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王族よりめんどい貴族のご乱心
猫猫亭と大地のコラボ?
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リリエッタの店の中にはいると目の前にはリリエッタの母親であり店主の女性が立っていた。どうやらリリエッタがいきなり店の外へ飛び出したらしく戻ってくるのを待っていたらしい。
「お母さん!ダイチさんを捕まえたよ!」
どうやら俺は捕まってしまったらしい。……いやぁまいったなぁ。
手を掴んでいたはずのリリエッタはいつの間にか腕に抱きつくようにしていて……胸の感触が腕を通して伝わってきている。
「こら!リリエッタ。先に言うことが有るんじゃないの!!」
母の怒った声にリリエッタは少し竦み上がりパッと大地から離れた。
「う、うん。そうだよね」
改めて大地達へ体ごと向き直るとリリエッタは丁寧にお辞儀しながら言う。
「あの、私が捕まった時に助けてくれてありがとうございました!」
リリエッタが貴族に捕まり奴隷にされた時の話だ。
「ダイチ。俺達にわかるように教えてくれるか?」
その時に居なかったライズとシャーリーが気になってか聞いてきた。それについてどこまで話そうかと思ったのだが、リリエッタが率先して話してくれた。
貴族に嫌がらせされ、仕方なく貴族の屋敷に行き、そして奴隷にされた。と。だが、最悪なことが起きる前に大地達が助けに来てくれて奴隷の呪いを解呪してもらったのだと。
その話を聞いた二人は逆に今大地と行動している敬意をリリエッタに話す。
「そんなわけで俺達も奴隷の呪いを解呪して貰ったんだ」
「そうなんですね!」
三人で奴隷談義を開始しそうな雰囲気をしていた。その話の先行き気になるところだが、その前に聞かねばならないことがある。
「ところで俺は何故ここに連れてこられたんだ?」
そして、他のウェイトレスさんはどこ?
「あ!えっとね……元々ウェイトレスは私を入れて4人、厨房がお母さんともう一人で二人だったんだけど……ウェイトレスが二人急に来なくなっちゃって。やっぱり貴族の事でいやになっちゃったのかも……」
「ふむふむ」
「それでね、今日、厨房の人とウェイトレス一人が風邪を引いちゃってどうしようって話をしてたんだけど……そこにダイチさんを見つけたの」
「つまり?」
「お願い!手伝って?」
リリエッタが首をかしげながらそう言ってくるが、大地が出来ることは無い……わけではないが頷いて良いものか迷う。
「ちゃんと報酬払うから今日だけでも手伝ってくれると嬉しいんだけど。ダメかな?」
報酬が出るなら話は変わってくる。
「いいのか?」
「もちろん!手伝ってくれる?」
こうして今日の稼ぎ場所が決まったのだ。
リリエッタとその母親が経営する店の名は『猫猫亭』と言うらしい。店の看板にはデカデカと書いてあるらしいが文字の読めない大地ではわからなかった。
その猫猫亭からは普段聞くことができない声が聞こえてくる。
「いらっしゃいませ」
元気よく挨拶をしたのはフルネールだ。今この店には美男美女率が急上昇している。
言わずと知れず銀色の髪を輝かせて優しい笑顔で包み込むように出迎え男女問わず見惚れさせるフルネール。
小さい体で料理を運び一生懸命な姿は微笑ましく感じさせるレヴィア。
慣れないことで戸惑い、拙いながらも頑張る姿勢を見せて男心をくすぐるシャーリー。
イケメン特有の甘いマスクと自慢の話術によって女性人気を爆あげするライズ。
皆普段の格好と違いウェイトレス、ウェイターの制服で新鮮な感じがする。
残念なのは美男美女の美男率を下げてるのは自分と言うことだ。
「いらっしゃい……」
「ダイチさん。あんた何しているんだ?」
店にはいってきた客を出迎えようとした大地だが、その客の姿を見て固まった。
「今日一日はここで働いてるんだよ。カイ達はどうした?飯か?」
まさかの知り合いが来るとは思わなかったからだ。
来たのはチョクチョク会う事があるカイ青年とそのパーティメンバーの女戦士のマリンと魔法使いのオーガスだ。大地の疑問にはカイの後ろにいるのマリンが答えた。
「今日ここに新しい子がいるってカイが聞いたらしくてね。どうしても来たいって言うから来てみたんだ」
「新しい人ってダイチさんかよ……」
思いっきり落胆した顔を見せる。まぁ期待してきてみたらおっさんのお出迎えとか、精神にダメージが入る気持ちはわからないでもない。仕方がない。
