初めての異世界転生

藤井 サトル

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不思議なアイテム。呪いの道具もその一つ

過去から変化して今がある

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 前回のあらすじ。
 ヘリコプターに乗り込んだあと、仲間の潜在能力が異様に高かった事を思い知らされた。

「もう、その時の事は忘れてください!」

 ふくれ面顔をするリリアをからかっているのはフルネールだ。

「ふふふ、どうしましょう」

 そのフルネールは対照的に凄く楽しそうな笑顔をしている。

「もう……フルネールさんのいじわる……」

 キャー!リリアちゃんのいじけ面頂きましたよーー!!良いですね!可愛いですよね!!そう思いませんか?大地さん!!

 いや、お前ちょっとは落ち着けよ。そんなことばかりしてるとリリアに嫌われるぞ?

 それはそれで、反抗期の娘に手を焼く母の感じを味わえる鉄板ですね?わかります……キリッ!

 キリって言葉にするもんじゃないだろ……、まぁちゃんとフォローしておけよ?

 はーい。何だかんだ大地さんは面倒見良いですね~。

 ふ、バイトの経験だな。回りと仲良くしないと理不尽な目にあうし……。逆に仲良くしておくと良いことあるんだよ。その習性ってやつだ。

 はぁー、大変だったんですね。

「どうだリリア?外眺める楽しいか?」

「はい!とっても楽しいです!」

「それはよかった。ただもうすぐ砂漠につくから……爺さん、どこに降りれば良いんだ?」

「うぅ、やっとワシに話を振ってもらえたのじゃ……」

 いや、悪かったよ。全然話しなくて、空気にしてごめんな。

「オアシスってあるじゃろ?あそこが入り口になっとるのじゃ」

 オアシス?幻覚で見たことあるぐらいか?

「あ、大地さん私なら場所わかります」

 今の自分達が見えるのはヘリコプターの真横から除ける窓くらいだ。砂漠までは大体の位置で飛ばした来たから問題ないが、方向までしっかり見ないといけないなら操縦席にいかなければならない。

 ――だが問題は操縦席は一つしかないのだ。

 俺は必然的に操縦しないけど操縦席の視界を見る必要があるから座るしかないが、リリアは口頭で説明できるだろうか?

「それは、その難しいです」

 聞いてみたところやはりダメと。とはいえほぼ同じ景色しかないから当たり前と言えばそうな訳で、それでも真正面見えれば案内できるのが凄いのだが……。

 ――最終的には……。

「な、なぁリリア。嫌ならやめてもいいんだ。はっきり言ってもいいんだぞ」

「いいい、いえ、リリアは大丈夫ですから」

 一人称がリリアになってるぞ……。

 ということで、現在操縦席に大地、その膝の上にリリア。シートベルトは一人分しか伸びないため大地に巻き付け、大地の腕をリリアの体にがっしりと巻き付けている。

 以前にも抱き締めてもらっているリリアとて、後ろから抱きつかれるのが初めてであり、大地の逞しい腕によった締め付けられる体は火照りを感じてしまう。

 理性をなんとか保ちながら赤面が治らないリリアの案内によりなんとか無事にオアシスへとたどり着いた。


 最後まで理性を保っていた自分を誉めてやりたい……と、ここまで思ったことは大地の中で初めてだった。下手したらリリアから軽蔑もされていたかもしれないのだから。

 大地さん大地さん。

 ……変なこと言うなよ?それでなんだ?

 リリアちゃんといけないことしてませんよね?

 してねぇよ!!

 そうですよね!時間足りませんもんね!いやぁ、いつ興奮した大地さんがリリアちゃんを襲うかと思うと心配だったんですよ?これで牢屋行きかなって。でも、興奮しなかったんですか?

 ……そ、そりゃあ興奮くらいするわ!あんな状況だぞ!?

