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賢者、目的を果たす。
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しかし私が空間結界に閉じ込めただけで、この村に住んでいた者全員を消してしまった魔獣や魔物のすべてだとは限らない。
それはどうやって討伐したり、避けたりするのか──ふと兵士たちの鼓舞に同調しない魔法使いたちを見て、私は疑問に思った。
「君の部下というべきか、共にいる魔法使いや魔術師は彼らすべてに対して、防御魔法は使えるのかな?」
「無理でしょうね」
私の問いに、カウラセンはあっさりと否定の言葉を返す。
「索敵は可能でしょう。むしろ、そのために派遣されたと言っても過言ではない」
「では……」
「ですが、身を護るのは彼ら自身ではなく、軍兵の仕事と思っているはずです」
はぁ…とカウラセンが溜息をついたが、私も思わず額に手を当ててしまった。
「ん?魔法使いを守るのは当然じゃないのか?」
「当然じゃないわよ」
『白雷の翼』では後衛にあり、前衛のケヴィンとデューンが魔獣や魔物を攻撃し、さらに上空からなどはミウの矢で撃ち落とす間、防衛や筋力アップと言ったバフ効果を魔術付与するラダを守るというのが通常なケヴィンが不思議そうな顔で問うたが、ラダがフンッと鼻を鳴らして反論する。
「確かに腕力や攻撃力なんかでは、俺たち剣士や斧使い、防御力では盾使いに劣るかもしれないが、魔法使いは俺たち自身の能力を上げてくれる……だから、守られるが守りもする、で合ってるんじゃないのか?」
「そーゆーことじゃなくて!」
ケヴィンの言いたいことは冒険者として、そしてパーティーを組む者としての協力体制のことなのだが、カウラセンが言いたいことや私やラダが理解したのは正しく「そういうことじゃない」のだ。
もう今すぐにでも村を飛び出そうとしようとする兵たちを押し止めたのは、兵たちのリーダーでも、索敵要員として随行された魔術研究所所属の魔法使いのリーダーでもなく、そして我が勇者パーティーのリーダーでもなく──正体を隠して下男のふりをして紛れ込んでいたカーリン・リストニス・カラウセンだった。
「だいたい何だ、その装備は!ただの鉄の塊でどうやって魔獣たちに対処するというのか!貴様たちも!命じられた『索敵』という任務だけを行えばいいと思っているのか?だから格下に見られているのだ!武力がない?それを補うための魔石や魔術道具を持ってくるのが常識だろう!ほら、隠し持っている物があれば出せ!」
国軍も下っ端の者たちばかりだったのか装備も確かに頼りなく、魔術研究所の者たちはこっそりと持ち込んでいる物が多々あるのか、彼らから離れた所で残る気満々で佇む下男たちの方をチラチラと見ている、
どうやってここまで無事に辿り着けたのか、本当に不思議でならない。
それはどうやって討伐したり、避けたりするのか──ふと兵士たちの鼓舞に同調しない魔法使いたちを見て、私は疑問に思った。
「君の部下というべきか、共にいる魔法使いや魔術師は彼らすべてに対して、防御魔法は使えるのかな?」
「無理でしょうね」
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「索敵は可能でしょう。むしろ、そのために派遣されたと言っても過言ではない」
「では……」
「ですが、身を護るのは彼ら自身ではなく、軍兵の仕事と思っているはずです」
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「確かに腕力や攻撃力なんかでは、俺たち剣士や斧使い、防御力では盾使いに劣るかもしれないが、魔法使いは俺たち自身の能力を上げてくれる……だから、守られるが守りもする、で合ってるんじゃないのか?」
「そーゆーことじゃなくて!」
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もう今すぐにでも村を飛び出そうとしようとする兵たちを押し止めたのは、兵たちのリーダーでも、索敵要員として随行された魔術研究所所属の魔法使いのリーダーでもなく、そして我が勇者パーティーのリーダーでもなく──正体を隠して下男のふりをして紛れ込んでいたカーリン・リストニス・カラウセンだった。
「だいたい何だ、その装備は!ただの鉄の塊でどうやって魔獣たちに対処するというのか!貴様たちも!命じられた『索敵』という任務だけを行えばいいと思っているのか?だから格下に見られているのだ!武力がない?それを補うための魔石や魔術道具を持ってくるのが常識だろう!ほら、隠し持っている物があれば出せ!」
国軍も下っ端の者たちばかりだったのか装備も確かに頼りなく、魔術研究所の者たちはこっそりと持ち込んでいる物が多々あるのか、彼らから離れた所で残る気満々で佇む下男たちの方をチラチラと見ている、
どうやってここまで無事に辿り着けたのか、本当に不思議でならない。
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