116 / 281
叶わぬ願いと望んだ未来
フレンドリーファイヤーは避けれない
しおりを挟む
「ここ最近、人が消える事件が発生しているんだ」
と、神妙な顔して言うギルド長の話は開幕から物騒な出だしで始まった。
「事件か。単に夜逃げ……と言う線はないのか?」
「夜逃げ?」
大地の言葉にしっくり来なかったギルド長は首をかしげた。
「こっそりとその町から居なくなることだ」
「ふむ、それは財産や家具を残したまますることなのか?」
資産を残したまま居なくなっているのか。そうだとすると夜逃げは該当しなさそうだ。
「いや、殆どの場合は持ち出せる物は全部持っていくだろうな。なら遠出に遊びに行ってるとかは?転移の魔法なら直ぐに移動出来るんだろ?」
そう、それなら一瞬で消えられるし、遊びなら家具だってそのままだ。
しかし、ギルド長は首を横に振るった。
「それも無いな。転移の魔法は転移場所と転移先で上空に伸びるように転移痕が残るんだ。もしそれで移動していたら直ぐにわかる」
そんなものが残るのか……いや、東の砦の戦場で大量の人間が転移してきたと言う報告はそれを見た結果か。
「俺はモンスターに『殺された』か『誘拐された』と考えている。その中でも俺は誘拐されている寄りだな」
「モンスターに殺されるとしたら町の外だろうけど、いなくなった人は町の外に出るような人じゃ無いってことか?」
大地が聞くと既に居なくなった人の事を調べたギルド長は頷いた。
「全員が全員そうとは限らないんだが、それでも外に出ない人まで消えているからな」
一般の人からハンターまで消えているのか……。
「因みに今わかっている消えた人は何人いるんですか?」
シャーリーがギルド長に向かって質問するとギルド長は手を広げ、指で数を表しながら「5人だ」と短く答えた。
5人……こう言ってはなんだけど、王族が絡むには少なすぎないか?
「私からも質問なんですけど、その消えた人の中には貴族がいるんですか?」
何も動きを見せなかったクルスがフルネールからの質問で紅茶を飲む手を止めた。
「鋭いね。貴方は綺麗なだけじゃなく頭も良いんだね」
そう言ってクルスが立ち上がると甘い顔をしながらフルネールに近づい手を伸ばそうとした。その瞬間……。
――パァン!
と、クルス王子の手をフルネールが素早く弾いたのだ。
まさかの出来事でクルスもギルド長も大地も唖然とした。更にクルスに至ってはその表情に悲しさも交えているのだ。
「クルスさん?私に触れようとしないでくださいね?」
フルネールの追撃でダメージは更に加速した。
「お前……流石に王族なんだから……」
と言ったものの、普通に考えれば女神>王族となるはずだからある意味正しいのかもしれない。
「申し訳ありませんが……私に触れていいのは大地さんだけなんですよ」
その声が届いているのかいないのか微妙なところだ。今クルスは「こんなことは初めてだ……」と嘆くばかりであるから。
そもそも、クルスは王子だからわからないがとても顔が良い。それは詰まるところ女性を口説くには高戦闘力であり、且つ、王族特有の賢さ思ったコミュニケーション能力は百戦錬磨と言っていいのだ。
それがまさかの一蹴である。
そしてそれを見ていたもう一人の男、ライズ・エル・フォルンは『フルネールに手を出そうとするとこうなるのか』とクルスが受けているダメージを観察して怖れながら手を出さないよう肝に命じたのだ。
少し話がそれてしまったがクルスの反応で大体が検討ついた。人が居なくなる事件の中に貴族も入っていることでクルスが直々にギルド長へ会いに来たのだろう。
そうでなければ王族は動かない。少し考えればわかりそうなものだが……頭の回転速度はフルネールがダントツだったわけだ。
「人が消える事件ね……それで俺が呼ばれた理由は?」
