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月光の花嫁
夢から覚めた夢のような現実
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大地がはっと気づいた瞬間、目に飛び込んできたのは確りと整備された石畳の道だった。左右には色んな店が並ぶが幅がかなり設けられている。見た瞬間わかるそれは大通りと呼ばれている。
その道に沿ってまっすぐ前へ目を向けると白い大きな城が見えた。大地は道も城もこの場所も知っている。
『ここは……ホワイトキングダムの大通りか?でも、人通りが全くないな』
それも場所的にはギルドと城の中間辺りだろう。
『そもそも何で今俺はここにいるんだ?昨日、レイヴン達と飯を食って、花蜜の値段が3万であることに驚いて、いつもの寝床で寝たはずなんだが。あー、そうなるとここは夢……か?』
周囲を見渡す大地は見慣れている風景を目にしていく。人が居ないことで別世界にも見えてくるがそれよりも目に止まったものがあった。
それは空だ。青い空に白い雲。その心が洗われるような清々しい空の奥が黒く染まっていくのだ。
この非常に不自然な光景も見たことがある気がする。全く同じと言うわけではなく……いつかのどこかで……いや、あれもたしか夢の中だ。花畑で美しい景色だったはずだ。考えれば考えるほど徐々に昔見た夢が鮮明になっていく。
その夢の中では空と大地が黒くなっていき世界を闇に包んでいくのだ。真っ黒になるんではない。草木も黒色になっていく。今も建物が黒色へ染まっていっている。
『このあとは確か……』
夢の中で夢を思い出す不思議な感じだが思い出す限りでは地面が崩れていくんだった。
大地がそこまで思い出すと同じように城や石畳の地面、お店等の建物が倒壊して地面の底へ沈んでいった。
その崩壊が徐々に大地へ近づいていき、そしてついに崩壊が大地の足下へ来ると大地を地の底へと落としていった。
暗闇の中、何時しか大地は夢から現実へと引き戻されていった……。
珍しく夢の出来事を覚えていながら覚醒はしたものの、大地には目を開ける勇気がなかった。その理由は目を瞑りながらもわかる情報にある。
視覚……閉じている瞼を貫いてくる明かり。それを遮るように影がたまに掛かって暗くなることがある。
聴覚……女の子達の声が聞こえてくる。それも一人や二人じゃない結構多く、聞いたことがある声だ。
触覚……今寝ている場所が固い地面の上じゃない。肌に触れている質はさらりと触り心地が良くて、体を沈めている柔らかいこの感触はベッドだろうか。
味覚……残念。今はお休み中だ。
嗅覚……何と言うか外の空気じゃない。花の……いい香りがしてくるんだ。一番地味に思えるかもしれないが一番始めに違和感に気づいたのがこの香りだ。
何が起きているのかわからないが、少なくとも昨日寝た場所から移動をさせられていることだけは確かなようだ。
起きるのがやや怖くもあるが寝たフリを続けるのも耐えがたいものがある。何せ意識がはっきりしてくると視線が向けられていることもわかってしまうのだ。
ゆっくりと瞼を開いていくと大地の目に映ったのは見知らぬ天井だ。その天井だけど……そんじょそこらの宿では見かけないほど綺麗な作りだ。
もっとこう薄汚れとか、染みとかそう言う汚さみたいなのがあるかと思ったら無い。……見知らぬと称したものの記憶の片隅に見覚えがある気もする。
「あ、ダイチさん。起きました?」
この声はリリアか?
「リリアちゃんダメですよ」
大地が首を傾ける前にフルネールの声はダメ出しをするソレだった。しかし何がダメだと言うのか?いたって普通の会話……まぁ今の状況が普通かどうかはおいておくとして。
「教えた通りに言ってみてください。ほら皆さんも一緒ですよ?」
教えた通り?言う?
