初めての異世界転生

藤井 サトル

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異世界無双!1000対俺

聖女の威を借る大地?

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 服屋を後にした大地たちは近くの食事ができる場所へと足を運んだ。そこは以前手を繋いで入店した場所であり、出迎えてくれたのは例の水かけ女子店員だ。

 店内には客が一人しかいないようだ。ただ、その客もどこかで見たような……?

「大地さん、あの人覚えてますか?」

「あんなの知り合いにいたっけか?」

 大きな男だ……あー。

「この前も一人寂しく飯食っていた可哀想な奴か」

 その大地の言葉に女性店員は「プフッ」と堪えきれなかった笑いの息を吹き出してしまう。
 だが、直ぐに取り繕うように頬を赤くしながら平然と立つ姿に戻ると彼女は言った。

「お席にご案内しますね」

 前回、案内などなかった気がするが今は人もいなくて暇だからだろうか?だが、今の時間はお昼時だそれなのにこの人のいなさは異様である。

 料理の味は悪くなかった……と思う大地だが、あの時は恥ずかしさもあって正確に覚えているかどうか微妙なところだ。

 店員に案内いされた席はあの大男から離れた場所だった。ただの偶然か?と考えている大地に、水を持ってきた女性店員が耳打ちしてくる。

「この前来てくれましたよね。あの人に関わるとろくなことがないから……こちらで宜しいでしょうか?」

 この女性店員は気を利かせて離れるように案内をしてくれたらしい。

「一度しか来てないのに覚えてくれているんですね」

 顔を覚えてくれたようでまるで常連客の気持ちに浸る大地に「え、ええ」と言って困り顔をする女性店員は顔を背けて言う。

「お水かけてしまいましたし、その、お食事風景が……」

 悪い意味で顔を覚えられた見たいだ……。

 そう絶句する大地の横からフルネールが口をはさむ。

「大地さんも女性に顔を覚えられるなんてやりますね♪」

「悪い意味でな!出禁になってないだけありがたいよ」

「あ、あの。出禁だなんてそんな。私お水かけてしまいましたし……むしろもうご利用されないかと思ってました」

 慌てて言う店員さんは少しずつ尻すぼみになっていって最後は弱々しいくなっていった。

「いや、それもわざとじゃ無いの知っているからさ」

 少しだけ表情が緩和した店員が「ありがとうございます」と頭を下げたところでレヴィアの我慢の限界が来た。

「大地。そろそろお腹空いたのだけれど……」

「おっと悪い悪い。と言ってもおれは文字が読めないから頼んでいいか?」

 目配せでフルネールとリリアを交互に見ると二人は頷いた。因みにグラネスに頼まなかったのは……酒狂い故につまみだらけになりそうだったからだ。酒飲む場であればそれもいいんだが、今は普通に昼飯を食いに来ているのだ。

「あの……お聞きしても宜しいでしょうか?」

 フルネールとリリアがメニュー表を見てはしゃいでるのを尻目に女性店員が大地に視線向けて聞いてきたので、大地も返答するために女性店員へと目を向けて口を開いた。

「はい。それは何ですか?」

 急なことで英語を日本語訳にかけたような言葉で返してしまった大地の言葉にやや引きぎみになる女性店員。

「もしかして何処か遠い国から来たお偉い方なのでしょうか?」

 女性店員がこのお店で見てきた限りの情報を集めると以下になる。

 美人二人を連れて来店(うち一人は聖女様だ)。
 大剣を持った護衛を一人連れている(グラネスのことだ)。
 二人の美人に食べさせてもらっている。
 何か凄い寛大(水をかけても怒らない)。
 文字が読めない(遠くから来た?)。
 人目を気にせず契約したモンスターも引き連れている。(レヴィアのこと)。
 美人に注文させている(ここまでの情報で世話していると断定)。
 ……無敵の偉い人?

「そんな事は――」

「わかっちゃいますか!?そうなんですよ!リリアちゃんも大地さんのために一緒に来てますしね!」

 否定をしようとした大地を差し置いてフルネールが割り込んできた。

「お前!メニュー見てたんじゃないのかよ!」

「面白そうな話しが聞こえてきちゃいましたから……つい」

「つい。じゃねぇ!」

 大地とフルネールの二人を見ながら店員は青ざめる。

「あ、あわわ。私、聖女様も御付きになる人にお水を……」

 せっかく打ち解けてきたのに何してんだ。また俺の悪名がぁ……ふえる……。

 でも、リリアちゃんが大地さんのために来てるのは本当のことでしょう?

