初めての異世界転生

藤井 サトル

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叶わぬ願いと望んだ未来

クラリスの行方

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「え?クラリスさん?」

 あの後、レイヴン達が奢ってくれると言ってくれたのでテーブルにお邪魔させてもらった。流石にレイヴン達3人と大地達5人が合わさると結構な人数だ。

「そうだ。昨日消息を絶ったらしいんだ。見かけなかったか?」

「大岩を軽々と持ち上げるクラリスが消えただなんてあまり考えにくいわ」

「クラリスさんを捕まえるとか何人犠牲に出したんだ……」

「そのうち建物破壊して出てくるんじゃないか?」

 これがミル、レルム、レイヴンの順で口にするクラリスの評価である。ゴリラ感ましましだ……。

「ま、まぁ本人についての感想は何でもいいんだが……」

 そう言いながら肉の串焼きへ手を伸ばす。肉自体には脂身が少ないがとろけたチーズがかかっていて口に頬張ると肉とチーズの旨味と塩見が口に広がる。

 正直者こちらも酒を飲みたいところだがハメを外しすぎるのはよくない。

「昨日ねぇ……ギルドでギルド長と話しているのは見かけたわね」

 蜂蜜酒をストローで飲みながらミルは思い出すように答える。

「その時に失踪者が出た事を聞いたのか」

「え?消えたのはクラリスさんだよな?」

 レルムがそう聞くが大地は否定する。

「あー、既に4人の人間がいなくなっててな。クラリスって子がそれを聞いて探しに行ったが戻ってきていない。という話だ」

「なるほど……しかしクラリスさんかぁ……」

 そうレイヴンが呟くと丁度大地達の近くを通ろうとしていたハンターの一人が割って入ってきた。

「クラリスさんがどうしたんだ?」

「昨日いなくなってしまったらしいんだ。何か知らないか?」

 気軽に聞いているところレイヴンの知り合いと思われるそのハンターは少しの驚きをしつつ言う。

「昨日、商店街で会ったぞ?」 

 彼は昨日を振り返りつつ「たしか……」と言いながらクラリスと話した事を思い出す。

「どこか行くのか?と聞いたら『北が少し怪しいから潰してくるよ』と言っていたな」

 過激な発言ではあるが『北』に行ったらしい。と言うことはそこで捕まったかもしれない。

「それはありがたい情報だ」

 大地がそう言うとハンターの彼は訝しんだ顔をする。

「なぁ、本当にクラリスさんが居なくなったのか?あまり考えにくいんだが……」

 本当に一体『クラリス』という子はどんな感じなのだろうか?何にせよ無事であればいいんだが。

「俺もギルド長から聞いたくらいだからな……ただ、これまで4人の人が居なくなっていることを考えるとな」

 ハンターは「そうか」と言って頷くのだがやはり顔を見る限りあまり信じられていないみたいだ。

「さて、俺達はそろそろ行かないとな」

 大地が立ち上がると他の4人も……。

「大地さん。このお肉美味しいんです」

 フルネールもレヴィアも肉を食べ続け、シャーリーはドレッシングがかかったサラダから目を離さず、ライズは魚介類を中心に攻め続けている。

「それはわかるが……時間もないんだ行くぞ!」

 少し無理矢理で可哀想な気はするがそれでも引き受けたからにはやらねばならない。手を抜いて助けられなかったとした、アーデルハイドの時のように後悔するだろう。

 全員が立ち上がるのを見届けた大地はレイヴン、レルム、ミルと順番に視線を移す。

「ありがとな。助かったよ」

 大地が礼を告げてハンター集会場を出ると次の目的地へ足を運ぶ。行く場所は北にあると言われる服屋だ。そこで話を聞く必要がある。


 お城の正門とは反対になる裏手の大通りをしばらく歩く。『北』と『フォリア』の二つしか情報がないため探すのは難しいかもしれない。

 そう思いながらまっすぐ進んでもそれらしいのは見つからないまま北の門までついてしまった。

「今のところそれらしいのはなかったよ……」

 歩きながらキョロキョロと町並みを見ながら歩いてくれていたシャーリーが肩を落としながらいう。

「そうか……貴族御用達なら大通りにあるかと思ったが読みが外れたな。少しだけ戻るか」

 城と北門の中間まで戻るとどうしたものかと5人は集まる。

「ねぇ。この辺り一帯に水を流し込めば出てくるんじゃないかしら?」

 そう言ったのはレヴィアだ。手段を問わなければ最適かもしれない。だが、捕まった人も水没してしまう可能性を伝えたらダメだとわかってくれた。
 ただ、彼女も大地達が時間を気にしていることはわかっているみたいだ。

「……お前。こんなところで何しているんだ?」

 ふと、目の前に馬車が一台止まった。そこから今の声が聞こえてきたのだ。それも聞いたことのある声だ。

「お前は……レンか。丁度いい、この辺にフォリアって店を知らないか?」

「……そこの角を曲がれ。あとは真っ直ぐ行けばつくぞ」

 てっきり悪態の一つや二つついてくるものかと思ったがすんなり教えてくれた。
 その言葉通りに進むと確かに一つの店が見えた。あまりきらびやかな感じではないが老舗といった風格はある。

 大地がその中へ入ると店員が出迎えてくれた。そこで話を聞いたところ二人の貴族は確かに来たらしい。

「あー。覚えていますよ。確かにこちらへおいでくださいましたね」

「その二人は一緒に帰っていったのか?」

「いえ、来た時間がバラバラだったので一緒に。と言うことはありませんでしたよ」

 二人はここに来てから帰るまでの間に消えたのだろうか。それならばこの店から城までの間を人海戦術で探した方が早そうだ。

 大地はそう結論付けてフォリアから出るのだった。
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