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王族よりめんどい貴族のご乱心
噂の人物像は実際に会うと全然違う事ってあるかな?
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戦場……それは読んで字のごとく戦う場所だ。己を鍛え、技を磨き、精神を研ぎ澄ませ、そして命を奪い合う。物騒な場所ではあるが自分が信じる物、者を護る為には必要な場所だ。
パーティー……それは読んで字のごとくパーティをする場所だ。知恵を磨き、情報を集め、相手を観察する目を持ち、そしてマウントを奪い合う。恐ろしい場所ではあるが生きる為には必要な場所だ。
つまり戦場=パーティーなのである。
そしてこれから大地達はその過酷で熾烈な戦いへと挑まなければならない。この戦いで何が一番きついかと言うと知力でしか戦えない事だ。チートの戦闘力?そんな物この戦場ではゴミ同然だと言えよう。
――だが、恐れることなかれ!知力の他にもう一つ戦闘力が追加される要素をここで教えておきたい。それは……金だ。
Aさん(Bさんはアホだなぁ。この分じゃ働いてないだろうし年収もないだろう)「やぁBさん、君の年収はいくらだい?」
Bさん(Aさんだ。頭いいし俺に話しかけてくれるし良い人だよな)「僕に年収はないよ」
Aさん(やっぱりな)「そうか。それじゃあやっていけないだろ?」
Bさん(心配してくれてるなぁ)「大丈夫だよ。だってロトセ〇ン当たったから」
分かるだろうか?始終マウントを取っていたはずのAさんがBさんの下に来てしまった瞬間が。これこそが金の力と言うものである。そして運=金の構図とも言えよう。ネオニート生活が出来るようであればある程度の頭の良さなど霞んでしまうだろう。
もっとも、そんな運を大地が持っているわけがない為、戦力はたったの0かゴミめ。見たいな目を向けられるだろう。知恵無し金無し家無しが王族のパーティーに出席すると言うのだから怖いもの知らずとしか言いようがない。正直言えばモンスターの巣窟に一人残された方が気が楽ってものだ。
この戦場にただ一つだけ大地がしてきた事は無精ひげを全部沿って身だしなみを少しだけ整えたくらいだ。ただそれもフルネールとシャーリーのダブルアタックによる抗議の末、簡単な剃刀を出して剃ったというものだが……まぁそれでもマイナスポイントは服装にすべて持っていかれてしまうは目に見えてわかる。
恐れる気持ちを胸の内に秘めながら城の門前に大地達は到着した。移動手段?当然徒歩以外は有りえない。そして、これも当然ながら城の前だと言うのに一人だけ正装として見る事が出来ない服装だ。
回りを見ると門を通っていくのは馬車ばかりで『徒歩で来た!』なんて言う人は誰一人見受けられない。貴族が歩いてくるなんて有りえないのだから当たり前である。
「い、行くか」
意を決して大地がそう言って門に近づこうとした瞬間、前を遮られるように槍が下ろされた。
「待て!」
力強く言われたその言葉に大地はその場に立ち止まるしかなかった。
「今日は大事なパーティーがある日だ。そこにお前みたいな奴が何用だ!?」
門番の仕事は怪しい人物を城の中へ入れない事だ。しかも今日はクルス王子の全快を祝う大事なパーティーである。そんな時に礼装でも無ければ馬車でもない怪しい人物が近づいてきたとあれば門番としては黙って通すわけには行かない。
「パーティーに招待されているんだ。通してくれないか?」
大地の後ろにいる人物達。中にはモンスターも混じっているのは分かるがどれもきちっとした服を身に着けている。それだけ見れば分からなくも無いが……目の前の男が怪しすぎるのも間違いない。
だが、門番歴20年のベテランとしては恰好だけで判断するのは愚の骨頂だという事は分かっている。
「それではパーティーの招待状は御持ちでしょうか?」
門番は一先ず槍を下ろし、口調を正しながら必要な物を提示する事にした。どんな格好であれ、姿であれ、人物であれ。お城の人間が招いた客ならば礼儀を尽くすのが当然なのだ。
問題はそんな物を持っていないという事だ。何せ昨日の帰り際に呼ばれただけなのだから招待状何て言うものは手渡されていない。
「あ、あー。貰ってないんだけど……ダメか?」
もうこうなると『パーティー知ってるから来たぜ?招待状貰ってないけど呼ばれた気がするから来たぜ?』というようにしか聞こえないだろう。
「ダメに決まっているだろう!貴様、名を名乗れ!」
ああ、髭を生やしたダンディな門番が怒り始めてしまった。こうなれば名乗るか!