 ふふふ、それがリリアちゃんにばれたらゴヨウダーですね。

 楽しそうに言うなよ。

「んで、爺さん。ここからどうやっていくんだ?」

「うむ、湖の堀の内側に出っぱりがあるんじゃ。それを押してみい」

 その言葉を頼りに皆はバラバラにオアシスの湖、その岸の回りを歩いていく。

「みなさーん、こちらにそれらしいのが見つかりました!」

 その声をかけたのはリリアだ。
 皆は少し小走りで彼女の側へとあつまる。

「これじゃないでしょうか?」

「おお、そうじゃそうじゃ。それを押せば道が開くはずじゃよ」

 さっそく押そうとしてリリアが屈もうとしたのを大地は止めた。

「いい、俺がやるから下がっとけ」

「でも……」

「はい。リリアちゃんはこっちです」

 いきなりリリアの手を掴んだフルネールがその体を自分の体へと引っ張った。急なことで拒むができなかったリリアはしゃがんだフルネールの大きな山へと顔を一度埋めてしまうがすぐに出る。

「リリアちゃんが押そうとしたら髪の毛濡れちゃいますでしょう?女の子なんですから気にしてください」

「……はい」

 そしてリリアは今まさに屈んで水との境界くらいにある石の出っ張りを押そうとしている大地へと目を向ける。

 もしかしたら大地さんはその事を気にして代わってくれたのかな……と思いながら背中を見つめる。

 そして、そのリリアを愛しそうに見守りながらフルネールは頭を撫でる。

 ――ガコッと音がなった。

「グランドバルニアの道が開くぞい!!」

 仮面が久しぶりの故郷に戻れる興奮で騒いだように言う。
 地響きか鳴り響く。それに驚いたリリアはフルネールに抱きつくが、フルネールはというと地響きに怖がるリリアをギューっと抱き締めながら思う。

 怖がるリリアちゃん可愛いですよーーー!!!震えちゃってまぁ。

 フルネールは怖くないのか?俺は慣れてるけど、女神なんてこういう経験ないだろ?

 ないですよ。だから楽しいんですけどね。あと役得です!!

 そうか。

 湖の押したブロックの近くの地面が下がっていき地下階段のようになっていった。

 なんだこのギミック。バ○オか?もしくはダ○ソか?よくこんなもの作ったものだ。

「さぁワシの国へ招待じゃ」

 仮面が先行して降りていく。その後に続いて大地、リリア、フルネール、グラネスと順に降りていく。

 少しずつ中が暗くなっていきリリアが松明を用意し始めると仮面がそれはいらんと言った。

「もうすぐ明るくなるから問題ないのじゃ」

 その言葉通り真っ暗になるかと思われた階段には徐々に光が差し込まれてきた。そして、長かった階段が終わるととてつもなく広い空間へ出た。ここから既にグランドバルニアとなるようだ。

「昔は活気があったんじゃが……寂しいものだのう」

 天井からは転々と強い光を放つなにかがあるようで、地下だと言うのに奥まで見渡せる明るさがあった。ただ、人気は全くない。

「もう、滅びましたからね」

 淡々と言うフルネールはやはりこの仮面をよく思ってないようだ。

 なぁ、フルネールはこの仮面のジーさん嫌いなのか?

 もちろん、嫌いです!出来ればすぐにでも砕いてやりたいです。

 何でそんなに激おこなんだ?リリアがらみか?

 それもありますけど、この変態かめ『ストーーーーップ!!!』

 その名は危ない。別の呼び方で頼む。

 では、『変態さん』にしますけどこの人の生き方が嫌いなんです。

 生き方か。その辺詳しく教えてくれるか?

 わかりました。とはいえどこから話しましょうか……そうですね、大地さんはあの『環魂の仮面』は何でここにあると思いますか?

 何で……か。うーん、外で作られたか持ち出されたかのどちらかか?

 残念ですが外れですね。あれはグランドバルニア内部で作られて外に捨てられたんですよ。グランドバルニアの王妃の手によって。

 んん?何で王妃が?