 そうだけど、『偉い人』ってのが間違いだっつってんだろ!

 嘘をつくときは本当のことを混ぜるとわからないって聞いたことありますよ?

 それを使う場面は考えてくれよ。

「あのな、それはう――」

 『嘘だ』と言おうとした瞬間にリリアが動いた。

「ダイチさん。あの……先ほどフルネールさんが言っていたんですが、本当に1万ゴールドの量を頼んじゃってもいいんですか?」

 まぁここの料理はちと高いが美味いしな。それにレヴィアも人間が美味い料理を作れるとわかったら少しは考え方も変わるかもしれん。

「ああ。盛大に頼むよ」

 リリアが頷いて再びメニュー表へと視線を戻す。だご、女性店員は青ざめるた顔をしながら少し震えだした。

「このお店で1万ゴールドもお使いに……や、やや。やっぱり何処かの貴族とかなんですね。本当に私はどうしたら!」

 この店員はいつまで水を引っ張るんだよ?

「いや本当に水程度でそんなにかしこまらないでくれ。あと、俺はそんなに偉くはないからさ」

 いってて気づいた。この台詞って……。

 本当に偉い人が謙遜けんそんで使う常套句見たいですね♪

「ででで、ですがそのお召し物もきっと身分を隠すための物ですよね。それにそちらのモンスター様には高価な衣服を……。それなのに私は私はぁ……」

 お話聞かない系かな?

 いえ、私のお話を聞いたから怯えているのでは?

 ……俺のは?

 んー。ダメ見たいですね♪萎縮しちゃってますし。でも、本当に貴族とかが水をかけられたら下手したら打ち首になりますからね。

 えー。貴族ってのは怖いねぇ。

 それより怖いのがお城勤めの方たちですよ。もし手を出したら牢屋行き確定ですね。

 まぁそんな事はしないから俺には無縁だな。ひとまずこの状況を何とかしなければ飯もろくに食えないな。

 それならいい方法がありますよ?

 やな予感がしなくもないが聞こう。

 大地さん自信が望んで水を被れば……店員さんも大丈夫だった。って思うんじゃないでしょうか?

 ほんとかなぁ?

 ほんとほんと!あ、良かったら私が水かけましょうか?

 えー。……はぁ。でも仕方がないか。今の状況でリリアも注文どころじゃなさそうだし。今日はよく濡れる日だ。

「本当に水に濡れる程度じゃ問題ないんだ。あと、俺は貴族でもなんでもないから」

「ですけど……」

 まだ食いついてる女性店員。なのでフルネールの助言通りにするしかないか。

「仕方ない。フルネール」

 そう大地が名前を読んだ瞬間、フルネールは一切の無駄が無い動きで目の前の水が入ったコップを手に取り、横に傾けながら大地の顔へバシャっと水をぶっかけた。

 かけかたぁ!!水が鼻に入っていてぇ……。

 あら、インパクトある方がいいかと思ったんですが。

「え?えと、だ、大丈夫ですか?」

 オロオロしだした女性店員に大地は頷いていった。

「もちろん大丈夫だ。たかだか水をかけられたくらいだしな。ほら、貴族のように偉い人だったらこんなことしないだろ?」

 貴族はむしろすぐそこのおっさんだしな。だからほんと、変な噂を広めるのはやめてくれよ。

「……本当にそうなんですか?」

 大地が頷くと女性店員は力が抜けたように一度ヘタリ込んだが直ぐに客の前だという事を思い出したのか立ち上がった。

「す、すみません」

「いや、むしろフルネールがふざけだしたのがな。こちらこそすまない」

 大地が謝る隣でフルネールは微笑みながら言う。

「ふふ、ごめんなさいね。ついからかっちゃいました」

 フルネールの女神としてのオーラか、或いは美人特有のオーラか。どちらかは定かじゃないが女性店員はその笑顔にたじたじである。

「っと、そろそろ注文をいいだろうか?」

 そう言いながらリリアにあとを託すと、お腹を空かして今にもわめきそうなレヴィアに「もうちょっと待ってくれ」と言いながら頭を撫でて暴走しないように宥めるのであった。
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