「俺だけじゃないぞ……そうだな。シャーリーちょっと来てくれるか?」
大地の呼び掛けにシャーリーは「はーい」と元気よく返事をして大地のそばへと来る。
金色の髪、可愛らしい容姿、エルフとしての特徴。そのどれかに目を引いたのかカイはシャーリーに見惚れているようだった。
「悪い、こいつらを席に案内してやってくれるか?」
「わかったわ」
そう快く引き受けるとシャーリーはカイ達に向き直り笑顔で言う。
「いらっしゃいませ。こちらにどうぞ」
そのシャーリーが言葉と共に歩きだすとカイもその後を歩く。まるでドリアードに誘惑された男のようについていくのを見ると、いつか悪い女に捕まるんじゃないかと心配になる。
カイを見送ると直ぐに店の扉が開いた。
「いらっしゃいませ」
「カッコいい新人が入ったって聞いたけどおっさんじゃない。これじゃあ詐欺よ詐欺」
見知らぬ女性客だがいきなり酷い言い様である。だが、それでも雇われている以上、接客はしなければならない。でもそこまで言う必要ないだろ……。
「ライズ!ちょっと来てくれるか?」
「わかった」
正直関わりたくないなぁという気持ちの方が強く、つい彼を呼んでしまった。
だが、正解かもしれない。女性客はライズの顔を見ると眉尻を下げていた表情が笑顔へと変わっていくのだ。
「こちらの方の案内を頼む」
大地がそう言うとライズは頷いてくれる。
「お嬢様、いらっしゃいませ。お席へ案内致しますのでこちらへ」
ライズが微笑みながら言うその言葉で女性客はメロメロである。流石イケメン。女性客をライズが連れてってくれたことで一安心する。
「アニキ。久しぶりです!」
どこか聞き覚えのある声と呼び方だ。大地が入り口の方へ目を向けるとそこには赤髪の男が立っていた。
覚えているだろうか?フルネール欲しさに無謀にも突っかかってきた赤髪のBランクハンターだ。
「おう、久しぶりだな。飯食いに来たのか?」
「そうです。今このお店がすごい噂になってるんですよ?今日の店員すごいって他のハンターから聞いたんです」
噂の広まり具合早くない?何かの陰謀?
「まて、そもそも今ギルドって閉まってるよな?」
「ええ、ですのでハンター集会所で皆情報の交換とかしてるんですよ」
何そのハンター集会所って。俺知らないんだけど。
「その集会所ってなんだ?」
「え?あー、ハンター達の情報って中には外部に漏らせないものもあるんです。でもギルド内だと一般の人間も依頼に来るから話すのが危険なんですよ」
それだけ聞けばさすがに大地も分かる。
「そこで集会所の出番って事か」
「そうです。流石アニキ!」
そのヨイショはやめろー!すごく馬鹿にされている気分になる……。
「ま、まぁ取り敢えずわかった。ありがとな」
「いえ!それより席に案内してほしいんですが……出来れば姉御に……」
姉御?……フルネールのことだろうか?
「ああ、わかった」
大地はそう言うと店内を見回して人物を探す。
「フルネール。ちょっと来てくれて」
その大地の呼び掛けに応えるようにフルネールは近づいてくる。
「大地さん。どうしました?」
「こいつを席に案内してくれるか?」
フルネールが入ってきた客に視線を向けると、その客である赤髪は少しほほを赤くしている。それを理解してかフルネールはニコりと柔和な笑顔を見せて綺麗にお辞儀しながら言う。
「いらっしゃいませ。お席へご案内しますのでこちらについてきてください」
優しい声に癒されながら、赤髪は女神に導かれて戦士の休息へと向かうのであった。
やはり皆、目当ての店員がいるんだな。おっさんは寂しいぜ。
そう嘆こうとも客はやって来る。
「君が新人か。リリエッタちゃんはいないの?」
この男性客はどうやら常連らしくリリエッタ目的の客だ。彼女はここの看板娘なのだからそういう客がいても何らおかしいことはない。
そして、それならば彼女を呼ぶのが一番だろう。
「リリエッタ、今来れるか?」
「うん!」
リリエッタが元気に頷くと大地へと近づいてくる。
「どうしたのー?」
「こちらの方を席まで案内してあげられるか?」
チラリとリリエッタは瞳を客に向けた。
「あ!いらっしゃいませ!お席へ案内しますね!」
どうやらリリエッタも知っている見たいで笑顔に影は見えない。だからこそ大地も安心して彼女に任せる。
「ねぇ大地。今日のお昼はまかない?ってメニューを出してもらえるみたい何だけど……私も食べていいのかしら?」
ああ、賄い料理か。このお昼時ラッシュが終わってからだろうが……助かるな。
「もちろんだ。きっと美味しいぞ」
「そ、そう。それならもっとお仕事がんばらなくちゃダメね」
