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温泉の中の金と銀
夜空の騎士アルメルス
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アルメルスが剣を構えるとナインテイルではなく大地へと斬りかかった。完全に標的を大地に変えたのだ。すぐに反応した大地は先程と同じように剣を振って迎え撃つ。一段と増した鈍い金属音の大きさから先程よりも威力、速さ、鋭さが上がっていて攻撃力が高くなっているのがわかる。
次々と鳴る金属音からぶつかり合っているのはわかるが、その剣速は既にクラリスでも見極めること難しくなっていた。
「クラリスさん。混ざらなくていいんですか?」
そんなクラリスにフルネールは公園で遊ぶ子供達の中に入れば?のようなニュアンスで言うが、クラリスとしては冗談じゃない。大地とアルメルスの間に入ろうものなら限界ギリギリの戦いになってしまう。
「や、やだよ!!あの中に入ったら三枚に下ろされちゃうよ!!」
「三枚……?ああ、服と下着とクラリスさんにですね。きっと大地さんは喜びますよ!」
「ほんと……?じゃない!!むりムリ無理ー!」
手をブンブンさせながら顔を真っ赤に染めるクラリスを見てフルネールは満足する。
「ナルちゃんが怯えてしまっています……」
リリアが大地とアルメルスの奥にいるナインテイルの子供を見て呟く。そのナインテイルの子供は目の前で風を切り裂く剣の音と、その剣同士がぶつかり合う金属音が鳴り響いて地獄の中にいる心境だが母親ナインテイルの前から動こうとしない。だが、威嚇行動をするでもないその姿は縮こまっていて震えている。
「ナルちゃん……ってナインテイルの子供のことですか」
「はい。大地さんがナルちゃんの為に戦ってくれてますけど、私は何ができるのでしょうか」
当然リリアが介入できるレベルの戦いではない。それは彼女もわかっているからこそ無闇に近づかないし無理にナインテイルを助けにもいかない。ただ、金属音が鳴る度にナインテイルがビクつく姿があまりにも気の毒で……何もできない自分はこのまま耐えないといけないのが辛い。
金属音が鳴り止むことは無い。とは言え大地が本気を出して戦っているかというとそうでもないのだ。仮に大地が本気でアルメルスを殺しにかかるとしたら……。
一手目
閃光手榴弾で目眩ましor驚かす(たぶんイケる)
二手目
アルメルスの心臓を狙って突き刺しにかかるがアルメルスは後ろへ下がると思う(たぶんイケる)
三手目
後ろへ飛んでいるアルメルスをロケットランチャーで粉々にする(たぶんイケる)
という感じで三手でイケるのだ?しかしそれをしないのはリリアが悲しむからだ。
「なぁ、一つ聞いて良いか?」
「この打ち合いの中で余裕だね」
「しゃべるくらいは出来るだろ!」
「これを防いだら答えてあげるよ!」
アルメルスの斬撃が大地を襲う。横の振り払いと縦の振り下ろし。それをほぼ同時に繰り出すアルメルスの『星十字斬り』だ。対象を正確に捉えたこの斬撃は左右にも上下にも逃げることを許さない。
アルメルスが剣を振り終わった時には目の前に大地の姿はいなかった。だが、斬った手ごたえは何もない。
「それじゃあ質問の時間だ」
アルメルスと背中合わせに立った大地がそう呟いた。
いつの間にかに真後ろへ移動していた大地に悪寒を覚えながらも「……答えるよ」とあくまで平静を装いながらアルメルスは応じる。
「そこのナインテイルを殺したのは……お前か?」
クラリスが言っていた『刃物で切られている』と。そしてナインテイルを狙ったこととアルメルスの武器が長剣であることを考えれば十分にあり得る。
「何故そんなことを聞きたがるのか知らないが……俺ではないな」
「お前じゃないのか……」
「……恐らく邪魔だったんだろうな」
「邪魔……?」
一人納得しながら言うアルメルスは剣を下ろしながらぼそりと言った後、大地へ興味深そうに聞く。
「俺からも一つ質問だが、そこのモンスターは人に迷惑をかけているんだろう?なのに情が移っただけで守るのはどうしてだ?」
「……少なくとも、それが何であれ親を思って行動するガキに目くじらを立てるのが気に入らないからな」
「俺が気に食わないから退く気はない。そういうことなんだな?」
「ああ。そうなるな」
二人は離れるように距離を取ると再び剣を構えなおす。
「はぁ……俺の言葉は届かないか」
「いや。十分届いてるし、お前の言っている事が正しいのだと理解している」
「でも退かないんだろう?」
「当然。気に食わないものが立ちふさいで来たら真正面から立ち向かわないといけないからな」
二人の剣が煌めいた瞬間、合図もなしに二人同時に飛び出して衝突する。
「今、あいつが来たらそこのモンスターは利用されるだけなんだぞ!」
「さっきからよくわからな……利用だと?」
アルメルスが気になった一言をいい放った。『利用』それは……言い換えるなら操るとも取れるだろう。何を操るのか。それは口ぶりからモンスターだとわかる。
一つ一つのピースが埋まっていく感覚だ。目の前のアルメルスは恐らくSランクモンスターを操る人物を追ってきたのかもしれない。その操る人物の名前は先ほど言っていた『ザルドーラ』というやつなのだろう。
「仕方がない。この一撃で全てを消し飛ばす。恨むならここまで粘った自分を恨んでくれよ!」
アルメルスの剣が輝いていく。その威圧と蓄積されていくエネルギーが膨大なことからとんでもない一撃が来ることはわかる。やっとアルメルスの目的が分かってきたところで話し合いにならないんじゃ意味がないのだが……ここで何もしなければ近くのナインテイルも、リリア達も無事で済まないかもしれない。
――だからこちらも迎撃しなければならない。全力で押し返すために。
大地の腕に四角い機械が出現した。10段階チャージ式のその武器は大地の魔力をエネルギー源とする。MAXチャージの威力は折り紙付きである『ハンドバスター』だ。
高密度のエネルギーが二人に集まっていく。そしてそのエネルギーがぶつかり合うはずなのだが……突然、リリアが二人の間に割って入ってしまった。
「もう、許してあげてください。ナルちゃんが可哀想です……!」
次々と鳴る金属音からぶつかり合っているのはわかるが、その剣速は既にクラリスでも見極めること難しくなっていた。
「クラリスさん。混ざらなくていいんですか?」
そんなクラリスにフルネールは公園で遊ぶ子供達の中に入れば?のようなニュアンスで言うが、クラリスとしては冗談じゃない。大地とアルメルスの間に入ろうものなら限界ギリギリの戦いになってしまう。
「や、やだよ!!あの中に入ったら三枚に下ろされちゃうよ!!」
「三枚……?ああ、服と下着とクラリスさんにですね。きっと大地さんは喜びますよ!」
「ほんと……?じゃない!!むりムリ無理ー!」
手をブンブンさせながら顔を真っ赤に染めるクラリスを見てフルネールは満足する。
「ナルちゃんが怯えてしまっています……」
リリアが大地とアルメルスの奥にいるナインテイルの子供を見て呟く。そのナインテイルの子供は目の前で風を切り裂く剣の音と、その剣同士がぶつかり合う金属音が鳴り響いて地獄の中にいる心境だが母親ナインテイルの前から動こうとしない。だが、威嚇行動をするでもないその姿は縮こまっていて震えている。
「ナルちゃん……ってナインテイルの子供のことですか」
「はい。大地さんがナルちゃんの為に戦ってくれてますけど、私は何ができるのでしょうか」
当然リリアが介入できるレベルの戦いではない。それは彼女もわかっているからこそ無闇に近づかないし無理にナインテイルを助けにもいかない。ただ、金属音が鳴る度にナインテイルがビクつく姿があまりにも気の毒で……何もできない自分はこのまま耐えないといけないのが辛い。
金属音が鳴り止むことは無い。とは言え大地が本気を出して戦っているかというとそうでもないのだ。仮に大地が本気でアルメルスを殺しにかかるとしたら……。
一手目
閃光手榴弾で目眩ましor驚かす(たぶんイケる)
二手目
アルメルスの心臓を狙って突き刺しにかかるがアルメルスは後ろへ下がると思う(たぶんイケる)
三手目
後ろへ飛んでいるアルメルスをロケットランチャーで粉々にする(たぶんイケる)
という感じで三手でイケるのだ?しかしそれをしないのはリリアが悲しむからだ。
「なぁ、一つ聞いて良いか?」
「この打ち合いの中で余裕だね」
「しゃべるくらいは出来るだろ!」
「これを防いだら答えてあげるよ!」
アルメルスの斬撃が大地を襲う。横の振り払いと縦の振り下ろし。それをほぼ同時に繰り出すアルメルスの『星十字斬り』だ。対象を正確に捉えたこの斬撃は左右にも上下にも逃げることを許さない。
アルメルスが剣を振り終わった時には目の前に大地の姿はいなかった。だが、斬った手ごたえは何もない。
「それじゃあ質問の時間だ」
アルメルスと背中合わせに立った大地がそう呟いた。
いつの間にかに真後ろへ移動していた大地に悪寒を覚えながらも「……答えるよ」とあくまで平静を装いながらアルメルスは応じる。
「そこのナインテイルを殺したのは……お前か?」
クラリスが言っていた『刃物で切られている』と。そしてナインテイルを狙ったこととアルメルスの武器が長剣であることを考えれば十分にあり得る。
「何故そんなことを聞きたがるのか知らないが……俺ではないな」
「お前じゃないのか……」
「……恐らく邪魔だったんだろうな」
「邪魔……?」
一人納得しながら言うアルメルスは剣を下ろしながらぼそりと言った後、大地へ興味深そうに聞く。
「俺からも一つ質問だが、そこのモンスターは人に迷惑をかけているんだろう?なのに情が移っただけで守るのはどうしてだ?」
「……少なくとも、それが何であれ親を思って行動するガキに目くじらを立てるのが気に入らないからな」
「俺が気に食わないから退く気はない。そういうことなんだな?」
「ああ。そうなるな」
二人は離れるように距離を取ると再び剣を構えなおす。
「はぁ……俺の言葉は届かないか」
「いや。十分届いてるし、お前の言っている事が正しいのだと理解している」
「でも退かないんだろう?」
「当然。気に食わないものが立ちふさいで来たら真正面から立ち向かわないといけないからな」
二人の剣が煌めいた瞬間、合図もなしに二人同時に飛び出して衝突する。
「今、あいつが来たらそこのモンスターは利用されるだけなんだぞ!」
「さっきからよくわからな……利用だと?」
アルメルスが気になった一言をいい放った。『利用』それは……言い換えるなら操るとも取れるだろう。何を操るのか。それは口ぶりからモンスターだとわかる。
一つ一つのピースが埋まっていく感覚だ。目の前のアルメルスは恐らくSランクモンスターを操る人物を追ってきたのかもしれない。その操る人物の名前は先ほど言っていた『ザルドーラ』というやつなのだろう。
「仕方がない。この一撃で全てを消し飛ばす。恨むならここまで粘った自分を恨んでくれよ!」
アルメルスの剣が輝いていく。その威圧と蓄積されていくエネルギーが膨大なことからとんでもない一撃が来ることはわかる。やっとアルメルスの目的が分かってきたところで話し合いにならないんじゃ意味がないのだが……ここで何もしなければ近くのナインテイルも、リリア達も無事で済まないかもしれない。
――だからこちらも迎撃しなければならない。全力で押し返すために。
大地の腕に四角い機械が出現した。10段階チャージ式のその武器は大地の魔力をエネルギー源とする。MAXチャージの威力は折り紙付きである『ハンドバスター』だ。
高密度のエネルギーが二人に集まっていく。そしてそのエネルギーがぶつかり合うはずなのだが……突然、リリアが二人の間に割って入ってしまった。
「もう、許してあげてください。ナルちゃんが可哀想です……!」
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