フルネールに叩かれて傷ついたクルスが少し涙目になりながらも顔をあげた。
「この調査を大地達に依頼したいんだ。頼めないか?」
今までの話の流れで検討はついていた。だが無理だろう。そもそも物事の調査なんて専門外だ。ノウハウも何もなく『やれ』と言われて出来るようなものでもない。
「バカにしないでください!そんなこと大地さんが出来ると思っているんですか!?」
久々だ……。フルネールがみぞおちに右ストレートを放ってくるような言葉の暴力を叩き込んでくるのは。
「もう少し言い方を考えて?」
そう願うように言うがフルネールは見向きもしない。
「何でダイチさんなんですか?」
ライズが口にした疑問は大地も気になっていたところだが、女神からのフレンドリーファイヤーのせいでそのタイミングすらなかった。
「んー。私が知ったのは昨日のパーティーで来なかった貴族を調べさせてからなんだ。誰かに連れ去られたと思って昨日のパーティーの後にどう手を打とうかと考えていたらリリアが『ダイチさんならきっと何とかしてくれますよ!』と絶讚してくれたからな。来ちゃった」
絶対当たるフレンドリーファイヤーは昨日からあったわけだ……。
信頼の証ですね♪
おま、言葉で殴り付けておいて何を言う!
でも、冗談だってわかってるから本当に落ち込んでたりする訳じゃないでしょう?……あ!それとも本当に落ち込んじゃったなら慰めてあげましょうか?お、す、き、な。方法で。
……落ち込んでねえからそれはまた今度頼む。
はいはい。ふふ。
「王族がそんなホイホイ出て来ていいのかよ?」
「だいぶ寝込んでしまったからな。町の中を見回るついでだ。それで頼めないだろうか?」
「やるだけは……やるけどよ……」
知らないうちに外堀を埋められては断る事も出来ない。大地が諦めながら承諾するとクルスは「本当か!」と嬉しそうにする。
その表情から困っているのは本当のようだ。
消える=人拐いの可能性があるから放っておけないとか、そんな正義感は持ち合わせていないけれどやるしかないのだからしょうがない。そうやって大地は腹をくくる。
と、神妙な顔して言うギルド長の話は開幕から物騒な出だしで始まった。
「事件か。単に夜逃げ……と言う線はないのか?」
「夜逃げ?」
大地の言葉にしっくり来なかったギルド長は首をかしげた。
「こっそりとその町から居なくなることだ」
「ふむ、それは財産や家具を残したまますることなのか?」
資産を残したまま居なくなっているのか。そうだとすると夜逃げは該当しなさそうだ。
「いや、殆どの場合は持ち出せる物は全部持っていくだろうな。なら遠出に遊びに行ってるとかは?転移の魔法なら直ぐに移動出来るんだろ?」
そう、それなら一瞬で消えられるし、遊びなら家具だってそのままだ。
しかし、ギルド長は首を横に振るった。
「それも無いな。転移の魔法は転移場所と転移先で上空に伸びるように転移痕が残るんだ。もしそれで移動していたら直ぐにわかる」
そんなものが残るのか……いや、東の砦の戦場で大量の人間が転移してきたと言う報告はそれを見た結果か。
「俺はモンスターに『殺された』か『誘拐された』と考えている。その中でも俺は誘拐されている寄りだな」
「モンスターに殺されるとしたら町の外だろうけど、いなくなった人は町の外に出るような人じゃ無いってことか?」
大地が聞くと既に居なくなった人の事を調べたギルド長は頷いた。
「全員が全員そうとは限らないんだが、それでも外に出ない人まで消えているからな」
一般の人からハンターまで消えているのか……。
「因みに今わかっている消えた人は何人いるんですか?」
シャーリーがギルド長に向かって質問するとギルド長は手を広げ、指で数を表しながら「5人だ」と短く答えた。
5人……こう言ってはなんだけど、王族が絡むには少なすぎないか?