「ふ、何を隠そうこの俺こそが大地だ!そしてCランクハンターでもある!」
「ダイチ?……Cランク?……そうか名騙りか!?」
『ダイチ』確かに聞いた事はある。南に行けば狂暴なモンスターを打倒し、北に行けば聖女をたぶらかし、西に行けば王女をたらし込め、東に行けば不殺を貫きとおす。
そんな美名と悪名の二つを併せ持ちながらリリアとアーデルハイドが噂をするほどの信頼差を持つとされている英雄。その男と名前が一緒なのは直ぐに気付いた。だが、その後に付け足された『Cランクハンター』が門番が思う『ダイチ』の人物像から掛け離れさせた。
もし二人の王女が言うようにとんでもない強さを秘めているならSランクではないと不自然すぎるからだ。同じ名前であることを利用してうまい汁を吸うつもりなのだろう。そう考えた門番は槍を再び下ろして遮る。
「待った待った!何でそうなる!?」
「貴様!自分の服装を考えろ!?どこに王族が主催するパーティーにそんな汚い恰好で来る英雄がいる!?」
英雄じゃないけど!汚い恰好は……まぁそうだな。
「急で金が無かったんだ」
「ダイチ……と言う名は俺も聞いたことがある。Sランクモンスターを一人で倒したそうだ。そんな人が金ないわけないだろう!?」
くそう!どいつもこいつも強さ=金だと思ってやがる!運=金だっつううの!!入るも消えるもな……。
「今なら見逃してやろう。とっとと立ち去れ」
優しい人だ。もし俺が騙してやっていたら本来なら即お縄だろうに。
「それは出来ない相談だ。呼ばれたからにはここを押し通らせてもらう!」
大地さん?そんな事を言ってもいいんですか?
あー。つい。何となく。勢いで。反省はしていない。
「よかろう。これでも俺は色んな不届き者を捕らえてきた。覚悟――!」
「あ、ダイチさん。来てくれたんですね!」
門番が槍を引いて構えた直後に城の門の内側からとても綺麗な女の子が声を掛けてきた。そして、今の状況が何もわかっていない彼女がトテトテと大地のそばまで走ってきたのだ。
「招待状も何もないから心配してたんです!」
やって来たのはリリアだ。何時もと違う姿に一瞬誰だかわからなかった。
「あれ?どうしたんです?ダイチさん何かしちゃったんですか?」
あれぇ。この子、俺を疑ってくるぞ?
大地さんたまにやらかすから……日頃の成果ですね!
