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温泉の中の金と銀
狐だって温泉に浸かりたい
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大地達は脱衣場から出て温泉浴場へ足を踏み入れた。木の柵で囲われていて見上げれば空が見えた。開放的な空間だが……やはりこう言った温泉は自然と一体化させてくれる気がする。
因みに女湯と繋がっているのか男湯と女湯で大きな円形状の風呂になっている。木の柵で区切られている形だが木の柵が隙間なく繋がっているから柵をよじ登るなどしなければ覗き見る事は出来ないだろう。
大地とライズとグラネスはかけ湯して体を洗ったあとゆっくりと湯の中へと体を沈めていく。心身暖まるこの温度は少し肌寒い今の気候にはちょうどいい……。あれ?
「なぁ。なんで今、こんなに肌寒いんだ?」
大地やライズよりホワイトキングダムに長くいるグラネスが気持ち良さそうに湯に浸かりながら答えた。
「……山の溶岩はこの辺の気候に関わっているからな。本来なら溶岩が上がりきった後どんどん下がっていって今のような寒い気候になるはずなんだ」
あー。あれがこの辺の熱管理しているのなら、レヴィアが冷やしたから寒くなって来るのも当然か。
湯に浸かりながら空を見上げると青々した澄んだ空が広がっていて、その中に白い雲が流れているのを見ると世界は平和だと思えてくる。
「わあぁ。ひろーい!」
シャーリーの声が隣の柵越しに聞こえてきた。
ゆったりと湯の中で寛いでいるはずなのに#聞こえてくる騒がしい声がはしゃいでるソレで大地はやや呆れていた。
「何やっているんだあいつら……」
「そう言うなダイチ。可愛い女の子が騒ぐ声は良いものじゃないか。グラネスさんもそう思わない……それは酒か?」
ライズがグラネスのいる方へ視線を動かすと、グラネスはお盆の様な物に酒と肴を乗せて一杯やっていた。
大地もつられてグラネスへ向くと徳利にお猪口と日本酒か!?と思わざるを得ない酒を飲んでいた。
「……それはなんの酒だ?」
「これか?これは女神様のお告げを基に作られたニホ酒と言ってな、強い酒だが澄んだ美味さがあるんだ」
やはり日本酒じゃないか?
「どうだ?二人も飲むか?」
グラネスが余分に頼んでいたお猪口を大地とライズへ渡してくる。これは断れないだろう。
「悪いな」
「ありがたく」
そう言って二人は確りとお猪口を受けとるとついでに酌してもらう。
酒を注いで貰っている時に「本当ならリリアさんに酌して貰いたいだろうが我慢してくれ」という言葉は聞かなかったことにした。
流石にリリアがこっちに来て酌してきたら事案待ったなしだからな。
お猪口に口をつけてぐいっと口の中へ放り込む。日本酒とはまたちょっと違う味わいだな。やや甘めだが後味はスッキリしている。
「こりゃ中々美味いな」
「ああ、温泉と言えばやはりこれだろう?」
流石、酒信者の男だぜ。酒の事に関するとぬかりない。この男の恐ろしいところは俺達が呑むことを前提にした徳利の数を用意している事だ。
大地の手が空けば二人に酌をして、ライズの手が空けば同じように酌をして。三人で湯に浸かりながら酒と肴を楽しんでいると、大地は湯の中に黄色い何かが浮かんでいるのを見つけた。
「なんだありゃ?」
特に変な動きをしているわけでもないが見た目は丸みを帯びていて両端には三角形の何かがついている。興味深そうに大地がそれに近づいて行くと、その黄色い何かは浮き上がりザバッと湯の中から飛び出した。
「狐か?」
黄色い何かが温泉を囲っている岩へ着地すると、その姿を見た大地が呟いた。黄色……若しくは輝いていない金色のような毛色をしていて人目で狐とわかる。だが、それが普通の動物ではないことも人目でわかってしまう。
何せ尾の数が三本あるのだ。この場所が日本なら妖怪だ!と言う感じだが、この世界でいうならばモンスターだろう。
「キューッ!」
