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第九章 成人の儀
成人の儀
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次に目を覚ますと、さっき杯を飲んだ広間にいた。周りには若者たちが倒れている。ゆっくりルウアが起き上がると、他のものたちも目を覚ましたものが、起き上がってきた。
あたりを見渡すと、自分たちだけのようだった。
ルウアは、隣りにいたキレアを揺り起こした。
「おい!大丈夫か?」
小さくうめいてからキレアが目を開けた。周りにいたものたちも、一様に頭をおさえながらぼんやりと焦点のあっていない目で、周りをながめている。
ルウアは、あれほど筋肉がもりあがって、力がみなぎっていた感覚がなくなっている腕をみていた。身体に走った衝撃も、震えも何も今は感じない。
隣りで起き上がったキレアが、
「あれ、俺の尻尾は?」
と間の抜けた声で、尻をみたので、他のみんなが笑った。
「どうしたんだ?」
ルウアがたずねると、寝ている間に、自分が大きな龍になっているのをみたというのだ。
「それは、夢だろう?」
そういうと、他のものたちも口々に、自分が鷹になった夢をみたとか、大きな獣になった夢をみたといいだした。
あの酒には、幻覚の作用があったのかもしれない。
寝ている間に見せた夢は、もしかしたら、潜在意識を呼び起こすためのもの。俺の身体が猛り、力がわきあがるのを感じたのも、一種の成人としての目覚めを呼び起こす儀式だったのかもしれない。
そう思っていると、部屋に使者が入ってきた。男たちの姿は見えない。
「みなさん、水を飲んでください」
一人ずつにコップを渡すと、皆がいっきに飲み干した。
喉が誰もカラカラに渇いていたのだった。
皆が起き上がると、使者は、手をさしだした。
「ようこそ。では、これから山の神へとご案内いたします」
奥の扉をひらいて、使者が入っていく。
皆がつづいて入っていった。
あたりを見渡すと、自分たちだけのようだった。
ルウアは、隣りにいたキレアを揺り起こした。
「おい!大丈夫か?」
小さくうめいてからキレアが目を開けた。周りにいたものたちも、一様に頭をおさえながらぼんやりと焦点のあっていない目で、周りをながめている。
ルウアは、あれほど筋肉がもりあがって、力がみなぎっていた感覚がなくなっている腕をみていた。身体に走った衝撃も、震えも何も今は感じない。
隣りで起き上がったキレアが、
「あれ、俺の尻尾は?」
と間の抜けた声で、尻をみたので、他のみんなが笑った。
「どうしたんだ?」
ルウアがたずねると、寝ている間に、自分が大きな龍になっているのをみたというのだ。
「それは、夢だろう?」
そういうと、他のものたちも口々に、自分が鷹になった夢をみたとか、大きな獣になった夢をみたといいだした。
あの酒には、幻覚の作用があったのかもしれない。
寝ている間に見せた夢は、もしかしたら、潜在意識を呼び起こすためのもの。俺の身体が猛り、力がわきあがるのを感じたのも、一種の成人としての目覚めを呼び起こす儀式だったのかもしれない。
そう思っていると、部屋に使者が入ってきた。男たちの姿は見えない。
「みなさん、水を飲んでください」
一人ずつにコップを渡すと、皆がいっきに飲み干した。
喉が誰もカラカラに渇いていたのだった。
皆が起き上がると、使者は、手をさしだした。
「ようこそ。では、これから山の神へとご案内いたします」
奥の扉をひらいて、使者が入っていく。
皆がつづいて入っていった。
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