悪役令嬢の冷静分析録〜ババ抜き系乙女ゲームの世界で〜

にんじんうまい

文字の大きさ
上 下
5 / 55
第1章:冷静に悪役令嬢アティスを分析する

5:冷静に向き合ってみる

しおりを挟む



(→解答:正解。私とあなたの魂はアティスの中で混ざり合うことはありません。)


整理しておこう。

質問1:なぜ私はあなたに転生して、しかも私が主体でアティスを演じているのか?

(→解答:私はこの通り感情を持ち合わせていないため、ジョカ横の世界で酷く誤解される傾向にあります。悪役令嬢を回避するために人間らしい魂を入れることにした結果です。あなたには生前の社交力を生かして私たちが最悪の結末を迎えないように努力してもらうつもりです。)


そっか・・。
私は悪役令嬢になる確率を下げるために呼ばれたってわけね・・。


質問2:あなたは私の感情も、悪役令嬢ものが好きだっていう記憶も知っているのに、なぜ私はあなたのことをあなたが流してくれる情報しかわからないの?

(→解答:よく精神を氷山の一角で例えるように、意識のある顕在意識の領域ではあなたの魂が、潜在意識の領域では私の魂が主導権を握っています。ゆえに、あなたの前世の記憶も言葉にならない考えも私には分かります。)


えっっ!それ意識の97%あなた持ちってこと??
私はなけなしの3%を使って冷静に分析していたのか・・・(トホホ・・・)


質問3:これからもあなたとこうやって自由に会話はできる?


(→解答:あなたが望むのなら。但し、月光浴をしないと私の活動力は落ちていきます。)


よかった!私が冷静じゃなくなったらちゃんと今までみたいに注意してね!他にもいろいろ相談して行こう!月光浴は任せて!!



こうして、はたから見ると月光浴でのぼせているようなアティスの中で、二つの魂の絆が一歩ずつ歩み寄りを始めているのであった。



(→質問:義弟ジェイへの対応はどうしますか?)


解答としては・・・。うーん。
悪役令嬢マニュアルに則ると、寂しい思いをさせないようにかまってあげるのが一番なのよね。きっと、あなたがジェイに対して無関心すぎて、逆に彼は振り向かせようとしているはず・・・。あなた、ジェイのこと嫌いだったの?

(→弁解:あまり不必要なことをジェイに言って面倒を増やしたくなかっただけです。好きでも嫌いでもありません。)


あら、そうなのね。
となったらまず明日からジェイの攻略を始めるぞ!!

と気合を入れたら急に眠くなってきた。



****



私は目が覚めると月光浴をしていたテラスにいた。どうやらそのまま外で眠ってしまったらしい。テラスの目の前には大きな桜の木があって、外からみると私のテラスはすっぽりとこの木に覆われているように見える。私の白い肌に木漏れ日が囁いていた。


こんなんだから私三日も風邪でねこんでいたのね!
いくら初夏だからって外で寝るとかありえない!!悪役令嬢として!!

部屋に入り、
あっ!そういえば、悪役令嬢がよく書いてる乙女ゲーのキャラとストーリを綴った攻略本を書かないといけないな・・・と考えて部屋をキョロキョロしていると、エレーナが入ってきた。

「お元気になられたようでよかったです。」



**


我が家では朝食はみんなで摂るのが基本だ。
だからジェイもそこにいる。ジェイは両親の前では、私に相手されない、というか話しかけても私に無視されるかわいそうな子を演じているが、二人がいなくなると、私の食べ物を横取りしたり、手袋やスカーフを隠したり、私の部屋に勝手に入って何か探っていたり・・・・。うん、このまま放置するときっと変態になる素質を持っているぞ、こやつは・・。

食事が終わり、両親はダイニングから去っていき、ふたりだけになった。

「ねえさん、こんな歳にもなってホントはクマの人形が好きだなんて・・。そんなこと他人に知られたら僕は恥ずかしくてしょうがないよ。いくら友達の御令嬢が一人もいなくて寂しいからってクマに逃げるなんて・・・。」

ルビーのような赤い瞳が少しいじわるそうに笑っていた。
どうせ私が何も言わないと思ってこれは調子に乗っているな。まず、悪役令嬢なのに義弟にいじめられるって本当は逆なのではないか。
よし、懲らしめてやろうではないか!


私は、顔を下に向け、そして勢いよく顔をあげると、完璧鉄壁スマイルをジェイに叩きつけた。ただでさえ笑わないアティスなのだ、きっとジェイに向ける笑顔はこれが初めてなのだろう。しかも100%スマイル。案の定ジェイは目を見開き私を見ている。

「ジェイ。私はクマさんとではなくて、本当はずっと、あなたと仲良くなりたかったのよ。私の一番最初で、一番のお友達に、ジェイ、あなたがなってくださらない?」

「うっ、ううううそだぁぁ」

と急に顔を赤面させ、またすぐにお化けを見た後のように青白くなって一目散に部屋を出て行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...