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賢者、目的を果たす。
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収まったと言っても、轟々と激しく盛る炎が焚き火ぐらいになったという感じだ。
これからさらに熾火のようになり、いずれは完全に鎮火するだろう。
魔獣や魔物に『鎮魂』という概念が理解できるかどうかはわからないが、この場にいる者は皆それぞれの表情で結界の中を見つめていた。
「では、エイダ班は南、グンター班は北、ログ班は西、私が率いる本軍は東を担当する。それぞれ南東南西、北東北西と分かれて捜索を再開する!」
「ハッ!」
「なお、村の者を見つけた場合は必ず魔獣化していないか確認し、少しでも兆候があればその場で捕捉の上、即時私の元に報告と沈静化。抵抗された場合は……」
だがそんな中でも、どうにも意気が昂揚している者がいる。
私がこの村に現れた魔獣たちをすべて結界内に収めて自己発火を促したため、もう周囲に脅威は無くなったと思っているのだろうが……
それにしても。
「あの人、『時と場合』って言葉を知らないのでしょうか?」
「シィ……彼は彼で、ちゃんと任務を遂行しようとしているだけなんだよ。まぁ……その、タイミングという言葉は知らないようだけど」
私のそばにミウが近寄ってコソッと囁くと、さらにカウラセンが続いてなかなか辛辣な評価を小声で下す。
「まぁ……ちゃんと魔力探査ができるは者がいれば、そう危険ではないんじゃないかと思うけど……」
ここに現れた魔獣以外のモノもいないとは限らないから、そこら辺はちゃんと考えて──
「国軍に随行した者はあまり武力に優れているわけではないんですよね……むしろ優秀な魔術師を派遣することは、ミウラリアの父上を始めとした上層部が拒否して……」
「は?」
おっと。
思わず低い声が出てしまい、私は思わず自分の口に手を当てた。
だがミウは悲しそうな顔をしつつも、同意すると言うように何度か小さく頷いた。
「言い方としては『国軍に協力するとともに、実戦経験のない者に現場と現実を味合わせる』というものですが」
「そういう父だって、一度もこんなところに来たことなんてないのに……」
ギュッと手を握り、ミウが悔しそうに呟いた。
見ればカウラセンが指した魔術ローブを纏った者たちは、確かに魔力はあるように見える。
だが──
「彼らは魔術研究所では才能を認められず、かと言ってプライドを捨てられず……この場で何かしら手柄を上げれば認められると言われて参加させられた者たちです。単に魔物や魔獣を見つけることだけを当てにされてるだけとも知らずに……」
「魔力弱き者は捨てられて当然……それが父たちの信念です。だから……」
彼らは、捨て駒のようなものなんです。
ミウの声が震えた。
これからさらに熾火のようになり、いずれは完全に鎮火するだろう。
魔獣や魔物に『鎮魂』という概念が理解できるかどうかはわからないが、この場にいる者は皆それぞれの表情で結界の中を見つめていた。
「では、エイダ班は南、グンター班は北、ログ班は西、私が率いる本軍は東を担当する。それぞれ南東南西、北東北西と分かれて捜索を再開する!」
「ハッ!」
「なお、村の者を見つけた場合は必ず魔獣化していないか確認し、少しでも兆候があればその場で捕捉の上、即時私の元に報告と沈静化。抵抗された場合は……」
だがそんな中でも、どうにも意気が昂揚している者がいる。
私がこの村に現れた魔獣たちをすべて結界内に収めて自己発火を促したため、もう周囲に脅威は無くなったと思っているのだろうが……
それにしても。
「あの人、『時と場合』って言葉を知らないのでしょうか?」
「シィ……彼は彼で、ちゃんと任務を遂行しようとしているだけなんだよ。まぁ……その、タイミングという言葉は知らないようだけど」
私のそばにミウが近寄ってコソッと囁くと、さらにカウラセンが続いてなかなか辛辣な評価を小声で下す。
「まぁ……ちゃんと魔力探査ができるは者がいれば、そう危険ではないんじゃないかと思うけど……」
ここに現れた魔獣以外のモノもいないとは限らないから、そこら辺はちゃんと考えて──
「国軍に随行した者はあまり武力に優れているわけではないんですよね……むしろ優秀な魔術師を派遣することは、ミウラリアの父上を始めとした上層部が拒否して……」
「は?」
おっと。
思わず低い声が出てしまい、私は思わず自分の口に手を当てた。
だがミウは悲しそうな顔をしつつも、同意すると言うように何度か小さく頷いた。
「言い方としては『国軍に協力するとともに、実戦経験のない者に現場と現実を味合わせる』というものですが」
「そういう父だって、一度もこんなところに来たことなんてないのに……」
ギュッと手を握り、ミウが悔しそうに呟いた。
見ればカウラセンが指した魔術ローブを纏った者たちは、確かに魔力はあるように見える。
だが──
「彼らは魔術研究所では才能を認められず、かと言ってプライドを捨てられず……この場で何かしら手柄を上げれば認められると言われて参加させられた者たちです。単に魔物や魔獣を見つけることだけを当てにされてるだけとも知らずに……」
「魔力弱き者は捨てられて当然……それが父たちの信念です。だから……」
彼らは、捨て駒のようなものなんです。
ミウの声が震えた。
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