どうやら足を怪我している見たいだがモンスターも湯治をしに来たんだろうか?モンスターと言えど可愛らしい顔をしているのもいるものだ。……ウォーラビットのような怖い目をしてなくてなにより。
「よーしよしよし。こっちゃこ~い」
そう言いながら近づいていく大地に警戒してすごい速さで岩から岩へと跳び移る。
うお、結構速いな。
「ナインテイルの子供か」
グラネスが立ち上がりモンスターと対峙するように素手で構える。
「育てば九尾……Sランクモンスターになるんだっけか」
続いてライズが立ち上がり魔力を集め始める。二人とも戦闘体勢はバッチリだ。何かしなければならない使命感にかられた大地は徐にグラネスが持ってきたお盆へ手を伸ばした大地はその中にある肴の肉を一つ取るとモンスターへと近づいた。
「食うか?」
ナインテイルの子供は大地が差し出した肉へゆっくり警戒しながら口を近づけて一瞬でパクリと肉をくわえて食べ始めた。
ナインテイルが食べ終えたのを見極めた大地はモンスターの頭へ手を伸ばす。少し近づけて見ると気を許してくれたのか警戒されるそぶりを見せなかった為、そのまま頭に手を置いて撫でるとナインテイルは嬉しそうに目を細めた。
「おお。狐は可愛いな」
撃退体勢を取っていたグラネスやライズはその光景に唖然としていたが、お互いの顔を見て呆れつつ湯の中に入り直すと再び酒を呑み始めた。
「なぁダイチ。一応そいつモンスターなんだが?」
グラネスは酒をくいっと喉に流し込んだあと言うが、大地はさも気にしていないように撫で続けてた。
「おう。……あ、もしかして寄生虫とかいるのか?」
昔少し調べたところエキノコックス?とやらが狐にいて人間にも寄生するとかなんとか。
モンスターだから大丈夫かと思っていたが……逆にモンスターの様に凶悪になったエキノコックス?がいたらどうすれば……。
「いや、そういう訳じゃ……」
「まぁ、今は温泉に入ってるんだ。敵意がない限りは休戦でいいじゃないか」
ナインテイルの子供も再び湯の中に入りまったりとした良い顔して遣っている。そんな顔を見たあとでは倒すに倒せないのが人間の情というものだ。
この事、リリアに言ったら羨ましがられるだろうか。そんな風に考えながら大地は濡れているせいでふわふわな毛ではないが撫でたときの嬉しそうに反応するナインテイルの子供を見てようやく癒されるのだった。
因みに女湯と繋がっているのか男湯と女湯で大きな円形状の風呂になっている。木の柵で区切られている形だが木の柵が隙間なく繋がっているから柵をよじ登るなどしなければ覗き見る事は出来ないだろう。
大地とライズとグラネスはかけ湯して体を洗ったあとゆっくりと湯の中へと体を沈めていく。心身暖まるこの温度は少し肌寒い今の気候にはちょうどいい……。あれ?
「なぁ。なんで今、こんなに肌寒いんだ?」
大地やライズよりホワイトキングダムに長くいるグラネスが気持ち良さそうに湯に浸かりながら答えた。
「……山の溶岩はこの辺の気候に関わっているからな。本来なら溶岩が上がりきった後どんどん下がっていって今のような寒い気候になるはずなんだ」
あー。あれがこの辺の熱管理しているのなら、レヴィアが冷やしたから寒くなって来るのも当然か。
湯に浸かりながら空を見上げると青々した澄んだ空が広がっていて、その中に白い雲が流れているのを見ると世界は平和だと思えてくる。
「わあぁ。ひろーい!」
シャーリーの声が隣の柵越しに聞こえてきた。
ゆったりと湯の中で寛いでいるはずなのに#聞こえてくる騒がしい声がはしゃいでるソレで大地はやや呆れていた。
「何やっているんだあいつら……」
「そう言うなダイチ。可愛い女の子が騒ぐ声は良いものじゃないか。グラネスさんもそう思わない……それは酒か?」
ライズがグラネスのいる方へ視線を動かすと、グラネスはお盆の様な物に酒と肴を乗せて一杯やっていた。
大地もつられてグラネスへ向くと徳利にお猪口と日本酒か!?と思わざるを得ない酒を飲んでいた。
「……それはなんの酒だ?」
「これか?これは女神様のお告げを基に作られたニホ酒と言ってな、強い酒だが澄んだ美味さがあるんだ」
やはり日本酒じゃないか?