ちょっとソワソワし始めているのを見て楽しみにしていることがわかり微笑ましく感じる。
「あら、今日は店員さん多いのね」
そんなレヴィアを見ていると店の扉が開いた。外から入ってきたのは女性客だが、この人も常連だと発した言葉から感じる。
客足が途絶えないのもいいことだ。もっともここの料理が美味いこともあるだろうけども。
「いらっしゃいませ」
大地に続いてレヴィアもペコリとお辞儀する。彼女のウェイトレス姿は何故か尻尾用の穴が開いている物があり、それを小さめに少しだけ縫い直したものだ。
リリエッタが使わないからって言って率先してやってくれた事に感謝しかない。
「あ、いらっしゃいませ」
「あら?可愛い定員さんね」
その女性客はレヴィアを見て驚くこともしなかった。尻尾も視界にはいっているはずだからモンスターであることはわかるはずだ。
「席に案内するわ。ついてきてちょうだい」
女性客の言葉を無視したのか?とも思ったが少しだけほほを赤くしてるのは照れてる証拠かもしれない。
しかし仕事してねぇな……俺。やってることといえばこの店に来た人におっさんの出迎えにより初撃精神ダメージ与えることか?ろくでもねぇな。
「兄貴!俺らも来ましたぜ!」
また俺の知り合いだろうか?だとしたらその呼び方はもう一人しか知らない。
「レイヴン、レルム、ミル。いらっしゃい」
こいつらは雪山の遠征で出会ったAランクパーティだ。
リーダーのレイヴンは老け顔でハゲているのだがそれが反って貫禄を出している。元々は俺に突っかかってきたんだが軽く遊んだら兄貴呼ばわりだ。
レルムはレンジャーでありこのパーティを生存させるのに一役買っている人間だ。前回も気になっていたが細目の彼は本当に目で認識しているのだろうか?
そして、最後はパーティの紅一点、妖精のミルだ。魔法が得意らしく魔力量で俺やフルネールをただの人間じゃない事にある程度きづいたのだ。
もっとも遠征帰り前の宴会では会う事が無かったから彼らがレヴィアについてどこまで知っているかは謎である。それでも大々的にレヴィアに乗って戻った事から大地がリヴァイアサンと契約している事は知っているはずなのだ。
「ダイチさん。何でここで働いているんだ?今日はギルドも閉まっているし多くのハンターは遊ぶか休息を楽しんでるんだけど」
く。金があるやつらは余裕があるぜ。畜生。
「あ~ここのお店で助けを求められてしまったからな。手伝っているんだ」
嘘は言っていない。一部本当の事を言ってないだけだ。これだけ言えば俺が金欠の甲斐性無しという事実は隠せるはずだから。
「流石兄貴だぜ!!」
レルムはあまり納得していない様子だがレイヴンはヨイショしてくるのでそれを利用してごり押しておけばいいだろう。
「バカね。お金が無いことも働く要因の一つでしょう?」
うぐぅ。バレテール。
あっさり受け入れようとしていたレイヴンにミルが横やりを入れたのだ。
「ま、大方、あのリヴァイアサン……たぶんあの子よね」
ミルがレヴィアを見ながらそう呟くと直ぐに大地へと振り向いた。
「モンスターと人間の生活じゃ勝手が違うから……何かの拍子で店の物を壊したって辺りね。それも……服屋でしょう?」
次々と見てきたように言うミルは大地に言いながら最後にどや顔で「どう?」と言いたげだ。
「よく……わかるな」
「何となくね。リリア様と半分にしたって25万ゴールド貰っているはずだけど、そんな大金が消える事って店を壊すか高い物を壊すかくらいね」
ミルの更なる推理は続く。
「店が壊れるような噂は聞いたことないし、彼女の服……それも羽衣ってかなり高価な物じゃない?だから服を着るので四苦八苦ってところよね」
考える事が仕事と言っていたレンジャーのレルムも形無しでレイヴンに至ってはぼーっと何一つ分からずただ聞いているだけだった。
「名探偵かよ……」
真実はいつも一つ……だけど辛い現実なんだよなぁ。
少し照れながらミルは「でも」と柔らかい笑みで言う。
「ダイチはあまり怒らなかった見たいね?」
「どうしてそう思う?」
ミルの推理が面白く少しだけ意地悪そうに大地がそう聞くのだ。ただ、そのお返しだと言わんばかりにミルが大地の肩に座った。その瞬間、周りの客が大地達を見始めるのだ。
うぉ!?何故視線が集まってくるんだ?妖精が珍しいからか?
「そうね。あの女の子……」
「レヴィアって言うんだ」
「そう。レヴィアちゃんが必死に失敗を取り返そうとしてなくて伸び伸びしているからね」
確かに楽しそうに配膳したり注文を受けたりしている。しかし、それだけでわかるものなのかだろうか?
