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不思議なアイテム。呪いの道具もその一つ
酔い醒ましには美味しいお水で
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簡単な休憩のあと大地は仮面に聞いてみた。
「なぁじーさん。何でここは地下なのに天井があんなに明るいんだ?」
「それはのう、天井には不死鳥石という石が埋め込まれているからじゃ」
不死鳥石?
「そう、あの一つ一つ光っているのがそうじゃ」
天井の明かりはその石によるものか。松明要らずなのはたすかるな。余計な出費はできるだけ避けたい。
「しかし、ものの見事に壊されてんな」
「そうじゃのう。何年ぶりかすらも……定かじゃないわい」
話から聞くに聖女一世代は交代しているのだから100年以上は前なのだろうか。
大地はふとフルネールに聞こうかとも考えた。だが……フルネールが聖女を思い出しているときの顔は切ないようで聞くきにはなれなかった。
「ワシは……この仮面に入って生き長らえた意味は有るのかのう」
町並みを見ながら言うじーさんの言葉は沈んでいて、何処か重みがあり、大地もリリアもグラネスもなにも言えなかった。自分達はそれに返せるほどの歴史を踏んでいないのだから。
「あります」
ただ一人……いや一神だけは凛とした立ち振舞いの中、はっきりと言い切った。
「彼女が守りきらなければ世界は酷くなっていたでしょう。あの人は自分を省みず世界を救っています。貴方を救うついでに……」
「そうか……ワシは……やっぱり……救われていたんじゃな……」
その声はどうしてか震えて聞こえた。ジーさんは仮面になった後、かなりの時間を迷っているのだろうか。
それは俺らが想像できないほどの長い時間。宛もなくさ迷うしかない。戻れず死ぬすべもない。それはそのうち自分の意義について考えてもしかたがないんじゃないか?そして、この姿にした王妃を憎むこともあったのかもしれない。愛していたはずだろうに。だとしたら呪いの仮面で呪われてるのは仮面に入ったジーさんの方じゃないか……。
よく狂わなか……いや、狂ったからセクハラしたのか?
「もっと確りしなさい!貴方はクレア・ミル・バルニアを愛していたのでしょう!!」
その声にはっと気づかされた。仮面のジーさんは表面上変わらないけど雰囲気がキリッとしているようにも感じられる。
「そうじゃな。何をもうろくしてたんじゃろな」
少し高く浮き上がった仮面はくるりと回転すると大地達を見渡す。
「すまんかった。ここまでこれたから十分……と言いたいのじゃが、もうひとつ頼んでもいいかのう?」
「何を頼みたいんだ?」
「…………」
しかし、大地が聞いた直後に黙りコクってしまった。
「じーさん?」
「お主ハンターじゃろ?先に報酬の話とか聞かんでいいのか?」
「ん?あー、まぁ俺は付き添いみたいなもんだしな」
ここに来る前に国の秘宝があるとか何とか言ってた気がするがこの有り様では期待できないし、元々そこまで期待せずに来たのだ。
「それにこんな有り様だ。期待してねぇから頼み事を早くいいな」
仮面は再びくるりと回転する。その先には大きな城だ。
「変わったやつじゃ。ワシをクレアと会わせてくれんか?恐らくアイツのことじゃ。ワシらのベッドで亡くなってるはずじゃ」
大地は全員の顔を見ると頷いて合意していることを確認した。
って、あれ?俺がリーダーみたいになってるぞこの流れ。
「わかった。そこまでいこう……ただ、お客さんもいるみたいだ」
いつのまにかにリビングデッドとスケルトンのモンスターに囲まれていた。
ファンタジーお馴染みのモンスターだ。一つは人の歩く死体。もう一つは歩く人骨。
「こいつらここの民ってことはねえよな?」
「人はモンスターになり得ませんからおきになさらず倒してください!」
フルネールの問題ないお墨付きを貰えたことだし、いっちょ派手に燃やすか!
