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フェアリーダウン
白雷の虎
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レイヴンを弾き飛ばしたホワイトファングが雄叫びを上げる。空気がゆれるような咆哮と共にホワイファングは体から物凄い雷を放出しその雷を強めた。
「レイヴン!!」
物凄い速さで弾き飛ばされたレイヴンにミルがその名を呼ぶがピクリとも動かない。
「ミル!レイヴンがあんなので死ぬことはない。大丈夫だ。それより今はコイツを引き付けるぞ!」
レルムが動いた。ミルに言ったことを実行するためホワイトファングの回りを素早く移動する。
「近づくのは危険か……シャドーブレード」
レルムが刃に魔力を込めて発動させる。ジャマダハルの刃が漆黒に染まり、形状をそのままに黒い影の刃がまっすぐ伸びていく。攻撃範囲を伸ばすことができるレルムの技だ。
これで雷を纏っているホワイトファングに近寄らず切る事が可能となったレルムは浅くしか切れずとも攻撃を続ける。
「そうよね。私もやらなきゃ!」
怪力能天気馬鹿のレイヴンはアレでもリーダーだ。レルムの言う通りあの一撃だけで死ぬとは思えない。ならモンスターの気を引き付けてレイヴンが立て直す時間を稼ぐ方が先決だ。
「レルムどいて!!」
ミルが魔力を高めて魔法を発動した。モンスターの真上に輪っかが作られる。モンスターを中心に捉えているその輪っかが白から赤へと変わると輪っかの中心から大きな赤い球体が生まれ落ちた。
「ブラストエッグ!」
生まれ落ちた球体の魔法がモンスターへ直撃したと思いきやモンスターを中に取り込んだ。そしてその内側だけで爆発を繰り返す。
魔力を維持すればその時間だけ爆発は続く。だが、消費魔力量とそのコントロールを続けるのは精神的にも残りの魔力量的にもきつい。
「……このペースで魔法使っちゃうと厳しいかな……」
疲労の色を顔に出しながらミルは小さく呟く。
戦闘開始してから既に自分の魔力が半分まで消費しかかっている。このまま魔力を使用し続ければ倒れてしまうだろう。
だけどモンスターは魔法の中だ。それに先ほどのダメージだって残っているはず。だからこのままいけば……。
「あのモンスターを倒せる事が……なんて甘い希望をもっちゃだめ!しっかりしなさい私!!」
ここで希望に甘えて気を緩めればモンスターの餌になりかねない。そう思ってミルは気合いを入れ直す。だが、ホワイトファングが咆哮と共に放った衝撃波によって魔法が破壊され、その余波でミルが吹き飛ばされ――る前に回り込んでいたレルムが手を添えて支えた。
「ありがとう」
安心するのも束の間、ホワイトファングが跳躍した。狙いはレルムとミルだ。二人は直ぐにその場を移動するがホワイトファングが地面へ突進するような落下を行った際に発した雷に焼かれ吹き飛ばされてしまった。
二人は小さな悲鳴を上げながら宙を舞う。そのレルム達をホワイトファングは確りと捉えて攻撃を続けた。地面に落とさないように横に吹き飛ばしては回り込んでいた上にあげ、直ぐに回り込んで別方向へ叩き飛ばす。
「ぐわっ」「かはっ」「ぐっ」
攻撃を受ける度にレルムは苦痛の声を漏らす。自分の意思で地面へ下りることが叶わない今、レルムが出来ることはミルを体で覆って守ることだけだ。
なにせこのまま立て続けにミルが攻撃を受けるのは非常にまずい。
ミルは妖精だ。妖精は体を護る妖精の守護という妖精のみが使う魔法を掛ける。これは本人の魔力量によって防御力が変化する。そして攻撃を受ければその分魔力が削られてしまう。
先ほどから魔法を大量に使用していることと攻撃を受けていることでミルの魔力量もそろそろ厳しいはずだ。
……攻撃が止んだ?
未だに地面へつくことがないがホワイトファングからの攻撃の手が止まったのか追撃がやってこない。レルムは自由が効かない体勢でゆっくりと回る体に身を任せながら目を見開いた。やがて空を見上げる形になったときに攻撃が止まったわけを知ることとなる。
「止めを刺しに来たのか……」
宙を舞うレルムとミルへ高所からの急降下。レイヴンから受けた一撃を真似しているというようだった。だが、それ故に破壊力は想像がつく。
「くそっ……」
あの一撃をまともにくらえば生きていられる保証はない。
ホワイトファングとレルム達の間に光の花弁が集まっていく。ミルが魔道具で操っているのだ。この絶望的な状況でも何とか足掻こうとしている。
花弁は二人を守るために何層にもなって壁となった。その花の壁をホワイトファングはぶち破っていく。ただ、一枚破ることに勢いは少し落ちていき希望が見える。
ホワイトファングが全ての花弁をぶち破ってレルム達へと落ち、地面を破壊する勢いで激突すると激しい雷撃までもが降り注いだ。
「……レルム。大丈夫?」
よろよろと飛び上がって自分の無事を確かめたあとレルムへ近づく。
「なんとかな……」
まだ生き残れているのは直撃を免れたことが大きい。その理由がミルが重ねた光の壁により視界を遮ることが出来たからだ。
とは言え厳しい状況だ。ミルはもう魔法が使えないと考えた方がいい。レルムはダメージをかなり受けている。
満身創痍の二人にホワイトファングが狙いを定めて飛びかかった。先ほどの大技を放ったせいか、ホワイトファングが纏っていた雷は全て消えているが二人にはこの攻撃を止める術は無い。
「させるかよっ!!」
二人を助けるべくレイヴンが割ってはいり、その両手で持つ大きなハンマーを下から上へ振り上げる。普通の振り上げでは威力もそこそこだろうがハンマーの反対側をブースト代わりに爆発を起こして振り上げる速度を加速させた。
見事にハンマーが当たるとホワイトファングを後ろに押し戻すことに成功した。
「遅かったわね」
安堵した顔を浮かべたレルムやミルを見てレイヴンは笑い掛ける。
「ああ。少し居眠りしてたんだ」
「まったく。寝過ぎだろ」
そんな馬鹿みたいな話をしている中でホワイトファングは口を開けていた。その口の中がバチバチと放電を始めている。
明らかに攻撃の意思を見せているホワイトファングだがレイヴンは落ち着いてそれを見ている。諦めたとかではなく相手の一挙手一投足を見逃さないためだ。
ホワイトファングの雷がチャージしきったのか口から雷撃の玉を飛ばした。体内で圧縮を繰り返した雷撃弾はかなりの破壊力を秘めている。だからこそレイヴンの技が光る。
「そいつはノシつけて返してやるよ!!」
レイヴンが飛んでくる雷撃弾に向かってハンマーをフルスイングした。真芯で捉えた雷撃弾に爆炎が加わって爆炎雷弾となったエネルギーの塊はホワイトファングへ真っ直ぐに向かって直撃し炎と雷と爆発が入り交じりながらモンスターを破壊していった。
「ふぅ……きつい相手だったな」
ようやく一息入れられた。そう思いながらミルへ視線を向けると異変に気づいた。
「ミル!?どうした!!」
顔は青ざめて体は震えている。怯えたようすの彼女が震えるままに言った。
「赤黒い魔力が……見える……」
「レイヴン!!」
物凄い速さで弾き飛ばされたレイヴンにミルがその名を呼ぶがピクリとも動かない。
「ミル!レイヴンがあんなので死ぬことはない。大丈夫だ。それより今はコイツを引き付けるぞ!」
レルムが動いた。ミルに言ったことを実行するためホワイトファングの回りを素早く移動する。
「近づくのは危険か……シャドーブレード」
レルムが刃に魔力を込めて発動させる。ジャマダハルの刃が漆黒に染まり、形状をそのままに黒い影の刃がまっすぐ伸びていく。攻撃範囲を伸ばすことができるレルムの技だ。
これで雷を纏っているホワイトファングに近寄らず切る事が可能となったレルムは浅くしか切れずとも攻撃を続ける。
「そうよね。私もやらなきゃ!」
怪力能天気馬鹿のレイヴンはアレでもリーダーだ。レルムの言う通りあの一撃だけで死ぬとは思えない。ならモンスターの気を引き付けてレイヴンが立て直す時間を稼ぐ方が先決だ。
「レルムどいて!!」
ミルが魔力を高めて魔法を発動した。モンスターの真上に輪っかが作られる。モンスターを中心に捉えているその輪っかが白から赤へと変わると輪っかの中心から大きな赤い球体が生まれ落ちた。
「ブラストエッグ!」
生まれ落ちた球体の魔法がモンスターへ直撃したと思いきやモンスターを中に取り込んだ。そしてその内側だけで爆発を繰り返す。
魔力を維持すればその時間だけ爆発は続く。だが、消費魔力量とそのコントロールを続けるのは精神的にも残りの魔力量的にもきつい。
「……このペースで魔法使っちゃうと厳しいかな……」
疲労の色を顔に出しながらミルは小さく呟く。
戦闘開始してから既に自分の魔力が半分まで消費しかかっている。このまま魔力を使用し続ければ倒れてしまうだろう。
だけどモンスターは魔法の中だ。それに先ほどのダメージだって残っているはず。だからこのままいけば……。
「あのモンスターを倒せる事が……なんて甘い希望をもっちゃだめ!しっかりしなさい私!!」
ここで希望に甘えて気を緩めればモンスターの餌になりかねない。そう思ってミルは気合いを入れ直す。だが、ホワイトファングが咆哮と共に放った衝撃波によって魔法が破壊され、その余波でミルが吹き飛ばされ――る前に回り込んでいたレルムが手を添えて支えた。
「ありがとう」
安心するのも束の間、ホワイトファングが跳躍した。狙いはレルムとミルだ。二人は直ぐにその場を移動するがホワイトファングが地面へ突進するような落下を行った際に発した雷に焼かれ吹き飛ばされてしまった。
二人は小さな悲鳴を上げながら宙を舞う。そのレルム達をホワイトファングは確りと捉えて攻撃を続けた。地面に落とさないように横に吹き飛ばしては回り込んでいた上にあげ、直ぐに回り込んで別方向へ叩き飛ばす。
「ぐわっ」「かはっ」「ぐっ」
攻撃を受ける度にレルムは苦痛の声を漏らす。自分の意思で地面へ下りることが叶わない今、レルムが出来ることはミルを体で覆って守ることだけだ。
なにせこのまま立て続けにミルが攻撃を受けるのは非常にまずい。
ミルは妖精だ。妖精は体を護る妖精の守護という妖精のみが使う魔法を掛ける。これは本人の魔力量によって防御力が変化する。そして攻撃を受ければその分魔力が削られてしまう。
先ほどから魔法を大量に使用していることと攻撃を受けていることでミルの魔力量もそろそろ厳しいはずだ。
……攻撃が止んだ?