「私からも質問なんですけど、その消えた人の中には貴族がいるんですか?」
何も動きを見せなかったクルスがフルネールからの質問で紅茶を飲む手を止めた。
「鋭いね。貴方は綺麗なだけじゃなく頭も良いんだね」
そう言ってクルスが立ち上がると甘い顔をしながらフルネールに近づい手を伸ばそうとした。その瞬間……。
――パァン!
と、クルス王子の手をフルネールが素早く弾いたのだ。
まさかの出来事でクルスもギルド長も大地も唖然とした。更にクルスに至ってはその表情に悲しさも交えているのだ。
「クルスさん?私に触れようとしないでくださいね?」
フルネールの追撃でダメージは更に加速した。
「お前……流石に王族なんだから……」
と言ったものの、普通に考えれば女神>王族となるはずだからある意味正しいのかもしれない。
「申し訳ありませんが……私に触れていいのは大地さんだけなんですよ」
その声が届いているのかいないのか微妙なところだ。今クルスは「こんなことは初めてだ……」と嘆くばかりであるから。
そもそも、クルスは王子だからわからないがとても顔が良い。それは詰まるところ女性を口説くには高戦闘力であり、且つ、王族特有の賢さ思ったコミュニケーション能力は百戦錬磨と言っていいのだ。
それがまさかの一蹴である。
そしてそれを見ていたもう一人の男、ライズ・エル・フォルンは『フルネールに手を出そうとするとこうなるのか』とクルスが受けているダメージを観察して怖れながら手を出さないよう肝に命じたのだ。
少し話がそれてしまったがクルスの反応で大体が検討ついた。人が居なくなる事件の中に貴族も入っていることでクルスが直々にギルド長へ会いに来たのだろう。
そうでなければ王族は動かない。少し考えればわかりそうなものだが……頭の回転速度はフルネールがダントツだったわけだ。
「人が消える事件ね……それで俺が呼ばれた理由は?」
フルネールに叩かれて傷ついたクルスが少し涙目になりながらも顔をあげた。
「この調査を大地達に依頼したいんだ。頼めないか?」
今までの話の流れで検討はついていた。だが無理だろう。そもそも物事の調査なんて専門外だ。ノウハウも何もなく『やれ』と言われて出来るようなものでもない。
「バカにしないでください!そんなこと大地さんが出来ると思っているんですか!?」
久々だ……。フルネールがみぞおちに右ストレートを放ってくるような言葉の暴力を叩き込んでくるのは。
「もう少し言い方を考えて?」
そう願うように言うがフルネールは見向きもしない。
「何でダイチさんなんですか?」
ライズが口にした疑問は大地も気になっていたところだが、女神からのフレンドリーファイヤーのせいでそのタイミングすらなかった。
「んー。私が知ったのは昨日のパーティーで来なかった貴族を調べさせてからなんだ。誰かに連れ去られたと思って昨日のパーティーの後にどう手を打とうかと考えていたらリリアが『ダイチさんならきっと何とかしてくれますよ!』と絶讚してくれたからな。来ちゃった」
絶対当たるフレンドリーファイヤーは昨日からあったわけだ……。
信頼の証ですね♪
おま、言葉で殴り付けておいて何を言う!
でも、冗談だってわかってるから本当に落ち込んでたりする訳じゃないでしょう?……あ!それとも本当に落ち込んじゃったなら慰めてあげましょうか?お、す、き、な。方法で。
……落ち込んでねえからそれはまた今度頼む。
はいはい。ふふ。
「王族がそんなホイホイ出て来ていいのかよ?」
「だいぶ寝込んでしまったからな。町の中を見回るついでだ。それで頼めないだろうか?」
「やるだけは……やるけどよ……」
知らないうちに外堀を埋められては断る事も出来ない。大地が諦めながら承諾するとクルスは「本当か!」と嬉しそうにする。
その表情から困っているのは本当のようだ。
消える=人拐いの可能性があるから放っておけないとか、そんな正義感は持ち合わせていないけれどやるしかないのだからしょうがない。そうやって大地は腹をくくる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
154
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる