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叶わぬ願いと望んだ未来
5人の失踪者
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「まずは出来る限りの情報が必要だ。出来れば行動パターンとかもわかれば良いんだが……」
そんな大地の質問にはギルド長が答えた。
「貴族が二人、平民が二人、ハンターが一人だ。ハンターはこの事件を知った時に探すと息巻いててな……止めたんだが結局戻ってきてないんだ」
ミイラ取りがミイラってやつか。
「最初に人が居なくなった日が何時からなのかはっきりわかっていないんだが……推測では2日前くらいだ」
2日か。何の目的で拐ったのかがわかればいいんだが、目的地が不明瞭である今は楽観視はしない方がいいだろう。
「拐われた奴らの住んでる場所とかわかるか?」
そう聞くとギルド長は大きなマップを取り出してきた。それはこのホワイトキングダムを上から見たような絵図だ。人呼んで地図とも言う。
ギルド長の太い指がその地図へ延びていく。
「まずはここだ」
お城から少しだけ離れた東方面に指をさした。
「貴族で名はシーラと言う。クルスの……友人だ」
少しだけ間を開けて友人と言ったのが少しだけ引っ掛かるが今は気にする場合ではないだろう。
「そして二人目の貴族はここだ」
次は反対側となる西方面にギルド長は指した。
「名前はリンだ。クルスの友人の妹だな」
しかし、さすが王族か。相手が貴族となれば交流も多いのだろうか。
「平民はこことここだ」
次いで指を指された場所は商店街近くの民家が並ぶ区域だ。こう見ると貴族の家と離れているのがよくわかる。分かりにくいように人を拐う場所を離した?しかし、それなら平民二人の家が近いな。
「少し調べたところこの飯屋で働いているらしい。名前はアルテリナとヒュリーだ」
ギルド長が指す飯屋の場所にライズとシャーリーはピント来たものが有るみたいで表情が驚きのものに変わった。大地はそれに気づくが今はギルド長の話を聞くことにする。
「ハンターの……クラリスが住んでる場所は……ここだ」
最後に指を指された場所……ここは。
「ギルドの後ろ?」
「金の無いハンター達が住める場所だ」
前にそんな場所があるって聞いたことあるな。しかし、それだとすると家に押し入っての拉致は考えにくいか。ハンターだし何かに気づいてミイラになったと考えるのが妥当だな。
「ハンターが居なくなったのは昨日だ」
つまり昨日、ハンターは探しに行って帰ってきていないと。それは寝ずに探している可能性も考えられる……いや、今の段階で楽観視はしないと考えたばかりじゃないか。
「この人たち全員、何処で拐われたのでしょうか……」
シャーリーがそう聞くもギルド長は渋い顔をして首を振った。
「すまない。そこから調査を頼みたいんだ」
なるほど。……これほんと、俺たちが何とかできるんだろうか?と、まぁ考えても仕方がないか。アームチェアディテクティブになれるわけもないんだからな。
※アームチェアディテクティブ。安楽椅子探偵とも。通常の探偵は違い自室などの室内に居たまま推理できる人。
「そこは調べに行くとして、一つ教えてほしい事がある」
大地の言葉に耳を貸すようにギルド長は顔を向ける。
「人目を気にせずに人を運ぶ方法はあるか?……例えば魔道具かなんかで人を丸々入れられたり」
普通に人を運んだら人目につくだろうし噂にもなるだろう。それがないと言うことは特殊な方法で運んだとしか思えない。
「そこまで出力のある魔道具は……あるにはある。確か5人くらいなら余裕で入れられる物があったな」
ギルド長は右斜め上に瞳を動かしながら自分の知識を探る。かなり昔の話ゆえに思い出せる範囲も少ない。
「それを使えば人目を忍んで簡単に人を運べるってことか」
「そうだな。ただ、それを使う前に意識を奪う必要はあるだろうな。それに確かその魔道具は世界に一つしか無かったはずだ」
そんな稀少な物なのか。だけど、有るとわかれば稀少だろうと視野にいれておいた方がいいかもしれない。
「ダイチ。こんな大変なことを頼んですまない」
クルスが申し訳なさそうに言う。だが、探せばミイラになるかもしれない案件であるなら王子が動くわけにはいかないだろう。それがわからない大地ではない。
「気にするな……しかし、拐われてるの全員女性の名前だよな?」
「そうだ。だからクラリスは憤慨して暴走してしまったんだ……」
そう言ったギルド長が小さく「あの馬鹿が」と呟いているのを見ると成長を見守っていた人材なのかもしれない。
一先ず拐われた人の住まい近くで聞き込みしかないか。少しでも手がかりがあればいいんだが……ただ、のんびりしている時間はないだろう。
日にちが経てば経つほど追うのは難しく、そして、拐われた人が危険になっていくのだから。
「情報ありがとな。一先ず聞き込みしてくる」
大地の案に賛成しているように誰一人異を唱える者はおらず、大地がギルド長室を出ていくのに全員ついていくのだった。
ギルド長室が静まり返る。クルスが閉まったドアを観察するように見つめていた、しかし、再び開く気配を見せないドアから視線をはずしてギルド長へと振り替える。
「依頼だと言ったのに報酬を聞かないんだな」
そのクルスの呟きのような語り掛けにギルド長がクックと喉で笑う。
「あいつ、緊急性が高いとその辺のことなんも考えないみたいなんだよな。戦争の時もそうだった」
「……これじゃあ報酬の交渉も何もないな」
幾つか考えていた交渉の材料が全てご破算になったことは嬉しいと思うべきか、一人ピエロになったと思うべきか。
