「と、とりあえず外に出ましょう!!」
確かにリリアの言う通りだ。この部屋にいたところで帰ってくるはずがない。
「ハンナはここで待っていてくれ。行くぞ!」
そうしてあわただしく出ていく大地とリリアをハンナは見送った。
リリアがそう言おうとハンナは焦燥感に駆られ、下を向いて取り乱しながら自分を責める。
「ああ。どうしよう。私がもっと近くにいればこんなことにならなかったのに……どうしたら……!!」
「ハンナさん!落ち着いてください。まずは状況をしっかり教えてください」
自分の名前を強く呼ばれたことでハンナは再びリリアへ顔を向けた。
「リリア様……」
「リリアの言う通りだ。まず落ち着いてくれ。それからそこから退いてくれると助かる」
ハンナの姿勢は大地の上でうつぶせの状態から両手を地面へ伸ばし、少しだけ上半身を浮かせてリリアへ顔を向けているところだ。
先ほどの取り乱した時なんてハンナの顔が下に向けられていたせいで目があっているはずなのだが、ハンナの思考がそれどころじゃなかったせいか気にも止められなかった。
まぁそこまでは良いのだが、今のハンナの体勢のせいで目の前から少し下には二つの膨らみがはっきりと見えるのだ。服のおかげか谷間は見えないが……それでもこの視界はとても困る。
だから早めに退いて欲しいのだ。
「え?……あ!……度重なる粗相をどうしたら許していただけますか……?」
密着面積は広く、視界には大きいとは言えないが立派な山。これでアダルトな事が脳裏に浮かんでしまうのは男の性なのだろう。それを『隣にはリリアが居る』という言葉を念仏のように頭の中で繰り返しながら消し去る。
「そうだな。そこから退いて状況を焦らずに教えてくれるか?」
その言葉をひねり出すのにほんの5秒ほどの間を空けることになったが、それはきっと許容範囲だろう。
「は、はい!」
ハンナが飛び退いて大地の上から降りてくれた為、大地も起き上がることができた。そして、ひとまずリリアが取っている部屋へ全員が入る。
中へは居るとベッドの上は誰も寝てはいなかった。そこで先ほどハンナが言っていた『シーラ』と言う人物がウサギ耳の女性だとわかる。そして窓も開きっぱなしになっているのも気になる。
「居なくなったと言うのはここで寝かせていた女性のことか」
「はい。名前はシーラと教えて頂きました。特別な力を持っていてそのせいで追われていたのだと……」
特別な力ね……。
「もしかして、シーラさんを追っている人たちに連れ去られてしまったのでしょうか?」
リリアが困ったような顔をして言うと大地はそれを否定した。
「いや、部屋が荒らされている感じもしないし、どちらかと言うと……追っている人が近づいてきた事を知ったか、或いは迷惑が掛かると思ったのか。どちらにせよこの宿屋にいられないと思って自ら出ていったんじゃないかな」
「それじゃあ、シーラさんは今頃危険かもしれないんですか!?」
「その可能性もあるが、本人に聞かない限りにはわからないな」
大地がそう言うとリリアは少し怒りながらいった。
「それなら早く探しに行かないとダメなのに何で大地さんは呑気にしているんですか!!」
テーブルを両手でバンバン叩きながら囃し立ててくる珍しいリリアだ。たまにこうやって良くわからない素顔を見せてくることがある。大地は慣れているが始めてみるその奇行にハンナは驚いて固まった。
「そうは言うけど何処を探せば……」
大地としても直ぐに探しに行く方がいいと思っているがどこを探せば良いかわからない。まだホワイトキングダム内に居るのか、或いはすでに外へと出ているのか。それすらわからない状況では探しようがないのだ。
「こんなことなら小蜘蛛でもつけておくんだったな……」
小さな機械の蜘蛛。大地の兵器の一つで電流を流させる細い鉄線やマッピング機能が有り、自爆まで出来る優れものである。
「と、とりあえず外に出ましょう!!」
確かにリリアの言う通りだ。この部屋にいたところで帰ってくるはずがない。
「ハンナはここで待っていてくれ。行くぞ!」
そうしてあわただしく出ていく大地とリリアをハンナは見送った。
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