フルネールがまた何かしていることが明らかになった瞬間だ。上半身を起き上がらせた大地は首を捻って声がする方向へと視線を向けた。
「「おはようございます!ご主人様!!」」
大地の視界にはリリア、フルネール、レヴィアの他にアーデルハイド、シャーリー、ミル、クラリスがメイド服を着ていた。
当然のように着こなすフルネールと違いリリア、クラリスはやや顔を赤らめて照れているようだ。
レヴィア、シャーリー、ミルに至っては特に恥ずかしいと言う感じではなく、寧ろリリア達が顔を赤くする理由がわからないといったようだ。
アーデルハイドだけ普段見慣れている服を自分が着ただけにすぎないので、普段見慣れない人達が恥ずかしく思う事が分かっている風で凛と立っていた。
「な……え?……な……」
言葉にならず唖然としているとフルネールが一歩前に出る。
「どうですか?皆の……私のメイド服姿は」
そう言ってクルリと回るフルネールはわざとスカートのすそをフワリと浮かせた。
そしてわざとだとわかっていても視線を向けてしまうのが男の性である。
「やっぱり大地さんこう言うのがお好きなんですね~」
ぐ……だってしょうがないじゃないか。
「昨日、メイド服が好きだって言っていたものね」
フルネールを援護するようにミルが悪気の無い笑顔で暴露すると、アーデルハイドがややジト目を向けてきた。
「……取り敢えず言いたいことが色々あるが……全員グッと来るものがあるな」
……いかん、思わず建前がルビに移ってしまった。
その一言でアーデルハイドの視線がどんどん冷たくなってくるが、リリアやクラリスは顔の赤みを増し、先程まで平気だったミルやシャーリー、レヴィアは誉められたことで照れたように嬉しがっている。
「大地さんの為にみんなに声をかけて来てもらったんですよ!」
笑顔でいったフルネールは次の瞬間、残念そうに肩を落としながら言う。
「ただ、ユーナさんとリリエッタちゃんにも声を掛けたんですが……ユーナさんはギルドがあるので出てこれず、リリエッタちゃんは今日用事があるそうで朝から準備に忙しいらしいんです」
惜しい……と思っては悟られそうなので出来る限りポーカーフェイスを維持して聞いているが、フルネールはさらにこう言った。
「大地さんごめんなさい。お二人のメイド服姿も見たかったですよね」
「な、なんのことかな!?」
声が上ずってしまいポーカーフェイスが一瞬にして壊れてしまった。それを取り繕うように大地は一度咳き込みアーデルハイドとリリアへ顔を向けた。
「というか、二人の王女は何してるんだ?」
アーデルハイドはこの国の第一王女でリリアは第二王女だ。普段着ているものと違い白と黒のシンプルなメイド服姿は目の保養に……いかんな。この空間はヤバい。
その道に沿ってまっすぐ前へ目を向けると白い大きな城が見えた。大地は道も城もこの場所も知っている。
『ここは……ホワイトキングダムの大通りか?でも、人通りが全くないな』
それも場所的にはギルドと城の中間辺りだろう。
『そもそも何で今俺はここにいるんだ?昨日、レイヴン達と飯を食って、花蜜の値段が3万であることに驚いて、いつもの寝床で寝たはずなんだが。あー、そうなるとここは夢……か?』
周囲を見渡す大地は見慣れている風景を目にしていく。人が居ないことで別世界にも見えてくるがそれよりも目に止まったものがあった。
それは空だ。青い空に白い雲。その心が洗われるような清々しい空の奥が黒く染まっていくのだ。
この非常に不自然な光景も見たことがある気がする。全く同じと言うわけではなく……いつかのどこかで……いや、あれもたしか夢の中だ。花畑で美しい景色だったはずだ。考えれば考えるほど徐々に昔見た夢が鮮明になっていく。
その夢の中では空と大地が黒くなっていき世界を闇に包んでいくのだ。真っ黒になるんではない。草木も黒色になっていく。今も建物が黒色へ染まっていっている。
『このあとは確か……』
夢の中で夢を思い出す不思議な感じだが思い出す限りでは地面が崩れていくんだった。
大地がそこまで思い出すと同じように城や石畳の地面、お店等の建物が倒壊して地面の底へ沈んでいった。
その崩壊が徐々に大地へ近づいていき、そしてついに崩壊が大地の足下へ来ると大地を地の底へと落としていった。
暗闇の中、何時しか大地は夢から現実へと引き戻されていった……。
珍しく夢の出来事を覚えていながら覚醒はしたものの、大地には目を開ける勇気がなかった。その理由は目を瞑りながらもわかる情報にある。
視覚……閉じている瞼を貫いてくる明かり。それを遮るように影がたまに掛かって暗くなることがある。
聴覚……女の子達の声が聞こえてくる。それも一人や二人じゃない結構多く、聞いたことがある声だ。
触覚……今寝ている場所が固い地面の上じゃない。肌に触れている質はさらりと触り心地が良くて、体を沈めている柔らかいこの感触はベッドだろうか。
味覚……残念。今はお休み中だ。
嗅覚……何と言うか外の空気じゃない。花の……いい香りがしてくるんだ。一番地味に思えるかもしれないが一番始めに違和感に気づいたのがこの香りだ。
何が起きているのかわからないが、少なくとも昨日寝た場所から移動をさせられていることだけは確かなようだ。
起きるのがやや怖くもあるが寝たフリを続けるのも耐えがたいものがある。何せ意識がはっきりしてくると視線が向けられていることもわかってしまうのだ。
ゆっくりと瞼を開いていくと大地の目に映ったのは見知らぬ天井だ。その天井だけど……そんじょそこらの宿では見かけないほど綺麗な作りだ。
もっとこう薄汚れとか、染みとかそう言う汚さみたいなのがあるかと思ったら無い。……見知らぬと称したものの記憶の片隅に見覚えがある気もする。
「あ、ダイチさん。起きました?」
この声はリリアか?