そうして大地が召喚したのは火炎放射機だ。後ろのボンベから燃料を送り発射口で炎を吐き出す。
「ゾンビつったら火が弱点だろ」
四方八方から攻めてくるモンスターへ火を放つ。確かによく燃えているのだが如何せんすぐに倒れるわけではない。
「うう、こんなときに戦えないのがもどかしいです」
「……そっかフルネールさんは戦えないんですね。グラネスさん!フルネールの援護をしてください」
「承知!」
普段は頭の中が酒まみれの男だが、戦闘ではやはり便りになる。その大きい大剣を一振りすると固まっていたモンスター軍を蹴散らしていく。(因みにヘリコプターでは内部の床において持ってきていたのだ)
「しかし、数が多いなどんどん出てきやがる……」
「そうですね。たぶんずっと閉鎖してたので溜まりに溜まってるんだと思います」
リリアも流石はAランクだ。よくわからん光魔法でビームみたいなのだして蹴散らしてる。
とはいえ、これではじり貧だ。
「リリア。俺以外を守る壁みたいのだせるか?半球体状だと望ましい」
「できますけど、ダイチさんはどうするんですか?」
「モンスターを殲滅するだけだ。危険だから俺の攻撃からみんなを守ってくれ」
敵からではなく味方の攻撃から身を守るために壁の魔法を要求されるとは思わなかった。だが、大地が言うのだから、拒みはしない。
「皆さんこちらへ!」
その掛け声のもとリリアの近くに大地以外が集まるとリリアはドーム状に光の壁を作る。
よし、流石はリリアだな。
「さて、火炎放射機じゃ殲滅力がたりなかったな」
そう言って火炎放射機を消すと次の兵器を召喚する。
ドームの端っこ四ヶ所に柱が立ち、その先に作られたのは火を吹く火炎放射機ではあるものの手動ではなく自動で動くタレットだ。発射口は十字に四ヶ所あり回転しながら先程の火炎放射機よりも高温の炎をだす事で全方位焼き尽くす事ができる。
適当に考えて出したけどゲームでありそうな機械になったな。
「さぁ、一気にいくぜ」
大地がタレットの頂上にたって仁王立ちすると、タレットは機械独特のウィーン、ガチャン、プシュー、ギュイーン。という音をならしながら火炎放射を吐き出しつつ回転を始めた。
炎の高温により敵は一瞬で炭化するほどで残滅力は問題ない。リリア達は魔法で熱も通ってないはずだ。完璧!
「あーはっはっはっはー!」
まるで大魔王の高笑いのように声をあげる大地だが、一つ誤算があった。それは回転の勢いが早かったのだ……。
「めがまわるううううううううぅ」
高火力でも倒しきるのに一分以上かかったのは敵が範囲に入ってくるまで時間がかかったからだ。
それでも全滅させることはできたのだが、大地は倒れてしまった。
「もう無理……気持ち悪い……」
「大地さん。あれならリリアちゃんの壁の中にいてもよかったのでは?」
フルネールが正論を投げてくる。フルネールが弱ってる俺に正論を投げてくる!!
あぁもう、ちゃんと口でいいなさい!もう……。
「まったく仕方がない人ですね」
そう言いながらフルネールはうつ伏せで倒れてる大地の頭を優しくなでる。それがなんとも言えない安心感を感じられらる。
「ダイチさん。大丈夫ですか?」
「あ、リリアちゃんも一緒に頭撫でますか?」
「え?……えーっと……」
フルネールが撫でているから自分が何か手伝うことはないだろうと思っていた矢先の提案で困惑する。嬉しさ3割恥ずかしさ7割といったところだ。
「リリアが困ってるだろ~。俺は大丈夫だから~」
とはいえまだ立てそうにない。回りすぎて本当に気持ち悪い。
「でも、ダイチさん辛そうですし……」
ほっとけば治るんだぞ。グラネスさん見たく今日の晩餐のことでも考えてりゃいいのに……。
「あー、わかった。じゃあ水をくれ」
「は、はい!ちょっと待っててください!」
んー?撫でてくれているフルネールの手が一瞬止まったぞ。……何か嫌な予感がする。こういうときの勘って当たるんだ。すごいだろ?
「リリアちゃん、ちょっとこちらへ来てお耳を貸してください」
ああ。悪魔のような悪魔が天使を貶めようとしているぅ。俺は無力だ。
「という感じで飲ませてあげれば喜びますよ!あと、拒否しても照れたるだけですから察してあげてくださいね」
あいかわらず見事な手腕で……俺の逃げ場を崩すなよー!
ふふふ。私に頭を撫でられてこれからリリアちゃんに水を飲ましてもらえて幸せ者ですね!
そりゃ不幸ではないけど……っていうかリリアを何でそこまで弄るんだ?
そうですねぇ。簡単に言いますと……。
いいますと?
好きと恋は別ってことを気づかせるためですかね。リリアちゃんが大地さんにしている事を好きの延長上だと認識してるんですよね。……好きなだけの人にそんなことまでしないとわかって貰いたいんです。
つまり……リリアの為と言う大義名分でリリアをオモチャにしてると?