「あそこまで楽しそうなんだもの。普段からあまり怒ってなさそうと思ったのよ」
「うっ……まぁ怒った事は……ないかな?」
「ふふ。でもそれがダイチとレヴィアちゃんの付き合いかたならそれでいいと思うわ。ダイチが行った契約で繋ぐ主従の輪って言うのは結構重いのよ?人間型のモンスターでの例だけれど、主従の輪を首につけていたら『いつでも首を落とせる』という隠れた意味があるわね」
「こわっ。何それ」
少しだけ困った顔をしたミルが続けて教えてくれる。
「細かい部位までは言わないけれど、足なら『逃がさない』とか、上半身なら『その体は俺の物』とかね」
リリア。それを知ってて胸がどうとか言ったんじゃないだろうな。
「でも、人間からしたらあまり知られてない事なのよ。だから知らずとしてやる人の方が多いの。そのせいでモンスターが妙な行動を取るって契約者が愚痴をする人もいるのよ」
モンスター同士の暗黙のルールって事か。
「腕の場合は……どうなんだ?」
変な意味かもしれない事を思うと少しだけ不安になる。だが大地としては聞いておかなければならない事だ。だからこそ不安な表情をそのままにミルに聞くのだが、ミルは微笑みながら言う。
「ふふ。安心してちょうだい。腕だけは違うのよ」
「違う?どう違うんだ?」
「腕だけは複数の意味があるんだけどそのモンスターが捉えたい言葉なのよね。例えば『信頼している』とか『嫌なら腕を切ってでも逃げて良い』とか。あとは…『一生ついてこい』とかだったかな?」
一つだけ物騒な物があるけど概ね悪くないものばかりなのか。
「不思議よね。でも、モンスターもたった一か所だけ大事にされたい場所を欲しがっているって考えると私は嫌いじゃないけどね」
ふむ。レヴィアもそう考えたりしてくれているのだろうか。
大地がレヴィアに目を向けると肩に乗るミルから声が聞こえてきた。
「恐らくそう考えているわよ。じゃなければあそこまで楽しそうにしないわ」
思考を……読んだだと!?
「そうか。……ありがとな。っとそろそろ席に案内するがおっさんの俺より誰か別の人に案内させた方がいいよな」
「……指名制なの?」
「そういうわけじゃないのだが……。店員目的の客ならそれが一番よさそうだし」
「それなら私はダイチのままでいいわ」
ミルがチラリとレイヴンとレルムに目を向けると彼らは反論を一切せず頷く。
「そうか?それでいいならいいが……」
「その前に掌をダイチの前に広げてもらえるかしら?」
「え?……これでいいか」
よくわからない要求だったが大地は言われた通りに自分の前に手を差し出して掌が上に向くように広げた。するとミルがその掌に収まるように座るのだ。
そして、周りの客がザワザワとこちらを見ながらヒソヒソ話を始めおった。
妖精を手に乗せただけでざわつくの何でだよ!あーおっさんに似合わねぇから嫌な噂でもしているんだろうか……。
「ミルが人の掌に乗るの初めてだよな?」
「初めてってわけじゃないけど、もうかなり昔ね」
レイヴンとミルの会話だが大地はついていけず、掌に乗るのって頻繁にすることではないのか?等と思いながら黙って様子を見る。
「ダイチさん。よほどの信頼を得てないと妖精が掌に乗る事ってないんだよ」
レルムがついていけてない大地の為に説明してくれる。助かる。
「そうなのか?」
「妖精の体の大きさから考えてもらえるとわかりやすいんだけど、人間の手に捕まればそのまま握りつぶされてしまうから。だから妖精は人の手の上に乗る事がほとんどないんだよ」
目の前にチョコンと乗る妖精のミルを眺めると確かにそいう事は出来そうだ。
全長は子供が遊ぶお人形ほどしかない……が、そんな巨人が人間を潰すような方法を取るのは若干狂気じみてないだろうか?ただ、捕まったら命の危険が……というのは分からなくもない。あと、それだから店の客がこちらを見てきているのだろう事もわかった。変態扱いとかじゃなくて本当よかった。
「なるほどな。ってミルは良いのか?」
ある意味、見世物に近い状態なのだがミルは頷く。
「良いわよ。私はダイチの事嫌いじゃないし……少しサービスしてほしいなら構わないけど」
そう言ってコロンと大地の掌でミルは寝転がった。
「いや待て待て、普通に座ったままでいいからな?」
サービス精神が旺盛なのは嬉しい。嬉しいが小さいと言えど……妖精と言えど。彼女は立派な女性なのだ。体の全体的な柔らかさが掌に伝わって欲情を駆られそうになるのもあるが、文字通り女性を掌で転がしていれば悪評だって起きてしまうだろう。避けねばならない。
「そ、そう?それじゃあこのまま席への案内をお願いしようかしら」
上半身だけ起き上がったミルは少し顔が赤い。だが、大地としてはほっと一安心である。
彼らのテーブルへ着くとミルが下りやすい様にテーブルへ手の甲を当てて待つ。そして彼女が下りた事でようやく大地の右手は自由になるのだ。
「慎重に運んでくれてありがとう……」
何があっても手を握らない事を意識しつつ、そして出来る限り揺らさない様にした事もばれていようだ。
そして、大地が入り口へ戻ろうとした時、ミルが飛んできてその頬に「お礼よ」と言いながらキスをする不意打ちを受けるのだった。
