悪役令嬢の冷静分析録〜ババ抜き系乙女ゲームの世界で〜

にんじんうまい

文字の大きさ
上 下
23 / 55
第1章:冷静に悪役令嬢アティスを分析する

23:冷静に入学前の下準備をする

しおりを挟む


あの素敵な夜からまた私の日常は変わりつつあった。



まず、主人公クシュナについて。
もし王子と本気で結ばれたいのならちゃんと令嬢教育をすべきであることを、私たちは説得した。
クシュナはもともと騎士団長の父が庶民出の側室に生ませた娘だった。
その母はクシュナを蝶よ花よと育てていたので、令嬢教育は一切していなかった。
クシュナ本人は誰からも強要どころか提案すらされていなかったため興味がなかった。
代わりに、王子たちとチャンバラごっこや隠れんぼ、鬼ごっこなどの遊びに勤しんでいたという。



その話を聞いて、私たちは呆れたが‥まだ間に合う。



さあ、一緒に地獄の令嬢レッスンを始めましょう!!!



クシュナはそれ以来、義理のお母様、ジュリアスの母上に頼んで、国母と慣れるようなレッスンをつけてもらっているらしい…


時々愚痴を言いに来る本人の話を聞くと、私なら絶対無理レベルで厳しいスケジュールだったが、彼女はなんだかんだで楽しんでいるようだった。


だって彼女は話終わると拳を握りしめいつもこういうのだから。


「待ってなさい!ジュノー。努力は人を裏切らないですわ!!」



(→そういう熱血すぎるところを直していかないといけないのですけど。でもそこがクシュナの可愛いところでもあります。)



次に、その王子ジュノーについて。
彼との文通は実はまだ続いている。
週一程度ではあるが‥。


(→安心してください、このことはクシュナには了承済みです。彼女にかかさず見せています。)


そして文面の書き出しは決まってこうだ。



宛先:アティス嬢


ここ一週間に関するアンケート用紙です。
□にレ点を必ずつけ返信してください。


NO.1
□ファイは来ましたか?

Yesの場合のみお答えください。

ファイは何をしていましたか?詳しく書いてください。




NO.2
□クシュナ嬢は来ましたか?

Yesの場合のみお答えください。

彼女は僕の話をしていましたか?詳しく書いてください。




NO.3
竜人に関して知っていること、仲良くなるコツなどについてわかるだけ自由に書いてください。












その後になんか用事があれば何か書いてあることもあるけど、だいたいこんな感じ。
色味がないのにも程があるわよ。王子からアンケート用紙を週一でもらう悪役令嬢がどこにいますか。


(→NO3の竜人解答欄が他に比べやけに大きい…)



そして噂の、ファイ様。
ファイ様は…


「あれ?今私のこと考えていなかったか?」


私の耳元で星屑の白銀がサラッと流れた。

えっ?

彼の左手が私の背後からそっと肩に添えられている。


「キュ、急に現れるのやめてください!それも背後から、こんな近くで!!!」


「すまんすまん!アティスを驚かせるのは愉快なのだ!ははは!!
それに、そうでもしないとあのピーピーうるさい、エレーナといったか?あやつをまけぬのだ。
他に人がおっては秘密の話ができぬのでな。
それで…その、行けそうなのか?竜人の住む国、霧月国には…」


(→解説します。


アティスはもともと自分が竜人であることに不安を感じていたこと、王子からアンケートを書かせられることの理由によりファイ様が来るたびに質問していました。

ファイ様はそんなアティスを見かねて、


フ:「言葉で説明すのは少々苦手でな。よし!我が故郷、霧月国に行ってみようではないか!」

と提案されていたのでした。現場からは以上です。)


行きたいのは山々なのだが、唯一反対する家族がいる。
それはお父様だった。


「やはり…お父様がどうしても賛成してくれなくて‥」


「そうかそうか…よし!それでは私と駆け落ちしよう!!」


ファイ様は妖艶な笑顔で私の手をとった。


ええええ!!??


(→ええええええ????困ります、私にはアクエス様がいるのに…)



「何を驚いている?人間の男女が親に内緒で家出することを駆け落ちというのだろう??」


なんだ…期待しちゃっただけか。恋愛的な意味はないよね。


(→美琴、あなた気をつけた方がいいですよ。あなた、からかわれているだけかもしれません。)


「うん??あれ?アティス?もしかしてアティスって二人いたりしない?」


へっ??


(→???)



ファイ様は少し目を細めて私を見た後、また素敵な笑顔で私に微笑んだ。



「まっ、いいよ、今は。それじゃ、駆け落ちしよう!!」



私は手を急に掴まれた。



えっ?私何も準備してないよ!こういう時は旅の荷詰めから…



「アティスお嬢さま!!!!」


部屋の隅でエレーナが叫んだ。



****



「エレーナ!!!!」


叫び終わるとそこはもといた部屋ではなく、深い森の中だった。

虚しく私の叫び声がこだましていく。


「ははは!!アティス、声大きいな。」


私はじとっとファイ様を睨んだ。




「すまんすまん!!!うん?アティス何も持たずにここに来たのか。
まあ、よいよい。あちらで買い揃えればよかろう!さぁ行こう!!霧月に!!」



こうして私たちは霧月国へと駆け落ちするのであった。


(→私たち…って、私は駆け落ちは認めていませんよ!!!)

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~

紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。 行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。 ※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜

梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。 そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。 実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。 悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。 しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。 そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

小柄な竜姫は美貌の宰相と結婚したい

歌龍吟伶
恋愛
竜人、それはドラゴンと人間の間に生まれた種族。 普段は人間の姿だか、戦いの場や感情が昂った時などはドラゴンに変化する。 長い時を経てその存在は世界から認められ、建国した。 デューレイシャ大陸の南東に位置するその名は、ドラリオン竜国。 国王の一人娘であるリューファは、火竜である父王の血を濃く受け継ぐ御転婆娘。 人間族である宰相に恋する乙女だ。 素敵なレディになって歳上宰相を振り向かせたいお姫様の物語

処理中です...