初めての異世界転生

藤井 サトル

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月光の花嫁

魔道騎兵マーガレット

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 マーガレットの背後が眩い程の光を発した。

「そう言えば名乗っていませんでしたね。私は空の国、スカイヘブン騎士長。魔道騎兵マーガレット」

 そう言い終えると同時にマーガレットの背中から光る翼が生えてきた。それも機械っぽさは無く、本物の鳥の翼のように羽が集まっているようだ。

「参ります!」

 そう言ってマーガレットの背中から生えている翼がバサリと羽ばたき、ふわりと彼女は浮かび上がる。それも優雅に……。

「いいね。ロマンだね」

 その光景に圧倒されつつも顔がにやけていくのを大地は止められなかった。

 直後、マーガレットの翼がもう一度動く。今度は苛烈にひと羽ばたきすると急速に上昇し、ある程度の高さまで飛び上がったマーガレットは大地に向けて急降下しながら剣を振り下ろす。

 その強烈な一撃を大地は剣で受け止めた。そして力を込めて押し返すとマーガレットは翼を羽ばたかせて縦横無尽に動き回る。

 背中のロケットブースターを所々で使っているようだ。慣性を無視した動きで飛び回りながら大地へと斬りかかってくる。

 一度剣で受け止めた後、力を流すように弾くが直ぐさまマーガレットがやって来て剣を振るってきた。二撃、三撃とやってくる猛攻を大地はかわし、防ぎ続ける。

「お前さ……こんなところに一人でいて幸せか?」

 大地が何気なく云った言葉だったが、その言葉を聞いた時にマーガレットに別の声も聞こえてきた。

『お前はまたこんなところに……一人でいて楽しいのか?』

 その声はマーガレットの魔道具。その魔石に刻まれた思い出という遥か昔、このスカイヘヴンが空に浮かんで居た時にアロン陛下と話した懐かしい記憶。何故かわからないがアロン陛下と大地が一瞬だけダブって見えた。

 そしてその記憶を思い出せば思い出すほど苦しくもある。……だから記憶を切り離したのだ。いざ戦うときだけ呼び出せるようにすれば……戦いに夢中になれば苦しくない……はずだった。

「楽しい、楽しくないなんて関係ない。私の役目だからやるんです!」

 あの時、アロン陛下へ返した言葉をそのまま大地へと返してマーガレットは地に降りた。

「誘導式ホーミングレーザー。ブリューナク発射!」

 マーガレットの後ろから数発の光線が放たれて大地へと襲いかかる。マーガレットがバイクに乗ってたときのレーザーだ。それを大地は走り回りながら避けていく。

「お前、その攻撃はロックオンとチャージが必要だっただろ!」

「記憶が完全になった今の私には必要ありません!」

 ずるい……だけど、その武器欲しいな。

「そうかい……良い武器だが弱点は接近だな」

 逃げる方向を即座に変えた。マーガレットに向けて走る大地は目の前からくる幾つものレーザーをぎりきで避けながら彼女へ接近した。

 すぐに剣を振るった大地にマーガレットも剣で受け止めた。

「どうだ?これでブリューナクとやらは射てないだろ?」

 マーガレットに離されないように大地は剣を振るい続ける。その全てがマーガレットの剣と盾に防がれても問題はない。

「この……私に近づく変態!」

 ぐはぁっ!……こいつ見えない刃で攻撃してくるぞ!?

「変態変態ってふざけんな!だいたい少し足を触っただけで騒ぎすぎなんだよ!!」

『少し足を触ったくらいで怒り過ぎなんだよ!』

 まただ。何でこんな奴がアロン陛下と重なるの……?

「あれが少し!?思いっきり掴んでいたじゃないですか!!この変態!」

「お前の大きいバイクの面積から考えた少しだろうが!!」

「大きいとは何ですか!!だいたい女の子に優しく触れることも出来ない男は変態扱いで充分です!」

 なんで……なんでこの男と話すのが楽しいの……?

「はっ!だったらそんなゴツい姿じゃなくて女の子らしい柔らかそうな姿になってこいよ!それだったら優しくしてやるからよ!!」

「やはり私に触る気なんですね!この変態!!」

 大地とマーガレットの剣がより強くぶつかった。どちらの剣も弾かれずお互いに剣を押し合う。

 楽しかった。それでも騎士の本分をまっとうするために終わりにしないといけない。

「……ありがとう。少しだけ……楽しめました」

 マーガレットがそう言うと背中から光線が放たれた。しかし近すぎる大地を狙うことはできなかったらしく光線が通りすぎていく。だが、大地の後方で光線が急旋回して大地を背中から襲う。
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