オモチャだなんて人聞き……いえ、神聞きがわるいですね。大地さんはリリアちゃんに尽くされるのはいやですか?
いやと言うわけではないが……でも彼女は子供だ。こんなおっさんより、もっと若くていい男はいるだろ?そういう人とくっつくべきだろ。
無理です。……あ、いえ、リリアちゃんに好意をもつ人はいても踏み込む勇気が無い人ばかりなんですよ。そんな腑抜けどもにリリアちゃんは任せられません!それとも、大地さんは私狙い何ですか?キャー!私!美しいですもんね!可愛いですもんね!
……中身が伴ってれば惚れてたな……。
もう!そんなに誉められると照れちゃいますよ!
大地はうつ伏せによりその表情は見えないが、リリアはフルネールの優しい表情に少し見とれてしまった。
「あの、フルネールさん?」
「ああ、すみません。では手をこちらに」
まて、なにするつもりだ?
いいことですよ?
リリアが両手で器を作るようにすると、フルネールはその中に水を注いだ。そしてリリアはその手の中の水を大地へと差し出した。
「ダイチさん。飲んでください……」
恥ずかしさもあるだろうが、それ以上に大地のことが心配であるリリアは内心ドキドキさせながら大地の反応を待つ。
まて、え?これ?え?リリアの手の中の水を直接飲むの?
はい!私が提案しました!でも、頷いたのはリリアちゃんです!さぁ、あの小さくて可愛らしいおててに顔を突っ込んで飲んでください。
おま、これはリリアを騙してるだろ……。そこまでしてもらうほど重症じゃねえよ!!
「リリア。そこまでしなくて大丈夫だ。ちゃんと起きて飲むから……」
「ダイチさん。照れなくて大丈夫ですから飲んでください……それとも、嫌……ですか?」
ああああああああああ!!さっき逃げ場奪われてるの忘れてたああああ!!
ふふふ。さぁ飲むしかないですよ!!ゴーゴー!!
「……いや、頂くよ」
大地はリリアの手の中へその顔を沈めていく。唇で吸うように水を飲むのだが、どうしたって唇とリリアの手は触れてしまう。
その恥ずかしさからか大地の顔は真っ赤に燃える。
「ありがとう……」
結局2杯ほど飲ませてもらい真っ赤な顔を見上げるとリリアの顔は赤いわけでもなく、何処か安堵している様子だった。
「なぁじーさん。何でここは地下なのに天井があんなに明るいんだ?」
「それはのう、天井には不死鳥石という石が埋め込まれているからじゃ」
不死鳥石?
「そう、あの一つ一つ光っているのがそうじゃ」
天井の明かりはその石によるものか。松明要らずなのはたすかるな。余計な出費はできるだけ避けたい。
「しかし、ものの見事に壊されてんな」
「そうじゃのう。何年ぶりかすらも……定かじゃないわい」
話から聞くに聖女一世代は交代しているのだから100年以上は前なのだろうか。
大地はふとフルネールに聞こうかとも考えた。だが……フルネールが聖女を思い出しているときの顔は切ないようで聞くきにはなれなかった。
「ワシは……この仮面に入って生き長らえた意味は有るのかのう」
町並みを見ながら言うじーさんの言葉は沈んでいて、何処か重みがあり、大地もリリアもグラネスもなにも言えなかった。自分達はそれに返せるほどの歴史を踏んでいないのだから。
「あります」
ただ一人……いや一神だけは凛とした立ち振舞いの中、はっきりと言い切った。
「彼女が守りきらなければ世界は酷くなっていたでしょう。あの人は自分を省みず世界を救っています。貴方を救うついでに……」
「そうか……ワシは……やっぱり……救われていたんじゃな……」
その声はどうしてか震えて聞こえた。ジーさんは仮面になった後、かなりの時間を迷っているのだろうか。
それは俺らが想像できないほどの長い時間。宛もなくさ迷うしかない。戻れず死ぬすべもない。それはそのうち自分の意義について考えてもしかたがないんじゃないか?そして、この姿にした王妃を憎むこともあったのかもしれない。愛していたはずだろうに。だとしたら呪いの仮面で呪われてるのは仮面に入ったジーさんの方じゃないか……。
よく狂わなか……いや、狂ったからセクハラしたのか?
