初めての異世界転生

藤井 サトル

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叶わぬ願いと望んだ未来

戦闘が終わると重要キャラがいきなり出てくるよね

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 黒い瓦礫で道が少しだけ塞がってしまった。

 瓦礫を上れば通れるし大丈夫だよな……。

 そう考えながら、でも他の人が被害を被らなくて大地は安堵した。アーデルハイドの時のように自分の判断で血を見るのはまっぴらなのだ。

 そうして北道を振り替えると……建物が半壊していいて、獣道ならぬゴーレム道となってしまっていた。元からボロボロの建物であり、人気が無いことから今は使われていない廃墟だとは思う……。ただ、それでも壊していい理由にはならない事は重々承知している。

 これ、全部俺のせいで賠償金請求されたらどうしよう。……いや、元はあの悪党どもが悪いんだ。やつらに全部払わせるべきだ。

「あの悪党どもをギルド長に引き渡さなければな」

「逃げてないかしら?」

 レヴィアが少し心配そうに言う。
 彼女の心配はもっともだ。ヘヴィゴーレムに集中するしかない状況とは言え掴まえた悪党を放置してしまっていたのだから逃げている心配をするべきである。そしてもし逃げ切られてしまえばこの廃墟の修理費用は……。

 大地は身震いを起こす。金が無いと言うのに廃墟の修理費用を負担させられてしまえば借金地獄に陥ってしまう可能性がでてきたのだと。それを隠す為に大地はつぶやいた。

「舐めたことしたんだ。逃げていたら草の根分けても代償を払わしてやる……」

 怒りたっぷりに大地は言うのだが、それを聞いていたクラリスが少しほほを赤くした。

「あ、えっと、私は何もされてないから……そんなに怒らないでも……」

 大地がクラリスの為に言ったのだと勘違いしてそう言うのだが、尻すぼみになってゴニョゴニョと発音するその言葉は大地に届いてはいなかった。

 ようやく悪党がアジトにしていた建物前に戻ると、捕まっていた女の子4人とクルス王子が悪党達を見張っていた。

「ダイチはあんなモンスターも倒せるんだな」

 会ったそばからそんな事をクルスが言ってくるがそれどころではないだろう。

「クルス、お前こんな場所で何してるんだよ……」

 一応ここは廃墟が並ぶ危険な場所でもあるはずだ。今、寝転がらされている悪党どものような奴が隠れて根城にしている可能性もある。襲われる可能性がある事を少しは考えるべきなのだ。

「あんな大きなモンスターがいきなり現れたんだ。状況を確認しに来たに決まっているだろう?」

「王子自らくるなよ。普通誰か使いに出すとかするだろ?」

 何かあったら本当にどうするつもりなんだ?

「まぁそう言うな。こう見えて俺も戦えるからな。それより無事に捕まっていた娘を助けてくれたんだな。礼を言う」

「依頼を終わらせただけさ。無事だったのは……」

 そう言ってキョロキョロと一人の人物を探すように視線を動かすとクラリスと目が合った。そこでチョイチョイと手招きをしてクラリスを呼び出すと彼女をクルスの前へ出す。

「このクラリスが先行してくれたからだ」

 突入前に雑魚の一人がクラリスのせいで遅くなったと言っていた。つまり彼女がいなければ捕まっていた娘は全員配達されていたのだろう。それなら、一番の功労者は彼女だ。……それに怖い思いもしたはずなのだ。そこを考えてもMVPだって言える。

 そう思って前に出されたクラリスは何事かと驚きながら振り向こうとするのだが背中を押されてはなかなかうまく振り向けないでいる。

「そうか。君が……ありがとう!君にもお礼はさせてもらうよ」

「い、いえ、そんな。私はヒュリーとアルテリナが捕まったと思って突っ走っちゃっただけなので……」

 そう謙虚な姿勢をとりつつも照れ顔は隠せておらず頬をほんのりと赤くしながら人差し指で頬を掻くのだ。

「「あの!」」

 貴族の二人。シーラとリンが一斉に大地へと声を掛けてきた。

「「助けてくださりありがとうございます」」

「私はリンと申します」

「私はシーラです」

「お強いんですね」

「あんな怖そうなのに立ち向かえるなんてすごいです」

「クルス殿下とお知り合いなのですか?」

「ハンター様でいらっしゃるのでしょうか?」

 言葉の弾幕だ。それに圧倒されて一歩後ろへ下がったところでクルス王子が割って入ってくれた。

「シーラさん。リンさん。話したい気持ちはわかりますが、先ずは屋敷に戻って無事をお伝えしましょう。送りますからついてきてもらえますか?」

 手慣れた様に腕を動かしながら言うクルスの甘い顔に貴族の二人は釣れるように「はい……」と返事しながらクルスに近寄っていった。見事な物だ。もし大地が同じような事をしようとすればロボットダンスの様な動きになるだろう。

「ヒュリーさんとアルテリナさんも送りますから乗って頂けますか?」

 まさかのクルス王子にそんな丁寧な扱いを受けるとは思わなかった二人は少し戸惑いながらも頷いて返事をした。

 さすがイケメンだな。あっという間に4人ハーレムを作り上げるとは……。

「あ、ダイチ。もうすぐベルヴォルフがくるからそいつらを引き渡してくれ」

 言うだけいって返事を聞かずにクルスは別の道から大通りへと向かっていくのを大地は見送った。
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