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温泉の中の金と銀
戦いの後の安らぎ
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少しして落ち着いた後、大地はナインテイルの傷跡をリリアに癒してもらった。その時の慌てようは言葉を言葉として発音できていないほどで非常に珍しい姿だった。普段から傷がつかないから仕方ながないのかもしれないが。
その傷を癒してもらっているうちに全員が集合するがアルメルスは既に居なくなっていた。ザルドーラを追って行ったのだろう。
そして……ナインテイルの子供をどうするか?という議論が持ち上がった。この子は亡き母のために食べ物を集めていたのだ。しかし、それも終わらせてやらないと可哀想だとリリアが主張した。
「そうだな……埋めて埋葬してやるか」
大地がスコップを召喚すると近くで穴を掘り出した。その直後にナインテイルが「キューキュー!」と鳴き出して大地に向かおうとした。大地が何をしようとしているのか理解して止めようとしたのかもしれない。だけど、リリアがナインテイルを抱き上げて止める。
「ナルちゃん。あなたのお母さんはもう死んじゃっているんです……私たちが勝手に埋葬しようとしているのもわかっています」
ナルが抱き上げているリリアの腕を爪で引っ掻くようにもがきながら鳴き続けた。
「でも、このままじゃナルちゃんも、ナルちゃんのお母さんも可哀想だよ……」
ボロボロになっていく腕を気にせずナルを抱き締める力を少しだけ強める。ポタリポタリと頭に雫が垂れてきたないは顔を上にあげてその顔を見る。涙を流して辛そうにするリリアの顔を。
「キュー……」
ナルがうつむき悲しそうに鳴いたあと顔をあげた。そしてまたもがくように動くのだがその手の爪は引っ込めてありリリアの腕にそれ以上の痛みが走ることはなかった。
「リリア。離してあげて」
レヴィアがリリアに向けてそう言うと「う、うん」と少しだけ躊躇してからナルを下ろす。すると直ぐに母親ナインテイルの近くに走り母親の鼻へ自分の鼻を寄せた。
「あの子、言葉はわかるみたい。リリアの話を聞いてお別れ……したいんだって」
「うん……」
リリアには頷くことしか出来なかった。
ナルが母親から離れた事で頃合いと見た大地がナインテイルを掘った穴へと埋めて簡易だが土をもった墓をつくる。
「さて、お前はもう人に迷惑をかけるなよ」
大地はそう言いながら膝をついてナルの頭を撫でた。ナルの反応はないがきっと町で盗むことはしないと信じた大地は立ち上がりリリア、フルネール、レヴィア、クラリスへと視線を向けた。
「さて、俺たちも帰えるか」
この戦いが終ったことによる宣言をした大地にみんなは揃って頷き、ナルと墓をお別れを言って去ることにした。
そしてベルナーへ戻ると店のおっちゃん達が出迎えてくれた。そのおっちゃん達にナインテイルの事を話す。殺しはしなかったことも含めてだ。
「そうか……まぁもう盗みが無いならそれでいいか。な?みんな」
被害にあった店の店主達が頷き、「まぁそう言うことなら……」や「親のためにか……泣かせるじゃねぇか」等と言っていて、伝えたことで反感を買うかと思ったがそんなようすもなくお礼を言われて終わった。良いおっちゃん達だ。
宿に戻ると女将さんに浴衣の弁償代を渡した。3人分だ。フルネールとリリアは汚さず綺麗なままだったのは守りに徹していたからだろう。
部屋へ戻るとシャーリーがぎょっとした顔で見た後、「だ、大丈夫!?」と言いながら駆け寄ってきた。肩が血だらけなのだから驚くのも無理はない。
潰れているライズとメリナはそのままにシャーリーとグラネスが何があったか聞きたそうにしていたのでナインテイルの話を全て話すと、まだ飲み続けているグラネスが「お前も人間で安心した」何て言うもんだ。そんな皮肉は「グラネスも酔うんだな」と言う皮肉で返すのだから彼とは同レベルなのかもしれない。
その後は温泉からの宿のうまい飯という嬉しいコンボだ。リリアがナルの事を気にしている様子だったのだが、途中から大地の視界に入るようにモンスターと契約できる魔道具をちらつかせてきた。
「自分で契約すればいいじゃないか?」と聞くとリリアは困ったように「私は契約出来ないんです」と言うのだ。聖女としての規律か何かだろうか?とは言え契約なんて相手の意思もあるのだからそう簡単に出来るものじゃないだろう。