「お母さん!ダイチさんを捕まえたよ!」
どうやら俺は捕まってしまったらしい。……いやぁまいったなぁ。
手を掴んでいたはずのリリエッタはいつの間にか腕に抱きつくようにしていて……胸の感触が腕を通して伝わってきている。
「こら!リリエッタ。先に言うことが有るんじゃないの!!」
母の怒った声にリリエッタは少し竦み上がりパッと大地から離れた。
「う、うん。そうだよね」
改めて大地達へ体ごと向き直るとリリエッタは丁寧にお辞儀しながら言う。
「あの、私が捕まった時に助けてくれてありがとうございました!」
リリエッタが貴族に捕まり奴隷にされた時の話だ。
「ダイチ。俺達にわかるように教えてくれるか?」
その時に居なかったライズとシャーリーが気になってか聞いてきた。それについてどこまで話そうかと思ったのだが、リリエッタが率先して話してくれた。
貴族に嫌がらせされ、仕方なく貴族の屋敷に行き、そして奴隷にされた。と。だが、最悪なことが起きる前に大地達が助けに来てくれて奴隷の呪いを解呪してもらったのだと。
その話を聞いた二人は逆に今大地と行動している敬意をリリエッタに話す。
「そんなわけで俺達も奴隷の呪いを解呪して貰ったんだ」
「そうなんですね!」
三人で奴隷談義を開始しそうな雰囲気をしていた。その話の先行き気になるところだが、その前に聞かねばならないことがある。
「ところで俺は何故ここに連れてこられたんだ?」
そして、他のウェイトレスさんはどこ?
「あ!えっとね……元々ウェイトレスは私を入れて4人、厨房がお母さんともう一人で二人だったんだけど……ウェイトレスが二人急に来なくなっちゃって。やっぱり貴族の事でいやになっちゃったのかも……」
「ふむふむ」
「それでね、今日、厨房の人とウェイトレス一人が風邪を引いちゃってどうしようって話をしてたんだけど……そこにダイチさんを見つけたの」
「つまり?」
「お願い!手伝って?」
リリエッタが首をかしげながらそう言ってくるが、大地が出来ることは無い……わけではないが頷いて良いものか迷う。
「ちゃんと報酬払うから今日だけでも手伝ってくれると嬉しいんだけど。ダメかな?」
報酬が出るなら話は変わってくる。
「いいのか?」
「もちろん!手伝ってくれる?」
こうして今日の稼ぎ場所が決まったのだ。
リリエッタとその母親が経営する店の名は『猫猫亭』と言うらしい。店の看板にはデカデカと書いてあるらしいが文字の読めない大地ではわからなかった。
その猫猫亭からは普段聞くことができない声が聞こえてくる。
「いらっしゃいませ」
元気よく挨拶をしたのはフルネールだ。今この店には美男美女率が急上昇している。
言わずと知れず銀色の髪を輝かせて優しい笑顔で包み込むように出迎え男女問わず見惚れさせるフルネール。
小さい体で料理を運び一生懸命な姿は微笑ましく感じさせるレヴィア。
慣れないことで戸惑い、拙いながらも頑張る姿勢を見せて男心をくすぐるシャーリー。
イケメン特有の甘いマスクと自慢の話術によって女性人気を爆あげするライズ。
皆普段の格好と違いウェイトレス、ウェイターの制服で新鮮な感じがする。
残念なのは美男美女の美男率を下げてるのは自分と言うことだ。
「いらっしゃい……」
「ダイチさん。あんた何しているんだ?」
店にはいってきた客を出迎えようとした大地だが、その客の姿を見て固まった。
「今日一日はここで働いてるんだよ。カイ達はどうした?飯か?」
まさかの知り合いが来るとは思わなかったからだ。
来たのはチョクチョク会う事があるカイ青年とそのパーティメンバーの女戦士のマリンと魔法使いのオーガスだ。大地の疑問にはカイの後ろにいるのマリンが答えた。
「今日ここに新しい子がいるってカイが聞いたらしくてね。どうしても来たいって言うから来てみたんだ」
「新しい人ってダイチさんかよ……」
思いっきり落胆した顔を見せる。まぁ期待してきてみたらおっさんのお出迎えとか、精神にダメージが入る気持ちはわからないでもない。仕方がない。
「俺だけじゃないぞ……そうだな。シャーリーちょっと来てくれるか?」
大地の呼び掛けにシャーリーは「はーい」と元気よく返事をして大地のそばへと来る。
金色の髪、可愛らしい容姿、エルフとしての特徴。そのどれかに目を引いたのかカイはシャーリーに見惚れているようだった。
「悪い、こいつらを席に案内してやってくれるか?」
「わかったわ」
そう快く引き受けるとシャーリーはカイ達に向き直り笑顔で言う。
「いらっしゃいませ。こちらにどうぞ」
そのシャーリーが言葉と共に歩きだすとカイもその後を歩く。まるでドリアードに誘惑された男のようについていくのを見ると、いつか悪い女に捕まるんじゃないかと心配になる。
カイを見送ると直ぐに店の扉が開いた。
「いらっしゃいませ」
「カッコいい新人が入ったって聞いたけどおっさんじゃない。これじゃあ詐欺よ詐欺」
見知らぬ女性客だがいきなり酷い言い様である。だが、それでも雇われている以上、接客はしなければならない。でもそこまで言う必要ないだろ……。
「ライズ!ちょっと来てくれるか?」
「わかった」
正直関わりたくないなぁという気持ちの方が強く、つい彼を呼んでしまった。