うへぇ。
「――リリア様。こいつ、いえ!この御方がいつもお話されている……?」
恐る恐ると言った感じで門番がリリアにそう尋ねるとリリアは頷いた。
「はい!Sランクモンスターを倒したり、クルス王子を救うスノーパールを見つけたり!とてもすごい人なんですよ!」
よせやい。照れるじゃないか。
「そ、それでは今日のパーティーには……?」
「昨日、直接招待されてるんです。ただ、急だったので招待状を渡すことが出来ず、たぶん入る時にお困りになると思ったので迎えに来ました」
王様から直接招待+聖女のお出迎え=重鎮
その方程式が完成してしまったのか門番は顔を青くなっていく。
「そ、それは……大変申し訳ありませんでした!!どうぞお入りください!」
「ありがとう。あと、気にしないでくれ」
立派に仕事をする門番さんにお礼を言いつつ門を通らせて貰うが、今のやり取りからでもわかるリリアの顔パス具合もかなりのものだと思うのであった。
パーティー……それは読んで字のごとくパーティをする場所だ。知恵を磨き、情報を集め、相手を観察する目を持ち、そしてマウントを奪い合う。恐ろしい場所ではあるが生きる為には必要な場所だ。
つまり戦場=パーティーなのである。
そしてこれから大地達はその過酷で熾烈な戦いへと挑まなければならない。この戦いで何が一番きついかと言うと知力でしか戦えない事だ。チートの戦闘力?そんな物この戦場ではゴミ同然だと言えよう。
――だが、恐れることなかれ!知力の他にもう一つ戦闘力が追加される要素をここで教えておきたい。それは……金だ。
Aさん(Bさんはアホだなぁ。この分じゃ働いてないだろうし年収もないだろう)「やぁBさん、君の年収はいくらだい?」
Bさん(Aさんだ。頭いいし俺に話しかけてくれるし良い人だよな)「僕に年収はないよ」
Aさん(やっぱりな)「そうか。それじゃあやっていけないだろ?」
Bさん(心配してくれてるなぁ)「大丈夫だよ。だってロトセ〇ン当たったから」
分かるだろうか?始終マウントを取っていたはずのAさんがBさんの下に来てしまった瞬間が。これこそが金の力と言うものである。そして運=金の構図とも言えよう。ネオニート生活が出来るようであればある程度の頭の良さなど霞んでしまうだろう。
もっとも、そんな運を大地が持っているわけがない為、戦力はたったの0かゴミめ。見たいな目を向けられるだろう。知恵無し金無し家無しが王族のパーティーに出席すると言うのだから怖いもの知らずとしか言いようがない。正直言えばモンスターの巣窟に一人残された方が気が楽ってものだ。
この戦場にただ一つだけ大地がしてきた事は無精ひげを全部沿って身だしなみを少しだけ整えたくらいだ。ただそれもフルネールとシャーリーのダブルアタックによる抗議の末、簡単な剃刀を出して剃ったというものだが……まぁそれでもマイナスポイントは服装にすべて持っていかれてしまうは目に見えてわかる。
恐れる気持ちを胸の内に秘めながら城の門前に大地達は到着した。移動手段?当然徒歩以外は有りえない。そして、これも当然ながら城の前だと言うのに一人だけ正装として見る事が出来ない服装だ。
回りを見ると門を通っていくのは馬車ばかりで『徒歩で来た!』なんて言う人は誰一人見受けられない。貴族が歩いてくるなんて有りえないのだから当たり前である。
「い、行くか」
意を決して大地がそう言って門に近づこうとした瞬間、前を遮られるように槍が下ろされた。
「待て!」
力強く言われたその言葉に大地はその場に立ち止まるしかなかった。
「今日は大事なパーティーがある日だ。そこにお前みたいな奴が何用だ!?」
門番の仕事は怪しい人物を城の中へ入れない事だ。しかも今日はクルス王子の全快を祝う大事なパーティーである。そんな時に礼装でも無ければ馬車でもない怪しい人物が近づいてきたとあれば門番としては黙って通すわけには行かない。
「パーティーに招待されているんだ。通してくれないか?」
大地の後ろにいる人物達。中にはモンスターも混じっているのは分かるがどれもきちっとした服を身に着けている。それだけ見れば分からなくも無いが……目の前の男が怪しすぎるのも間違いない。
だが、門番歴20年のベテランとしては恰好だけで判断するのは愚の骨頂だという事は分かっている。
「それではパーティーの招待状は御持ちでしょうか?」
門番は一先ず槍を下ろし、口調を正しながら必要な物を提示する事にした。どんな格好であれ、姿であれ、人物であれ。お城の人間が招いた客ならば礼儀を尽くすのが当然なのだ。
問題はそんな物を持っていないという事だ。何せ昨日の帰り際に呼ばれただけなのだから招待状何て言うものは手渡されていない。
「あ、あー。貰ってないんだけど……ダメか?」
もうこうなると『パーティー知ってるから来たぜ?招待状貰ってないけど呼ばれた気がするから来たぜ?』というようにしか聞こえないだろう。
「ダメに決まっているだろう!貴様、名を名乗れ!」
ああ、髭を生やしたダンディな門番が怒り始めてしまった。こうなれば名乗るか!
