初めての異世界転生

藤井 サトル

文字の大きさ
上 下
14 / 281
女神と同居は嬉しい?嬉しくない?

夢と現実。疲れがとれなければどちらも同じ

しおりを挟む
 目の前には女神がいる。
 それは本人がそう言ったとか、自分に信仰心があるとかそんなんじゃあない。
 何というか後光といえばいいのか?それとも神々しいといえばいいのか?そういった雰囲気があって…………ってこのやり取り前回やっただろ!!

「で……また白い世界だけど、どうなってるんだ?っていうかここはどこだ?」

 大地が目の前にいる女神へ聞くと、女神はニコリと笑って言う。

「ここは貴方の夢の中です」

 俺の夢の中……ねぇ。殺風景すぎない?俺そんなストイックに生きてきてないよ?

「あ、この空間事態は私が作ったのですよ?お告げのようなものですね」

 よかった。俺じゃないんだな。この無味無臭の空間は。なにも無さすぎて自分の心の闇がヤバイのかと思ったよ。白いけど。

「呼び出されたに近いのか。それでなんのようだ?」

「話が速くて助かります。実は……」

 妙に間を持たす女神だ。もしかしたら深刻なのかもしれない。ここは一つ真面目に聞こう。

「暇だったんです。呼んでくれないし。だから、遊んでください」 

「は?遊ぶために……呼んだのか?」

「そうですよ~。自分ばっかりリリアちゃんと楽しそうにして……」

 ふくれ面になる女神に呆れながら大地はため息をはく。

「まぁ夢の中だしいいか。疲れはしないだろうしな」

「あ、ここでこうしてるだけでも疲れますよ?私からのお告げなんですから、当たり前じゃないですか~」

 つまりこいつはあれか?この女神のせいで疲労が取れるどころか増すばかりで、睡眠の意味を無くさせられてるってわけか?

「今すぐ寝させろ!!直ぐに寝させろ!!」

 こんな無駄に疲れてたまるか。

「寝ぼけているんですか?現実では寝てますよ?」

 イッラァとする感情に飲まれそうになるのを堪えた大地は抗議の目を女神に向ける。

「ふざけんな!人間はな寝なきゃ死ぬんだよ!」

「知ってますよー?でも、1日寝なくても死なないことも知ってますよー?」

 これは、たぶん何を言ってもダメなやつだ。
 全てを諦めるためのため息を肺の空気がなくなるまで吐き出すと、女神に視線を向けた。

「どうしたら戻らせてくれるんだ?」

「……そうですねぇ。あ、大地さんの世界にあったこういう展開はどうですか?」

 そういうと女神はわざとらしくコホンと咳き込んだ。

「私に少しでも良いから傷をつけられたら現実に戻してあげましょう」

 先程からの身勝手な降るまいといい、拉致ったあげく完全な上から目線での物言いといい。大地の堪忍袋は切れた。

「やってやろうじゃねえか!女神だろうが女だろうが泣かしてやるぜ!!!」

 極悪人のようなことを言い出す大地を女神はさらに余裕を見せつけるように柔らかい笑みを浮かべながら煽る。

「やってみなさい人の子よ」

 ここに人間VS女神のラグナログ(世界は崩壊しない)が始まった。

 遠慮などする気がない大地はしょつぱなからロケットランチャーを召喚しぶっぱなした。ロケット弾は確実に女神と接触し、大爆発を巻き起こした。その煙が晴れて女神の姿を視認したところ、当たる前からポーズは変わらず無傷である。

「やれるとは思っちゃいなかったが、ノーダメかよ!」

 愚痴をこぼしながら次の召喚を行う。

「こいつはどうだ?」

 巻き込まれないように女神から距離をとる大地。何に巻き込まれないようにするかと言うと上から降り注ぐ爆弾の雨にだ。

 女神の頭上を十字に横切る2機の爆撃機。二つの火力がばらまかれ激しい爆風と爆音が辺りへ広がった。

「ふふ。こんなんじゃ傷つきませんよ?」

 だが、それでも大地のやることを楽しそうにして見ている女神。

 余裕を見せつけくる女神にせめて一矢報いてやりたくなり大地は様々な武器を召喚した。

 マグナムとよばれるリボルバー、アサルトライフルにショットガン。アンチマテリアルライフルやサブマシンガン。グレネードランチャーにガトリング。自立型にした戦闘機や戦車。レーザービームが出るライフルに火炎放射。

 だが、どれを当てようが女神が傷を負うことはなかった。

「ダメだ……どうにもなんねぇ……」

 さんざんやった事で疲れが溜まり、大地は肩で息をしながら仰向けで寝転んだ。

「あら、もう終わりですか?」

「くそっ!」

 煽る女神相手に言い返してやりたいが、今の結果が惨敗な為に悪態つくしかできなかった。

「うふふ。楽しめたからよしとしましょうか」

 そう言って女神は大地のとなりに立つと自分の左に両方の足をずらすようにして座る。

 マジ黙っていると本当に美人だからムカつくやら許せるやらで複雑だ。

「気はすんだようでよかったよ。……聞いて良いか?」

「なんですか?今なら何でも答えてあげちゃいましょう」

「そ、そうか」

 それならばと遠慮など考えずに口にすることにした

「リリアの――」

 その言葉でピンと来た女神は直ぐに口を開いた。

「スリーサイズですか?もお~しょうがないですねえ。ダ・イ・チ・さんは。上から――」

 思ってもいないことを言われて激しく咳き込んだ大地は直ぐに否定する。

「ちがう!!」

 何故かがっかりしたような表情で「何でも答えてあげるって言ったのに」と残念そうに呟く。

 人のプライバシーまで答えようとするな!!

「はっ!まさか私のが知りたいと言うんですか!?し、仕方がないですねそこまで言うなら~」

「ちがう!!」

 いや、スタイル良いけれども!!気にはなるけれども!!

「リリアの事だ」

「リリアちゃんですか?」

「親しそうに名前呼ぶから女神と聖女ってそんなに仲いいものなのかと気になっただけなんだ」

「それでついでにリリアちゃんと私のスリーサイズが気になったと?」

「ちがう!!もうそこから離れないか?」

 クスクスと笑い存分に大地をからかって満足した女神は「それじゃあお答えしましょうか」と微笑みながら言う。

「そうですねえ。一日一回は必ずお祈りしてくれたのでその都度お話ししてましたね。もっとも話し方はもっと砕けてほしかったですけど。ただ、いろんな話してましたよ?」

「してました?今はしてないのか?」

「だって今はここにいるので……話すこと出来ないんですよ」

「どういうことだ?」

「そうですねぇ。分かりやすく言うと……」

 一拍間をおいた女神は感情を込めていった。

「私……私!貴方のせいで貴方の側から離れられないんです!!」

「えっ!?な、何言っているんだ……」

 いきなりのことで追い付けていない大地は少し後ずさりぎみにやましいことがなかったか頭をフル回転させる。

「ひどい!初めてあったあの日に……私を捧げたと言うのに……そんな……それなのに一度も必要としてくれないなんて……あんまりです……」

 そして、「う……う……」とすすり泣き始める女神。

 初めてあった日?……捧げる?……まさか?

「まさか、女神の契約の話か?」

 大地が恐る恐る訪ねると女神は憤慨したように口を尖らせた。

「もおー!せっかく雰囲気出してるんですからちゃんと乗ってきて下さいよ!!」

「雰囲気?あ!貴様もしや全て演技か!!」

「当たり前じゃないないですか。女神の契約は勝手に入れさせてもらいましたけど」

 ふざけんな!勝手にいれたんじゃ自己責任だろ!?

 その大地の抗議する頭の中を覗いたように女神は「ふふふ」と不適に笑いすり寄りながら言う。

「認知……していた――」

「ストーップ!!そこまでだ!!」

 そう止められた女神は不服そうに「えー」と言うがおとなしく引き下がる。

「そんなわけでリリアちゃんとはお話しできてないんです。ということで今日の本題!」

 その掛け声で女神の後ろに『本題』とかかれたホワイトボードが降りてきた。

「私との契約を完了してください」

「ん?そもそも今は完了してないのか?」

「はい。大地さんが起きて私の名前を呼びながら私を必要としてくれれば完了します。今は仮の状態ですね。因みに大地さんの身体能力が高いのも、この契約のおかげなんですよ?」

 固めをつぶりウィンクしながら人差し指を立てて言う女神に大地一つ聞く。

「……そのポーズ練習したのか?」

「もちろんです!大地さんからの見る視点を考慮しての角度としっかりと可愛さをアピールするためのウィンク!完璧でした」

 いや可愛いのはわかるけれども……。

 そんな決めポーズをしっかりする女神に今までの反撃をする方法を思い付いてしまった大地はニヤリと笑う。

「因みに嫌だと……言ったら?」

 まさか、ここで断るなんて!見たいな表情をする女神。

 この女が困惑するのを始めてみるな。

 してやったり。そう思った瞬間、大地は女神に押し倒された。

「うわ、何を!……するんだ?」

 女神との距離がいように近く、その顔を赤くさせて目に涙をためながら言う。

「毎晩……」

 大地はその先の言葉を連想する。いやらしい方面へ。
 だがそんなことは起きず、次の言葉、大地を戦慄させる。

「寝かせません。この部屋に呼んで睡眠不足と疲労に追い込みます!!」

 その彼女の可愛さから到底思えないほどのことを言われた。彼女の言ったことを要約すると、「毎晩拷問しますね~」だ。

 観念した大地は「ごめんなさい」と謝る他無かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

【完結】婚約破棄にて奴隷生活から解放されたので、もう貴方の面倒は見ませんよ?

かのん
恋愛
 ℌot ランキング乗ることができました! ありがとうございます!  婚約相手から奴隷のような扱いを受けていた伯爵令嬢のミリー。第二王子の婚約破棄の流れで、大嫌いな婚約者のエレンから婚約破棄を言い渡される。  婚約者という奴隷生活からの解放に、ミリーは歓喜した。その上、憧れの存在であるトーマス公爵に助けられて~。  婚約破棄によって奴隷生活から解放されたミリーはもう、元婚約者の面倒はみません!  4月1日より毎日更新していきます。およそ、十何話で完結予定。内容はないので、それでも良い方は読んでいただけたら嬉しいです。   作者 かのん

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

処理中です...