初めての異世界転生

藤井 サトル

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フェアリーダウン

レイヴンパーティへようこそ!

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「なぁ兄貴!良かったら一緒に依頼をやらないか!?」

 レイヴンの第一声は依頼のお誘いだった。

「レイヴン。まずはどんな依頼か大地に教えないと判断できないでしょ!?」

 目の前を飛んでいるのは妖精のミルだ。彼女が大地とレイヴンの間に入り叱りつけている。

「ダイチさん。依頼なんだけどここから南西に行ったところに町があるんだ。そこでの調査になるんだよ」

 レイヴンパーティの三人目であるレルムが依頼書を渡しながらそう言った。大地はその紙を受けとり目を移す。が……やはり読むことはできない。

「バカ!ダイチが文字を読めないのも知っているでしょ。渡してどうするのよ」

 今度はレルムに振り向いてミルが戒めるように言う。

「あー、俺が文字読めないのは知っているのか……」

「ここのギルドじゃ共通認識ですぜ!」

 大地の嘆きにレイヴンが嬉しそうに話す。本人は兄貴の事をわかっているんだぜ!と言うつもりなんだろうが、文字が読めない=頭が悪いのような劣等感に似たものを感じるためやるせなくなる。

「そうか……」

「因みに大地さん。文字が読めないって覚えることができないの?」

 レルムが興味本意でそう聞くと大地は依頼書へ視線を移した。

「覚えるって……このぐにゃぐにゃした棒の文字や、四角とかの記号で書かれている物をか?」

「え?……大地さんにはそう見えるのか」

 レルムが少し俯きながら考えるしぐさをとる。そして直ぐに顔をあげるとミルへ振り向いた。

「ミル。確か大地さんから何か変な感じがするって言ったよな」

「え?ええ、そうね。普通の人とは違うような感じよ」

「なるほど……もしかしたら大地さんの強さの原因が文字が読めなくしてるのかも知れないな」

 おお、当たりだ。レルムの推理力って半端ないな……。

「依頼書見てもらったのはちょっとした知的好奇心だったんだ。内容についてだけど南西の町の近くにある草原で小さな光る何かが飛んでいる事があるそうなんだ」

 小さな光る何か。大地はその言葉を聞いてミルへ視線を向けた。始めてあった時に光ながら来てくれた彼女の事を思い出したのだ。

 大地がどう考えたのか察したミルは頷いた。

「依頼書ではモンスターかもしれないという懸念で書かれてるんだけど、私も他の妖精なのかなって思ってるの。だからこの調査を引き受けてもらったのよ」

 ちらっとレイヴンへ目を向けたミルは直ぐに大地へと向く。

「妖精って外をふらふら飛んでいるものなのか?」

「ふらふらしているというより人間の世界をあまり知らないのよ。私達は妖精の国で生まれるんだけどあまり外に出ないの。たまに私のように外へ出てくるのがいるくらいよ」

 引きこもり体質か。まぁ人間は横暴な面もあるし、騙したりもするから関わりを持ちたくないのかもしれないな。

「それで国から出てきたばかりの妖精ならこの世界の事を教えてあげないとって思ったのよ」

「悪い奴に捕まる前に……か。でもその調査って俺を誘うメリット無いんじゃないのか?」

 話聞く限り難しそうな依頼ではなさそうだ。であればレイヴン達三人でも余裕だろうし、俺を誘えばその分の報酬が減る。

 ミルの後を引き継ぐようにレルムが口を開いた。

「始めてやるSランクの依頼なんだよ。もし調査してモンスターだった場合は恐らくウィスプってSランクモンスターのはずだ。小さくて光る奴なんて早々居ないからね」

「Sランクってレイヴン達はAランクじゃなかったか?」

 レイヴンがにやにやしてこちらを見ていた。まるでその話をして欲しかった子供のように。

「兄貴。俺のランクはSになったんですよ!」

「ほー。頑張ったな」

 レイヴンが嬉しそうに見せてきたギルドカードには確かにSの文字が刻まれていた。

「まぁ……クラリス姉さんにしごかれたおかげでもあるけど……」

 ホロリとクラリスが主導の修行理不尽を思い出して涙するレイヴンを無視してミルは大地の回りをくるくる回った後に大地の肩に止まる。

「私とレルムはまだA何だけどレイヴンがSだから受けられるのよ」

「……なぁ一つ聞いて良いか?」

「いいけど、何が聞きたいの?」

「レイヴンがランクをSに上げるのはわかるんだが、ミルとレルムがランクをあげる意味ってあるのか?同じパーティだろ?」

 前から少しだけ気になっていたこと、パーティで他のメンバーがランクを上げる理由だ。例えばグラネスがBランクで止まっているのはリリアから離れないためである。

 ランクA以上になればギルドから個人に依頼が飛んでくることがあるという。それはパーティを組んでいても変わらないらしい。つまり場合によってはパーティ全員にバラバラの依頼が飛んでくる可能性もあるわけだ。
 であればリーダーだけランクを上げておいたほうがいいんじゃなかろうか?

「いくつか有るんだ」

 その疑問にはレルムが口を開いてくれた。

「例えば何らかの理由でパーティを解散した場合とかだと、個人のランクがないと別のパーティに入るにも難しかったり」

 ふむ。ランク=実績なら確かにそうだ。

「複数の依頼を同時に受ける事も出来る。例えばレイヴンがSランクを、俺がAランクの依頼を同時に受けたりな」

 レルムが続けて言う。

「最後にホワイトキングダムではこれが一番大事何だが……奴隷じゃない証明になる」

 あー。

 フルネールがカイ青年達に疑われた苦い思い出が蘇る。あれもギルド登録させておけば防げた事かもしれない。

「なるほどな……。話を戻すが俺を誘うのはモンスターだった時の保険か」

「そうなんだよ兄貴。頼めないかな?」

 そう言うことなら仕方ない。それにSランクともなれば報酬はウハウハだろう。だが承諾する前にフルネールとレヴィアにも聞いてみないとな。

 大地は振り替えり掲示板へと目を向けるがフルネールの姿が見当たらない。彼女が消えていて驚いていると逆方向から「大地さん。こっちですよ?」とフルネールの声が聞こえてきた。再び振り替えると大地の頬に人指し指の感触が刺さった。

「簡単に引っ掛かるんですね♪」

「何すんだ……」

 フルネールが指を離したことでようやく振り向けるとレヴィアもすぐ近くに来ていた事に気づいた。

「レヴィアも一緒か」

「うん。大地。ちょっとフルネールと出掛けてきてもいいかしら?」

 二人で出掛けたいだなんて珍しいことを言うレヴィアだ。話ぶりからフルネールも行くのなら何も問題はないだろう。

「ん?何処か行きたいのか?」

 珍しいと思ったことでつい聞いてしまった。特に他意は無かった事だったがフルネールから「レヴィアちゃんだって女の子なんですよ!」と窘められてしまった。

「そ、そうか。悪い……。まぁそのフルネールと行ってきて構わないぞ。俺はこいつらと一緒に依頼をしてくるからさ」

 そう言って親指の先をレイヴンへと向けて言うとフルネールは了承したように頷いた。
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