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雪夜咲く、美人の笑顔に、満ち足りる
共に行動するのがパーティである
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恥ずかしい思いをしながら飯を食い終わった大地は店からでるとフルネールとリリアを引き連れてギルドに戻る事にした。理由は単純に今日やれる準備がおわったので昼過ぎからの時間でも終わる依頼が無いかを探す為だ。
ギルドに到着すると扉をゆっくり開く。
ここの扉はいつも誰かに思いっきり開かれているから俺くらいはゆっくり開いてねぎらってやらないとな。
「あ!ダイチさん。戻ってきてくれたんですね。よかったです!」
ユーナさんがパタパタと小走りで入ってきたばかりの大地に近づいてきた。その姿は家で旦那を出迎えた時の様な新妻感を出していた。
「ゆ、ユーナさん。どうしたんだ?」
少しだけドキドキしながら聞くとその口から告げられたのは……。
「あの……王女様が大地さんをお待ちしています」
「アーデルハイドが?」
「はい。奥のギルド長室にいますので来て頂けますか?」
あっさりと振り返るユーナの背中を大地とフルネールは追うように後に続くがリリアは動こうとしなかった。
「あれ?リリアどうした?」
「え?呼ばれているのは大地さんだけでしょうから……」
「んなこと気にしなくてもいいだろう。アーデルハイドだしな」
「そうですよ。呼んでるのがアーデならリリアちゃんが来ても大丈夫なはずですよ?」
二人のよくわからない自信がリリアのついて行きたい欲に相乗効果をもたらした結果、リリアは二人について行く事にした。
ユーナさんが一つの部屋の前で止まる。扉には『俺の部屋』と書かれているプレートが貼ってある。その扉を3回ノックしてから声をかける。
「ギルド長。アーデルハイド様。大地さん達をお連れしました」
ユーナさんはギルド長の妻ではあるのだが公私混同を避けている様にしっかり丁寧に声をかけていた。すると扉越しから声が聞こえる。
「おう!入ってくれ」
「失礼します」そうユーナさんが言ってから扉に手をかけて中に入っていく。大地、フルネール、リリアの三人はその後に続くように中へ入る。
「リリアも一緒だったんだな。それは都合がいい」
開口一番、アーデルハイドがリリアに目を向けて言った。
何のことか分からないが「一先ずそこに座ってくれ」とギルド長からアーデルハイドと対面するソファーを進められた。
大地達が座るとアーデルハイドが口を開いた。
「明日の依頼について話しておこうと思ってな」
「ああ、明日の依頼の事か。確かに雪山に行くのと結構人がいるくらいしか知らないな」
大地が思い出す様に言うがフルネールが補足する。
「弱死病を治療する果実を取りに行くんですよ?」
「そうだ。人数は私やリリアを含めると52人になる」
「ん?30人とかって聞いた気がするが、増えたのか?」
「それは戦闘メンバーで大地と私を含んだ数だ。非戦闘メンバーは20人だな。船でいくからその操縦や荷運びなどの……まぁ支援メンバーだ」
総勢52名は確かに大勢だな。
「それと期間だが現地に着くのに1日は要するだろう。そこから探索開始になるが最大でも2週間程度だ」
「期間はそんなものなのか?」
「ああ。それ以上はどちらも持たないだろう」
『どちらも』と言うのはつまるところ探索する俺らと……クルス王子のことだろう。
「果実はこんな形をしているらしい」
王女は丸めた紙を開いて大地達に見せる。その紙には丸い絵が描いてあった。何かの果物に当てはめるならリンゴが近いかもしれない。
「スノーパールという名前らしい。特徴は丸く白く輝く。という事らしいんだ」
白く輝く……か。雪の中に埋もれでもしていたら見つけるのは困難かもな。
そうですね。せめて別の色ならいいんですけど。
「これがあればクルス……お兄ちゃんが助かるんですね」
その絵を見つめながら言うリリアにアーデルハイドは真剣な表情で言う。
「見つかれば……の話だ」
希望はあるはずなのだが空気が重いせいか沈黙が広がる。
しばらく待っても誰も何も話さない。その沈黙に耐えかねて大地が口を開いた。
「まぁ大体の依頼内容は分かったよ。んで、一つ聞くんだが、現地についたらどうやって探索するんだ?」
「ある程度はこちらで探索班を決めるが、探索中は元々パーティを組んでいる奴等で自由に探索するといい。その方が動きやすいだろう」
大地は頷く。まぁほかの人がいるとめんどそうだと思っただけなのだが……。
「私は……」
隣のリリアが下を俯きながら言う。
「グラネスは一緒に行かないのか?」
と、大地が聞くがリリアは首を振って答える。
「はい。私の我が儘ですから来ない様に説得しています。ですから……」
自分は一人で行く事になる。アーデルハイドを頼る事はしないのは現地では彼女はかなり忙しいだろうからだ。そこに迷惑をかける事は出来ない。
「それなら俺たちと一緒に行動するか?」
「え!?いいんですか?……お二人のお邪魔になりませんか?」
などと珍しく遠慮気味に言うリリアに対してフルネールが憤慨する。
「そんなわけありませんよ!今日みたいに一緒に行動しましょう」
フルネールを見て、大地を見て、最後にリリアはアーデルハイドへ視線を移すとアーデルハイドは無言で頷いた。それを見てパァっとリリアは表情を明るくして元気に言う。
「ダイチさん、フルネールさん。よろしくお願いします!」
それで話は終わり。そう思われた時にギルド長が口を開いた。
「そういえば。グラネスは一緒じゃないのか?」
