初めての異世界転生

藤井 サトル

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雪夜咲く、美人の笑顔に、満ち足りる

あの娘の部屋でドキドキ体験

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 ギルドで依頼の話を聞いた大地達はその後に先ほどの店に急いで戻ると現時点までグラネスは酒をのみ続けていた。

 そんな彼を遠巻きで見たところこちらに気づくのだが、手を振ってから再び酒を頼みだしていた。そんな彼の様子を見て大地達は精神的に疲れた為、グラネスを放置して店を出ることにした。

「あー、もうすぐ暗くなるか」

 そのやり取りを無かった事にするように大地は空を見上げ、少し薄暗くなってきているのを感じた。

「そうですね。流石にこの時間から依頼は出来ませんし、今日はゆっくりしましょうか」

 そのゆっくりする場所はギルド前になるわけだ。ギルド方面へ歩き出そうとしたところをリリアが止めた。

「あ、あの!待ってください!」

「どうした?」

「その、今日は私の宿に泊まっていきませんか!?」

 少し前のめりに提案する彼女は自分なりに思いきっての言葉だったのかもしれない。

「そうだな。フルネールは泊めて貰えばいい」

 そう言って再び歩き始めた瞬間、リリアが大地の手を迷わず握った。

「ダ、ダイチさんも一緒じゃなきゃダメです!!私と一緒に寝てください!!」

「え"っ!?」

 うん、凄い情熱的なお誘いだ。相手が確りとした女性で場所も的確だったなら嬉しい限りなのだが、相手はリリアだ。16歳という歳もさることながら彼女の顔立ちは幼いのだ。

 そんな彼女がお店を出てすぐの場所で、汚れた大人ならいやらしく聞こえてしまう言葉を大声で、手を握りながら言ったのだ。

 当然回りにいる人も、店の中の店員もこちらを見た。そして、ヒソヒソと話始める。

 何をどうとらえても大地は絶対的な不利である。そして、残念なことにギルド方面への退路は断たれている。その理由はもちろん野次馬のごとく現れた人だかりだ。

 逃げる事は出来ない。そして、ずっと針のむしろにさらされ続けるのはごめん被りたい。

「わ、わかったから!行くからとりあえずここを離れよう」

 居心地の悪さから大地はそう言ってしまった。言ってしまったのだが……リリアとしては満面の笑みを浮かべ、今度はフルネールとも手を繋いで二人を引っ張っていった。


 そして、ついにリリアが取っている宿の部屋の前まできてしまった。

「な、なぁ。流石に泊まる人数を勝手に増やしたら怒られるんじゃないか?」

 大地の最後の抵抗だ。リリアの常識に、マナーに、良心に問い掛ける言葉。だが、その最終防衛ラインの展開は始まる前から終わっていた。

「いえ、既に今日の事をお話ししているので問題ないですよ」

「そ、そうか」

 あら優秀。予め考えていたのか……。

 もう!良いじゃないですか?一緒のお部屋で寝るくらい。それとも、リリアちゃんを襲うつもりですか?

 ばっ!そんな事するわけないだろ!

 なら良いじゃないですか。リリアちゃんだってこんなこと始めてなんでしょうから。

 しゃーない、覚悟を決めるか。何かあったらフォローよろしく!

 はい!少し服を破いて泣きながら叫びますね!

 やめろーー!!!

「あ、あの、それで寝る場所なんですが……」

 大地はこの宿屋の部屋を改めて見回す。

 えーっと間取りはこの寝床と――。

 寝室です。

 はい。あとは風呂と――。

 浴室です。

 はい。あとはトイレくらいだ――。

 トイレです。

 はい。……ん?最後のは訂正する必要ないだろ!

