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叶わぬ願いと望んだ未来
今、山が熱い!
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「クルス王子!私が山まで溶岩の様子を見てきます!」
宿から呼び出されたリリアはクルスから現状を聞いた。
その事でリリアが居ても立っても居られなくなりクルスに願うように言って前へ出ているのだ。
その視線は真っ直ぐにクルスの両目を捉えている。
ここまではっきり兄の自分に物申してくるのは過去にあっただろうか。リリアがハンターになってからも頻度は少ないが会ってはいた。
だけど、その時でも兄の自分に遠慮して言わないことが多かった。……否、我を通しての言葉は記憶を探ってもそんなものは無かった。強くなったのだとよくわかる。
「ダメだ!!」
しかし、それはそれ、これはこれである。
リリアの成長は嬉しいけれど認めるわけにはいかず、クルスははね除けるように強い語調で止める。
山の溶岩によって熱くなるのは毎年の事ではあるのだが今回は熱の上がり具合が異常だ。その事についてギルドに依頼を出す予定だったクルスは今回の不可思議さについて危険だと考えていた。
だからギルドに依頼してもリリアには受けてもらいたくなくて先んじてリリアを呼び出しその事を話したのだ。
だけどリリアは反発した。「危険なら私がやる!」と。その理由は下手な人が出向いて死んでしまうのが嫌だから……。
「前代未聞のこの事態は非常に危険かもしれないんだ!依頼してギルドがAランクと指定しても絶対にやってはダメだ」
そう説得するがそれほど危険ならやはり自分が行く方がましである。
「でも!他の人が行って失敗したら死んでしまうかもしれないんですよ!」
「それはリリアも同じだろう!」
「同じじゃないです!私は失敗しないもん!!」
根拠のない張り合いだ。でも、リリアがそう言うほど必死なのはクルスにも伝わってきた。
「わかった……それなら一つ条件を出そう!」
クルスは諦めたように言ってこちらを見てきた。
「……俺はいったい何を見せられてるんだ?そして俺を見てどうする気だ?」
お城の中の応接室で今の流れを見せられた大地はクルスにそう問いただした。
「これが今朝のやり取りの完全再現だ」
胸を張って言うクルスに続いてリリアが大地に向かって口を開いた。
「あの!クルスお兄ちゃんの出した条件がダイチさんと一緒に行くと言うことなんです!」
力説してくるリリアだがそれを承諾すると火口へ潜らないといけないのだろう。
溶岩……熱いだろうなぁ……。
足を滑らして溶岩にダイブするイメージを思い浮かべた。ボコボコと音を立てた真っ赤な溶岩の中、突き上げた手の親指を立てて沈んでいく某映画のワンシーンだ。
「そもそも、火口に行って何を調べるんだ?」
モンスター退治でいいならサクッと終わるだろう。いっそ爆弾投げて終わりでも良いんじゃないかと思えるくらいだ。
「それはな山の深部に自然と作られた巨大な魔石があるんだ」
おいおい……それを調べろと?某最後のファンタジーゲームの火の◯リスタルとか、某聖なる剣の伝説ゲームにある火の◯ナストーンとかじゃないだろうな。
「その魔石を見て来るだけか?」
「見るんではなく調べてほしい」
クルスは簡単に言うが調べるなんてやったことがないのだ。そんなわからない事が出来るわけない。その考えが顔に出ていたらしくリリアが少し焦った顔をしながら「わたし!」と叫んだ。
自分でも大きな声が出た事に驚いたリリア一拍落ち着けて次はゆっくりと言葉を発する。
「調べるのは私がやります……」
リリアはそんなことまで出来るのかと感嘆する。だが安請け合いしても良いかどうか。
そんな迷いに迷いを重ねている大地へリリアは攻めに入った。アーデルハイドから聞いた大地にしか使わないことを条件に教えてもらった必殺技だ。
「ダイチさん……」
リリアは大地の名前を呼んでこちらに意識を向けさせる。彼の視線がこちらに向いたことで意識していることを認識すると、リリアは大地を見るために少しだけ顔を下げて瞳を大地へ向けた。
この時少しだけ頬は赤くすると良いらしいがそんなことコントロール出来るわけがないと思っていた。だが……自然と顔が少し熱くなる。
自分でも動揺しているのがわかる。視点が定まっている感じがしない……けれど大地はずっと自分を見続けている。
最初の名前呼んでから間を少しだけ開けたが相手がしびれを切らす前にリリアは次の止めの言葉を繰り出す。
「私を……守ってくれませんか?」
相手に抱きつく必要も色目を使う必要も触れる必要すらない。リリアの可愛さを全面に押し出しながら庇護欲をそそらせれば『ダイチなら必ず殺せる』。アーデルハイドはそう教えてくれた。
大地目線で言えば上目遣いだが彼女の可愛らしい顔が目に入ってきて、少しだけ揺れ動く瞳と弱々しく言ってきたその台詞が合間って断る事なんて出来るはずもなく……ウィークポイントに弱点属性で攻められ、且つ、クリティカルヒットまで発生したそのダメージは計り知れない。
「わかった……一緒に行くからその頼みかたはやめてくれ」
俺に効く……。
「本当ですか!ありがとうございます!!」
