113 / 281
王族よりめんどい貴族のご乱心
ふとした時に出る本音
しおりを挟む
何とか人に紛れつつあの集団から逃げ切った大地は死守したグラスを片手にテラスを第一災害避難場所とした。
こそこそして何かスパイめいた事をしているせいか、童心を思い出して少しだけドキドキと胸を鳴らせた。たが、それも外の空気を吸えば収まる。
いつの間にかもう夕暮れだ。もう1時間もすれば日が落ちるだろう。
「いつの間にかに結構時間が経っていたんだな」
火山の熱がこの国を襲っているはずだがパーティー会場もテラスもそんな熱を感じさせない。つくづく魔道具と言うものは凄い道具だと思う。
吹いてくる風すら気持ちよくなって心地良いのだから。
「ダイチさん」
聞きなれた声が聞こえてきた。あの貴族達ではない事と見知った仲である事に安らぎさえ覚える。
「リリアか」
大地はテラスから外を眺めつつ背中越しに彼女の名前を呼ぶ。リリアは自分を見ていない大地に頷いて答えるのだが、大地は返事がないことからきっと頷いているだろう。とその所作を完璧に予想した。
ゆっくり歩くリリアは大地の隣にそっと近づいた。彼女もパーティーで話疲れたのか沈み行く夕日を静かに眺めている。
何時もより大人びた姿を見せるリリア横顔は可愛さよりも美しさが勝っていて、もしもう少し背が高ければ大人か子供か区別がつけられなかっただろう。
「ダイチさん。パーティーはどうですか?」
ふと、疲れているはずのリリアが言葉を投げ掛けてきた。もしかしたら今日の大地にまで彼女は気を使っているのかもしれない。
「ああ。楽しんでるよ。料理も酒も美味いしな……気づいたらこんな時間だ」
リリアの表情が少しだけ和らぐ。今日の大地は貴族に振り回されていたところもあったので、もしかしたら『つまらない』や『面倒くさいだけ』等と思われているかもしれない。そんな考えが頭をよぎっていたのだ。
「俺よりリリアの方も大変そうだな。色んな人と話をしてただろうし」
「え?……そうですね。私も少し疲れてしまいました」
苦笑じみた笑みを浮かべるリリアだが、どうやらその言葉を聞く限りでは大地が疲れていることをはお見通しらしい。
「それでもあまり疲れを顔に出さないのは流石だな」
「そんな凄いことじゃないですよ。ただ……」
そこで言葉を止めるリリアに大地は聞き返す。
「ただ?」
だが、その言葉を無かったことにするように首を横に振るう。
「いえ、何でもありません」
聖女としての悩みはあるだろう。もしかしたらその辺の愚痴を溢したかたったのかも知れない。それなら納得もいく。パーティー会場で溢すような愚痴ではないからだ。
とは言えそれで気持ちが沈んだままでいられるのも居心地が悪い。でも何を言えばいいのやら……。
困ったときの女神様。そう考えたが直ぐに大地は思い直す。何となく頼らない方がいい気がして。
「なぁリリア」
「はい?」
「その……さ……」
はっきり言わない大地の言動にどう察すれば良いかわからずリリアは言葉を待つしかない。でも、それだけでも嫌な気分にはならないのだ。だから、『何を言うんだろ?』と楽しそうに待つのだ。
「ドレス似合ってる。綺麗だな」
だいぶぶっきらぼうに言う形になってしまったが何とか言えたことで大地の中では『みっしょんこんぷりーと!』なのだ。しかし、その言葉を伝えられた当の本人は大地が恥ずかしがっている事が手に取るようにわかってクスクス笑ってしまう。
「ダイチさん。褒めてくれるのなら私を見て言ってほしいです」
夕日がもう間もなく完全に落ちるだろう。大地はそれを見届けながら伝えたのだが……まさかのリリアから『もう一声!』見たいなリクエストが飛んできた。
大地は戸惑う。いつもと雰囲気が違うリリアを直視するだけでも照れ臭い。その上でリリアを褒めろと言うのだから難しい案件だ。
だけど……リリアを元気付けたいこの気持ちに嘘はない。
大地は体ごとリリアへ向くと、リリアもまた大地へ体を向ける。
辺りは夜の帳に包まれている。夜空の星が煌めきだしているが地上を照らすのは難しい。でも、後ろのパーティー会場が光源となり差し込んでくる光はリリアの顔を照らす。