だが、正解かもしれない。女性客はライズの顔を見ると眉尻を下げていた表情が笑顔へと変わっていくのだ。
「こちらの方の案内を頼む」
大地がそう言うとライズは頷いてくれる。
「お嬢様、いらっしゃいませ。お席へ案内致しますのでこちらへ」
ライズが微笑みながら言うその言葉で女性客はメロメロである。流石イケメン。女性客をライズが連れてってくれたことで一安心する。
「アニキ。久しぶりです!」
どこか聞き覚えのある声と呼び方だ。大地が入り口の方へ目を向けるとそこには赤髪の男が立っていた。
覚えているだろうか?フルネール欲しさに無謀にも突っかかってきた赤髪のBランクハンターだ。
「おう、久しぶりだな。飯食いに来たのか?」
「そうです。今このお店がすごい噂になってるんですよ?今日の店員すごいって他のハンターから聞いたんです」
噂の広まり具合早くない?何かの陰謀?
「まて、そもそも今ギルドって閉まってるよな?」
「ええ、ですのでハンター集会所で皆情報の交換とかしてるんですよ」
何そのハンター集会所って。俺知らないんだけど。
「その集会所ってなんだ?」
「え?あー、ハンター達の情報って中には外部に漏らせないものもあるんです。でもギルド内だと一般の人間も依頼に来るから話すのが危険なんですよ」
それだけ聞けばさすがに大地も分かる。
「そこで集会所の出番って事か」
「そうです。流石アニキ!」
そのヨイショはやめろー!すごく馬鹿にされている気分になる……。
「ま、まぁ取り敢えずわかった。ありがとな」
「いえ!それより席に案内してほしいんですが……出来れば姉御に……」
姉御?……フルネールのことだろうか?
「ああ、わかった」
大地はそう言うと店内を見回して人物を探す。
「フルネール。ちょっと来てくれて」
その大地の呼び掛けに応えるようにフルネールは近づいてくる。
「大地さん。どうしました?」
「こいつを席に案内してくれるか?」
フルネールが入ってきた客に視線を向けると、その客である赤髪は少しほほを赤くしている。それを理解してかフルネールはニコりと柔和な笑顔を見せて綺麗にお辞儀しながら言う。
「いらっしゃいませ。お席へご案内しますのでこちらについてきてください」
優しい声に癒されながら、赤髪は女神に導かれて戦士の休息へと向かうのであった。
やはり皆、目当ての店員がいるんだな。おっさんは寂しいぜ。
そう嘆こうとも客はやって来る。
「君が新人か。リリエッタちゃんはいないの?」
この男性客はどうやら常連らしくリリエッタ目的の客だ。彼女はここの看板娘なのだからそういう客がいても何らおかしいことはない。
そして、それならば彼女を呼ぶのが一番だろう。
「リリエッタ、今来れるか?」
「うん!」
リリエッタが元気に頷くと大地へと近づいてくる。
「どうしたのー?」
「こちらの方を席まで案内してあげられるか?」
チラリとリリエッタは瞳を客に向けた。
「あ!いらっしゃいませ!お席へ案内しますね!」
どうやらリリエッタも知っている見たいで笑顔に影は見えない。だからこそ大地も安心して彼女に任せる。
「ねぇ大地。今日のお昼はまかない?ってメニューを出してもらえるみたい何だけど……私も食べていいのかしら?」
ああ、賄い料理か。このお昼時ラッシュが終わってからだろうが……助かるな。
「もちろんだ。きっと美味しいぞ」
「そ、そう。それならもっとお仕事がんばらなくちゃダメね」
ちょっとソワソワし始めているのを見て楽しみにしていることがわかり微笑ましく感じる。
「あら、今日は店員さん多いのね」
そんなレヴィアを見ていると店の扉が開いた。外から入ってきたのは女性客だが、この人も常連だと発した言葉から感じる。
客足が途絶えないのもいいことだ。もっともここの料理が美味いこともあるだろうけども。
「いらっしゃいませ」
大地に続いてレヴィアもペコリとお辞儀する。彼女のウェイトレス姿は何故か尻尾用の穴が開いている物があり、それを小さめに少しだけ縫い直したものだ。
リリエッタが使わないからって言って率先してやってくれた事に感謝しかない。
「あ、いらっしゃいませ」
「あら?可愛い定員さんね」
その女性客はレヴィアを見て驚くこともしなかった。尻尾も視界にはいっているはずだからモンスターであることはわかるはずだ。
「席に案内するわ。ついてきてちょうだい」
女性客の言葉を無視したのか?とも思ったが少しだけほほを赤くしてるのは照れてる証拠かもしれない。
しかし仕事してねぇな……俺。やってることといえばこの店に来た人におっさんの出迎えにより初撃精神ダメージ与えることか?ろくでもねぇな。
「兄貴!俺らも来ましたぜ!」
また俺の知り合いだろうか?だとしたらその呼び方はもう一人しか知らない。
「レイヴン、レルム、ミル。いらっしゃい」
こいつらは雪山の遠征で出会ったAランクパーティだ。
リーダーのレイヴンは老け顔でハゲているのだがそれが反って貫禄を出している。元々は俺に突っかかってきたんだが軽く遊んだら兄貴呼ばわりだ。
レルムはレンジャーでありこのパーティを生存させるのに一役買っている人間だ。前回も気になっていたが細目の彼は本当に目で認識しているのだろうか?
そして、最後はパーティの紅一点、妖精のミルだ。魔法が得意らしく魔力量で俺やフルネールをただの人間じゃない事にある程度きづいたのだ。
もっとも遠征帰り前の宴会では会う事が無かったから彼らがレヴィアについてどこまで知っているかは謎である。それでも大々的にレヴィアに乗って戻った事から大地がリヴァイアサンと契約している事は知っているはずなのだ。
「ダイチさん。何でここで働いているんだ?今日はギルドも閉まっているし多くのハンターは遊ぶか休息を楽しんでるんだけど」
く。金があるやつらは余裕があるぜ。畜生。
「あ~ここのお店で助けを求められてしまったからな。手伝っているんだ」
嘘は言っていない。一部本当の事を言ってないだけだ。これだけ言えば俺が金欠の甲斐性無しという事実は隠せるはずだから。
「流石兄貴だぜ!!」
レルムはあまり納得していない様子だがレイヴンはヨイショしてくるのでそれを利用してごり押しておけばいいだろう。
「バカね。お金が無いことも働く要因の一つでしょう?」
うぐぅ。バレテール。
あっさり受け入れようとしていたレイヴンにミルが横やりを入れたのだ。
「ま、大方、あのリヴァイアサン……たぶんあの子よね」
ミルがレヴィアを見ながらそう呟くと直ぐに大地へと振り向いた。
「モンスターと人間の生活じゃ勝手が違うから……何かの拍子で店の物を壊したって辺りね。それも……服屋でしょう?」
次々と見てきたように言うミルは大地に言いながら最後にどや顔で「どう?」と言いたげだ。
「よく……わかるな」
「何となくね。リリア様と半分にしたって25万ゴールド貰っているはずだけど、そんな大金が消える事って店を壊すか高い物を壊すかくらいね」
ミルの更なる推理は続く。
「店が壊れるような噂は聞いたことないし、彼女の服……それも羽衣ってかなり高価な物じゃない?だから服を着るので四苦八苦ってところよね」
考える事が仕事と言っていたレンジャーのレルムも形無しでレイヴンに至ってはぼーっと何一つ分からずただ聞いているだけだった。
「名探偵かよ……」
真実はいつも一つ……だけど辛い現実なんだよなぁ。
少し照れながらミルは「でも」と柔らかい笑みで言う。
「ダイチはあまり怒らなかった見たいね?」
「どうしてそう思う?」
ミルの推理が面白く少しだけ意地悪そうに大地がそう聞くのだ。ただ、そのお返しだと言わんばかりにミルが大地の肩に座った。その瞬間、周りの客が大地達を見始めるのだ。
うぉ!?何故視線が集まってくるんだ?妖精が珍しいからか?
「そうね。あの女の子……」
「レヴィアって言うんだ」
「そう。レヴィアちゃんが必死に失敗を取り返そうとしてなくて伸び伸びしているからね」
確かに楽しそうに配膳したり注文を受けたりしている。しかし、それだけでわかるものなのかだろうか?
