初めての異世界転生

藤井 サトル

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雪夜咲く、美人の笑顔に、満ち足りる

僕らの安心安全クリエイトキャンプ

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 大地が船から戻るとそれぞれの言葉をかけてくれる。

「お疲れ様です。ダイチさん」

 とリリアが出迎えるように言う。

「君一人に負担をかけてしまってすまない」

 とアーデルハイドが少しほっとしたような表情を浮かべて言う。

「兄貴!流石っす!」

 とレイヴンが言う。

「それで痴情のもつれはどうなったんですか?」

 とフルネールが言う。


 一部労ってくれないどころか泥沼を楽しそうに聞いてくるのにため息をつく。

「いや、もつれじゃないって。とりあえず撃退ってところかね。怪我はないよな?」

「ああ。大丈夫だ」

「そうかよかった。王女様に怪我なんかさせた日には町中から責められるだろうからな」

 アーデルハイドが「ふふ。それはそれでちょっと見てみたいものだ」などと肝が冷えるような事を言ってきた。

 いや、冗談で言ったけどさ……そうなったら最悪、俺牢屋いきになるんじゃないの?

「私も大丈夫ですよ。大地さん。まぁ気になることはリヴァイアサンとどういったご関係になったのかな?ぐらいでしょうか」

「どんな関係にもなってねぇよ!」

 この女神はそればっかりか!

「ん?リリアも大丈夫か?王女同様に聖女も無事じゃないと村八分にされかねないんだが」

「え!?……そんなことはないですよ」

 ちょっとだけ沈んだ声が気になり声をかけようとすると隣からやかましいハゲがやかましく言ってくる。

「兄貴!兄貴!俺も大丈夫ですぜ!」

「おーそうか。まぁ全員に怪我ないみたいだしとりあえず舎弟は継続だな」

「やったぜ!」

 ……いいのかそれで?

「それにしても本当に助かった。討伐できなかったのは少し気がかりではあるが……」

 少し残念そうにするのはSランクモンスターが生きていることへの危惧だろうけど、そこは諦めてもらおう。

「それよりクラーケンを担当した方は大丈夫なのか?」

「ああ。人数を投入しただけあってこの時間で終わった」

 詳しくわからないから推測するが、Sランクモンスターとの闘いはもしかしたらもっと時間がかかるものなのかもしれない。

「でも、あの船……煙吹いてない?」

「……みたいだな。とりあえず雪山まではもう少しだ。そこについたら修理できるか検討しよう」

「そういえば港みたいな場所はあるのか?」

「どうだろうな。雪山には初めて行くからな。まぁ行ってみればわかるだろう」

 アーデルハイドは多分魔道具で連絡を取ったのか、船はそのまま雪山へと動き出した。
 速度を上げたのかその雪山がある島につくまでは対してかからず2時間ほどで到着する。だが、やはり港のような船をつけられる場所は見つからない。島をぐるりと一周すればわからんでもないが、あまり時間を割きたくない為か仕方なく島の岸に船をつけるとイカリを下ろして停泊した。そして橋のようなものをかけて乗り降りが自由にできるようにした後、拠点づくりをするべく島へと降り立った。

 思ったより雪の降り方は穏やかだ。地面については、雪がある程度は積もっているものの高くても2センチくらいだ。

 あ……雪用の靴を買ってないんだが?

 もう、そんなことだと思いました。実はこっそり買ってあります。……安い物ですけどね。

 どこからそんなお金が?

 ふふ。実は大地さんが倒したモンスターから売れそうな部分を少しだけ頂戴して売ってたんです。と言っても靴を買うくらいしかやっていなかったのですけど。……あの、ダメでしたか?

 いや、すごく助かるよ。ありがとな。

 えへへ。お役に立てて嬉しいです。

 フルネールから靴を受け取って履き替えるとようやく雪山がある島へと降り立った実感を得る。

「拠点づくりって何をするんだ?」

 大地のふとした問にフルネールが答える。

「ゲームでやってこなかったんですか?枠からアイテム選択してドラッグ&ドロップで配置すればいいんですよ」

「ゲームのチュートリアルじゃねえんだから……」

 そんなおふざけ100%のフルネールの言葉を無視すると次はレイヴンが声をかけてくる。

「そうですね。とりあえず簡易テントはもってますか?それで自分の寝床の場所を決めて、次に焚火の用意ですね。それが終わったら柵かなんか作ってここら辺の安全を確保するのに協力してやっていく。そういう流れが一般的ですよ。もちろんある程度の食糧があるのが前提ですが、今回はいきなり島に放り出されたわけじゃないですからこの流れで多分大丈夫です」

 やべぇ。レイヴンが中々のサバイバーだ!

「なるほどな。助かるよ」

「へへ。これしきAランクハンターなら常識ですぜ」

 持つべきは良い舎弟だな。ってもう一人のAランクどこ行った?

「リリア?」

「あ、はい。どうしました?」

「いや、どうしたって……なんか元気ないな」

「え?そんなわけないですよ。元気ですよ!」

 うーん、空元気にしか見えないが……。

「そうか。まぁさっさと簡易テントやら何やらやっていこうぜ」

「……はい」

 フルネールから『どこからともなくしまった物を取り出せる能力』によって町で買った簡易テントを受け取る。

「使い方がわからない……何この四角い箱は」

「それが簡易テントですよ?魔力を込めて地面において20秒待つとテントになります」

 魔力を込める?そんな芸当が俺にできるとお思いですか?

 という事で黙ってフルネールへと渡す。

「あら?少しでも練習した方がいいと思うのですけど……仕方がありませんね。どの辺に置きますか?」

 今更そういうのを練習したいとは思えないんだよおぉ。

「そうだな」

 ざっくりと周りの状況を見てみると……適当においてらっしゃる。

「なんかみんな適当だしこの辺でいいんじゃないか?」

 頷いたフルネールが魔力を込めて簡易テントを近くの地面へと置いた。すると四角い箱が煙を発し始めた。そこから5秒後にポンッと音がでて結構広めの四角い……プレハブ小屋?

「これ……テント?」

「はい!テントですよテント!」

 3人くらいは余裕で入れそうなほど広い。

「あ、リリアちゃんも一緒に入りますか?」

 おい、流石にそれは……。

 でも大地さん。やらしいことしないでしょう?

 したらお縄だっつの。ここまで来て島流しとかされたくねぇよ。

 じゃあ大丈夫じゃないですか。

「い、いえ。私は……お姉ちゃんの近くにしますね」

 そう言って何かに遠慮するようにリリアは去っていく。

「あれ?うーん、まさか大地さん。リリアちゃんに何かしたんですか?やらしいこととか!!!」

「だからしてねぇよ!!!頼むから大声でそういうこと言わないでくれ。ほらみんな見ているから」

 周りからの針を刺すような視線を浴びながら言い訳のような事を必死に並べていると、レイヴンが言い出した。

「あ!じゃあ俺が一緒に――」

「ダメだ。自分のパーティに帰れ」

「却下です。ご自分のパーティがありますでしょう?」

「うぅ。わかりました……」

 とぼとぼと歩いていくレイヴンを見送る。
 そんな彼よりリリアの態度の方が気にはなったのだが、テントを置く事でようやく一息つけるのだった。
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