少しの間、再び沈黙が流れる。その間、大地とフルネールとリリアはお互いに顔を見渡した後、思い出したように大きな声で驚いた。
「「「あっ!!!!!」」」
そう、グラネスは今もお店で酒を飲んでいるのだった。
ギルドに到着すると扉をゆっくり開く。
ここの扉はいつも誰かに思いっきり開かれているから俺くらいはゆっくり開いてねぎらってやらないとな。
「あ!ダイチさん。戻ってきてくれたんですね。よかったです!」
ユーナさんがパタパタと小走りで入ってきたばかりの大地に近づいてきた。その姿は家で旦那を出迎えた時の様な新妻感を出していた。
「ゆ、ユーナさん。どうしたんだ?」
少しだけドキドキしながら聞くとその口から告げられたのは……。
「あの……王女様が大地さんをお待ちしています」
「アーデルハイドが?」
「はい。奥のギルド長室にいますので来て頂けますか?」
あっさりと振り返るユーナの背中を大地とフルネールは追うように後に続くがリリアは動こうとしなかった。
「あれ?リリアどうした?」
「え?呼ばれているのは大地さんだけでしょうから……」
「んなこと気にしなくてもいいだろう。アーデルハイドだしな」
「そうですよ。呼んでるのがアーデならリリアちゃんが来ても大丈夫なはずですよ?」
二人のよくわからない自信がリリアのついて行きたい欲に相乗効果をもたらした結果、リリアは二人について行く事にした。
ユーナさんが一つの部屋の前で止まる。扉には『俺の部屋』と書かれているプレートが貼ってある。その扉を3回ノックしてから声をかける。
「ギルド長。アーデルハイド様。大地さん達をお連れしました」
ユーナさんはギルド長の妻ではあるのだが公私混同を避けている様にしっかり丁寧に声をかけていた。すると扉越しから声が聞こえる。
「おう!入ってくれ」
「失礼します」そうユーナさんが言ってから扉に手をかけて中に入っていく。大地、フルネール、リリアの三人はその後に続くように中へ入る。
「リリアも一緒だったんだな。それは都合がいい」
開口一番、アーデルハイドがリリアに目を向けて言った。
何のことか分からないが「一先ずそこに座ってくれ」とギルド長からアーデルハイドと対面するソファーを進められた。
大地達が座るとアーデルハイドが口を開いた。
「明日の依頼について話しておこうと思ってな」
「ああ、明日の依頼の事か。確かに雪山に行くのと結構人がいるくらいしか知らないな」
大地が思い出す様に言うがフルネールが補足する。
「弱死病を治療する果実を取りに行くんですよ?」
「そうだ。人数は私やリリアを含めると52人になる」
「ん?30人とかって聞いた気がするが、増えたのか?」
「それは戦闘メンバーで大地と私を含んだ数だ。非戦闘メンバーは20人だな。船でいくからその操縦や荷運びなどの……まぁ支援メンバーだ」
総勢52名は確かに大勢だな。
「それと期間だが現地に着くのに1日は要するだろう。そこから探索開始になるが最大でも2週間程度だ」
「期間はそんなものなのか?」
「ああ。それ以上はどちらも持たないだろう」
『どちらも』と言うのはつまるところ探索する俺らと……クルス王子のことだろう。
「果実はこんな形をしているらしい」
王女は丸めた紙を開いて大地達に見せる。その紙には丸い絵が描いてあった。何かの果物に当てはめるならリンゴが近いかもしれない。
「スノーパールという名前らしい。特徴は丸く白く輝く。という事らしいんだ」
白く輝く……か。雪の中に埋もれでもしていたら見つけるのは困難かもな。
そうですね。せめて別の色ならいいんですけど。
「これがあればクルス……お兄ちゃんが助かるんですね」
その絵を見つめながら言うリリアにアーデルハイドは真剣な表情で言う。
「見つかれば……の話だ」
希望はあるはずなのだが空気が重いせいか沈黙が広がる。
しばらく待っても誰も何も話さない。その沈黙に耐えかねて大地が口を開いた。
「まぁ大体の依頼内容は分かったよ。んで、一つ聞くんだが、現地についたらどうやって探索するんだ?」
「ある程度はこちらで探索班を決めるが、探索中は元々パーティを組んでいる奴等で自由に探索するといい。その方が動きやすいだろう」
大地は頷く。まぁほかの人がいるとめんどそうだと思っただけなのだが……。
「私は……」
隣のリリアが下を俯きながら言う。
「グラネスは一緒に行かないのか?」
と、大地が聞くがリリアは首を振って答える。
「はい。私の我が儘ですから来ない様に説得しています。ですから……」
自分は一人で行く事になる。アーデルハイドを頼る事はしないのは現地では彼女はかなり忙しいだろうからだ。そこに迷惑をかける事は出来ない。
「それなら俺たちと一緒に行動するか?」
「え!?いいんですか?……お二人のお邪魔になりませんか?」
などと珍しく遠慮気味に言うリリアに対してフルネールが憤慨する。
「そんなわけありませんよ!今日みたいに一緒に行動しましょう」
フルネールを見て、大地を見て、最後にリリアはアーデルハイドへ視線を移すとアーデルハイドは無言で頷いた。それを見てパァっとリリアは表情を明るくして元気に言う。
「ダイチさん、フルネールさん。よろしくお願いします!」
それで話は終わり。そう思われた時にギルド長が口を開いた。
「そういえば。グラネスは一緒じゃないのか?」
少しの間、再び沈黙が流れる。その間、大地とフルネールとリリアはお互いに顔を見渡した後、思い出したように大きな声で驚いた。
「「「あっ!!!!!」」」
そう、グラネスは今もお店で酒を飲んでいるのだった。
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