「あそこまで楽しそうなんだもの。普段からあまり怒ってなさそうと思ったのよ」
「うっ……まぁ怒った事は……ないかな?」
「ふふ。でもそれがダイチとレヴィアちゃんの付き合いかたならそれでいいと思うわ。ダイチが行った契約で繋ぐ主従の輪って言うのは結構重いのよ?人間型のモンスターでの例だけれど、主従の輪を首につけていたら『いつでも首を落とせる』という隠れた意味があるわね」
「こわっ。何それ」
少しだけ困った顔をしたミルが続けて教えてくれる。
「細かい部位までは言わないけれど、足なら『逃がさない』とか、上半身なら『その体は俺の物』とかね」
リリア。それを知ってて胸がどうとか言ったんじゃないだろうな。
「でも、人間からしたらあまり知られてない事なのよ。だから知らずとしてやる人の方が多いの。そのせいでモンスターが妙な行動を取るって契約者が愚痴をする人もいるのよ」
モンスター同士の暗黙のルールって事か。
「腕の場合は……どうなんだ?」
変な意味かもしれない事を思うと少しだけ不安になる。だが大地としては聞いておかなければならない事だ。だからこそ不安な表情をそのままにミルに聞くのだが、ミルは微笑みながら言う。
「ふふ。安心してちょうだい。腕だけは違うのよ」
「違う?どう違うんだ?」
「腕だけは複数の意味があるんだけどそのモンスターが捉えたい言葉なのよね。例えば『信頼している』とか『嫌なら腕を切ってでも逃げて良い』とか。あとは…『一生ついてこい』とかだったかな?」
一つだけ物騒な物があるけど概ね悪くないものばかりなのか。
「不思議よね。でも、モンスターもたった一か所だけ大事にされたい場所を欲しがっているって考えると私は嫌いじゃないけどね」
ふむ。レヴィアもそう考えたりしてくれているのだろうか。
大地がレヴィアに目を向けると肩に乗るミルから声が聞こえてきた。
「恐らくそう考えているわよ。じゃなければあそこまで楽しそうにしないわ」
思考を……読んだだと!?
「そうか。……ありがとな。っとそろそろ席に案内するがおっさんの俺より誰か別の人に案内させた方がいいよな」
「……指名制なの?」
「そういうわけじゃないのだが……。店員目的の客ならそれが一番よさそうだし」
「それなら私はダイチのままでいいわ」
ミルがチラリとレイヴンとレルムに目を向けると彼らは反論を一切せず頷く。
「そうか?それでいいならいいが……」
「その前に掌をダイチの前に広げてもらえるかしら?」
「え?……これでいいか」
よくわからない要求だったが大地は言われた通りに自分の前に手を差し出して掌が上に向くように広げた。するとミルがその掌に収まるように座るのだ。
そして、周りの客がザワザワとこちらを見ながらヒソヒソ話を始めおった。
妖精を手に乗せただけでざわつくの何でだよ!あーおっさんに似合わねぇから嫌な噂でもしているんだろうか……。
「ミルが人の掌に乗るの初めてだよな?」
「初めてってわけじゃないけど、もうかなり昔ね」
レイヴンとミルの会話だが大地はついていけず、掌に乗るのって頻繁にすることではないのか?等と思いながら黙って様子を見る。
「ダイチさん。よほどの信頼を得てないと妖精が掌に乗る事ってないんだよ」
レルムがついていけてない大地の為に説明してくれる。助かる。
「そうなのか?」
「妖精の体の大きさから考えてもらえるとわかりやすいんだけど、人間の手に捕まればそのまま握りつぶされてしまうから。だから妖精は人の手の上に乗る事がほとんどないんだよ」
目の前にチョコンと乗る妖精のミルを眺めると確かにそいう事は出来そうだ。
全長は子供が遊ぶお人形ほどしかない……が、そんな巨人が人間を潰すような方法を取るのは若干狂気じみてないだろうか?ただ、捕まったら命の危険が……というのは分からなくもない。あと、それだから店の客がこちらを見てきているのだろう事もわかった。変態扱いとかじゃなくて本当よかった。
「なるほどな。ってミルは良いのか?」
ある意味、見世物に近い状態なのだがミルは頷く。
「良いわよ。私はダイチの事嫌いじゃないし……少しサービスしてほしいなら構わないけど」
そう言ってコロンと大地の掌でミルは寝転がった。
「いや待て待て、普通に座ったままでいいからな?」
サービス精神が旺盛なのは嬉しい。嬉しいが小さいと言えど……妖精と言えど。彼女は立派な女性なのだ。体の全体的な柔らかさが掌に伝わって欲情を駆られそうになるのもあるが、文字通り女性を掌で転がしていれば悪評だって起きてしまうだろう。避けねばならない。
「そ、そう?それじゃあこのまま席への案内をお願いしようかしら」
上半身だけ起き上がったミルは少し顔が赤い。だが、大地としてはほっと一安心である。
彼らのテーブルへ着くとミルが下りやすい様にテーブルへ手の甲を当てて待つ。そして彼女が下りた事でようやく大地の右手は自由になるのだ。
「慎重に運んでくれてありがとう……」
何があっても手を握らない事を意識しつつ、そして出来る限り揺らさない様にした事もばれていようだ。
そして、大地が入り口へ戻ろうとした時、ミルが飛んできてその頬に「お礼よ」と言いながらキスをする不意打ちを受けるのだった。
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