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月光の花嫁
ドラマティックロープアクション
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通路を出て大広間へと出た。長い橋のような地面を急いで渡る。この地面の左右は底が見えないほど深い闇だ。横に逃げることはできず、もう少し走れば崩れてしまった行き止まりである。
そして走る勢いのまま崩れた端から飛んだところで奥の足場に届きはしないだろう。
ここで大きなムカデを撃退するしかないのだろうか。そう思われたときに大地が足場の崩れている辺りを見てみると左右に一本ずつ棒が延びていた。それを辿るように上部を見ると繋がっていてアーチ状になっているのがわかった。
ただ、飛んで手を伸ばしても届きはしないだろう。何か別の手段なら届くかもしれない。その方法を思い付いた時にリリアが「どうしましょう!?」と切羽詰まった声で聞いてきた。
「リリア!俺に抱きつけるか!?」
先に言うと大地が乱心したわけでは決してない。
ただ、平時にそんなこと言えば回りからヒソヒソと陰口を叩かれ、冷たい視線を浴び、兵隊さんのお仕事がはかどることになるだろう。だが今は非常時なのだ。巨大なムカデに飲み込まれるか否かの瀬戸際なのだ。
「え?……はい!」
一瞬だけ躊躇するリリアだが直ぐに思い直して力強く返事をしてくれる。今いるのが聞き分けのいい彼女で良かったと心から思う。
「すまん!」
了承は得ていてもつい謝りながら走りながら大地は手を伸ばしてリリアを片手で抱き寄せる。リリアが自分の杖ごと両手を大地の首の後ろに回して確りと抱きついてくる。リリアが協力的でなおかげで体幹バランスも安定した。
「しっかり掴まっていてくれよ!」
その声に反応してリリアはギュッと体が密着するのも気にせずに強く抱きつく。そして大地も片手でだけで抱いてるために同じように込めている力を強めた。
そして残った片手に武器を召喚する。それはフック付きロープである。フックの辺りで武器になるからこそ召喚できたものだ。もちろん攻撃力は低いだろうがそれは問題じゃない。何せ今出した目的は攻撃に使うためではないのだ。
大地はロープを持つと上空に飛ばした。そのロープがアーチに引っ掛かるのを確認しながら大地はリリアを抱えながら飛んだ。
「きゃああああああああっ!!」
リリアが悲鳴をあげながら大地に抱きつく手をよりいっそう強める。
これは世に言うターザンだが敢えて名前を別でつけるならばドラマティックロープアクションだ。見事にロープの遠心力によって離れた足場へ近づくとロープを離して無事に着地した。
「リリアついたぞ」
後方で急に止まれなかったムカデの群れの何体かが闇の底へと落ちていった。それを見向きもせずに地面についているとわかっていないリリアへと声を掛ける。
「は、はい。えっと……離れますね」
リリアは手を離して大地から離れると地面を恋しそうに踏んで立ちながら小さく「怖かった……」と呟く。少しだけ地面に安らぎを感じた後、リリアは橋の先を見つめて聞いた。
「あれはなんでしょう?」
円形状の広場の前には開いている扉のようなものがある。また壁で囲われているわけではない為、外からは丸見えの場所だ。
「わからない……けど、行くしか道はなさそうだ」
「はい……」
回りを見ると深い堀を挟んで足場のようなものが見える。それも一段ずつ広がっているようだ。
「リリア。ここは何処なんだろうな?」
「う~ん……こういう作りの場所。本で読んだことある気がするんですけど……なんでしょう?」
昔読んだ様々な本の知識を思い出そうとするが古い記憶であるために難しい。扉を通り抜けて円形の広場に繋がっていた。
「しまった!?」
広場の中央まで歩いたときだった。入ってきた扉がバタンと閉まり閉じ込められた。
改めて今の状況を確認しておいた方が言いかもしれない。今いる場所は円形の足場。広さはかなりあるが何かに襲われれば隠れる場所はない。そして出入り口と思えるのは入ってきた扉と反対方向にある閉まっている扉くらいだ。回りは堀になっていて底が見えない。その堀をこえると足場……この形状って観客席か?