夜の闇と横から照らされる光、何時もと違う衣服を身に纏ったリリアは本当に綺麗で……大地は言葉を掛けるのも忘れてじっと見つめる。
目を奪われる。とはこの事だろう。
『見て言ってほしい』そう言った手前、じっと見つめられたまま何も言わない大地にたいしてリリアは何も言うことが出来ない。
だけど、思い返せば自分の口からそんな言葉を言うなんて驚きだ。だけど、このパーティーで話した貴族は服も褒めてくれることはなかった。話す内容なんて「ご、ご機嫌麗しゅう」から始まり「クルス殿下が快復されて本当に嬉しく思います」やら「リ、リリア様とお話しできて幸栄です」やら「リリア様が取ってきてくださいましたスノーパールで領民も少し安心したようです」とかだ。
何を話せばいいかわからないと言った貴族から予め考えていたであろう貴族との会話なんてそんなものである。近寄りがたいから本人の話より『回りで起こした事』を褒めておけば波風立たないだろう。と言ったところだ。
でも、聖女と王女の自分がそう特別視されるのは昔からである。……でも、本音を言えばやっぱり褒めてほしいのだ。
「あの……ダイチさん?」
我慢の限界……という言い方はアレだがそろそろ恥ずかしさで逃げたい思いが強くなってきているのだ。何でもいいから話してくれなければ走り出してしまうと思ってリリアは声をかけた。
そうすることでハッと見つめすぎていることに気づいた大地が顔を逸らそうとする。しかし、直ぐに思い改めたのかリリアの顔を見ながら言う。
「リリア……とても綺麗だよ」
状況と焦りと混乱付与により絞り出した言葉を大地が口にしたのだが、一部の言おうとしていた名詞が抜けてしまった。
だけど……その言葉は奇しくもリリアを最初に見た時の感想だ。
「あ、ありがとう……ございます」
顔を見つめられながらそう呟かれては先程よりも強く恥ずかしさを感じるものの服ではなく自身を褒められて嬉しさが恥ずかしさを勝ってしまい、つい、今まで誰にも言わなかった素直な言葉を口にする。
「……とても、嬉しいです」
何時もと違ったリリアの笑顔再び大地は目を奪われるのだった。
こそこそして何かスパイめいた事をしているせいか、童心を思い出して少しだけドキドキと胸を鳴らせた。たが、それも外の空気を吸えば収まる。
いつの間にかもう夕暮れだ。もう1時間もすれば日が落ちるだろう。
「いつの間にかに結構時間が経っていたんだな」
火山の熱がこの国を襲っているはずだがパーティー会場もテラスもそんな熱を感じさせない。つくづく魔道具と言うものは凄い道具だと思う。
吹いてくる風すら気持ちよくなって心地良いのだから。
「ダイチさん」
聞きなれた声が聞こえてきた。あの貴族達ではない事と見知った仲である事に安らぎさえ覚える。
「リリアか」
大地はテラスから外を眺めつつ背中越しに彼女の名前を呼ぶ。リリアは自分を見ていない大地に頷いて答えるのだが、大地は返事がないことからきっと頷いているだろう。とその所作を完璧に予想した。
ゆっくり歩くリリアは大地の隣にそっと近づいた。彼女もパーティーで話疲れたのか沈み行く夕日を静かに眺めている。
何時もより大人びた姿を見せるリリア横顔は可愛さよりも美しさが勝っていて、もしもう少し背が高ければ大人か子供か区別がつけられなかっただろう。
「ダイチさん。パーティーはどうですか?」
ふと、疲れているはずのリリアが言葉を投げ掛けてきた。もしかしたら今日の大地にまで彼女は気を使っているのかもしれない。
「ああ。楽しんでるよ。料理も酒も美味いしな……気づいたらこんな時間だ」
リリアの表情が少しだけ和らぐ。今日の大地は貴族に振り回されていたところもあったので、もしかしたら『つまらない』や『面倒くさいだけ』等と思われているかもしれない。そんな考えが頭をよぎっていたのだ。
「俺よりリリアの方も大変そうだな。色んな人と話をしてただろうし」
「え?……そうですね。私も少し疲れてしまいました」
苦笑じみた笑みを浮かべるリリアだが、どうやらその言葉を聞く限りでは大地が疲れていることをはお見通しらしい。
「それでもあまり疲れを顔に出さないのは流石だな」
「そんな凄いことじゃないですよ。ただ……」
そこで言葉を止めるリリアに大地は聞き返す。
