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王族からは逃げられない
隠したい事があるなら根回しは大事と言うこと
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ようやくギルド前に帰ってきた大地とフルネールだが、ギルドのドアを開けると目の前にはリリアが待ち構えていた。
「えーと……?」
彼女の双眸は明らかに大地へと向いているのだが、それだけなのだ。何か言うでも通せんぼしているわけではない。
だが、それゆえに大地は困惑する。何かしらアクションしてくれれば反応ができるのだが無反応で見続けられると動きにくい。
「リリア?」
何か怒らせるような事をしたのだろうか?その疑心暗鬼から恐る恐る彼女の名を口にした。
「ダイチさん。アーデルハイドお……う女様と何を話したんですか?」
お姉ちゃんと言おうとしたのを頑張って堪えたな。
頑張ってるの可愛いですよね!
ノーコメントだ。
「お礼を言われたかな」
「お礼……?あ!私に押し付けたときのですね!?」
「その通り!王族に強い事を知られたらめんどくさそうだったから押し付けた時のだな」
押し付けた時の事に文句の一つでも言われるのだろう。そう思った大地だがリリアの次のリアクションはまた予想外なものだった。
「え?……王族に知られたくなかったのですね。その、アーデルハイド王女様に教えてしまい……ごめんなさい」
海龍から大地が助けてくれた後、リリアはアーデルハイドと接する機会があった。その時にリリアは物語の冒険譚の様に興奮しながら大地の事を話した。死ぬ覚悟をした自分の目の前に英雄のように現れた事。海龍の攻撃を簡単に防いだ事。よくわからない鳥を召喚して海龍を放浪させた事。そして、たった一度、大地から光が放出されると海龍が消滅していたのだ。
そしてその話から森でアーデルハイドを救ったのも大地だという事が分かり、ついでにその事についても触れてしまった。
だが、今の大地の口ぶりからすると隠していたかった事がわかってしまう。改めて思うと森でアーデルハイドが倒れて自分に押し付ける形で逃げたのはつまるところそういう事だったのだと。
ハンターは自分の評価を上げたがる。それは知名度が上がればパーティに入りやすく、依頼もこなしやすくなるからだ。
だから……大地も評価を上げたいのだと思っていた。良かれと思って自分の感じた冒険譚も森で起きたであろう出来事もアーデルハイドに伝えた。でも知らなかった。
――王族に知られたくないと思っていた事に。
どんどん沈んでいくリリアを前にした大地は一つ溜息を吐く。
「あー、そうかってに落ち込んでくれるな。それにリリアが伝えてくれたから砂漠に行く時のお金も貰えたんだしな」
どうにかフォローしようとするがリリアの沈み具合が半端ない。
「……ダイチさんは王族が嫌いですか?」
沈んだ声で言うリリアだが、適当に宥めるのはまずいような雰囲気を大地は感じる。ただ、仲の良い王女様が嫌われているかもしれないと思うのなら気落ちもするだろう。
「いや、嫌いじゃないぞ。ただ、面倒ごとが嫌いなだけだからな」
「面倒ごと?」
嫌いじゃない事を伝えただけでも少しリリアの顔が明るくなったみたいだ。
「ギルドの依頼とかは金の為にやるのだからいいんだが、王族が絡んだりすると何かめんどそうというイメージだ!」
……大地さん?あまりにもふわっとしすぎじゃありませんか?
でも、王族、貴族のイメージなんてそんなもんじゃないか?Sランクになるのはいいけどグータラするためには知名度は低くありたいものだ。
大地さん……。
「い、イメージですか?」
ほら、リリアちゃんが呆れてますよ?
ああ。珍しいよな!
……そうですね!すごく珍しい!
フルネールもぶれねぇなぁ。
「そう。めんどくさくなりそう。と言うイメージで王族、貴族に知られたくないだけだ」
その言葉にリリアは今まで沈んでいた事を忘れてクスクスと笑いだした。
「何ですかそれ……。それじゃあ王族が嫌いという事じゃないんですね」
「嫌いじゃないけど……まぁ苦手意識はあるかな」
「そうですか……いえ、それなら今後はダイチさんの事については話さないようにしますね」
「ああ、気を遣わせて悪いな。あと、もう一つアーデルハイド王女からの話で依頼を一つ受ける事になったな」
大地は敢えて『力試し』という事を伏せて言う。もし、今の流れでその事に触れてしまえば『厄介ごと』を押し付けられたのではないかと心配するかもしれないからだ。
「え?依頼……ってどんな……」
「あー、ギルド経由で依頼は受けるだろうけど、その事って他の人に話してもいいもんなのか?」
その大地の疑問にリリアは「あっ!」と、気を付けていたことをついやってしまった。そんな顔で驚く。
「……よくありませんでした」
「まぁそのなんだ、簡単な護衛依頼だからさ」
「……ダイチさん」
リリアが真剣な表情で自分の名を呼ぶ。一体どうしたのかと様子をうかがっていると直ぐにリリアが口を開いた。
「私、ちょっと出掛けてきます!」
そう言ってグラネスを置いてギルドの外へ出ていってしまった。
「一体何なんだ?」
リリアがギルドから出ていくのを見届けてドアに振り向いた大地が呟いていると、今度はユーナさんがクスクスと笑いながら近づいてきた。
「たぶん、アーデルハイド王女様のところに向かったのだと思いますよ?」
「あの王女様のところにか?何で?」
まったく意味がわからない大地へユーナは「何ででしょうね?」といたずらっぽい笑みを浮かべて言うのだった。
「えーと……?」
彼女の双眸は明らかに大地へと向いているのだが、それだけなのだ。何か言うでも通せんぼしているわけではない。
だが、それゆえに大地は困惑する。何かしらアクションしてくれれば反応ができるのだが無反応で見続けられると動きにくい。
「リリア?」
何か怒らせるような事をしたのだろうか?その疑心暗鬼から恐る恐る彼女の名を口にした。
「ダイチさん。アーデルハイドお……う女様と何を話したんですか?」
お姉ちゃんと言おうとしたのを頑張って堪えたな。
頑張ってるの可愛いですよね!