「リリア……そんなに寂しいなら今日私が一緒に寝てあげるわ」
レヴィアにも見えていたようでリリアを気にかけてそう提案すると嬉しそうにリリアも「うん!一緒に寝よう!」と頷くのだ。
その傷を癒してもらっているうちに全員が集合するがアルメルスは既に居なくなっていた。ザルドーラを追って行ったのだろう。
そして……ナインテイルの子供をどうするか?という議論が持ち上がった。この子は亡き母のために食べ物を集めていたのだ。しかし、それも終わらせてやらないと可哀想だとリリアが主張した。
「そうだな……埋めて埋葬してやるか」
大地がスコップを召喚すると近くで穴を掘り出した。その直後にナインテイルが「キューキュー!」と鳴き出して大地に向かおうとした。大地が何をしようとしているのか理解して止めようとしたのかもしれない。だけど、リリアがナインテイルを抱き上げて止める。
「ナルちゃん。あなたのお母さんはもう死んじゃっているんです……私たちが勝手に埋葬しようとしているのもわかっています」
ナルが抱き上げているリリアの腕を爪で引っ掻くようにもがきながら鳴き続けた。
「でも、このままじゃナルちゃんも、ナルちゃんのお母さんも可哀想だよ……」
ボロボロになっていく腕を気にせずナルを抱き締める力を少しだけ強める。ポタリポタリと頭に雫が垂れてきたないは顔を上にあげてその顔を見る。涙を流して辛そうにするリリアの顔を。
「キュー……」
ナルがうつむき悲しそうに鳴いたあと顔をあげた。そしてまたもがくように動くのだがその手の爪は引っ込めてありリリアの腕にそれ以上の痛みが走ることはなかった。
「リリア。離してあげて」
レヴィアがリリアに向けてそう言うと「う、うん」と少しだけ躊躇してからナルを下ろす。すると直ぐに母親ナインテイルの近くに走り母親の鼻へ自分の鼻を寄せた。
「あの子、言葉はわかるみたい。リリアの話を聞いてお別れ……したいんだって」
「うん……」
リリアには頷くことしか出来なかった。
ナルが母親から離れた事で頃合いと見た大地がナインテイルを掘った穴へと埋めて簡易だが土をもった墓をつくる。
「さて、お前はもう人に迷惑をかけるなよ」
大地はそう言いながら膝をついてナルの頭を撫でた。ナルの反応はないがきっと町で盗むことはしないと信じた大地は立ち上がりリリア、フルネール、レヴィア、クラリスへと視線を向けた。
「さて、俺たちも帰えるか」
この戦いが終ったことによる宣言をした大地にみんなは揃って頷き、ナルと墓をお別れを言って去ることにした。
そしてベルナーへ戻ると店のおっちゃん達が出迎えてくれた。そのおっちゃん達にナインテイルの事を話す。殺しはしなかったことも含めてだ。
「そうか……まぁもう盗みが無いならそれでいいか。な?みんな」
被害にあった店の店主達が頷き、「まぁそう言うことなら……」や「親のためにか……泣かせるじゃねぇか」等と言っていて、伝えたことで反感を買うかと思ったがそんなようすもなくお礼を言われて終わった。良いおっちゃん達だ。
宿に戻ると女将さんに浴衣の弁償代を渡した。3人分だ。フルネールとリリアは汚さず綺麗なままだったのは守りに徹していたからだろう。
部屋へ戻るとシャーリーがぎょっとした顔で見た後、「だ、大丈夫!?」と言いながら駆け寄ってきた。肩が血だらけなのだから驚くのも無理はない。
潰れているライズとメリナはそのままにシャーリーとグラネスが何があったか聞きたそうにしていたのでナインテイルの話を全て話すと、まだ飲み続けているグラネスが「お前も人間で安心した」何て言うもんだ。そんな皮肉は「グラネスも酔うんだな」と言う皮肉で返すのだから彼とは同レベルなのかもしれない。
その後は温泉からの宿のうまい飯という嬉しいコンボだ。リリアがナルの事を気にしている様子だったのだが、途中から大地の視界に入るようにモンスターと契約できる魔道具をちらつかせてきた。
「自分で契約すればいいじゃないか?」と聞くとリリアは困ったように「私は契約出来ないんです」と言うのだ。聖女としての規律か何かだろうか?とは言え契約なんて相手の意思もあるのだからそう簡単に出来るものじゃないだろう。
「リリア……そんなに寂しいなら今日私が一緒に寝てあげるわ」
レヴィアにも見えていたようでリリアを気にかけてそう提案すると嬉しそうにリリアも「うん!一緒に寝よう!」と頷くのだ。
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