「もっと確りしなさい!貴方はクレア・ミル・バルニアを愛していたのでしょう!!」
その声にはっと気づかされた。仮面のジーさんは表面上変わらないけど雰囲気がキリッとしているようにも感じられる。
「そうじゃな。何をもうろくしてたんじゃろな」
少し高く浮き上がった仮面はくるりと回転すると大地達を見渡す。
「すまんかった。ここまでこれたから十分……と言いたいのじゃが、もうひとつ頼んでもいいかのう?」
「何を頼みたいんだ?」
「…………」
しかし、大地が聞いた直後に黙りコクってしまった。
「じーさん?」
「お主ハンターじゃろ?先に報酬の話とか聞かんでいいのか?」
「ん?あー、まぁ俺は付き添いみたいなもんだしな」
ここに来る前に国の秘宝があるとか何とか言ってた気がするがこの有り様では期待できないし、元々そこまで期待せずに来たのだ。
「それにこんな有り様だ。期待してねぇから頼み事を早くいいな」
仮面は再びくるりと回転する。その先には大きな城だ。
「変わったやつじゃ。ワシをクレアと会わせてくれんか?恐らくアイツのことじゃ。ワシらのベッドで亡くなってるはずじゃ」
大地は全員の顔を見ると頷いて合意していることを確認した。
って、あれ?俺がリーダーみたいになってるぞこの流れ。
「わかった。そこまでいこう……ただ、お客さんもいるみたいだ」
いつのまにかにリビングデッドとスケルトンのモンスターに囲まれていた。
ファンタジーお馴染みのモンスターだ。一つは人の歩く死体。もう一つは歩く人骨。
「こいつらここの民ってことはねえよな?」
「人はモンスターになり得ませんからおきになさらず倒してください!」
フルネールの問題ないお墨付きを貰えたことだし、いっちょ派手に燃やすか!
そうして大地が召喚したのは火炎放射機だ。後ろのボンベから燃料を送り発射口で炎を吐き出す。
「ゾンビつったら火が弱点だろ」
四方八方から攻めてくるモンスターへ火を放つ。確かによく燃えているのだが如何せんすぐに倒れるわけではない。
「うう、こんなときに戦えないのがもどかしいです」
「……そっかフルネールさんは戦えないんですね。グラネスさん!フルネールの援護をしてください」
「承知!」
普段は頭の中が酒まみれの男だが、戦闘ではやはり便りになる。その大きい大剣を一振りすると固まっていたモンスター軍を蹴散らしていく。(因みにヘリコプターでは内部の床において持ってきていたのだ)
「しかし、数が多いなどんどん出てきやがる……」
「そうですね。たぶんずっと閉鎖してたので溜まりに溜まってるんだと思います」
リリアも流石はAランクだ。よくわからん光魔法でビームみたいなのだして蹴散らしてる。
とはいえ、これではじり貧だ。
「リリア。俺以外を守る壁みたいのだせるか?半球体状だと望ましい」
「できますけど、ダイチさんはどうするんですか?」
「モンスターを殲滅するだけだ。危険だから俺の攻撃からみんなを守ってくれ」
敵からではなく味方の攻撃から身を守るために壁の魔法を要求されるとは思わなかった。だが、大地が言うのだから、拒みはしない。
「皆さんこちらへ!」
その掛け声のもとリリアの近くに大地以外が集まるとリリアはドーム状に光の壁を作る。
よし、流石はリリアだな。
「さて、火炎放射機じゃ殲滅力がたりなかったな」
そう言って火炎放射機を消すと次の兵器を召喚する。
ドームの端っこ四ヶ所に柱が立ち、その先に作られたのは火を吹く火炎放射機ではあるものの手動ではなく自動で動くタレットだ。発射口は十字に四ヶ所あり回転しながら先程の火炎放射機よりも高温の炎をだす事で全方位焼き尽くす事ができる。
適当に考えて出したけどゲームでありそうな機械になったな。
「さぁ、一気にいくぜ」
大地がタレットの頂上にたって仁王立ちすると、タレットは機械独特のウィーン、ガチャン、プシュー、ギュイーン。という音をならしながら火炎放射を吐き出しつつ回転を始めた。
炎の高温により敵は一瞬で炭化するほどで残滅力は問題ない。リリア達は魔法で熱も通ってないはずだ。完璧!
「あーはっはっはっはー!」
まるで大魔王の高笑いのように声をあげる大地だが、一つ誤算があった。それは回転の勢いが早かったのだ……。
「めがまわるううううううううぅ」
高火力でも倒しきるのに一分以上かかったのは敵が範囲に入ってくるまで時間がかかったからだ。
それでも全滅させることはできたのだが、大地は倒れてしまった。
「もう無理……気持ち悪い……」
「大地さん。あれならリリアちゃんの壁の中にいてもよかったのでは?」
フルネールが正論を投げてくる。フルネールが弱ってる俺に正論を投げてくる!!