 グランドバルニアが滅ぶ一週間ですが、王妃は既にその3日目には近い内に王の首が飛ぶことを予想してました。

 んー、この世界の女性陣強くね?そんなことまで予想できるのか。



 そこで王妃は王に提案した。「このままでは貴方は殺されてしまいます。ごめんなさい、私の力じゃ避けられない未来です。ですから……貴方の魂だけでも救いたい」そう言って作った仮面を王に渡した。

 王は最初断った。「死ぬなら君と共にがいい」と。だが、それではダメなのだ。今侵略してるやつらに王の魂が悪用されることになるから。王の力――物の流れを読み取る力。だから死後にはこの中へ。そう言って環魂の仮面を渡した。

 そして、ついには反逆と侵略が同時に行われ王は処刑された。王妃は悲しみと絶望の中、狂気に染まる演技をギリギリの精神で行いつつ、仮面を外に捨てさり……そして、反逆者も侵略者もこの国の民も全員が外に出られないように入り口を封鎖した。誰にも内側から開けられないように。



 王の魂はそのまま仮面に移ったんだろ?

 ええ、ただ、彼が目覚めたのは更に年月が経った頃ですが。最初のうちはもっと四苦八苦をして戻ろうとしてたんですけどね。

 んー?なんかいい話っぽいけどここから何かあるのか?

 はい。結局国へ戻れないほど遠くに捨てられた王――あの変態は戻る事を諦めて女の子にセクハラ三昧です。王妃がどのように思ってやったのか考えてもないんですよ!リリアちゃんの前の聖女にも酷いセクハラしてましたし。

 えー、長い年月で目的を忘れたとかじゃなく、諦めてセクハラ?えええ。

 セクハラの内容なんて、女性のトイレやお風呂を覗いたり……。

 うわ……。

 仮面の自由に動ける特性を生かしてスカートの中に入ったり。

 うわぁ。

 いきなり座っている女の子の膝上に落ちて小刻みに震えるんですよ?
 私は王妃のことも見てましたから……はっきり言ってあの仮面を視界にすらいれたくありません。最後には聖女に封印してもらい、あの箱の状態になったんだと思いますけど。……封印したとしか聞いてないんですよね。

 ……まぁ事情はわかった。

「んで、爺さんはここに戻ってきて何をするつもりなんだ?」

 ボロボロの町並み。かつて石で作り上げられていただろう建物は朽ち果てて家の意味を成していないものしか見当たらない。

「……そうじゃのう。ちょっと見回ってもいいかの?」

 そういいながら町並みを懐かしむように回っていく仮面。その後をゆっくり追いかける俺たち。

 ただの廃墟なら感慨深い様子を見るだけでよかったのだがそこかしこに骸骨が落ちているのだ。フルネールの話を聞く限りは閉じ込めたというのだから、最後は全員餓死したのだろう。

 リリアは骸を見つけては祈るという行動を繰り返している。たぶん、彼女の性格がそうさせているのかもしれない。

「人はいつか死んじゃうのはわかるんですけど、やっぱりこういう姿の人を見ると寂しくなりますね」

 祈り終わったリリアが大地へ視線を送った。その瞳には確かに揺れ動いていて動揺している事が見てとれる。
 そんなリリアに俺はなにも言うことが出来なかった。何を言っても偽善にしか聞こえないだろうから。

 ある程度進むと大きい広場みたいな場所に出てきた。この辺りには骸は無く、噴水が広場の中央にあるくらいだ。

「こんな地下に噴水だなんてよく作れたな」

「水の流れもわかるからの。堀り方や作り方さえ気を付ければ簡単なものよ」

 普通なら水源探しが必要になるはずだがそれも要らないらしい。確かにその能力なら喉から手が出るほど欲しがる人も出てくるだろう。

「フルネールさん。ここで休憩にしませんか?」

「そうしましょうか」

 しかし、こう滅びた国の探検というか冒険ってのはワクワクするな。

「ダイチさん。お茶をどうぞ」

 地面に座り回りを見渡している大地にリリアがお茶を手渡してくれる。

「ありがとう」

 そう言って受け取った熱い紅茶を口に含む。

「ダイチさん。あの……」

 そんな紅茶をのみ始めた大地の顔をじーっと見つめるリリアが突如口を開いた。

「ん?どうした?」

「その、嫌じゃなければ……ダイチさんのお話聞きたいなって……」

 俺の話し?……語れるようなものねぇぞ?小中高行ってあとはバイト生活だしな。ここで話してもちっともわからないだろう。

 もー、だから大地さんはモテないんですよ!!

