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第1章:冷静に悪役令嬢アティスを分析する
2:冷静に悪役令嬢の立場を考察する
しおりを挟む(→状況報告:転生者アティスは、乙女ゲーの戦略そっちのけで悪役令嬢の立場に浸っていた。)
『馬鹿と天才は紙ひとえ』
というように、悪役令嬢とヒロインの関係はまさにそれなのだと思う。
『善』とするものから見て、たとえそれ「悪」であっても、
その『悪』からしてみればそれが「善」であることもあるのだ。
ヒロインは
大抵平民か下級貴族で、魔法属性や魔力量がチートゆえに、攻略対象に興味を持たれ恋愛に発展するケースが多い。それは、生まれた瞬間に大富豪の息子であったという状況と変わらず、努力<<運の力でその恵まれた環境を手に入れるのである。
一方、悪役令嬢はどうだろうか。
転生悪役令嬢の魔力チートは「ないフリして実はある!」場合がテンプレになりつつあるが、ゲーム内の令嬢は、魔力は乏しく、頭も乏しく、家族愛に乏しく、身分ばかりが先行して善悪の分別のつかない頃から大人達に良い意味でも悪い意味でもチヤホヤされ、利用され、政略結婚としてもしもジョーカーだったら一発KOの攻略対象たち以外の恋愛を禁止され、令嬢教育として遊びよりも勉学・マナーに勤しまされる。
それも幼子が!!!
こんなに苦行を積まされてもまだゲーム製作者は許してはくれない。
そしてこの試練に耐え忍んだ結果、心が歪まされ、愛に飢えた美しい令嬢は、魔法学園に入ることを皮切りに、ぽっと出ヒロインにすべてを奪われ、最悪命を落とす…。そのとってもプラス過ぎる見た目と身分が、逆に悪い方向の手助けをして、一層辛い思いをしてしまうのだ…。
ええい、この際、悪役令嬢改め苦役令嬢と言った方がいいのではないか?
(→見解:シンデレラストーリーが受け入れられるように、実は陰でひたすら苦行積んでますポジションの悪役令嬢がサクセスして生き延びるという話だてが人気を博す一つの理由ではないか。悪役令嬢は、乙女達の同情と夢や希望を背負って逞しく延命活動に励んでいるのである。)
悪役令嬢ものによって性格は異なるが、”強”ツンデレ程度で案外悪くはないのに勘違いされ続けた結果・・・または、第三者によっておとしめられ破滅へ追い込まれてしまうケースもある。時々、ええー!あなた本当に悪事を働いちゃう悪役令嬢だったのですね・・・(泣)の方もいらっしゃいますが。それはさておき。
もし元々性格が悪くなかった場合、ヒロインがぽっと出すぎて、それを心配した誤解を受けやすい令嬢の気遣いが中傷エピソードに発展するパターンが多い。
これはつまりこういうことだろう。
悪役令嬢は悪さをしいていなくても、周りからは悪さをしているように見えてしまう。
さらに、悪役令嬢の今までの苦行を踏まえてしまうと、ヒロインの方が悪役令嬢にとって悪役であると言えるのではないだろうか。
そんなことを考えていたら、
「そんなに難しそうな顔をされてどうされたのですか?」
と天使の微笑みを浮かべた侍女のエレーナが私の大好きなレモンタルトとベルガモットの紅茶を運んできてくれた。
紅茶の注がれたカップもソーサーも繊細な模様が描かれていて最高級品を使っていることがわかる。
…そうなのよね。
悪役令嬢ものにも、侍女のエレーナみたいに私の身分関係なく接してくれる癒し系の人も時々いるし、そもそも悪役令嬢の周りには一流品が多くて、美味しいお菓子やお茶、豪華な装飾品に囲まれた生活気分が味わえるところも醍醐味なのよ…!
(→見解:悪役令嬢ものには飴と鞭があります。)
あぁ。
くせ毛のブロンドに深緑の瞳を持つ私よりも10歳年上のお姉様。
優しく可憐で気の利く、エレーナを私は大切にしなくてならない。何よりこれから始まる鞭系ストーリを縁の下で支える飴様なのですから。
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