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温泉の中の金と銀
聖女と騎士
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残ったのは強化された3体のモンスターだ。このまま放置すれば確実にベルナーに被害が出てしまう。だが、強化されたモンスターはかなり強くなっているかもしれない。それがわるのは子供のナインテイルの尻尾の数が3本から9本に変わっていることで上がり幅が高いことを示しているからだ。
「リリア、レヴィア、クラリス、アルメルス。そのモンスター達を頼む」
「わかった」
「うん!……ダイチさん。ナルちゃんをお願いします」
リリアとアルメルスは後ろへ走って行く。それと入れ違いでフルネールがやって来た。
「私はどうします?」
「あー。いいよ、お前は俺のそばにいれば」
どのみち戦えないのならリリア達の近くにいる方が邪魔になるだろう。
「はーい!それじゃあやっぱり応援しますね!皆さんがんばれー!!」
そんな能天気な応援にアルメルスが「え、えーとあれは何だ?」と誰にいうわけでもなく呟くのだが、それにはリリアが反応した。
「え、えっと。神様ですよ?」
つい本当の事を口走ってしまったが、アルメルスは「……幸運の女神とかそういう話ですか」等と明後日の方向へ勘違いした後、ブラッディスへ剣を構えた。
「リリア様、来ます!」
「はい!」
リリアが杖を構える。相手はSランクだと考えた方がいいだろう。自分だけでは勝ち目がないがアルメルスが協力してくれるなら勝機はある。
「はぁっ!!」
アルメルスが気合いと共に剣を振り抜く。鋭い一刀はブラッディスへ吸い込まれるように伸びていくがブラッディスの禍々しい鎌がそれを弾く。それと同時に余ったもう片方の鎌がアルメルスに振り下ろされた。
「くっ……」
何とか反応しきってその一撃を防ぎはしたもののアルメルスは剣から伝わる衝撃に苦痛の声がこぼれた。
しかし、ブラッディスの攻撃は続く。連続で振られるその鎌は先の一撃よりも軽いが鎌の鋭さが攻撃力を補っている。
一人で戦う決めたアルメルスだが実際に倒せるかは難しいところだ。早い連撃を防ぐだけで手一杯いなのだ。しかし、その刃の雨の中で攻め込む隙を探さないといけない。
「リリア様、下がっていてください!」
何度もブラッディスの鎌を防ぎながらアルメルスはリリアを遠ざける。守り傷つけないために。それはアルメルスの見立てではリリアでは力不足であり戦うのは危険という判断だ。その考えはあまりにも騎士らしいとも言える。
「貴女の身に何かあれば私が王に顔向けできません……!」
……リリアの事を知らなければという話だが。
ガキィン。と剣が弾かれる音が響いた。リリアの事を気にかけた一瞬の隙をついたブラッディスが重い一撃を繰り出したのだ。
「しまった!!」
鎧を着ているとは言え無防備な状態だ。そんなアルメルスの命を奪う一撃が振り下ろされた。避けることは出来ないと判断したアルメルスは両腕をクロスさせた。しかし本人もこれで耐えきれる可能性は低いとわかっている。だがこれしか出来ることはない。
「アルメルスさん。私は嫌です!」
リリアがアルメルスの前へ出ると自分とブラッディスの間に魔法の壁を張った。鎌は魔法の壁に当たると物凄い音を響かせる。
「アルメルスさん。今のうちに剣を!!」
その声と共に体が反応した。地面へ落ちた剣を拾い上げたアルメルスはすぐさまブラッディスへと斬りかかるとブラッディスは後ろに大きく避ける。
「リリア様。あとは私が――」
「嫌です。私も戦います」
「ですが!!」
リリアも危険な相手だとわかっている。だからといって安全な場所で待っているわけにはいかない。その理由は色々だが……もっと強くなりたいと思ったからだ。
「アルメルスさん。話している暇はありません。来ます!」
モンスター特有の音を出しながらこちらに向かってきているブラッディスを見て確かに話している場合ではない。アルメルスが諦めて剣を構える。
「アルメルスさん。私が隙を作りますから、とどめをお願いします」
リリアは杖に魔力を溜め始めた。この魔法が発動するまでの間はアルメルスが防いでくれている。それは激しい金属音が鳴り続ける事で教えてくれる。だから自分は集中する。この魔法に込めるのは自分が持つありったけの技術だ。
「アルメルスさん。行きます!!」
杖の宝玉が一段と光輝く。
「封魔の光環!!」
リリアが魔法を唱えると5つの光の輪がブラッディスを押さえ込むように出現した。
「アルメルスさん。お願いします!」
光の輪はブラッディスの動きを封じる事が出来る。ただし相手が抵抗すれば光の輪は砕けて効果を失ってしまう。
海龍より遥かに強くなっているブラッディスとの実力差はかなり離れているとリリアもわかっている。だけど、海龍の時の自分ではない。いつ死んでもいいなんて思えない。今を生きるために戦う覚悟をもってやるんだ。
ブラッディスの体が少しずつ動くにつれて光の輪にヒビが入っていく。このままいけば数秒で割れてしまうだろう。だから、リリアは魔力の放出を続けて壊れないように抗う。
「絶対に負けません!負けないんだから!!」
その気合いの掛け声と共に魔力の放出を増やす。それに比して光の輪のヒビが修復されていく。
リリアが作った好機を逃しはしない。アルメルスのその思いを自身の剣に込める。アルメルスの剣に眩い光が纏う。その剣を横に倒し剣先をブラッディスへと向けた。
「スターランス!」