どちらにせよ、妹が大地を頼りたくなる気持ちがよくわかるのだった。
そんな大地の質問にはギルド長が答えた。
「貴族が二人、平民が二人、ハンターが一人だ。ハンターはこの事件を知った時に探すと息巻いててな……止めたんだが結局戻ってきてないんだ」
ミイラ取りがミイラってやつか。
「最初に人が居なくなった日が何時からなのかはっきりわかっていないんだが……推測では2日前くらいだ」
2日か。何の目的で拐ったのかがわかればいいんだが、目的地が不明瞭である今は楽観視はしない方がいいだろう。
「拐われた奴らの住んでる場所とかわかるか?」
そう聞くとギルド長は大きなマップを取り出してきた。それはこのホワイトキングダムを上から見たような絵図だ。人呼んで地図とも言う。
ギルド長の太い指がその地図へ延びていく。
「まずはここだ」
お城から少しだけ離れた東方面に指をさした。
「貴族で名はシーラと言う。クルスの……友人だ」
少しだけ間を開けて友人と言ったのが少しだけ引っ掛かるが今は気にする場合ではないだろう。
「そして二人目の貴族はここだ」
次は反対側となる西方面にギルド長は指した。
「名前はリンだ。クルスの友人の妹だな」
しかし、さすが王族か。相手が貴族となれば交流も多いのだろうか。
「平民はこことここだ」
次いで指を指された場所は商店街近くの民家が並ぶ区域だ。こう見ると貴族の家と離れているのがよくわかる。分かりにくいように人を拐う場所を離した?しかし、それなら平民二人の家が近いな。
「少し調べたところこの飯屋で働いているらしい。名前はアルテリナとヒュリーだ」
ギルド長が指す飯屋の場所にライズとシャーリーはピント来たものが有るみたいで表情が驚きのものに変わった。大地はそれに気づくが今はギルド長の話を聞くことにする。
「ハンターの……クラリスが住んでる場所は……ここだ」
最後に指を指された場所……ここは。
「ギルドの後ろ?」
「金の無いハンター達が住める場所だ」
前にそんな場所があるって聞いたことあるな。しかし、それだとすると家に押し入っての拉致は考えにくいか。ハンターだし何かに気づいてミイラになったと考えるのが妥当だな。
「ハンターが居なくなったのは昨日だ」
つまり昨日、ハンターは探しに行って帰ってきていないと。それは寝ずに探している可能性も考えられる……いや、今の段階で楽観視はしないと考えたばかりじゃないか。
「この人たち全員、何処で拐われたのでしょうか……」
シャーリーがそう聞くもギルド長は渋い顔をして首を振った。
「すまない。そこから調査を頼みたいんだ」
なるほど。……これほんと、俺たちが何とかできるんだろうか?と、まぁ考えても仕方がないか。アームチェアディテクティブになれるわけもないんだからな。
※アームチェアディテクティブ。安楽椅子探偵とも。通常の探偵は違い自室などの室内に居たまま推理できる人。
「そこは調べに行くとして、一つ教えてほしい事がある」
大地の言葉に耳を貸すようにギルド長は顔を向ける。
「人目を気にせずに人を運ぶ方法はあるか?……例えば魔道具かなんかで人を丸々入れられたり」
普通に人を運んだら人目につくだろうし噂にもなるだろう。それがないと言うことは特殊な方法で運んだとしか思えない。
「そこまで出力のある魔道具は……あるにはある。確か5人くらいなら余裕で入れられる物があったな」
ギルド長は右斜め上に瞳を動かしながら自分の知識を探る。かなり昔の話ゆえに思い出せる範囲も少ない。
「それを使えば人目を忍んで簡単に人を運べるってことか」
「そうだな。ただ、それを使う前に意識を奪う必要はあるだろうな。それに確かその魔道具は世界に一つしか無かったはずだ」
そんな稀少な物なのか。だけど、有るとわかれば稀少だろうと視野にいれておいた方がいいかもしれない。
「ダイチ。こんな大変なことを頼んですまない」
クルスが申し訳なさそうに言う。だが、探せばミイラになるかもしれない案件であるなら王子が動くわけにはいかないだろう。それがわからない大地ではない。
「気にするな……しかし、拐われてるの全員女性の名前だよな?」
「そうだ。だからクラリスは憤慨して暴走してしまったんだ……」
そう言ったギルド長が小さく「あの馬鹿が」と呟いているのを見ると成長を見守っていた人材なのかもしれない。
一先ず拐われた人の住まい近くで聞き込みしかないか。少しでも手がかりがあればいいんだが……ただ、のんびりしている時間はないだろう。
日にちが経てば経つほど追うのは難しく、そして、拐われた人が危険になっていくのだから。
「情報ありがとな。一先ず聞き込みしてくる」
大地の案に賛成しているように誰一人異を唱える者はおらず、大地がギルド長室を出ていくのに全員ついていくのだった。
ギルド長室が静まり返る。クルスが閉まったドアを観察するように見つめていた、しかし、再び開く気配を見せないドアから視線をはずしてギルド長へと振り替える。
「依頼だと言ったのに報酬を聞かないんだな」
そのクルスの呟きのような語り掛けにギルド長がクックと喉で笑う。
「あいつ、緊急性が高いとその辺のことなんも考えないみたいなんだよな。戦争の時もそうだった」
「……これじゃあ報酬の交渉も何もないな」
幾つか考えていた交渉の材料が全てご破算になったことは嬉しいと思うべきか、一人ピエロになったと思うべきか。
どちらにせよ、妹が大地を頼りたくなる気持ちがよくわかるのだった。
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