あぁもう、ちゃんと口でいいなさい!もう……。
「まったく仕方がない人ですね」
そう言いながらフルネールはうつ伏せで倒れてる大地の頭を優しくなでる。それがなんとも言えない安心感を感じられらる。
「ダイチさん。大丈夫ですか?」
「あ、リリアちゃんも一緒に頭撫でますか?」
「え?……えーっと……」
フルネールが撫でているから自分が何か手伝うことはないだろうと思っていた矢先の提案で困惑する。嬉しさ3割恥ずかしさ7割といったところだ。
「リリアが困ってるだろ~。俺は大丈夫だから~」
とはいえまだ立てそうにない。回りすぎて本当に気持ち悪い。
「でも、ダイチさん辛そうですし……」
ほっとけば治るんだぞ。グラネスさん見たく今日の晩餐のことでも考えてりゃいいのに……。
「あー、わかった。じゃあ水をくれ」
「は、はい!ちょっと待っててください!」
んー?撫でてくれているフルネールの手が一瞬止まったぞ。……何か嫌な予感がする。こういうときの勘って当たるんだ。すごいだろ?
「リリアちゃん、ちょっとこちらへ来てお耳を貸してください」
ああ。悪魔のような悪魔が天使を貶めようとしているぅ。俺は無力だ。
「という感じで飲ませてあげれば喜びますよ!あと、拒否しても照れたるだけですから察してあげてくださいね」
あいかわらず見事な手腕で……俺の逃げ場を崩すなよー!
ふふふ。私に頭を撫でられてこれからリリアちゃんに水を飲ましてもらえて幸せ者ですね!
そりゃ不幸ではないけど……っていうかリリアを何でそこまで弄るんだ?
そうですねぇ。簡単に言いますと……。
いいますと?
好きと恋は別ってことを気づかせるためですかね。リリアちゃんが大地さんにしている事を好きの延長上だと認識してるんですよね。……好きなだけの人にそんなことまでしないとわかって貰いたいんです。
つまり……リリアの為と言う大義名分でリリアをオモチャにしてると?
オモチャだなんて人聞き……いえ、神聞きがわるいですね。大地さんはリリアちゃんに尽くされるのはいやですか?
いやと言うわけではないが……でも彼女は子供だ。こんなおっさんより、もっと若くていい男はいるだろ?そういう人とくっつくべきだろ。
無理です。……あ、いえ、リリアちゃんに好意をもつ人はいても踏み込む勇気が無い人ばかりなんですよ。そんな腑抜けどもにリリアちゃんは任せられません!それとも、大地さんは私狙い何ですか?キャー!私!美しいですもんね!可愛いですもんね!
……中身が伴ってれば惚れてたな……。
もう!そんなに誉められると照れちゃいますよ!
大地はうつ伏せによりその表情は見えないが、リリアはフルネールの優しい表情に少し見とれてしまった。
「あの、フルネールさん?」
「ああ、すみません。では手をこちらに」
まて、なにするつもりだ?
いいことですよ?
リリアが両手で器を作るようにすると、フルネールはその中に水を注いだ。そしてリリアはその手の中の水を大地へと差し出した。
「ダイチさん。飲んでください……」
恥ずかしさもあるだろうが、それ以上に大地のことが心配であるリリアは内心ドキドキさせながら大地の反応を待つ。
まて、え?これ?え?リリアの手の中の水を直接飲むの?
はい!私が提案しました!でも、頷いたのはリリアちゃんです!さぁ、あの小さくて可愛らしいおててに顔を突っ込んで飲んでください。
おま、これはリリアを騙してるだろ……。そこまでしてもらうほど重症じゃねえよ!!
「リリア。そこまでしなくて大丈夫だ。ちゃんと起きて飲むから……」
「ダイチさん。照れなくて大丈夫ですから飲んでください……それとも、嫌……ですか?」
ああああああああああ!!さっき逃げ場奪われてるの忘れてたああああ!!
ふふふ。さぁ飲むしかないですよ!!ゴーゴー!!
「……いや、頂くよ」
大地はリリアの手の中へその顔を沈めていく。唇で吸うように水を飲むのだが、どうしたって唇とリリアの手は触れてしまう。
その恥ずかしさからか大地の顔は真っ赤に燃える。
「ありがとう……」
結局2杯ほど飲ませてもらい真っ赤な顔を見上げるとリリアの顔は赤いわけでもなく、何処か安堵している様子だった。
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