そう叫ぶと同時にアルメルスは剣を突きだすと剣先から光の槍が放たれた。その光の槍の軌跡を表すように光子が残されている。もし今の時間が夜であればさながら星の海を連想させていたことだ。
そして光の槍はブラッディスへと向かっていき、その巨体に大きな風穴を空けて絶命させた。
「リリア、レヴィア、クラリス、アルメルス。そのモンスター達を頼む」
「わかった」
「うん!……ダイチさん。ナルちゃんをお願いします」
リリアとアルメルスは後ろへ走って行く。それと入れ違いでフルネールがやって来た。
「私はどうします?」
「あー。いいよ、お前は俺のそばにいれば」
どのみち戦えないのならリリア達の近くにいる方が邪魔になるだろう。
「はーい!それじゃあやっぱり応援しますね!皆さんがんばれー!!」
そんな能天気な応援にアルメルスが「え、えーとあれは何だ?」と誰にいうわけでもなく呟くのだが、それにはリリアが反応した。
「え、えっと。神様ですよ?」
つい本当の事を口走ってしまったが、アルメルスは「……幸運の女神とかそういう話ですか」等と明後日の方向へ勘違いした後、ブラッディスへ剣を構えた。
「リリア様、来ます!」
「はい!」
リリアが杖を構える。相手はSランクだと考えた方がいいだろう。自分だけでは勝ち目がないがアルメルスが協力してくれるなら勝機はある。
「はぁっ!!」
アルメルスが気合いと共に剣を振り抜く。鋭い一刀はブラッディスへ吸い込まれるように伸びていくがブラッディスの禍々しい鎌がそれを弾く。それと同時に余ったもう片方の鎌がアルメルスに振り下ろされた。
「くっ……」
何とか反応しきってその一撃を防ぎはしたもののアルメルスは剣から伝わる衝撃に苦痛の声がこぼれた。
しかし、ブラッディスの攻撃は続く。連続で振られるその鎌は先の一撃よりも軽いが鎌の鋭さが攻撃力を補っている。
一人で戦う決めたアルメルスだが実際に倒せるかは難しいところだ。早い連撃を防ぐだけで手一杯いなのだ。しかし、その刃の雨の中で攻め込む隙を探さないといけない。
「リリア様、下がっていてください!」
何度もブラッディスの鎌を防ぎながらアルメルスはリリアを遠ざける。守り傷つけないために。それはアルメルスの見立てではリリアでは力不足であり戦うのは危険という判断だ。その考えはあまりにも騎士らしいとも言える。
「貴女の身に何かあれば私が王に顔向けできません……!」
……リリアの事を知らなければという話だが。
ガキィン。と剣が弾かれる音が響いた。リリアの事を気にかけた一瞬の隙をついたブラッディスが重い一撃を繰り出したのだ。
「しまった!!」
鎧を着ているとは言え無防備な状態だ。そんなアルメルスの命を奪う一撃が振り下ろされた。避けることは出来ないと判断したアルメルスは両腕をクロスさせた。しかし本人もこれで耐えきれる可能性は低いとわかっている。だがこれしか出来ることはない。
「アルメルスさん。私は嫌です!」
リリアがアルメルスの前へ出ると自分とブラッディスの間に魔法の壁を張った。鎌は魔法の壁に当たると物凄い音を響かせる。
「アルメルスさん。今のうちに剣を!!」
その声と共に体が反応した。地面へ落ちた剣を拾い上げたアルメルスはすぐさまブラッディスへと斬りかかるとブラッディスは後ろに大きく避ける。
「リリア様。あとは私が――」
「嫌です。私も戦います」
「ですが!!」
リリアも危険な相手だとわかっている。だからといって安全な場所で待っているわけにはいかない。その理由は色々だが……もっと強くなりたいと思ったからだ。
「アルメルスさん。話している暇はありません。来ます!」
モンスター特有の音を出しながらこちらに向かってきているブラッディスを見て確かに話している場合ではない。アルメルスが諦めて剣を構える。
「アルメルスさん。私が隙を作りますから、とどめをお願いします」
リリアは杖に魔力を溜め始めた。この魔法が発動するまでの間はアルメルスが防いでくれている。それは激しい金属音が鳴り続ける事で教えてくれる。だから自分は集中する。この魔法に込めるのは自分が持つありったけの技術だ。
「アルメルスさん。行きます!!」
杖の宝玉が一段と光輝く。
「封魔の光環!!」
リリアが魔法を唱えると5つの光の輪がブラッディスを押さえ込むように出現した。
「アルメルスさん。お願いします!」
光の輪はブラッディスの動きを封じる事が出来る。ただし相手が抵抗すれば光の輪は砕けて効果を失ってしまう。
海龍より遥かに強くなっているブラッディスとの実力差はかなり離れているとリリアもわかっている。だけど、海龍の時の自分ではない。いつ死んでもいいなんて思えない。今を生きるために戦う覚悟をもってやるんだ。
ブラッディスの体が少しずつ動くにつれて光の輪にヒビが入っていく。このままいけば数秒で割れてしまうだろう。だから、リリアは魔力の放出を続けて壊れないように抗う。
「絶対に負けません!負けないんだから!!」
その気合いの掛け声と共に魔力の放出を増やす。それに比して光の輪のヒビが修復されていく。
リリアが作った好機を逃しはしない。アルメルスのその思いを自身の剣に込める。アルメルスの剣に眩い光が纏う。その剣を横に倒し剣先をブラッディスへと向けた。
「スターランス!」
そう叫ぶと同時にアルメルスは剣を突きだすと剣先から光の槍が放たれた。その光の槍の軌跡を表すように光子が残されている。もし今の時間が夜であればさながら星の海を連想させていたことだ。
そして光の槍はブラッディスへと向かっていき、その巨体に大きな風穴を空けて絶命させた。
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