初めての異世界転生

藤井 サトル

文字の大きさ
上 下
15 / 281
女神と同居は嬉しい?嬉しくない?

嘘をつくときは慎重に

しおりを挟む
「それで、ダイチさんはどうして嘘をついたんですか!?」

 開始早々に怒っているのはリリアだ。

 少しだけ時を戻すと、まず女神の呪縛から放たれた大地は朝日に向かって「今日こそ良いことありますように」そう呟く。

 その後、滝に飛び込んだあと、『ウォーラビット』を仕留めつつ山菜を取り適当に朝飯をすませた。ここまでは既に手慣れたこともあり楽なもんだ。

 人心地つけるとギルドに向かう。前日呼ばれていたんだが、リリアに思いっきりひっぱたかれてしまいほほが真っ赤な状態で尋ねたら盛大に笑われてしまい、話どころではなくまた後日という形になったのだ。

 ギルドに入りユーナさんに軽く挨拶をしたあと奥の部屋に通される。扉の看板には『俺の部屋』とだけ書かれていた。私物化していいのかよ。と内心思いながらノックを3回すると呼ばれたのでギルド長室へ入る。

 目の前にはギルド長のほかにリリアとグラネスがいる。
 部屋の構図は扉の真っ直ぐ奥に窓ガラスがあり、そこにギルド長が立派な机を前にして座っている。その手前には談話ようにもうけられたと思われるソファーが二つとテーブルが一つだ。大地から見て右側にグラネス、リリアが座っていた。

「とりあえずそこに掛けてくれ」

 大地はギルド長に進められてリリアが前になるようにソファーへ腰を掛け、ユーナはリリアの隣に座る。

「色々聞きたいことがあるんだが、さきにリリアさんからも聞きたいことがあるようなんだ」

 ギルド長からリリアへ視線を向けた大地にリリアが最初に言ったことが冒頭の台詞である。


「嘘?っなんの話だ?」

「ダイチさんの強さのことですよ!!」

「いや、俺は強いって言っただろ?」

「でも!ダイチさんは私に言ったじゃないですか!」

 リリアに言ったこと?なんだっけな?

「南の森のことを覚えてないんですか?」

 うーん?

「アシッドなんとかかんとかの話か?」

「アシッドマーダービーです!!あとその前です!」

 蜂の話ではないとなると?何があったっけ?

「ウォーラビットのときですよ……」

 怒り疲れたのかリリアの勢いが失われたようだ。これで少し話しやすくなったぜ。

「あー、あの時か」

 そういえば、王女様にばれたくなくて適当なこと言ったな。

「あの時、なんで嘘ついたんですか……。あのモンスターの群れも大地さんが倒したんですよね」

「まぁ、そうだな」

「何であの時、本当のことを言ってくれなかったんですか?」

「……あの時、本当のこと言っていたら俺を怪しんだだろう?目の前には王女様が倒れてたしな」

「それは……」

 言葉につまるリリアは俯いてしまう。今でこそ大地がどういう人物かわかるから信じられるが、あの時では無理だったかもしれない。

「だからだ。本当のことなんて言えねぇよ」

 それでこの話は終わり。にするつもりだったんだが、ユーナが余計な一言を言い出した。

「ああ!そっか!そう言うことですね!?」

 まて、何を思いついたんだ?やばい、なんか嫌な予感が……。

 大地が不安に刈られようと、他のメンバーはユーナに視線が向く。

「つまり、ダイチさんはリリアちゃんに嫌われたくなかったんですね!!」

 この女なんてもんをぶっこんで来やがる!!

 ユーナの言葉で俯いていたリリアは顔を上にあげて右と左に一回ずつ振り向いたあと、大地に視線を合わせて「ほんと?」と言いたげな表情で首をかしげる。

「か、勘違いするな!ほら、あれだ。王女様に名前を覚えられたらめんどそうだから言っただけだ」

 その動揺ぶりによりリリアの少し赤くなってしまうが、それを意に介さずリリアは大地から視線をはずし宙をさ迷わせながら言う。

「あ、あれから大変だったんですからね。お姉ちゃんは助けてくれた人を探し出すし……」

 ん?お姉ちゃん?

 その一言で場に見えない緊張が張り巡らされた。そしてハッとリリアは今自分が口走ったことについて気づく。公共の場では決して言わない呼び名を。

「聖女って特別なんだろ?それならまぁ交流はあるだろうけど、ここでお姉ちゃんってのはどうなんだ?」

 頻繁にあっているかはわからないが、年が近ければ距離も近いだろう。それならリリアが親しみを込めてそう呼んだりするのもおかしくはないかな?それに、あの時、倒れている王女様を見ても必要以上に恐れてもいなさそうだったからな。

「……えと」

 リリアはちらりと大地を見てから視線をテーブルに戻す。

「ん、まぁ今のは聞かなかったことにするよ」

「ごめんなさい」

 そこでようやく落ち着いたのか他の人が安堵のため息を出していた。しかし、みんなリリアの言葉で騒がなかったのは二人が仲良さそうなのを知っているからだろう。

「まぁ、俺も嘘ついたのは謝る。すまなかったな」

 その言葉に何か言いたいけれど言えないことにもやもやしてそうなリリアを尻目にギルド長が口を開いた。

「しっかし、強いだろうと思ってはいたが海龍を一人でとはな。公式依頼での受注してたら大騒ぎだったな」

 そんなんで騒がれれるのはたまったもんじゃ無さそうだ。めんどくさい依頼とかご指名されるかもしれんしな。

「ああ、そうだ。リリアに一つ聞きたいんだけど」

 思い出したように言う大地にリリアが反応する。

「なんですか?」

「女神の名前って教えてくれないか?」

 結局女神自信から聞きそびれたから呼べないんだよな。そしてよべないと毎晩呼び出されて睡眠不足に……恐ろしい。

「……女神様のお名前ってそんなに気軽にお教えしてもいいんでしょうか?」

 リリアが深刻そうに悩み始めてしまい、どうしたものかと回りをみる。だが、全員が首を振り、現状の女神の扱いをユーナが教えてくれた。

「基本的に女神様のお名前は一部しか知られていないんです。ただ、リリアちゃんや過去の聖女が受けるお告げで色々なものが生まれたり、予言があったりとその恩恵があるので皆さん信仰はしっかりしてるんです」

 これは、今日もおよび出しかなぁ。

 そんな遠い目をする大地にリリアが聞いてきた。

「なんでダイチさんは女神様のお名前を知りたいんですか?」

 これ本当のこと言っちゃっていいのか?
 ちらりとリリアを見るとリリアはなにかを察したように身を乗り出した。

「嘘は!……やめてください」

 直ぐに戻っていくリリアはどこかしゅんと落ち込んでいるようにも見えてしまい、本当の事を言おうと大地は決めた。

「わかった。信じられるかわからないが、夢の中で呼び出されたんだ。そんで……」

「呼び出されたって二人っきりでですか!?」

 リリアがガタッと勢いよく立ち上がった。

「落ち着け。夢の中だから二人っきりだよ!」

 神を含める場合に『二人』ってどうなんだ?

 等と考えている間にリリアが座り直したので話を続ける。

「んで、名前を呼ばないと契約が出来ないと言われたんだが、その名前を聞いてなくてな」

「女神様との契約?」

 上を見ながら首をかしげたリリアは合点が言ったというように再び大地に視線を合わせる。

「女神様のお力を受けているんですね」

 大地の強さと女神の威光が結び付いたことで納得したリリアは再び考える。それならお伝えしてもいいのかな?と。

「そう言うことだ。それで教えてほしいんだけどいいかな?」

「えと、他の方にも聞かれちゃいますから……その、後ででもいいでしょうか?」

 回りにいる人たちに配慮しながら言うリリアだが、大地としては正直名前を言っても問題ないんじゃね?年か思えない。ただ、せっかく彼女が回りに気を配っているのだから、その意を汲むのが大人である。

「わかった。今日中に教えてくれるならそれでいい」

 コクンと頷くリリアを見て今度こそ話が終わり……あれ?ギルド長からなにも聞いてない気がするな。

「ところで、俺に話って?」

 今までのはリリアの質問でありギルド長の話ではない。であれば、ギルド長はなぜ呼んだのか?

 大地のとんでも会話を話し半分に聞いていたギルド長が口を開いた。

「ああ、それなんだが。ダイチ。Bランクになる気はあるか?」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

だらだら生きるテイマーのお話

めぇ
ファンタジー
自堕落・・・もとい楽して生きたい一人のテイマーのお話。目指すのはスローライフ!

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔
ファンタジー
 魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』  この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。  そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。  それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。  しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。  正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。  そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。  スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。  迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。  父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。  一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。  そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。  毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。  そんなある日。  『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』  「・・・・・・え?」  祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。  「祠が消えた?」  彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。  「ま、いっか。」  この日から、彼の生活は一変する。

隠密スキルでコレクター道まっしぐら

たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。 その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。 しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。 奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。 これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

念動力ON!〜スキル授与の列に並び直したらスキル2個貰えた〜

ばふぉりん
ファンタジー
 こんなスキルあったらなぁ〜?  あれ?このスキルって・・・えい〜できた  スキル授与の列で一つのスキルをもらったけど、列はまだ長いのでさいしょのすきるで後方の列に並び直したらそのまま・・・もう一個もらっちゃったよ。  いいの?

処理中です...