 えへへ。

 しかし、見回したところでベッドは一つしかない。リリア一人なら余裕であと一人は問題ないだろう。そうなれば答えは簡単だ。

「俺は床で寝るからリリアはフルネールと一緒にベッドで寝ればいいだろ」

「で、ですが。お二人はお客様ですし!」

「地面の上じゃないだけで上等なもんよ。更に風まで凌げるからな」

 いつもなら硬い地面に夜風に吹かれながらだ。それを考えると遥かにましである。まぁこの世界に来て初めて外じゃない場所で寝るのが少女の宿の中っていうのがアレだが。

 大地の言葉に全部ではないが納得してくれたようでリリアは引き下がってくれた。こうして無事に夜が過ぎていく。あの時の俺はそう思っていたんだ。


 ――ベッドの使用方法について決めてから3時間くらいたっだだろうか。

「あ、きゃあ!ダ、ダメですよ……」

 リリアの色っぽい声が聞こえてくる。彼女の顔を思えば少々背徳感を覚えるのはやむ無しだろう。

「だ~め。もっとこっちに来てください」

 その次に聞こえてくるのはフルネールの声だ。こちらも少々色っぽく言っているがリリアの違いはワザとかそうでないかだろう。

「フルネールさん。私……恥ずかしい……です」

「まぁまぁ。こうして一緒に入れるんですし……リリアちゃんも始めてなんでしょう?」

「で、でもぉ。きゃっ」

「あらあら。リリアちゃんは順調に大きく育ってきてますね」

 お判りいただけただろうか。彼女たちは今入浴中である。
 少しだけ時を遡るとリリアの配慮によって宿の食事は3人分用意してもらい美味しくいただいた。その後、フルネールが俺にいきなりこう言った。

「さぁ。せっかくですしお風呂も入らせてもらいましょう。ね?大地さん」

 言葉だけなら問題なさそうだが、その時にフルネールが大地の手を取り引っ張り出したのが大問題なのだ

「え?え?」

「ほら、リリアが困惑しているからそういう冗談はやめろって」

「それじゃあリリアちゃんも一緒に入りませんか?それとも私からのお願いは聞きたくないですか?」

「え!?ええ!?女神様からのお願い……でもダイチさんも一緒……でもお願い……でも一緒……」

 困惑どころか焦って混乱し始めたリリアの頭をフルネールは楽しそうに頭をなでる。

「バカな事言ってないで二人で入って来いよ」

 そんなフルネールの悪戯を溜息一つで払いのけてから手をシッシッと追い払う様に振るう。流石に乗ってこないとわかりきっていた大地の言葉に「はーい♪」と返事をしながら目をぐるぐるさせているリリアを連れて風呂へ入っていったのだ。

 そこから声がここまで聞こえてくるという。……と言ってもリリアは基本小声で玉に短い悲鳴が聞こえるくらいだ。だが、フルネールはというと大地にわざと聞かせようとしているように大きい声で言っているのがよくわかる。

「ったく。アイツは何してんだか……」

 ふざけ合っているだろう彼女たちの声を出来る限り無視する。少しでも意識をやってしまえば劣情を掻き立てられるからだ。そんな姿を見られるわけにはいかない。牢屋に入らないために。

 手持ち無沙汰となった大地はゴロンと床へ寝転がった。

 明日は雪山に行くのである。ここまで森と砂漠。その二つの自然の驚異を思い知っている大地としては油断すれば今回も命がけ……いや、本当に命を落とすかもしれない。女神に貰ったチート能力、【兵器召喚】【女神との契約】この二点は確かに強力な物であるがそれでも万能ではない。

 森では何の策も考えなければ迷い飢え死にしていたであろう。砂漠では熱中症と脱水症の二つでリリアが居なければ本当にあの世逝きだった。

 ……であれば、雪山で想像できるのは凍傷などだろうか。こんな時に俺が登山経験とかあればいいんだが、都合よくそんなものは無い。

 大地さん大地さん。大変です!!

 どうした!?何かあったのか!?

 唐突にフルネールから脳内会話が割り込んできた。その言葉に焦りが混じっているのが分かる。

 よく聞いてください。

 ああ。何が大変なのか教えてくれ。

 リリアちゃん……胸がCカップあるんですよ!

 ……で、それの何が大変なんだ?

 彼女、ブラジャーはBカップの使っているんですって!これは大変なことですよ!!