……こうしてみると俺はリリアには絆されているのかなぁ。
等と思いながら大地は火口へと駆り出されることになったのだった。
宿から呼び出されたリリアはクルスから現状を聞いた。
その事でリリアが居ても立っても居られなくなりクルスに願うように言って前へ出ているのだ。
その視線は真っ直ぐにクルスの両目を捉えている。
ここまではっきり兄の自分に物申してくるのは過去にあっただろうか。リリアがハンターになってからも頻度は少ないが会ってはいた。
だけど、その時でも兄の自分に遠慮して言わないことが多かった。……否、我を通しての言葉は記憶を探ってもそんなものは無かった。強くなったのだとよくわかる。
「ダメだ!!」
しかし、それはそれ、これはこれである。
リリアの成長は嬉しいけれど認めるわけにはいかず、クルスははね除けるように強い語調で止める。
山の溶岩によって熱くなるのは毎年の事ではあるのだが今回は熱の上がり具合が異常だ。その事についてギルドに依頼を出す予定だったクルスは今回の不可思議さについて危険だと考えていた。
だからギルドに依頼してもリリアには受けてもらいたくなくて先んじてリリアを呼び出しその事を話したのだ。
だけどリリアは反発した。「危険なら私がやる!」と。その理由は下手な人が出向いて死んでしまうのが嫌だから……。
「前代未聞のこの事態は非常に危険かもしれないんだ!依頼してギルドがAランクと指定しても絶対にやってはダメだ」
そう説得するがそれほど危険ならやはり自分が行く方がましである。
「でも!他の人が行って失敗したら死んでしまうかもしれないんですよ!」
「それはリリアも同じだろう!」
「同じじゃないです!私は失敗しないもん!!」
根拠のない張り合いだ。でも、リリアがそう言うほど必死なのはクルスにも伝わってきた。
「わかった……それなら一つ条件を出そう!」
クルスは諦めたように言ってこちらを見てきた。
「……俺はいったい何を見せられてるんだ?そして俺を見てどうする気だ?」
お城の中の応接室で今の流れを見せられた大地はクルスにそう問いただした。
「これが今朝のやり取りの完全再現だ」
胸を張って言うクルスに続いてリリアが大地に向かって口を開いた。
「あの!クルスお兄ちゃんの出した条件がダイチさんと一緒に行くと言うことなんです!」
力説してくるリリアだがそれを承諾すると火口へ潜らないといけないのだろう。
溶岩……熱いだろうなぁ……。
足を滑らして溶岩にダイブするイメージを思い浮かべた。ボコボコと音を立てた真っ赤な溶岩の中、突き上げた手の親指を立てて沈んでいく某映画のワンシーンだ。
「そもそも、火口に行って何を調べるんだ?」
モンスター退治でいいならサクッと終わるだろう。いっそ爆弾投げて終わりでも良いんじゃないかと思えるくらいだ。
「それはな山の深部に自然と作られた巨大な魔石があるんだ」
おいおい……それを調べろと?某最後のファンタジーゲームの火の◯リスタルとか、某聖なる剣の伝説ゲームにある火の◯ナストーンとかじゃないだろうな。
「その魔石を見て来るだけか?」
「見るんではなく調べてほしい」
クルスは簡単に言うが調べるなんてやったことがないのだ。そんなわからない事が出来るわけない。その考えが顔に出ていたらしくリリアが少し焦った顔をしながら「わたし!」と叫んだ。
自分でも大きな声が出た事に驚いたリリア一拍落ち着けて次はゆっくりと言葉を発する。
「調べるのは私がやります……」
リリアはそんなことまで出来るのかと感嘆する。だが安請け合いしても良いかどうか。
そんな迷いに迷いを重ねている大地へリリアは攻めに入った。アーデルハイドから聞いた大地にしか使わないことを条件に教えてもらった必殺技だ。
「ダイチさん……」
リリアは大地の名前を呼んでこちらに意識を向けさせる。彼の視線がこちらに向いたことで意識していることを認識すると、リリアは大地を見るために少しだけ顔を下げて瞳を大地へ向けた。
この時少しだけ頬は赤くすると良いらしいがそんなことコントロール出来るわけがないと思っていた。だが……自然と顔が少し熱くなる。
自分でも動揺しているのがわかる。視点が定まっている感じがしない……けれど大地はずっと自分を見続けている。
最初の名前呼んでから間を少しだけ開けたが相手がしびれを切らす前にリリアは次の止めの言葉を繰り出す。
「私を……守ってくれませんか?」
相手に抱きつく必要も色目を使う必要も触れる必要すらない。リリアの可愛さを全面に押し出しながら庇護欲をそそらせれば『ダイチなら必ず殺せる』。アーデルハイドはそう教えてくれた。
大地目線で言えば上目遣いだが彼女の可愛らしい顔が目に入ってきて、少しだけ揺れ動く瞳と弱々しく言ってきたその台詞が合間って断る事なんて出来るはずもなく……ウィークポイントに弱点属性で攻められ、且つ、クリティカルヒットまで発生したそのダメージは計り知れない。
「わかった……一緒に行くからその頼みかたはやめてくれ」
俺に効く……。
「本当ですか!ありがとうございます!!」
……こうしてみると俺はリリアには絆されているのかなぁ。
等と思いながら大地は火口へと駆り出されることになったのだった。
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