 ぐはぁっ。俺の脳内にダイレクトアタックするの勘弁してくれ……。一応昔は恋人もいたんだぞ……。

 どうせ一人だけでしょう。

 ぐはぁっ。

 いいですか?リリアちゃんは何でもいいから貴女の話が聞きたいんです。貴方の事が知りたいのはもちろんですが、貴方の昔話を聞いて貴方と距離を縮めたいんですよ?……まぁ、たぶんリリアちゃんはどうして貴方が気になるかまではわかってないでしょうけど。あ!と!リリアちゃんに元カノの話しだしたらその鼻へし折りますからね?

 わ……わかった。おーこわ……。

「俺の話しか……それじゃあ昔の俺はやんちゃだったアピールも込めて昔話だな」

「はい!」

 噴水の縁に行儀よく隣に腰かけたリリアが元気よく返事をする。

「俺が……そうだなリリアくらいの歳か。俺の世界では子供として扱うんだが、よく暴れたものだ」

「あばれる?」

「そう。腕っぷしも悪くなかったからな、いちゃもんつけてきたやつを殴ったり、わざと体をぶつけてきたやつを蹴り飛ばしたりな。そのたびに…こちらで言う兵士?を呼ばれるんだ」

「でもでも、ダイチさんは仕返ししただけですよね?」

「そうなんだが、頻繁に俺の名がでるからな。どんな時でも俺が悪くなるんだ。それが普段の行いってやつだな。それに俺もむしゃくしゃした時に俺からも手を出したてたしな」

 リリアが少し納得出来なさそうな顔をしているのを見て大地は落ち着かせるように頭をポンポンとのせる。

「俺自身はさして困っていなかった……というよりどうでもよかったんだ。誰にどんな目で見られても。それがいつもの日常だからな」

「そんなの寂しい過ぎますよ……」

「そうだな。きっと寂しかったんだと思う。ただ、あの時は自分が変わらないと回りも変えてくれないことに気づかなかったんだ」

 あー、やばい、女神様ヘルプミー助けて。

 何ですかいいお話し中に?

 実はこの話し元カノに結び付く……どうしよう。

 だ!い!ち!さ!ん!釘指してもダメなんですか?

 いや、話し始めはそうなると思ってなくて、このまはまじゃ行き着くなって……。このあと元カノにあって性格変えたって流れなんだけどどうしよう。

 ……因みに大地さんは元カノさんに未練は?

 ない!四股されて盛大に別れた。

 そうですか、じゃあ私が言うように変えてみてください。

「そんなある日にな子猫を拾ったんだ」

「猫ちゃんですか?」

「そうだ。弱っていてな。何時もなら見て見ぬふりしていただろうけど、その時だけは助けたいと思ってな。ただ、どうしたらいいかわからなかったんだ」

「はい……」

「手のなかでは確実に弱っていく子猫。知り合いに連絡してもただの戯れ言だと思われて相手にされなかった」

「そんな……それじゃあ猫ちゃんは?」

「道行く優しいお爺さんに助けてもらったよ。動物の病院ってのがあってなそこに連れてってもらいお金まで出してもらった。そこで今までの自分の生き方じゃ誰も助けられないことを知ったんだ。とまあ、俺の話しはこんなところかな」

 話し終わるとリリアは猫が助かったことに喜んでいるが、あの辺からフルネールの提案通りの作り話なんだよな。

 リリアちゃんが喜ぶのだからいいのですよ!

 そういうもんか。等と紅茶を再び口にいれながらリリアの様子を眺めるのであった。
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