「ダイチさん。気を付けた方がいいかま知れません」
今いる足場を調べていたリリアがそう伝えてきた。それもかなり神妙な顔をしていることから危険があるのかもしれない。
「どうした?」
「この足場……無数に傷跡があるんです。これは物を引きずったと言うよりは……」
「何かと戦った……か?」
大地自身もある程度の答えを出していた。ただ、それはここに人が居た時の名残だろうから今は動かす人がいないはずだ。
「わかるんですか?」
「何となくだけどな。でもこの闘技場を動かす奴なんていないだろう」
闘技場。それが大地のたどり着いた答えだ。そしてリリアも同じ答えを持っていた為に驚くようなことはなかった。ただ、大地とリリアに一つだけ違う認識がある。
「いえ……それなら罠が作動したのがわかりません。あのムカデも私達が落ちてからやって来ました。そして、今ここまで来た時に扉が勝手に閉まりました。たぶん罠を作動させる魔道具が生きているのだと思います」
リリアがふと真上を見上げる。大地もそれにつられて真上を見ると何かが落ちてきていた。大地は素早くリリア抱えると飛ぶ様にその場を離れるとズシンと重い音を立てながらその何かが着地した。
そして走る勢いのまま崩れた端から飛んだところで奥の足場に届きはしないだろう。
ここで大きなムカデを撃退するしかないのだろうか。そう思われたときに大地が足場の崩れている辺りを見てみると左右に一本ずつ棒が延びていた。それを辿るように上部を見ると繋がっていてアーチ状になっているのがわかった。
ただ、飛んで手を伸ばしても届きはしないだろう。何か別の手段なら届くかもしれない。その方法を思い付いた時にリリアが「どうしましょう!?」と切羽詰まった声で聞いてきた。
「リリア!俺に抱きつけるか!?」
先に言うと大地が乱心したわけでは決してない。
ただ、平時にそんなこと言えば回りからヒソヒソと陰口を叩かれ、冷たい視線を浴び、兵隊さんのお仕事がはかどることになるだろう。だが今は非常時なのだ。巨大なムカデに飲み込まれるか否かの瀬戸際なのだ。
「え?……はい!」
一瞬だけ躊躇するリリアだが直ぐに思い直して力強く返事をしてくれる。今いるのが聞き分けのいい彼女で良かったと心から思う。
「すまん!」
了承は得ていてもつい謝りながら走りながら大地は手を伸ばしてリリアを片手で抱き寄せる。リリアが自分の杖ごと両手を大地の首の後ろに回して確りと抱きついてくる。リリアが協力的でなおかげで体幹バランスも安定した。
「しっかり掴まっていてくれよ!」
その声に反応してリリアはギュッと体が密着するのも気にせずに強く抱きつく。そして大地も片手でだけで抱いてるために同じように込めている力を強めた。
そして残った片手に武器を召喚する。それはフック付きロープである。フックの辺りで武器になるからこそ召喚できたものだ。もちろん攻撃力は低いだろうがそれは問題じゃない。何せ今出した目的は攻撃に使うためではないのだ。
大地はロープを持つと上空に飛ばした。そのロープがアーチに引っ掛かるのを確認しながら大地はリリアを抱えながら飛んだ。
「きゃああああああああっ!!」
リリアが悲鳴をあげながら大地に抱きつく手をよりいっそう強める。
これは世に言うターザンだが敢えて名前を別でつけるならばドラマティックロープアクションだ。見事にロープの遠心力によって離れた足場へ近づくとロープを離して無事に着地した。
「リリアついたぞ」
後方で急に止まれなかったムカデの群れの何体かが闇の底へと落ちていった。それを見向きもせずに地面についているとわかっていないリリアへと声を掛ける。
「は、はい。えっと……離れますね」
リリアは手を離して大地から離れると地面を恋しそうに踏んで立ちながら小さく「怖かった……」と呟く。少しだけ地面に安らぎを感じた後、リリアは橋の先を見つめて聞いた。
「あれはなんでしょう?」
円形状の広場の前には開いている扉のようなものがある。また壁で囲われているわけではない為、外からは丸見えの場所だ。
「わからない……けど、行くしか道はなさそうだ」
「はい……」
回りを見ると深い堀を挟んで足場のようなものが見える。それも一段ずつ広がっているようだ。
「リリア。ここは何処なんだろうな?」
「う~ん……こういう作りの場所。本で読んだことある気がするんですけど……なんでしょう?」
昔読んだ様々な本の知識を思い出そうとするが古い記憶であるために難しい。扉を通り抜けて円形の広場に繋がっていた。
「しまった!?」
広場の中央まで歩いたときだった。入ってきた扉がバタンと閉まり閉じ込められた。
改めて今の状況を確認しておいた方が言いかもしれない。今いる場所は円形の足場。広さはかなりあるが何かに襲われれば隠れる場所はない。そして出入り口と思えるのは入ってきた扉と反対方向にある閉まっている扉くらいだ。回りは堀になっていて底が見えない。その堀をこえると足場……この形状って観客席か?
「ダイチさん。気を付けた方がいいかま知れません」
今いる足場を調べていたリリアがそう伝えてきた。それもかなり神妙な顔をしていることから危険があるのかもしれない。
「どうした?」
「この足場……無数に傷跡があるんです。これは物を引きずったと言うよりは……」
「何かと戦った……か?」
大地自身もある程度の答えを出していた。ただ、それはここに人が居た時の名残だろうから今は動かす人がいないはずだ。
「わかるんですか?」
「何となくだけどな。でもこの闘技場を動かす奴なんていないだろう」
闘技場。それが大地のたどり着いた答えだ。そしてリリアも同じ答えを持っていた為に驚くようなことはなかった。ただ、大地とリリアに一つだけ違う認識がある。
「いえ……それなら罠が作動したのがわかりません。あのムカデも私達が落ちてからやって来ました。そして、今ここまで来た時に扉が勝手に閉まりました。たぶん罠を作動させる魔道具が生きているのだと思います」
リリアがふと真上を見上げる。大地もそれにつられて真上を見ると何かが落ちてきていた。大地は素早くリリア抱えると飛ぶ様にその場を離れるとズシンと重い音を立てながらその何かが着地した。
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