初めての異世界転生

藤井 サトル

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雪夜咲く、美人の笑顔に、満ち足りる

満天の星と雪景色

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 階段は螺旋階段になっていて、回りの壁は透明ではなく青い壁となっている。階段の長さは建物2階分だろうか。
 下まで下り終えると扉が見えた。その扉へ手をかけて開いた。目の前に見えるのは大きな木だ。葉は真っ白く、大地の何倍もある大きな木。その木には白くて円形の果実がたくさん実っていた。

「これがスノーパール?」

 丸く白いのだがほんのり虹色に輝いている。

「……あったんですね……よかった……これでクルスお兄ちゃんが……助かります……」

 たすけられることがわかって背負っていたものが下りた。そう言った安堵が胸いっぱいに広がるリリアはぺたりと座り込み涙を流す。

「え、何で泣いてるのよ?たしかリリアだっけ?これじゃなかったの?」

 レヴィアがリリアに近づいて聞く。リリアが座ったことで目線は同じくらいの位置になり、レヴィアの『期待に応えられなかったのか?』という心配そうな瞳が目にはいる。

「ううん。これだと思います……だから嬉しいんです。レヴィアさんありがとうございます」

「そ、そう。それなら良いけど。あと、貴女ならレヴィアでいいわよ!」

 お礼を言われた照れ隠しなのか、あっちを向いたり、リリアを見たり、毛をいじったりとレヴィアの仕草は落ち着いていない。

「はい!ダイチさん持って帰りましょう!……出来れば栽培方法もわかればよかったのですが」

「それならアタシがわかるわよ」

「おお、本当か?」

「嘘いってどうするのよ。スノーパールからとれる種に魔力を流して涼しい場所に植えるのよ。気を付けなきゃいけないのは水を直接当てちゃダメよ?近くに氷をおいてゆっくり溶ける氷からの冷たい水を土に飲ませていく必要があって――」

 誉められたのが嬉しかったのかレヴィアは少し早口で情報を伝えてくれるが今聞かされても覚えられる自信はない。

「待った待った!あ、後で教えてくれるか?」

 大地に止められてすこし残念そうに「あ、うん」と返事をするレヴィアにちょっとだけ罪悪感を覚える。
 だが、言われてみるとここが少し暖かく感じるのは、外の温度より少し高い温度に設計されているからだろう。

「取り敢えず回収してとっとと帰るか」

 大地の一言でスノーパールの回収が行われた。木の高い場所にあっても大地の魔法によってレーザー付き脚立を出したことで問題なくすべて回収した。
 因みに全部回収してもいいのかをレヴィアに聞いたら、また少ししたらスノーパールが実るらしいから問題ないとのこと。

 そして、回収したものはリリアの持つ収納用の小さな箱へ入れられた。これはお金をいれる魔道具の道具版らしい。

 また、回収中にフルネールへは連絡しておいた。これから帰る事とスノーパールを見つけた事を合わせて。

「さて、ここからどうやって出ればいいのかだけど、レヴィアはここから出る場所知らないか?」

 入ってきた時は雪崩に流されてだ。帰り道なんてわかるはずがない。だからこそ、この場所に詳しいであろうレヴィアへ聞く。

「もちろん知ってるわ。付いてきてちょうだい」

 頷いた大地とリリアはレヴィアの後ろに続いて歩く。行き着いた場所は大きい広間なのだが、天井は穴が開いていて空が見える。

「ここで出入りしているのよ」

「高いな……」

 何の兵器で上へと登ろうかと考えていたら、レヴィアが「下がってて」と言った。言われた通りに大地とリリアの二人は下がり様子を見守る事にした。

 するとレヴィアの体が光った。そしてその光の中で形を変えていく。巨大な翼のある龍の姿……本来の姿に戻ったのだ。

「二人ともアタシの上に乗って?」

 そう言って顔を地面近くまで下ろしてくれるレヴィアだが乗っていいものかと大地は戸惑う。

「そんなことまでしなくていいぞ。お前は人間が嫌いなんだろ?それなら……」

「うん。人間は嫌いよ。海は汚すし、襲いに来るし。でも……大地とリリアなら平気。だから乗っていいわ」

「レヴィア……わかった。それならお言葉に甘えさせてもらおう」

 そう言って大地はリリアに視線を向けるとリリアはコクリと頷いた。

 レヴィアの頭に乗ると彼女が上に向けて登ってくれる。垂直に飛び上がった為、落ちる!と思ったのだがレヴィアの魔法によるものか重力の影響を全く受けない。

「わぁ……」

 遥か上空へ飛び上がり雲を突き抜けた。既に外は暗かったがお陰で満天の星が視界いっぱいに飛び込んでくる。ちょっとそこらじゃお目にかかれない風景だ。

「凄いな……」

 感嘆の声を漏らす二人に気を良くしたレヴィアは「島でも一週する?」と聞いてきた。この星空を眺めていられるのならそれもありかと思うがそろそろ戻らないとフルネールが心配するだろう。

 リリアも返事をしないところを見ると同じ事ようにアーデルハイドが心配しているか気になっているんだろうな。

「魅力的な提案だけど、俺たちのキャンプに戻らないといけないからな。島で人間がいる場所がそれだと思うからそこに行ってくれるか?」

「わかったわ。雲の下に降りるわね!」

 レヴィアが雲のなかに入りその下に出る。そこから旋回しつつ探すように動き回る。
 レヴィアがそうしてくれている間に大地はフルネールへ他のメンバーが攻撃しないように根回しだ。

 今、契約したレヴィアと一緒に帰ってるから攻撃しないように言っておいてくれるか?

 それはいいですけど……レヴィアなんてモンスターいましたっけ?……まぁそれよりもう暗いですから本当に気を付けて下さいね?

 ああ。ありがとう。

 フルネールなら上手いこと言ってくれるだろう。

「ダイチさん。今日は……色々ありがとうございました」

 リリアが大地の顔を見ず、ゆっくり落ちてくる雪を見ながら言った。

「俺の方こそ契約の魔道具ありがとうな。戻って報酬出たら返すからさ」

「いえ。それはしなくていいですよ」

 首を横に振ってリリアは拒むがそれでは納得がいかない。だが、それを察したリリアは代案を決めていたのか口を開いた。

「だから、一つ、お願いを聞いてもらってもいいですか?」

「俺にできることなら何でも言ってくれ」

 大地の返答にリリアは「それじゃあ……」と貯める。

「手を……握ってもいいですか?」

 大地としてはお安いご用なのだがそんな簡単な事でいいのか。と少しだけ考える。ただ、それがリリアの望むことなら何も問題はなく大地は手を差し出した。

「もちろんいいぞ」

 差し出された大地の手。その掌におずおずとリリアは指を伸ばしていく。そして一瞬だけ触れた瞬間、ビクッとしたように引っ込めた。
 だが、それで慣れたのか再び伸ばされた指は大地の手の感触をしっかりと感じ、そして指の間に自分の指をはめていった。
 確りとお互いが手を握ると……リリアは大地の顔を見て言うのだ。

「えへへ。ダイチさんの手……とても暖かいです」

 そう言った彼女の顔は満面の笑みを浮かべていた。

 その笑顔と高い空から見る背景の雪が相まって、前に見た笑顔よりも何倍もキラキラしているように見える。それが嬉しくて楽しくて大地は満足しながら笑顔で頷くのであった。
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