「リリアちゃんダメですよ」
大地が首を傾ける前にフルネールの声はダメ出しをするソレだった。しかし何がダメだと言うのか?いたって普通の会話……まぁ今の状況が普通かどうかはおいておくとして。
「教えた通りに言ってみてください。ほら皆さんも一緒ですよ?」
教えた通り?言う?
フルネールがまた何かしていることが明らかになった瞬間だ。上半身を起き上がらせた大地は首を捻って声がする方向へと視線を向けた。
「「おはようございます!ご主人様!!」」
大地の視界にはリリア、フルネール、レヴィアの他にアーデルハイド、シャーリー、ミル、クラリスがメイド服を着ていた。
当然のように着こなすフルネールと違いリリア、クラリスはやや顔を赤らめて照れているようだ。
レヴィア、シャーリー、ミルに至っては特に恥ずかしいと言う感じではなく、寧ろリリア達が顔を赤くする理由がわからないといったようだ。
アーデルハイドだけ普段見慣れている服を自分が着ただけにすぎないので、普段見慣れない人達が恥ずかしく思う事が分かっている風で凛と立っていた。
「な……え?……な……」
言葉にならず唖然としているとフルネールが一歩前に出る。
「どうですか?皆の……私のメイド服姿は」
そう言ってクルリと回るフルネールはわざとスカートのすそをフワリと浮かせた。
そしてわざとだとわかっていても視線を向けてしまうのが男の性である。
「やっぱり大地さんこう言うのがお好きなんですね~」
ぐ……だってしょうがないじゃないか。
「昨日、メイド服が好きだって言っていたものね」
フルネールを援護するようにミルが悪気の無い笑顔で暴露すると、アーデルハイドがややジト目を向けてきた。
「……取り敢えず言いたいことが色々あるが……全員グッと来るものがあるな」
……いかん、思わず建前がルビに移ってしまった。
その一言でアーデルハイドの視線がどんどん冷たくなってくるが、リリアやクラリスは顔の赤みを増し、先程まで平気だったミルやシャーリー、レヴィアは誉められたことで照れたように嬉しがっている。
「大地さんの為にみんなに声をかけて来てもらったんですよ!」
笑顔でいったフルネールは次の瞬間、残念そうに肩を落としながら言う。
「ただ、ユーナさんとリリエッタちゃんにも声を掛けたんですが……ユーナさんはギルドがあるので出てこれず、リリエッタちゃんは今日用事があるそうで朝から準備に忙しいらしいんです」
惜しい……と思っては悟られそうなので出来る限りポーカーフェイスを維持して聞いているが、フルネールはさらにこう言った。
「大地さんごめんなさい。お二人のメイド服姿も見たかったですよね」
「な、なんのことかな!?」
声が上ずってしまいポーカーフェイスが一瞬にして壊れてしまった。それを取り繕うように大地は一度咳き込みアーデルハイドとリリアへ顔を向けた。
「というか、二人の王女は何してるんだ?」
アーデルハイドはこの国の第一王女でリリアは第二王女だ。普段着ているものと違い白と黒のシンプルなメイド服姿は目の保養に……いかんな。この空間はヤバい。
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