初めての異世界転生

藤井 サトル

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女神と同居は嬉しい?嬉しくない?

女神です!やっとお話が出来るんです!

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 山の中の空洞。その中へと落ちた大地は死ぬことはないものの、上から照らされる光以外に回りを照らすものはなく佇むしかなかった。

「結構高いな」

 穴がちいさく見えるほど高い場所に空が見えるため、大地の跳躍でも届きそうにはない。もちろん魔法を使えばそとに出ることは用意だがその場合は振動で更なる落石が予想される。

「あのモンスターの魔法で崩れたくらいだからな……」

 山のてっぺんが崩れるのに巻き込まれて卵まで落ちてしまったら悲惨な結果だ。しかし、回りは暗くて上から照らされている光以外は全く見えない。一寸先は闇……諺ではなく文字通りだ。

 だからと言うわけではないが、大地はチート能力に頼ることにした。

「頼む……フルネール・ラ・ミーミル。俺を助けてくれ」

 大地の回りがパァッと数秒ほど眩しく光った。その直後に声が聞こえてきた。聞き覚え――。

『おっそーーーっいですぅ!!!』

 頭の中で怪音波だ!!大地の脳は破壊されてしまった……完。

『そこまで大声だしてないはずですよ!!』

 女神の声が聞こえてくる。

「とりあえず契約完了ってことでいいんだよな?」

『はい。問題ありませんわ』

「それじゃあとりあえず状況を説明するか」

『いえいえ。見ていたのでわかっていますよ』

「見ていた?って言うか見えるのか?」

『もちろんです。大地さんがバカっぽく『現れろーー!』って言ったのもちゃーんと見てますよ』

「やめろー!それは俺に効く!!」

 大地の頭の中で『うふふ』と笑い声が聞こえる。もし、その笑い声だけ切り取って聞けば優しく微笑んでくれていると思えるだろうが、今は悪魔が微笑んでいるとしか思えない。女神だけど。

 悪魔女神からの攻撃で悶え苦しむところだがなんとか耐えた大地は精神を安定させて持ち直す。

『ちょっと!ルビが逆じゃないかしら!?』

「悪魔は否定しないのか……んで、見えてるんだっけか」

『まったく大地さんは!因みに見えかたはゲームの3Dです。大地さんの斜め上後ろから見下ろす感じで、そこを起点にした視点なら自由に動かせますわ』

「思った以上にゲーム感覚だしTPS視点かよ」

 ※TPS=サードパーソンシューティングゲームの略称
  この視点は動かすキャラクターの後ろからゲーム画面を映しているもの。

『なかなか面白いですわよ?特に……あらわ――』

「止めろ!」

『むー、わかりましたわ。それでようやく契約してくださいました大地さんはどう助けてほしいんでしょう?』

「確かに女神との契約で光れるんだよな?」

『ええ。光れますし暖かいですし呪い消せますし威厳出ますし……あと一発芸になりますよ?』

 いいのかそれで。後光と言う名がなくんじゃないか?でも、今は光出せればそれでいいか。

「……それで、どうやってだすんだ?」

 一番重要な事を聞き忘れてたとは……。

『ただ念じればいいだけですよ?ひかれ~!って感じですね』

「それだけでいいのか?楽なもんだな」

 ひかれ~ひかれ~。

 大地がそう念じ始めると女神がプークスクス。と笑いだした。

「なに笑ってんだよ!」

 笑われたことで恥ずかしくなってしまい顔を赤くしながら女神に抗議する。

『いえ。ただ……滑稽だな。と。他意はございません』

「他意ねぇのかよ!完全に笑い者にしやがって。もう知らん!!」

『そんな…………ごめんなさい……やっとお話、ができたから……ヒック……少しだけ、いじわ……るしただけ……ヒック……なんです。怒ら、ないで……』

 先程の空気が一変した。すすり泣きながら、声は震えていて、しゃくりあげる。目の前で女性に泣かれるのも勘弁だが、脳内で泣かれるのもかなりきついものがある。

 え?え!?ちょ、ちょま!

「な、泣かないでくれ。わかったから。許すから」

『わーい!許されました!!流石大地さんですね!!』

 同様を隠せずに大地が慌てながら宥めようとしたら、今度は無邪気な感じで元気に喜び始めた。

「嘘泣きかよっ!!ふざけんな!!」

 ケロリとした態度で話す女神にようやく大地はからかわれていたのだと気づく。

 まじ、リリアより子供なんじゃねぇかな。

『んー、そろそろ満足したのでちゃんとサポート致しますね』

 今までのが無かったように振る舞う女神の声は後半だけ凛としていた。

 ……マジ勘弁してくれ。どっと疲れてくる…………。ずっと本?契約しなかったことを怒ってるんかな。つっても名前教えてくれなかったのコイツだしな。

 肉体の疲労はまったくないが、女神にオモチャにされた大地は正直もう帰りたいと思わざるを得ない。それでも聞かねば前へ進むことができないのだ。

「それで光る方法なんだけど……」

『そうですね、力む感じですね。なんか、指を曲げるとか腕を動かすとか。それに似た感覚なんですよ。わかりませんか?』

 すごい雑に聞こえるないようだが、それしか例えようがないのだ。人間が足の動かしかたについて、どうやって力を込めているかを説明出来ないように感覚的なものだ。

「えー?んー?あー?」

 女神に言われて体内の感覚を試行錯誤しながら探っていくと、なんか動かせる……と言うか、こうすれば放出できるツボ見たいのを感じた。

「こうか!!」

 大地がそう言いながらその感覚を掴むと体が光始めた。洞窟の奥まで……とはいえないが、それでも三寸くらいの先までは見える。これで一寸先は光だ。

「これはすごいな。そして、なんか暖かい」

『そうなんです!暖かいんですよ。因みに大地さんを燃料にして暖がとれますよ!』

 大地の言葉に女神は機嫌良く相づちを入れる。

「その機能いるか?それに暑い場所だと焼け死にそうだな」

『そうなんですよー!ほら、大地さんが行った砂漠で使うと物凄いですよ?汗とかぁ……熱とかぁ……』

「そのねっとり言うのも止めろ」

 少し……(いやほんと少しだよ?少しだけと言うことにしてください。)扇情的に考えてしまった。

『もう、いけず。ですねぇ。もう少し乗ってきてくれてもよくないですか?』

「からかうの止めるんじゃないのかよ……」

『カラカッテナイデスヨー。でも、後光談義なんて初めてなんです。楽しいですね!!』

 楽しそうで何よりだよ……ほんと。

「何にせよこの明かりで洞窟は進めそうだ。ありがとうよ」

『いえいえ、でも、せっかくなんでお話ししていきましょうよー?』

「女神様が楽しく思えるかわからないが構わないぞ」

『やったー!』

 こうして、一人と脳内女神は洞窟の中を歩み始めるのだった。
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