「ただ?」
だが、その言葉を無かったことにするように首を横に振るう。
「いえ、何でもありません」
聖女としての悩みはあるだろう。もしかしたらその辺の愚痴を溢したかたったのかも知れない。それなら納得もいく。パーティー会場で溢すような愚痴ではないからだ。
とは言えそれで気持ちが沈んだままでいられるのも居心地が悪い。でも何を言えばいいのやら……。
困ったときの女神様。そう考えたが直ぐに大地は思い直す。何となく頼らない方がいい気がして。
「なぁリリア」
「はい?」
「その……さ……」
はっきり言わない大地の言動にどう察すれば良いかわからずリリアは言葉を待つしかない。でも、それだけでも嫌な気分にはならないのだ。だから、『何を言うんだろ?』と楽しそうに待つのだ。
「ドレス似合ってる。綺麗だな」
だいぶぶっきらぼうに言う形になってしまったが何とか言えたことで大地の中では『みっしょんこんぷりーと!』なのだ。しかし、その言葉を伝えられた当の本人は大地が恥ずかしがっている事が手に取るようにわかってクスクス笑ってしまう。
「ダイチさん。褒めてくれるのなら私を見て言ってほしいです」
夕日がもう間もなく完全に落ちるだろう。大地はそれを見届けながら伝えたのだが……まさかのリリアから『もう一声!』見たいなリクエストが飛んできた。
大地は戸惑う。いつもと雰囲気が違うリリアを直視するだけでも照れ臭い。その上でリリアを褒めろと言うのだから難しい案件だ。
だけど……リリアを元気付けたいこの気持ちに嘘はない。
大地は体ごとリリアへ向くと、リリアもまた大地へ体を向ける。
辺りは夜の帳に包まれている。夜空の星が煌めきだしているが地上を照らすのは難しい。でも、後ろのパーティー会場が光源となり差し込んでくる光はリリアの顔を照らす。
夜の闇と横から照らされる光、何時もと違う衣服を身に纏ったリリアは本当に綺麗で……大地は言葉を掛けるのも忘れてじっと見つめる。
目を奪われる。とはこの事だろう。
『見て言ってほしい』そう言った手前、じっと見つめられたまま何も言わない大地にたいしてリリアは何も言うことが出来ない。
だけど、思い返せば自分の口からそんな言葉を言うなんて驚きだ。だけど、このパーティーで話した貴族は服も褒めてくれることはなかった。話す内容なんて「ご、ご機嫌麗しゅう」から始まり「クルス殿下が快復されて本当に嬉しく思います」やら「リ、リリア様とお話しできて幸栄です」やら「リリア様が取ってきてくださいましたスノーパールで領民も少し安心したようです」とかだ。
何を話せばいいかわからないと言った貴族から予め考えていたであろう貴族との会話なんてそんなものである。近寄りがたいから本人の話より『回りで起こした事』を褒めておけば波風立たないだろう。と言ったところだ。
でも、聖女と王女の自分がそう特別視されるのは昔からである。……でも、本音を言えばやっぱり褒めてほしいのだ。
「あの……ダイチさん?」
我慢の限界……という言い方はアレだがそろそろ恥ずかしさで逃げたい思いが強くなってきているのだ。何でもいいから話してくれなければ走り出してしまうと思ってリリアは声をかけた。
そうすることでハッと見つめすぎていることに気づいた大地が顔を逸らそうとする。しかし、直ぐに思い改めたのかリリアの顔を見ながら言う。
「リリア……とても綺麗だよ」
状況と焦りと混乱付与により絞り出した言葉を大地が口にしたのだが、一部の言おうとしていた名詞が抜けてしまった。
だけど……その言葉は奇しくもリリアを最初に見た時の感想だ。
「あ、ありがとう……ございます」
顔を見つめられながらそう呟かれては先程よりも強く恥ずかしさを感じるものの服ではなく自身を褒められて嬉しさが恥ずかしさを勝ってしまい、つい、今まで誰にも言わなかった素直な言葉を口にする。
「……とても、嬉しいです」
何時もと違ったリリアの笑顔再び大地は目を奪われるのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
154
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる