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温泉の中の金と銀
観光地だってトラブルはあるもの
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しかし、フルネールに怒るリリアは始めてみたな。これはフルネールの神の威厳が落ちたか、或いはリリアが神様を盲信せずフルネールを確りと見極めようとしているか。どちらだろうか?
せめて、後者であってほしいです。大地さん助けて!リリアちゃんに嫌われちゃいますー!
んー?そうだな。普段助けて貰ってるし恩返しでもしとこうか。
ありがとうございます!大地さんは神様ですね!
神はお前だ。
「リリア?」
「はい?」
大地に振り向くリリアは膨れっ面から戻っていた。それを見てあんまり怒りきれてないのだろう。
「羽を伸ばしに来てるんだ。そろそろ許して楽しまないか?」
「……そうですね。えっとフルネールさんごめんな――」
「リリアちゃんが謝ることは無いんですよー!」
そう言いながらフルネールが彼女を抱き締める。
あんまりやり過ぎるなよ……。
はい。あ!後でお礼にこのおつまみのお肉あげますね!
お、おう。ありがとよ。
フルネールはつまみの肉を何時もの謎空間へと隠してしまう。リリアと違って魔道具を使っていないのだからリリアはそれを何度見ても不思議に思う。
これで一件落着だろう。そう思われたのだが、大地が視線を動かした先にクラリスがいた。その子で視線が止まったのは自然の流れだろう。何せ彼女はこちらに向かって歩み寄ってきているのだから。
「ダイチさん。はい!」
クラリスが笑顔で手を差し出してきた。何かほしいのかと考えていると再びクラリスが口を開く。
「私も手を握ってくれますか?」
上目遣いで甘えるように言ってきた彼女は恐らくそれを意識してやっているのかもしれない。が、それでも可愛いものはしょうがない。たぶん可愛いは正義ってこういうことだ。
「いや。俺で良いならな」
ま、まぁ。可愛い女の子と手を繋げるだけでも役得……だよな。
手を握られたクラリスが黙ってしまったので何時まで握っていれば良いのかわからず、助けを求めるようにさらに視線を動かすとグラネス達が目についた。……は良いんだがグラネス、メリナ、ライズは盛大に酒盛りを始めていてこちらには目もくれなかった。
しばらくしてようやく場が落ち着くと旅行あるある町並みの観光である。全員でといかなかったのはライズとメリナはグラネスのペースに飲まれて酔いつぶれ、シャーリーが二人の看病を申し出たのだ。
リリアも一緒に看病をと名乗りでもしたがシャーリーが「楽しんできてね」と言って止めていた。
そのため今の人員は大地、リリア、フルネール、レヴィア、クラリスの5人だ。
「しかし、モンスター用の浴衣まであるんだな」
レヴィアが着ている浴衣は尻尾用の穴が開いているタイプだ。サイズ感も丁度よくて着にくそうという感じはしない。
「人型モンスターと契約している人もいるからね」
レヴィアと並んで歩きながらクラリスが教えてくれる。
「それに、私達のような亜人にも尻尾があるから合わせた浴衣を用意してくれてるの助かるの」
普段はドレスのスカートの中に隠れてしまっている丸っこい尻尾は浴衣の穴から出て見えている状態だ。
「そうか、クラリスにも尻尾は合ったんだな」
「え?う、うん。普段は見られても意識しないけど……そんな風にじっと見られるとちょっと恥ずかしいかも……」
「悪い。これからは気を付けるよ」
慌てて別方向へ振り向いて事案を華麗に回避した。クラリスがもし問答無用で叫んでいたら危なかったかもしれん。
「あれ?あのお店が少し騒がしいです」
リリアが少し先の道で人だかりができている店を発見した。その集まりから色々と喧騒がこちらに届いてくる。何を話しているかは遠すぎてわからないが声量からして怒っているのは間違いなさそうである。
「くそっ!またやられた!!」
店主がそう怒号を叫ぶ様はイラついているのがよくわかる。回りの人達もその惨状を見てしかめ面だ。
「これで6回目か?」
「俺んところは5回だな」
「俺んところなんて8回はやられてるよ……」
思い思いに吐露する内容はどれも店を荒らされた……否、食べ物を盗まれた事への愚痴である。それはここのところ頻繁に発生し始めていて複数の店が頭を痛めている。
お客の相手をしていると気づけば作った料理……特に手で持ち運んで歩きながらすぐ食べれるようなものばかりが盗まれる。これが続けば店は赤字……とまでは言わないが手痛いのは間違いない。
そんな集団に大地達は近づくとようやくと声を聞くことができた。
「何かあったのか?」
野次馬根性を出した大地は声をかけてみることにした。
せっかくの温泉だし変なトラブルがあるとゆっくり休めないかも知れないからな……。
「あん?あんた達は誰だ?」
テーブルに乗せておいた料理を盗まれた店主は苛立ちのままにギロリと睨みを効かせながら大地へと向いた。
……客に向ける視線じゃねぇ。ほらリリアが怖がって無表情のまま後ろに下がったじゃないか。や、まぁ野次馬根性を出したのは俺だがその代償が怒りの視線だなんて思わないだろ。
「俺たちは温泉に浸かりに来た観光客だ」
「ああ……観光客か」
店主が納得したように呟いた。それは大地の言葉を信じたのではない。大地が着ている浴衣、そこに書かれている宿の名前を見て観光客だと正否を判断したのだ。
「何かあったなんてもんじゃないぜ串焼きがまた盗られたんだよ」
その店主が怒りのままにそう言った。『また』と言うことは何度か被害に遭っているのだろう。それならばうんざりして苛立つのもわからなくはない。
ただ、その怒りのままに荒々しい言葉を観光客に飛ばすのは如何なものだろうか?もうちょっと接客業を学んでほしいところだ。
説明し終えた店主の視線は大地からフルネール、そしてレヴィアへと向いた。彼女はこの場にいる唯一のモンスターであり怪しむのには十分だろう。
「あん?モンスターか?」
店主がレヴィアを視認すると苛立ちを隠さないままそう口にした。
せめて、後者であってほしいです。大地さん助けて!リリアちゃんに嫌われちゃいますー!
んー?そうだな。普段助けて貰ってるし恩返しでもしとこうか。
ありがとうございます!大地さんは神様ですね!
神はお前だ。
「リリア?」
「はい?」
大地に振り向くリリアは膨れっ面から戻っていた。それを見てあんまり怒りきれてないのだろう。
「羽を伸ばしに来てるんだ。そろそろ許して楽しまないか?」
「……そうですね。えっとフルネールさんごめんな――」
「リリアちゃんが謝ることは無いんですよー!」
そう言いながらフルネールが彼女を抱き締める。
あんまりやり過ぎるなよ……。
はい。あ!後でお礼にこのおつまみのお肉あげますね!
お、おう。ありがとよ。
フルネールはつまみの肉を何時もの謎空間へと隠してしまう。リリアと違って魔道具を使っていないのだからリリアはそれを何度見ても不思議に思う。
これで一件落着だろう。そう思われたのだが、大地が視線を動かした先にクラリスがいた。その子で視線が止まったのは自然の流れだろう。何せ彼女はこちらに向かって歩み寄ってきているのだから。
「ダイチさん。はい!」
クラリスが笑顔で手を差し出してきた。何かほしいのかと考えていると再びクラリスが口を開く。
「私も手を握ってくれますか?」
上目遣いで甘えるように言ってきた彼女は恐らくそれを意識してやっているのかもしれない。が、それでも可愛いものはしょうがない。たぶん可愛いは正義ってこういうことだ。
「いや。俺で良いならな」
ま、まぁ。可愛い女の子と手を繋げるだけでも役得……だよな。
手を握られたクラリスが黙ってしまったので何時まで握っていれば良いのかわからず、助けを求めるようにさらに視線を動かすとグラネス達が目についた。……は良いんだがグラネス、メリナ、ライズは盛大に酒盛りを始めていてこちらには目もくれなかった。
しばらくしてようやく場が落ち着くと旅行あるある町並みの観光である。全員でといかなかったのはライズとメリナはグラネスのペースに飲まれて酔いつぶれ、シャーリーが二人の看病を申し出たのだ。
リリアも一緒に看病をと名乗りでもしたがシャーリーが「楽しんできてね」と言って止めていた。
そのため今の人員は大地、リリア、フルネール、レヴィア、クラリスの5人だ。
「しかし、モンスター用の浴衣まであるんだな」
レヴィアが着ている浴衣は尻尾用の穴が開いているタイプだ。サイズ感も丁度よくて着にくそうという感じはしない。
「人型モンスターと契約している人もいるからね」
レヴィアと並んで歩きながらクラリスが教えてくれる。
「それに、私達のような亜人にも尻尾があるから合わせた浴衣を用意してくれてるの助かるの」
普段はドレスのスカートの中に隠れてしまっている丸っこい尻尾は浴衣の穴から出て見えている状態だ。
「そうか、クラリスにも尻尾は合ったんだな」
「え?う、うん。普段は見られても意識しないけど……そんな風にじっと見られるとちょっと恥ずかしいかも……」
「悪い。これからは気を付けるよ」
慌てて別方向へ振り向いて事案を華麗に回避した。クラリスがもし問答無用で叫んでいたら危なかったかもしれん。
「あれ?あのお店が少し騒がしいです」
リリアが少し先の道で人だかりができている店を発見した。その集まりから色々と喧騒がこちらに届いてくる。何を話しているかは遠すぎてわからないが声量からして怒っているのは間違いなさそうである。
「くそっ!またやられた!!」
店主がそう怒号を叫ぶ様はイラついているのがよくわかる。回りの人達もその惨状を見てしかめ面だ。
「これで6回目か?」
「俺んところは5回だな」
「俺んところなんて8回はやられてるよ……」
思い思いに吐露する内容はどれも店を荒らされた……否、食べ物を盗まれた事への愚痴である。それはここのところ頻繁に発生し始めていて複数の店が頭を痛めている。
お客の相手をしていると気づけば作った料理……特に手で持ち運んで歩きながらすぐ食べれるようなものばかりが盗まれる。これが続けば店は赤字……とまでは言わないが手痛いのは間違いない。
そんな集団に大地達は近づくとようやくと声を聞くことができた。
「何かあったのか?」
野次馬根性を出した大地は声をかけてみることにした。
せっかくの温泉だし変なトラブルがあるとゆっくり休めないかも知れないからな……。
「あん?あんた達は誰だ?」
テーブルに乗せておいた料理を盗まれた店主は苛立ちのままにギロリと睨みを効かせながら大地へと向いた。
……客に向ける視線じゃねぇ。ほらリリアが怖がって無表情のまま後ろに下がったじゃないか。や、まぁ野次馬根性を出したのは俺だがその代償が怒りの視線だなんて思わないだろ。
「俺たちは温泉に浸かりに来た観光客だ」
「ああ……観光客か」
店主が納得したように呟いた。それは大地の言葉を信じたのではない。大地が着ている浴衣、そこに書かれている宿の名前を見て観光客だと正否を判断したのだ。
「何かあったなんてもんじゃないぜ串焼きがまた盗られたんだよ」
その店主が怒りのままにそう言った。『また』と言うことは何度か被害に遭っているのだろう。それならばうんざりして苛立つのもわからなくはない。
ただ、その怒りのままに荒々しい言葉を観光客に飛ばすのは如何なものだろうか?もうちょっと接客業を学んでほしいところだ。
説明し終えた店主の視線は大地からフルネール、そしてレヴィアへと向いた。彼女はこの場にいる唯一のモンスターであり怪しむのには十分だろう。
「あん?モンスターか?」
店主がレヴィアを視認すると苛立ちを隠さないままそう口にした。
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