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第九章 成人の儀
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ルウアが目を覚ましたのは、ひどい頭痛とともにだった。
あたりを見回すと、皆が横たわっている部屋ではなく、違う部屋に一人でいた。
にぶい痛みを手で抑えながら、ゆっくり身体を起こして、立ち上がった。
ここは、どこだろう。
そう思うやいなや、身体の周りがあたたかくなったのを感じた。
闇の中だったが、うっすらと淡い桃色のような気配を感じる。
部屋の中に、自分以外に誰かいるかのようだった。
さっき廊下で感じた、異質の気配とは違う、あたたかい空気のようだった。ルウアは、黙ったまま、自分の周りにいるものを静止してみていた。
頭痛は、おかげで気にならなくなっていった。
周りをとりまくものは、何度もルウアの周りを回ると、何かを調べているかのようだった。そして、何周か回った後に、動きがとまった。
空気が動かなくなった。
黙って立ったまま、ルウアに緊張が走っていた。
今、目の前に何かいるが、自分に敵意はないようだ。
しかし、次の瞬間、頭頂部から電撃がはしり、身体を貫いた。
それは、雷にうたれたような、目を覚まされるような衝撃だった。
そして、身体のあちこちが開いていくような感覚がしていた。
眠っていたものが、目を覚ましていくような、今まで開いていなかった扉が一枚ずつ身体のあちこちで開いていくような感覚。
ルウアは、「目覚め」を感じた。
身体中の細胞が目覚めていく。今まで使っていなかった筋肉までもが、震える喜びを感じているようだ。
たっていられないほどの、自分に走っている力が大きく、その力を使えることに喜びを感じている自分がいた。
俺は生まれ変わった。
これが、成人の儀なのか。
そうルウアは察した。
俺の周りを回っていたのは、山の神だろう。
俺の力を推し量っていたのだ。このものをどう目覚めさせるかを。
身体にみなぎっている力を、こぶしを握って感じていた。筋肉も以前よりずっしりと引き締まっているように感じる。俺は男として生まれてよかった。俺の力だ。
すると、ルウアの目の前に熱いものがやってきた。まばゆい光がやってきたような感覚だった。その熱さは、ルウアの眉間から入り、頭の中央に入ってきた。眉間から脳が温かく気持ちよさを感じた。
その温かさがやがて、じわじわと熱を帯びていった。
だんだんに焼けるように熱くなってくる。
ルウアは、眉間に石の塊でも押し付けられているかのような痛みを感じた。
もう、やめろ!
心の中でそう叫ぶと、あたりの空気が震えた。
みるみる熱さはひいていき、脳に刺さっていたものがゆっくり抜け、やがて眉間から最後の光が抜けた。
ルウアは、眉間を押さえると、そこに、あざのようなものがあるのに気づいた。
辺りは静まり返り、さっきまでいた山の神の気配は見当たらなかった。
遠ざかったというより、消えたというべきかもしれない。
ルウアは、また強い眠気に襲われた。たっていられないほどの眠気と疲労に、その場に倒れこんでしまった。
あたりを見回すと、皆が横たわっている部屋ではなく、違う部屋に一人でいた。
にぶい痛みを手で抑えながら、ゆっくり身体を起こして、立ち上がった。
ここは、どこだろう。
そう思うやいなや、身体の周りがあたたかくなったのを感じた。
闇の中だったが、うっすらと淡い桃色のような気配を感じる。
部屋の中に、自分以外に誰かいるかのようだった。
さっき廊下で感じた、異質の気配とは違う、あたたかい空気のようだった。ルウアは、黙ったまま、自分の周りにいるものを静止してみていた。
頭痛は、おかげで気にならなくなっていった。
周りをとりまくものは、何度もルウアの周りを回ると、何かを調べているかのようだった。そして、何周か回った後に、動きがとまった。
空気が動かなくなった。
黙って立ったまま、ルウアに緊張が走っていた。
今、目の前に何かいるが、自分に敵意はないようだ。
しかし、次の瞬間、頭頂部から電撃がはしり、身体を貫いた。
それは、雷にうたれたような、目を覚まされるような衝撃だった。
そして、身体のあちこちが開いていくような感覚がしていた。
眠っていたものが、目を覚ましていくような、今まで開いていなかった扉が一枚ずつ身体のあちこちで開いていくような感覚。
ルウアは、「目覚め」を感じた。
身体中の細胞が目覚めていく。今まで使っていなかった筋肉までもが、震える喜びを感じているようだ。
たっていられないほどの、自分に走っている力が大きく、その力を使えることに喜びを感じている自分がいた。
俺は生まれ変わった。
これが、成人の儀なのか。
そうルウアは察した。
俺の周りを回っていたのは、山の神だろう。
俺の力を推し量っていたのだ。このものをどう目覚めさせるかを。
身体にみなぎっている力を、こぶしを握って感じていた。筋肉も以前よりずっしりと引き締まっているように感じる。俺は男として生まれてよかった。俺の力だ。
すると、ルウアの目の前に熱いものがやってきた。まばゆい光がやってきたような感覚だった。その熱さは、ルウアの眉間から入り、頭の中央に入ってきた。眉間から脳が温かく気持ちよさを感じた。
その温かさがやがて、じわじわと熱を帯びていった。
だんだんに焼けるように熱くなってくる。
ルウアは、眉間に石の塊でも押し付けられているかのような痛みを感じた。
もう、やめろ!
心の中でそう叫ぶと、あたりの空気が震えた。
みるみる熱さはひいていき、脳に刺さっていたものがゆっくり抜け、やがて眉間から最後の光が抜けた。
ルウアは、眉間を押さえると、そこに、あざのようなものがあるのに気づいた。
辺りは静まり返り、さっきまでいた山の神の気配は見当たらなかった。
遠ざかったというより、消えたというべきかもしれない。
ルウアは、また強い眠気に襲われた。たっていられないほどの眠気と疲労に、その場に倒れこんでしまった。
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