未だに地面へつくことがないがホワイトファングからの攻撃の手が止まったのか追撃がやってこない。レルムは自由が効かない体勢でゆっくりと回る体に身を任せながら目を見開いた。やがて空を見上げる形になったときに攻撃が止まったわけを知ることとなる。
「止めを刺しに来たのか……」
宙を舞うレルムとミルへ高所からの急降下。レイヴンから受けた一撃を真似しているというようだった。だが、それ故に破壊力は想像がつく。
「くそっ……」
あの一撃をまともにくらえば生きていられる保証はない。
ホワイトファングとレルム達の間に光の花弁が集まっていく。ミルが魔道具で操っているのだ。この絶望的な状況でも何とか足掻こうとしている。
花弁は二人を守るために何層にもなって壁となった。その花の壁をホワイトファングはぶち破っていく。ただ、一枚破ることに勢いは少し落ちていき希望が見える。
ホワイトファングが全ての花弁をぶち破ってレルム達へと落ち、地面を破壊する勢いで激突すると激しい雷撃までもが降り注いだ。
「……レルム。大丈夫?」
よろよろと飛び上がって自分の無事を確かめたあとレルムへ近づく。
「なんとかな……」
まだ生き残れているのは直撃を免れたことが大きい。その理由がミルが重ねた光の壁により視界を遮ることが出来たからだ。
とは言え厳しい状況だ。ミルはもう魔法が使えないと考えた方がいい。レルムはダメージをかなり受けている。
満身創痍の二人にホワイトファングが狙いを定めて飛びかかった。先ほどの大技を放ったせいか、ホワイトファングが纏っていた雷は全て消えているが二人にはこの攻撃を止める術は無い。
「させるかよっ!!」
二人を助けるべくレイヴンが割ってはいり、その両手で持つ大きなハンマーを下から上へ振り上げる。普通の振り上げでは威力もそこそこだろうがハンマーの反対側をブースト代わりに爆発を起こして振り上げる速度を加速させた。
見事にハンマーが当たるとホワイトファングを後ろに押し戻すことに成功した。
「遅かったわね」
安堵した顔を浮かべたレルムやミルを見てレイヴンは笑い掛ける。
「ああ。少し居眠りしてたんだ」
「まったく。寝過ぎだろ」
そんな馬鹿みたいな話をしている中でホワイトファングは口を開けていた。その口の中がバチバチと放電を始めている。
明らかに攻撃の意思を見せているホワイトファングだがレイヴンは落ち着いてそれを見ている。諦めたとかではなく相手の一挙手一投足を見逃さないためだ。
ホワイトファングの雷がチャージしきったのか口から雷撃の玉を飛ばした。体内で圧縮を繰り返した雷撃弾はかなりの破壊力を秘めている。だからこそレイヴンの技が光る。
「そいつはノシつけて返してやるよ!!」
レイヴンが飛んでくる雷撃弾に向かってハンマーをフルスイングした。真芯で捉えた雷撃弾に爆炎が加わって爆炎雷弾となったエネルギーの塊はホワイトファングへ真っ直ぐに向かって直撃し炎と雷と爆発が入り交じりながらモンスターを破壊していった。
「ふぅ……きつい相手だったな」
ようやく一息入れられた。そう思いながらミルへ視線を向けると異変に気づいた。
「ミル!?どうした!!」
顔は青ざめて体は震えている。怯えたようすの彼女が震えるままに言った。
「赤黒い魔力が……見える……」
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