ノーコメントだ。
「お礼を言われたかな」
「お礼……?あ!私に押し付けたときのですね!?」
「その通り!王族に強い事を知られたらめんどくさそうだったから押し付けた時のだな」
押し付けた時の事に文句の一つでも言われるのだろう。そう思った大地だがリリアの次のリアクションはまた予想外なものだった。
「え?……王族に知られたくなかったのですね。その、アーデルハイド王女様に教えてしまい……ごめんなさい」
海龍から大地が助けてくれた後、リリアはアーデルハイドと接する機会があった。その時にリリアは物語の冒険譚の様に興奮しながら大地の事を話した。死ぬ覚悟をした自分の目の前に英雄のように現れた事。海龍の攻撃を簡単に防いだ事。よくわからない鳥を召喚して海龍を放浪させた事。そして、たった一度、大地から光が放出されると海龍が消滅していたのだ。
そしてその話から森でアーデルハイドを救ったのも大地だという事が分かり、ついでにその事についても触れてしまった。
だが、今の大地の口ぶりからすると隠していたかった事がわかってしまう。改めて思うと森でアーデルハイドが倒れて自分に押し付ける形で逃げたのはつまるところそういう事だったのだと。
ハンターは自分の評価を上げたがる。それは知名度が上がればパーティに入りやすく、依頼もこなしやすくなるからだ。
だから……大地も評価を上げたいのだと思っていた。良かれと思って自分の感じた冒険譚も森で起きたであろう出来事もアーデルハイドに伝えた。でも知らなかった。
――王族に知られたくないと思っていた事に。
どんどん沈んでいくリリアを前にした大地は一つ溜息を吐く。
「あー、そうかってに落ち込んでくれるな。それにリリアが伝えてくれたから砂漠に行く時のお金も貰えたんだしな」
どうにかフォローしようとするがリリアの沈み具合が半端ない。
「……ダイチさんは王族が嫌いですか?」
沈んだ声で言うリリアだが、適当に宥めるのはまずいような雰囲気を大地は感じる。ただ、仲の良い王女様が嫌われているかもしれないと思うのなら気落ちもするだろう。
「いや、嫌いじゃないぞ。ただ、面倒ごとが嫌いなだけだからな」
「面倒ごと?」
嫌いじゃない事を伝えただけでも少しリリアの顔が明るくなったみたいだ。
「ギルドの依頼とかは金の為にやるのだからいいんだが、王族が絡んだりすると何かめんどそうというイメージだ!」
……大地さん?あまりにもふわっとしすぎじゃありませんか?
でも、王族、貴族のイメージなんてそんなもんじゃないか?Sランクになるのはいいけどグータラするためには知名度は低くありたいものだ。
大地さん……。
「い、イメージですか?」
ほら、リリアちゃんが呆れてますよ?
ああ。珍しいよな!
……そうですね!すごく珍しい!
フルネールもぶれねぇなぁ。
「そう。めんどくさくなりそう。と言うイメージで王族、貴族に知られたくないだけだ」
その言葉にリリアは今まで沈んでいた事を忘れてクスクスと笑いだした。
「何ですかそれ……。それじゃあ王族が嫌いという事じゃないんですね」
「嫌いじゃないけど……まぁ苦手意識はあるかな」
「そうですか……いえ、それなら今後はダイチさんの事については話さないようにしますね」
「ああ、気を遣わせて悪いな。あと、もう一つアーデルハイド王女からの話で依頼を一つ受ける事になったな」
大地は敢えて『力試し』という事を伏せて言う。もし、今の流れでその事に触れてしまえば『厄介ごと』を押し付けられたのではないかと心配するかもしれないからだ。
「え?依頼……ってどんな……」
「あー、ギルド経由で依頼は受けるだろうけど、その事って他の人に話してもいいもんなのか?」
その大地の疑問にリリアは「あっ!」と、気を付けていたことをついやってしまった。そんな顔で驚く。
「……よくありませんでした」
「まぁそのなんだ、簡単な護衛依頼だからさ」
「……ダイチさん」
リリアが真剣な表情で自分の名を呼ぶ。一体どうしたのかと様子をうかがっていると直ぐにリリアが口を開いた。
「私、ちょっと出掛けてきます!」
そう言ってグラネスを置いてギルドの外へ出ていってしまった。
「一体何なんだ?」
リリアがギルドから出ていくのを見届けてドアに振り向いた大地が呟いていると、今度はユーナさんがクスクスと笑いながら近づいてきた。
「たぶん、アーデルハイド王女様のところに向かったのだと思いますよ?」
「あの王女様のところにか?何で?」
まったく意味がわからない大地へユーナは「何ででしょうね?」といたずらっぽい笑みを浮かべて言うのだった。
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