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賢者、目的を果たす。
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他の者たちはポカンとしているが、カウラセンの説明によると『魔王』という存在自体は一般的に知られているものの、庶民たちに余計な恐怖を与えたくないと情報は徹底管理されているらしい。
しかし魔法使いたちの間では『色』だけは伝えられているということで、『黒』があの『魔王』を象徴するものだと説明してくれる。
「そ…そうなんだ……」
「え」
ちょっと待て。
「ちょ…ちょっと待ってくれ……まさかと思うが、ケヴィンたちも『魔王』がどんな顔だとか、背の高さだとか、性別だとか……まったく知らないわけではあるまい?」
「え?パトリック賢者は知っているの?」
「………………ちょっと、待ってくれ?」
頭が痛くなってきた──
キョトンとしたケヴィンとラダ、無表情ながら少し警戒心を強めたらしいデューン、逆に目をキラキラさせているのはミウで、何故かウルが私の横でエッヘンと鼻息を吐いてビシッと座っている。
何なのだろう、この混沌とした状態は──
もう言葉にできず私はカウラセンを見たが、ああ…うん、予想はしていたが、やはり彼も何か羨望を込めた目で私を見ていた。
「……『魔王』の姿かたちは時代によって違うらしく、ただ変わらないのが『色』だからということで『かの者は黒である』と伝えられているのです。そしてそれは私たち魔術研究所に所属する魔法使いでも上位の者たちしか知りません。でも……ミウもこれは知らないのでは?」
「あぁ……そう、ね……本当は知らないはずなんだけど……ほら、両親にとって私は『いない』も同じものだから……こっそり両親のいる部屋の隅に隠れていても知られることはなかったの」
「………時々、君が部屋にいないと思ったら……」
「えぇっ?!何で私がいなかったこと、知ってるの?!」
「いや、一応私たちはちゃんとした婚約者だからね?当然、君に会いに行ったに決まっているだろう?」
ミウの告白にやや痛ましげな顔をしたカウラセンが溜息をつくと、つかれた方は悪戯が見つかったかのような顔をした。
「そういえば……そうだったな」
「そうだったわね」
「すっかり忘れていたな、そういえば」
ケヴィンもラダも、そしてデューンも残念な子を見る顔でうんうんと頷く。
彼らはどちらに同情しているのか──いや、双方か。
彼らがすれ違っていた婚約者だと忘れていたのは、私も同様だが。
しかし魔法使いたちの間では『色』だけは伝えられているということで、『黒』があの『魔王』を象徴するものだと説明してくれる。
「そ…そうなんだ……」
「え」
ちょっと待て。
「ちょ…ちょっと待ってくれ……まさかと思うが、ケヴィンたちも『魔王』がどんな顔だとか、背の高さだとか、性別だとか……まったく知らないわけではあるまい?」
「え?パトリック賢者は知っているの?」
「………………ちょっと、待ってくれ?」
頭が痛くなってきた──
キョトンとしたケヴィンとラダ、無表情ながら少し警戒心を強めたらしいデューン、逆に目をキラキラさせているのはミウで、何故かウルが私の横でエッヘンと鼻息を吐いてビシッと座っている。
何なのだろう、この混沌とした状態は──
もう言葉にできず私はカウラセンを見たが、ああ…うん、予想はしていたが、やはり彼も何か羨望を込めた目で私を見ていた。
「……『魔王』の姿かたちは時代によって違うらしく、ただ変わらないのが『色』だからということで『かの者は黒である』と伝えられているのです。そしてそれは私たち魔術研究所に所属する魔法使いでも上位の者たちしか知りません。でも……ミウもこれは知らないのでは?」
「あぁ……そう、ね……本当は知らないはずなんだけど……ほら、両親にとって私は『いない』も同じものだから……こっそり両親のいる部屋の隅に隠れていても知られることはなかったの」
「………時々、君が部屋にいないと思ったら……」
「えぇっ?!何で私がいなかったこと、知ってるの?!」
「いや、一応私たちはちゃんとした婚約者だからね?当然、君に会いに行ったに決まっているだろう?」
ミウの告白にやや痛ましげな顔をしたカウラセンが溜息をつくと、つかれた方は悪戯が見つかったかのような顔をした。
「そういえば……そうだったな」
「そうだったわね」
「すっかり忘れていたな、そういえば」
ケヴィンもラダも、そしてデューンも残念な子を見る顔でうんうんと頷く。
彼らはどちらに同情しているのか──いや、双方か。
彼らがすれ違っていた婚約者だと忘れていたのは、私も同様だが。
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