「どうだ?二人も飲むか?」
グラネスが余分に頼んでいたお猪口を大地とライズへ渡してくる。これは断れないだろう。
「悪いな」
「ありがたく」
そう言って二人は確りとお猪口を受けとるとついでに酌してもらう。
酒を注いで貰っている時に「本当ならリリアさんに酌して貰いたいだろうが我慢してくれ」という言葉は聞かなかったことにした。
流石にリリアがこっちに来て酌してきたら事案待ったなしだからな。
お猪口に口をつけてぐいっと口の中へ放り込む。日本酒とはまたちょっと違う味わいだな。やや甘めだが後味はスッキリしている。
「こりゃ中々美味いな」
「ああ、温泉と言えばやはりこれだろう?」
流石、酒信者の男だぜ。酒の事に関するとぬかりない。この男の恐ろしいところは俺達が呑むことを前提にした徳利の数を用意している事だ。
大地の手が空けば二人に酌をして、ライズの手が空けば同じように酌をして。三人で湯に浸かりながら酒と肴を楽しんでいると、大地は湯の中に黄色い何かが浮かんでいるのを見つけた。
「なんだありゃ?」
特に変な動きをしているわけでもないが見た目は丸みを帯びていて両端には三角形の何かがついている。興味深そうに大地がそれに近づいて行くと、その黄色い何かは浮き上がりザバッと湯の中から飛び出した。
「狐か?」
黄色い何かが温泉を囲っている岩へ着地すると、その姿を見た大地が呟いた。黄色……若しくは輝いていない金色のような毛色をしていて人目で狐とわかる。だが、それが普通の動物ではないことも人目でわかってしまう。
何せ尾の数が三本あるのだ。この場所が日本なら妖怪だ!と言う感じだが、この世界でいうならばモンスターだろう。
「キューッ!」
どうやら足を怪我している見たいだがモンスターも湯治をしに来たんだろうか?モンスターと言えど可愛らしい顔をしているのもいるものだ。……ウォーラビットのような怖い目をしてなくてなにより。
「よーしよしよし。こっちゃこ~い」
そう言いながら近づいていく大地に警戒してすごい速さで岩から岩へと跳び移る。
うお、結構速いな。
「ナインテイルの子供か」
グラネスが立ち上がりモンスターと対峙するように素手で構える。
「育てば九尾……Sランクモンスターになるんだっけか」
続いてライズが立ち上がり魔力を集め始める。二人とも戦闘体勢はバッチリだ。何かしなければならない使命感にかられた大地は徐にグラネスが持ってきたお盆へ手を伸ばした大地はその中にある肴の肉を一つ取るとモンスターへと近づいた。
「食うか?」
ナインテイルの子供は大地が差し出した肉へゆっくり警戒しながら口を近づけて一瞬でパクリと肉をくわえて食べ始めた。
ナインテイルが食べ終えたのを見極めた大地はモンスターの頭へ手を伸ばす。少し近づけて見ると気を許してくれたのか警戒されるそぶりを見せなかった為、そのまま頭に手を置いて撫でるとナインテイルは嬉しそうに目を細めた。
「おお。狐は可愛いな」
撃退体勢を取っていたグラネスやライズはその光景に唖然としていたが、お互いの顔を見て呆れつつ湯の中に入り直すと再び酒を呑み始めた。
「なぁダイチ。一応そいつモンスターなんだが?」
グラネスは酒をくいっと喉に流し込んだあと言うが、大地はさも気にしていないように撫で続けてた。
「おう。……あ、もしかして寄生虫とかいるのか?」
昔少し調べたところエキノコックス?とやらが狐にいて人間にも寄生するとかなんとか。
モンスターだから大丈夫かと思っていたが……逆にモンスターの様に凶悪になったエキノコックス?がいたらどうすれば……。
「いや、そういう訳じゃ……」
「まぁ、今は温泉に入ってるんだ。敵意がない限りは休戦でいいじゃないか」
ナインテイルの子供も再び湯の中に入りまったりとした良い顔して遣っている。そんな顔を見たあとでは倒すに倒せないのが人間の情というものだ。
この事、リリアに言ったら羨ましがられるだろうか。そんな風に考えながら大地は濡れているせいでふわふわな毛ではないが撫でたときの嬉しそうに反応するナインテイルの子供を見てようやく癒されるのだった。
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