「ふ、何を隠そうこの俺こそが大地だ!そしてCランクハンターでもある!」
「ダイチ?……Cランク?……そうか名騙りか!?」
『ダイチ』確かに聞いた事はある。南に行けば狂暴なモンスターを打倒し、北に行けば聖女をたぶらかし、西に行けば王女をたらし込め、東に行けば不殺を貫きとおす。
そんな美名と悪名の二つを併せ持ちながらリリアとアーデルハイドが噂をするほどの信頼差を持つとされている英雄。その男と名前が一緒なのは直ぐに気付いた。だが、その後に付け足された『Cランクハンター』が門番が思う『ダイチ』の人物像から掛け離れさせた。
もし二人の王女が言うようにとんでもない強さを秘めているならSランクではないと不自然すぎるからだ。同じ名前であることを利用してうまい汁を吸うつもりなのだろう。そう考えた門番は槍を再び下ろして遮る。
「待った待った!何でそうなる!?」
「貴様!自分の服装を考えろ!?どこに王族が主催するパーティーにそんな汚い恰好で来る英雄がいる!?」
英雄じゃないけど!汚い恰好は……まぁそうだな。
「急で金が無かったんだ」
「ダイチ……と言う名は俺も聞いたことがある。Sランクモンスターを一人で倒したそうだ。そんな人が金ないわけないだろう!?」
くそう!どいつもこいつも強さ=金だと思ってやがる!運=金だっつううの!!入るも消えるもな……。
「今なら見逃してやろう。とっとと立ち去れ」
優しい人だ。もし俺が騙してやっていたら本来なら即お縄だろうに。
「それは出来ない相談だ。呼ばれたからにはここを押し通らせてもらう!」
大地さん?そんな事を言ってもいいんですか?
あー。つい。何となく。勢いで。反省はしていない。
「よかろう。これでも俺は色んな不届き者を捕らえてきた。覚悟――!」
「あ、ダイチさん。来てくれたんですね!」
門番が槍を引いて構えた直後に城の門の内側からとても綺麗な女の子が声を掛けてきた。そして、今の状況が何もわかっていない彼女がトテトテと大地のそばまで走ってきたのだ。
「招待状も何もないから心配してたんです!」
やって来たのはリリアだ。何時もと違う姿に一瞬誰だかわからなかった。
「あれ?どうしたんです?ダイチさん何かしちゃったんですか?」
あれぇ。この子、俺を疑ってくるぞ?
大地さんたまにやらかすから……日頃の成果ですね!
うへぇ。
「――リリア様。こいつ、いえ!この御方がいつもお話されている……?」
恐る恐ると言った感じで門番がリリアにそう尋ねるとリリアは頷いた。
「はい!Sランクモンスターを倒したり、クルス王子を救うスノーパールを見つけたり!とてもすごい人なんですよ!」
よせやい。照れるじゃないか。
「そ、それでは今日のパーティーには……?」
「昨日、直接招待されてるんです。ただ、急だったので招待状を渡すことが出来ず、たぶん入る時にお困りになると思ったので迎えに来ました」
王様から直接招待+聖女のお出迎え=重鎮
その方程式が完成してしまったのか門番は顔を青くなっていく。
「そ、それは……大変申し訳ありませんでした!!どうぞお入りください!」
「ありがとう。あと、気にしないでくれ」
立派に仕事をする門番さんにお礼を言いつつ門を通らせて貰うが、今のやり取りからでもわかるリリアの顔パス具合もかなりのものだと思うのであった。
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