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第1章:冷静に悪役令嬢アティスを分析する
5:冷静に向き合ってみる
しおりを挟む(→解答:正解。私とあなたの魂はアティスの中で混ざり合うことはありません。)
整理しておこう。
質問1:なぜ私はあなたに転生して、しかも私が主体でアティスを演じているのか?
(→解答:私はこの通り感情を持ち合わせていないため、ジョカ横の世界で酷く誤解される傾向にあります。悪役令嬢を回避するために人間らしい魂を入れることにした結果です。あなたには生前の社交力を生かして私たちが最悪の結末を迎えないように努力してもらうつもりです。)
そっか・・。
私は悪役令嬢になる確率を下げるために呼ばれたってわけね・・。
質問2:あなたは私の感情も、悪役令嬢ものが好きだっていう記憶も知っているのに、なぜ私はあなたのことをあなたが流してくれる情報しかわからないの?
(→解答:よく精神を氷山の一角で例えるように、意識のある顕在意識の領域ではあなたの魂が、潜在意識の領域では私の魂が主導権を握っています。ゆえに、あなたの前世の記憶も言葉にならない考えも私には分かります。)
えっっ!それ意識の97%あなた持ちってこと??
私はなけなしの3%を使って冷静に分析していたのか・・・(トホホ・・・)
質問3:これからもあなたとこうやって自由に会話はできる?
(→解答:あなたが望むのなら。但し、月光浴をしないと私の活動力は落ちていきます。)
よかった!私が冷静じゃなくなったらちゃんと今までみたいに注意してね!他にもいろいろ相談して行こう!月光浴は任せて!!
こうして、はたから見ると月光浴でのぼせているようなアティスの中で、二つの魂の絆が一歩ずつ歩み寄りを始めているのであった。
(→質問:義弟ジェイへの対応はどうしますか?)
解答としては・・・。うーん。
悪役令嬢マニュアルに則ると、寂しい思いをさせないようにかまってあげるのが一番なのよね。きっと、あなたがジェイに対して無関心すぎて、逆に彼は振り向かせようとしているはず・・・。あなた、ジェイのこと嫌いだったの?
(→弁解:あまり不必要なことをジェイに言って面倒を増やしたくなかっただけです。好きでも嫌いでもありません。)
あら、そうなのね。
となったらまず明日からジェイの攻略を始めるぞ!!
と気合を入れたら急に眠くなってきた。
****
私は目が覚めると月光浴をしていたテラスにいた。どうやらそのまま外で眠ってしまったらしい。テラスの目の前には大きな桜の木があって、外からみると私のテラスはすっぽりとこの木に覆われているように見える。私の白い肌に木漏れ日が囁いていた。
こんなんだから私三日も風邪でねこんでいたのね!
いくら初夏だからって外で寝るとかありえない!!悪役令嬢として!!
部屋に入り、
あっ!そういえば、悪役令嬢がよく書いてる乙女ゲーのキャラとストーリを綴った攻略本を書かないといけないな・・・と考えて部屋をキョロキョロしていると、エレーナが入ってきた。
「お元気になられたようでよかったです。」
**
我が家では朝食はみんなで摂るのが基本だ。
だからジェイもそこにいる。ジェイは両親の前では、私に相手されない、というか話しかけても私に無視されるかわいそうな子を演じているが、二人がいなくなると、私の食べ物を横取りしたり、手袋やスカーフを隠したり、私の部屋に勝手に入って何か探っていたり・・・・。うん、このまま放置するときっと変態になる素質を持っているぞ、こやつは・・。
食事が終わり、両親はダイニングから去っていき、ふたりだけになった。
「ねえさん、こんな歳にもなってホントはクマの人形が好きだなんて・・。そんなこと他人に知られたら僕は恥ずかしくてしょうがないよ。いくら友達の御令嬢が一人もいなくて寂しいからってクマに逃げるなんて・・・。」
ルビーのような赤い瞳が少しいじわるそうに笑っていた。
どうせ私が何も言わないと思ってこれは調子に乗っているな。まず、悪役令嬢なのに義弟にいじめられるって本当は逆なのではないか。
よし、懲らしめてやろうではないか!
私は、顔を下に向け、そして勢いよく顔をあげると、完璧鉄壁スマイルをジェイに叩きつけた。ただでさえ笑わないアティスなのだ、きっとジェイに向ける笑顔はこれが初めてなのだろう。しかも100%スマイル。案の定ジェイは目を見開き私を見ている。
「ジェイ。私はクマさんとではなくて、本当はずっと、あなたと仲良くなりたかったのよ。私の一番最初で、一番のお友達に、ジェイ、あなたがなってくださらない?」
「うっ、ううううそだぁぁ」
と急に顔を赤面させ、またすぐにお化けを見た後のように青白くなって一目散に部屋を出て行った。
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