 ……なぁ、一つ聞いていいか?

 はい♪あ、わかりました。スリーサイズですね!?もう、胸の話したからって興奮しちゃって……しょうがない人ですね。

 ちげぇーよ!!何で俺の世界で聞いたことがある言葉がこちらでもあるのかって話だよ!

 と言うことはブラジャーの話ですね!!もう、大地さんは……えっち……な人ですね♪

 ちげーとは言えないけどさ、何でそんなに嬉しそうなんだ?

 ふふふ。秘密です♪大地さんへの返答ですが、それは私が広めたからですよ。いろんな人にお告げを使って。

 いいのかよ……そんなことにお告げを使って。

 だって、そうしないとこの世界つまらないんだもん。大地さんの世界はずるいですよ。便利なもや面白い物がいっぱいあって。だから、情報流しちゃいました!

 そう簡単に言うが、その結果としてフルネールに……神に仕えると言うほどの信者が増えたことは大地には言えない。――仲間の大地には内緒だよ!

 ……神がすることだから普通の人間である俺が口出すことじゃないけれど。

 そう思って再び雪山対策へと意識を落とそうとしたときである。風呂……浴室からフルネールの声が聞こえてきた。

「リリアちゃん。大地さんがリリアちゃんのスリーサイズ聞きたいそうですよ!!」

 その思ってもいない言葉を聞いた途端、大地はゲホッゲホッとむせた。

 油断するとすぐこれだ。いや、きっと釘を刺したところで無駄だっただろう。この神魔女悪は止められない。――ルビを含めて読ませないでください!

 ちゃんと後でフォローしておけよ?

 落ち着いてるのは諦めの境地かもしれない。或いはリリアならきっとフルネールの悪戯だと理解してくれている。そういう信頼から来ているのかもしれない。何れにしても今この場にいる人間が限られているからこそだ。

 それから約一時間くらいしてからフルネールとリリアは風呂から出てきた。熱のせいか頬を上気させ、体から少しだけ湯気をだし、風呂上がりによる石鹸の良い香りを漂わせ、普段の服そうと違うリリアは花柄パジャマ(胸元までボタンをきっちり閉めていないため鎖骨が見えてしまっている)とフルネールのほんの少しだけ青みがかったパジャマ(胸によって伸ばされたパジャマが可哀想)姿に見惚れてしまいそうになったのは言うまでもないだろう。

 正直目の保養にはなるが理性的には毒となるのだ。ふとリリアが無防備に近づいてきた。

「あ、あの。ダイチさんが……私のスリーサイズ知りたいってほんとでしょうか?」

 俺は『ロリコンじゃない!』そう自分に言い聞かせはするものの、一瞬だけ頷きそうになったりもした。

「……フルネールの悪戯だってわかっているだろ?」

「あ。……あはは。そうですよね」

 リリアは笑ってごまかしたあと再び口を開いた。

「あの、ダイチさんもお風呂どうぞ!」

 そう進めてくれるのは嬉しいが……。

「いや、俺は朝一で滝に飛び込んでくるよ。それに着替えもないからな」

 などと遠慮して言う。普段なら滝に飛び込んだあと服も一緒に洗い焚き火で乾かすことをしている。何せ自分の服はこの一着しかないのだから。

「だーいーちーさんっ!」

 フルネールが近付いてきて言う。

「せっかくだから大地さんのパジャマも用意しましたから」

 そして次の言葉はリリアに聞こえないように耳元で小さく呟く。

「下着もありますから……」

 その優しく甘い声で、且つ息も当たりながら囁かれて少しだけぞくぞくしてしまったのは許してほしいところだ。だって男だし。

「と言うことでお風呂入ってきてください。臭いので」

 ぐはぁっ…………。

 あげて落とす。……何て言葉は温いだろう。どちらかと言うと誘惑されて誘いに乗った瞬間に刺されるような感覚だ。

 リリアが苦笑しているのを見ると恐らく臭いは本当なのだろう。

「わ、わかった。入ってくるよ……」

 そう言って大地は風呂……浴室へと向かっていった。
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